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2022年11月2日水曜日

echo

韓国ソウルで150名を超える若者が命を落とした雑踏事故から3日。

事故当時の状況が次第に明らかになりつつありますが、適切な警備体制を敷かなかった警察当局の責任を問う声はもとより、5月に誕生したばかりの尹政権への影響が取り沙汰されているようです。

8年前のセウォル号沈没事故での対応のまずさの結果、朴政権が退陣を余儀無くされた一件が想起されるからです。


It’s not hard to find echoes between the killing of more than 150 people crushed in a Halloween crowd surge in Seoul on Saturday, and the deaths of more than 300 people, mainly high-school students, in the 2014 sinking of the Sewol ferry. In both cases, officialdom failed the nation’s youth, resulting in tragic, avoidable events on a scale that is scarcely imaginable. The public will demand answers. 
(Gearoid Reidy. Halloween Tragedy Is a Test For a Deeply Unpopular Leader. Bloomberg. November 1, 2022.)


引用した記事では、今回の雑踏事故とセウォル号沈没事故を並べて、


It’s not hard to find echoes between…


と書いています。

"echo"というのはご存知の通り、カタカナでも「エコー」、反響とか木霊という意味で、音の響きが返ってくることです。

この記事での"echo"は少し意味が違うように思われます。

少し日本語にし難いのですが、"echo"には模倣、繰り返しという意味があり、起きてはならないことがまた起きてしまった、というようなニュアンスが読み取れるように思います。

同じ記事では、タイトルに続いて以下のようなリード部分があり、ここでも"echo"という表現が使われています。


Echoes of a past disaster must inform South Korean President Yoon Suk Yeol’s response to the deaths of over 150 revelers in a crowd surge in Seoul. 
(ibid.)


以下はコーパスで見つけた用例です。


Conditions in America now are different, but there are echoes of the past. Suicide rates have been rising for 20 years, and have spiked over the past decade, especially in rural areas.
(Vanity Fair, 2019)


歴史は繰り返す、とよく言いますが、悲惨な事故や重大な事件の報道に接するとその思いを強くします。"echo"という単語、また"echos of the past"といった言い回しにそれを感じます。

"echo"(エコー)はギリシャ神話に出てくる妖精で、ナルキッソス(こちらも自惚の強い美男子として有名)に恋したという物語をご存知の方は多いと思います。

相手の言ったことを繰り返すことしかできないエコーですが、これはジュノーがお喋りのエコーに与えた罰によるもので、そのためにエコーはナルキッソスの呼び掛けに対しておうむ返しすることしか出来ず、ナルキッソスとは結ばれることなく、恋焦がれながらやつれ果てた、という話です。

"echo"は「繰り返し」ですが、それが届かなかった(理解されなかった)というこの話自体、やはり意味深長だとおもいますねぇ。

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