否定文で強意表現になる単語、最終日の今日は、”fig”という単語を取り上げます。
研究社の新英和大辞典(第5版)には、”fig”は名詞として、イチジクという意味の他、ちっぽけな物、わずか、という意味があるとして、以下のような例文を載せています。
It isn’t worth a fig. 全然取るに足らない。
I would not give a fig for it. そんな物にびた一文でも出すものか(ばかばかしい)。
昨日取り上げた”sou”に似ていますけれども、”fig”の場合はそもそもイチジクという意味があるところ、何故、イチジクと取るに足らないというイメージが繋がるのかよく分かりませんね。イチジクはそれなりに大きいのではないかと思うからです。
イチジクを意味する”fig”には、相手を軽蔑する時にする仕草を指すこともあるようですが、このことと関係があるのかも知れません。
ところで、最初に取り上げた"fig”の用法には、”flying fig”というバリエーションもあるようです。
Who gives a flying fig about people who gossip?
(ABC Primetime, 2011)
この場合の"flying”は具体的な形容というよりも、”fig”のFと韻を踏んでアクセントを効かせる効果を持つというもののようです。
今週のテーマ、否定形による強意表現をこれで終わります。
2019年6月28日金曜日
2019年6月27日木曜日
否定形による強意表現(4) ― sou
この単語はほとんどお目にかかることがないのではないでしょうか。
"sou"というのは、お金の単位ですが、フランスの通貨の単位です。今でこそユーロ(euro)ですが、以前はフラン(franc)、そしてさらにその前がリーブル(livre)です。
そのリーブルの時代に、1リーブルの20分の1をソル("sol")と呼んでいたそうですが、そのソルを"sol"、または"sou"と言ったようです。
何でフランスの通貨単位が英単語に入ってきているんでしょうね?
この"sou"が否定の文脈で使われると、「一文無し」の意味になります。
He hasn't a sou.
(ランダムハウス英和)
"sou"に代わるものとしては多分誰でも知っているのが"penny"でしょう。やはり最小の通貨単位で、イギリスのポンドだとその100分の1、豪や米ドルの100分の1、を指します。
"penny"も否定のコンテクストでは強意的に用いられるのは言うまでもありません。
"sou"というのは、お金の単位ですが、フランスの通貨の単位です。今でこそユーロ(euro)ですが、以前はフラン(franc)、そしてさらにその前がリーブル(livre)です。
そのリーブルの時代に、1リーブルの20分の1をソル("sol")と呼んでいたそうですが、そのソルを"sol"、または"sou"と言ったようです。
何でフランスの通貨単位が英単語に入ってきているんでしょうね?
この"sou"が否定の文脈で使われると、「一文無し」の意味になります。
He hasn't a sou.
(ランダムハウス英和)
"sou"に代わるものとしては多分誰でも知っているのが"penny"でしょう。やはり最小の通貨単位で、イギリスのポンドだとその100分の1、豪や米ドルの100分の1、を指します。
"penny"も否定のコンテクストでは強意的に用いられるのは言うまでもありません。
2019年6月26日水曜日
否定形による強意表現(3) ― jot
今週は、"not a xxx of~"のパターンで使われることの多い、"xxx"に入る単語、便宜上、否定形で用いられる強意表現ということで特集しています。
3日目の今日は、
jot
という単語なんですが、これは昨日取り上げた"iota"と実は同じ単語の別の顔、といったところです。
語源欄を見ていただければ大抵の辞書に解説があるかと思いますが、"jot"もギリシャ語iotaに由来しているのです。
"jot"も、ごく少ない量、わずかな量の意味がありますので、"not a jot of~"のパターンで用いられます。
The sun creases around his eyes had deepened, additional touches of aging, though he seemed to have lost not a jot of his vitality.
(Anne MCCaffrey. All the Weyrs of Pern. 1991.)
"jot"には文字の点、「ポチ」という意味があり、敢えて言うならば"iota"よりも小さいかもしれません。
また、"not a xxx of ~"のパターンで使われるほか、副詞的にも用いられます。
And that's because it's not just the president and the congress, Americans don't care a jot about foreign policy.
(CBS, 2015)
ちなみに、また古典語の話になりますが、ラテン語においてはアルファベットのiとjの区別がありません。
3日目の今日は、
jot
という単語なんですが、これは昨日取り上げた"iota"と実は同じ単語の別の顔、といったところです。
語源欄を見ていただければ大抵の辞書に解説があるかと思いますが、"jot"もギリシャ語iotaに由来しているのです。
"jot"も、ごく少ない量、わずかな量の意味がありますので、"not a jot of~"のパターンで用いられます。
The sun creases around his eyes had deepened, additional touches of aging, though he seemed to have lost not a jot of his vitality.
