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2012年10月5日金曜日

思わず・・・ ― cannot help but~

ツイッターでNew York Post紙のタイムラインを読んでいましたら面白い記事がありました。

ちょっと下世話な内容なので恐縮ですが、取り上げる表現は真面目なので赦してください(笑)


Clinton checks out Christina's boobs

You might have expected this to be about Bill’s wondering gaze, but this time it was his wife Hilllary who took a cheeky glance at Christina Aguilera’s ample cleavage.

Secretary of State Clinton couldn’t help but take a look at the superstar’s bosom at the US Department of State as Aguilera, a UN World Food Programme Ambassador, was being honored on Wednesday.
(Clinton checks out Christina's boobs. New York Post. October 4, 2012.)


Hilary Clintonとありますのは説明するまでもなく、元アメリカ大統領のBill Clinton氏の夫人で、現在国務長官を務めるお方です。

一方、Christina Aguileraさんという方は全く知りませんが、"superstar"とありますので女優でしょうか?国連で食糧問題関係の大使をされているそうですが、とても豊かな胸をお持ちの方のようです。

それで、Hilary Clintonさんが思わずその胸に目が行ってしまった、というお話です。記事に証拠写真らしきスナップショットが出ています。

今日取り上げる表現は、


couldn't help but~


という、恐らく高校の英語で習う表現だと思いますが、覚えていますか?

"help"という動詞には、助ける、援助するという意味の他に、


抑える、こらえる、我慢する、控える


といった意味でも用いられ、教科書に決まって出てくるのが、


I couldn't help laughing.(こらえきれず笑ってしまった。)


という例文ではないでしょうか?教科書では、この意味での"help"は、"cannot", "couldn't"などの否定の助動詞と共に用いられ、"help"の後には動詞のing形が来る、と説明されているかと思います。

上記の引用では、"help"に続けて、"but"、そして動詞の原形が来ています。ランダムハウス英和辞書を見ると、”主に米話”とあり、アメリカ人の口語表現であることが分かります。

改めて"help"のエントリをざっと見たのですが、この意味での"help"の用法パターンにはいくつかあることが分かります。


cannot help ~ing
cannot help but do
cannot help something
cannot help oneself, and ~


などです。

ところでこれらの表現はどれも同じものなのでしょうか?それとも、場合によって使い分ける、つまり微妙な意味の差異があるのでしょうか?

ランダムハウス英和の説明や例文を見ているとどれも同じように思えましたが、ネット上をいろいろ検索していると、意味に差異があるのだというような興味深い考察も見られました。

1つ引用させていただきますと、こちらのサイトでは、"cannot help but"に続く動詞には制約があると説明しています。その制約とは、”「自然に生じる精神的,感情的反応(involuntary mental or emotional reaction)」を表すものに限られる”というものです.
一方、"cannot help ~ing"というパターンにおける動詞(~ing)にはそのような制約がないようです。なるほど、という感じがしました。

"involuntary mental or emotional reaction"という定義はこの表現の本質をよく捉えているように思われます。日本語にしてみれば、”思わず・・・してしまった”、という感じでしょうか。

"cannot help but~"、"cannot help ~ing"共に、”思わず・・・”の意味では使えるけれども、”~せざるを得ない”の意味で使えるのは、"cannot help ~ing"の方だけ、というのが上記の解説です。そして、”~せざるを得ない”の表現については、"have no choice but to~"で置き換えられると説明しています。

こんなテーマこそコーパスの出番と思い、COCAで、"help but"に続く単語を検索してみました。

そうしますと、"cannot help but"に続く動詞は、"involuntary mental or emotional reaction"であるような動詞に特に限らないのではないかとも思われました。そのような例が存在します。


"You used to have 28 different languages spoken there - Spanish, Italian, Chinese, Japanese, Greek, Yiddish, tongues from Eastern Europe and many others, " said Vigil. "Where I grew up, my best friends were Italians. You couldn't help but learn someone else's language."
(Denver Post. 1998.)


この例において、"couldn't help but learn"は、"had no choice but to learn"と置き換えることができると思います。

専門家の解説に異議を唱える愚は百も承知で、ちょっと調べてみました。

尤も、"cannot help but~"にしろ、"cannot help ~ing"にしろ、続く動詞としては、"involuntary mental or emotional reaction"である動詞が圧倒的に多いのが事実です。そうでない場合は、"have no choice but to"で代用できないか、ということを考えるべきでしょう。

したがって、この表現はやはり、”思わず・・・”ということなのだと結論する次第です。



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