(Anne MCCaffrey. All the Weyrs of Pern. 1991.)
"jot"には文字の点、「ポチ」という意味があり、敢えて言うならば"iota"よりも小さいかもしれません。
また、"not a xxx of ~"のパターンで使われるほか、副詞的にも用いられます。
And that's because it's not just the president and the congress, Americans don't care a jot about foreign policy.
(CBS, 2015)
ちなみに、また古典語の話になりますが、ラテン語においてはアルファベットのiとjの区別がありません。
2019年6月25日火曜日
否定形による強意表現(2) ― iota
今週は否定形で強意表現として用いられる表現を特集しています。
2日目の今日は、
iota
という単語です。
ギリシャ語をご存知の方ならすぐお分かりですが、"iota"はギリシャ語のアルファベットの9番目の文字で、ローマ字ではアイ(I、i)に相当するものです。(小生も大学時代、無謀にもギリシャ語のクラスを取りましたが、アルファベット以外の文法事項などはほとんど忘れてしまいました。というか、修得できませんでした・・・。)
"iota"の文字は(ローマ字のiもそうですが)、大きさ的にも文字の中では一番小さなものです。
従って、少量とか微量を意味するのですが、この"iota"が使われる場合はやはり否定文のコンテクストで、"not an iota of~"というパターンが多いのです。
Too much of the all-male leadership at the very top of the Beijing government "have not an iota of an idea about the women's rights movement, " says Wang Zheng, a longtime feminist activist in China and a professor at the University of Michigan.
(Newsweek, 2015)
また、"iota"の場合は、"iota"が文字だからでしょうか、"not an iota of~"と並んで、"not one iota of~"という表現もよく見られます。
"I don't think there was one iota of evidence against him at that hearing the other day," said Lyle, 68.
(Atalanta Journal Constitution, 2014)
2日目の今日は、
iota
という単語です。
ギリシャ語をご存知の方ならすぐお分かりですが、"iota"はギリシャ語のアルファベットの9番目の文字で、ローマ字ではアイ(I、i)に相当するものです。(小生も大学時代、無謀にもギリシャ語のクラスを取りましたが、アルファベット以外の文法事項などはほとんど忘れてしまいました。というか、修得できませんでした・・・。)
"iota"の文字は(ローマ字のiもそうですが)、大きさ的にも文字の中では一番小さなものです。
従って、少量とか微量を意味するのですが、この"iota"が使われる場合はやはり否定文のコンテクストで、"not an iota of~"というパターンが多いのです。
Too much of the all-male leadership at the very top of the Beijing government "have not an iota of an idea about the women's rights movement, " says Wang Zheng, a longtime feminist activist in China and a professor at the University of Michigan.
(Newsweek, 2015)
また、"iota"の場合は、"iota"が文字だからでしょうか、"not an iota of~"と並んで、"not one iota of~"という表現もよく見られます。
"I don't think there was one iota of evidence against him at that hearing the other day," said Lyle, 68.
(Atalanta Journal Constitution, 2014)
2019年6月24日月曜日
否定形による強意表現(1) ― scintilla
政治家や著名人が関係するセクハラスキャンダルの報道には、またか、と思うほどですが、引用します。
(CNN) — Cuba Gooding Jr. has been charged with forcible touching, a misdemeanor, and sex abuse in the third degree relating to an alleged groping incident last weekend in New York City.
Gooding voluntarily surrendered to the NYPD for questioning on Thursday and pleaded not guilty to the charges in a Manhattan court.
The actor was released on his own recognizance after the judge set the next court date for June 26.
(中略)
Gooding has been very cooperative with police and expects to be fully exonerated, his attorney, Mark Heller, said during a news conference.
"In my 50 years, almost, of practicing law, I have never seen a case like this one because there is not a scintilla of criminal culpability that can be attributed to Mr. Cuba Gooding Jr. after I have extensively, with my staff, reviewed the video of almost two hours which reflects the entire event for which we are here today," Heller told reporters.
(Cuba Gooding Jr. charged with forcible touching in alleged New York groping incident. CNN. June 14, 2019.)
訴えられているのは有名な男性俳優みたいですが、聞いたことのない名前です。内容はどうでも良いのですが、俳優の弁護士の発言に出てくる下記のような表現が目に留まりました。
there is not a scintilla of criminal culpability that can be attributed to Mr. Cuba Gooding Jr.
"scintilla"という単語は辞書で、火花という意味が載っていますが、否定文で用いられると、"not a scintilla of~"は「少しの~もない」というような意味合いで使われます。
つまり"not a scintilla of~"というフレーズでは、もはや火花といった具体的な意味はなくて、単に強意表現として用いられているものです。
英語にはこのような類の強意表現がいくつかありますが、今週はそれらの中から普段あまりお目にかかることが少ないと思われる、興味深いものを取り上げたいと思います。
お楽しみに!
(CNN) — Cuba Gooding Jr. has been charged with forcible touching, a misdemeanor, and sex abuse in the third degree relating to an alleged groping incident last weekend in New York City.
Gooding voluntarily surrendered to the NYPD for questioning on Thursday and pleaded not guilty to the charges in a Manhattan court.
The actor was released on his own recognizance after the judge set the next court date for June 26.
(中略)
Gooding has been very cooperative with police and expects to be fully exonerated, his attorney, Mark Heller, said during a news conference.
"In my 50 years, almost, of practicing law, I have never seen a case like this one because there is not a scintilla of criminal culpability that can be attributed to Mr. Cuba Gooding Jr. after I have extensively, with my staff, reviewed the video of almost two hours which reflects the entire event for which we are here today," Heller told reporters.
(Cuba Gooding Jr. charged with forcible touching in alleged New York groping incident. CNN. June 14, 2019.)
訴えられているのは有名な男性俳優みたいですが、聞いたことのない名前です。内容はどうでも良いのですが、俳優の弁護士の発言に出てくる下記のような表現が目に留まりました。
there is not a scintilla of criminal culpability that can be attributed to Mr. Cuba Gooding Jr.
"scintilla"という単語は辞書で、火花という意味が載っていますが、否定文で用いられると、"not a scintilla of~"は「少しの~もない」というような意味合いで使われます。
つまり"not a scintilla of~"というフレーズでは、もはや火花といった具体的な意味はなくて、単に強意表現として用いられているものです。
英語にはこのような類の強意表現がいくつかありますが、今週はそれらの中から普段あまりお目にかかることが少ないと思われる、興味深いものを取り上げたいと思います。
お楽しみに!
2019年6月21日金曜日
a tough nut to crack
グーグルがタブレット市場から撤退すると発表した模様です。
背景には、アップルのアイパッドという高級端末、一方では安価なアンドロイドOSのタブレット端末という競合の中で独自戦略を描けなかった、ということがあるようです。
The writing has been on the slate for some time now. Roughly this time last year, we reported that Google had wiped all tablet sales off its site. Turns out that was just a bug, but it seemed like an ominous portent of things to come.
Google still went ahead and launched the Pixel Slate late last year, hoping the device would give users a much-welcome form factor alternative to its high-end Pixel Book. Ultimately, however, the device felt redundant, and now it seems it will be the last of its kind. The company this week admitted that its hardware team is giving up the tablet ghost.
“For Google’s first-party hardware efforts, we’ll be focusing on Chrome OS laptops and will continue to support Pixel Slate,” the company said in statement sent to the press today, in response to earlier reports.
(中略)
Tablets have, of course, proven a tough nut to crack for practically every company that isn’t Apple. Google has taken numerous swings at the space, but never quite found its place in amongst the premium iPad or far cheaper Android/Chromebook alternatives.
(Brian Heater. Google says it’s not making any more tablets. Tech Crunch. June 21, 2019.)
引用した記事の後半に、
Tablets have, of course, proven a tough nut to crack for practically every company that isn’t Apple.
というくだりがありますが、"a tough nut to crack"は、難問題、難事業といった意味で使われます。
"a hard nut to crack"という場合もあるようですが、ここでの"nut"は多分食べ物のナッツのことを指しているのでしょう。
殻を割って食べたいところが硬すぎて割れず、食べさせてもらえない、というイメージでしょうか。
背景には、アップルのアイパッドという高級端末、一方では安価なアンドロイドOSのタブレット端末という競合の中で独自戦略を描けなかった、ということがあるようです。
The writing has been on the slate for some time now. Roughly this time last year, we reported that Google had wiped all tablet sales off its site. Turns out that was just a bug, but it seemed like an ominous portent of things to come.
Google still went ahead and launched the Pixel Slate late last year, hoping the device would give users a much-welcome form factor alternative to its high-end Pixel Book. Ultimately, however, the device felt redundant, and now it seems it will be the last of its kind. The company this week admitted that its hardware team is giving up the tablet ghost.
“For Google’s first-party hardware efforts, we’ll be focusing on Chrome OS laptops and will continue to support Pixel Slate,” the company said in statement sent to the press today, in response to earlier reports.
(中略)
Tablets have, of course, proven a tough nut to crack for practically every company that isn’t Apple. Google has taken numerous swings at the space, but never quite found its place in amongst the premium iPad or far cheaper Android/Chromebook alternatives.
(Brian Heater. Google says it’s not making any more tablets. Tech Crunch. June 21, 2019.)
引用した記事の後半に、
Tablets have, of course, proven a tough nut to crack for practically every company that isn’t Apple.
というくだりがありますが、"a tough nut to crack"は、難問題、難事業といった意味で使われます。
"a hard nut to crack"という場合もあるようですが、ここでの"nut"は多分食べ物のナッツのことを指しているのでしょう。
殻を割って食べたいところが硬すぎて割れず、食べさせてもらえない、というイメージでしょうか。
2019年6月20日木曜日
the writing on the wall
米中貿易摩擦は目下の国際ニュースのトップです。
先日もファーウェイ社のスマホの禁輸措置に関する記事を取り上げましたが、貿易摩擦というよりもTrade War(貿易戦争)とまで言われる米中の応酬は収まる気配がありません。
Giant Manufacturing Co. saw the writing on the wall early on. The world’s biggest bicycle maker started moving production of U.S.-bound orders out of its China facilities to its home base in Taiwan as soon as it heard Donald Trump threaten tariff action in September.
“When Trump announced the plan of 25% tariffs, we took it seriously,” Chairwoman Bonnie Tu said in an interview at Giant’s Taichung City headquarters in Taiwan. “We started moving before he shut his mouth.”
(Cindy Wang. World’s Top Bicycle Maker Says the Era of ‘Made in China’ Is Over. Bloomberg. June 18, 2019.)
引用した記事は、自転車好きの方なら多分よくご存知のジャイアント(Giant Manufacturing Co.)という会社に関するものです。
ジャイアントは台湾のメーカーだと私は知っていましたが、実際のところその製造拠点は中国にあったようですね。
同社はトランプ政権が関税引き上げを表明するや否や、その拠点を台湾に移したといいます。
何故かと言えば、
(the company) saw the writing on the wall early on
ということなのですが、早いうちから嫌な予感がしていたから、ということのようです。この"the writing on the wall"という表現をご存知でしょうか?
ランダムハウス英和には、
(特に失敗・災害の)前兆、兆し;悪運、凶運
と載っています。つまり、ジャイアントは米中摩擦の状況からして早い段階から不吉な予感がしていたということですね。
"the handwriting on the wall"とも使われることのあるこの表現、文字通りに訳すならば、「壁に書いたもの(文字)」となるのですが、どうやら由来は聖書にあるそうです。
旧約聖書のダニエル書には下記のようなストーリーがあるそうです。
王宮で酒池肉林の放蕩にふけるベルシャザールに、どこからともなく手が現れて壁に文字を書き残した。その意味が分からずにいたところ、ダニエルが解読した。その内容は、ベルシャザールとその王国が滅ぶことを予言する内容であった。ベルシャザールはその後まもなく殺された。
新共同訳を改めて読んでみたところ、ベルシャツァルという表記になっていましたが、「ベルシャザールの饗宴」という知られるこのエピソードは絵画作品やオラトリオなどの音楽作品テーマにもなっています。
ところで、壁に書かれた文字というのは、
mene, mene, tekel, upharsin
というもので、これはアラム語らしいのですが、同じくランダムハウス英和に載っています。(神がベルシャツァルを見離したというのが大意です。)
先日もファーウェイ社のスマホの禁輸措置に関する記事を取り上げましたが、貿易摩擦というよりもTrade War(貿易戦争)とまで言われる米中の応酬は収まる気配がありません。
Giant Manufacturing Co. saw the writing on the wall early on. The world’s biggest bicycle maker started moving production of U.S.-bound orders out of its China facilities to its home base in Taiwan as soon as it heard Donald Trump threaten tariff action in September.
“When Trump announced the plan of 25% tariffs, we took it seriously,” Chairwoman Bonnie Tu said in an interview at Giant’s Taichung City headquarters in Taiwan. “We started moving before he shut his mouth.”
(Cindy Wang. World’s Top Bicycle Maker Says the Era of ‘Made in China’ Is Over. Bloomberg. June 18, 2019.)
引用した記事は、自転車好きの方なら多分よくご存知のジャイアント(Giant Manufacturing Co.)という会社に関するものです。
ジャイアントは台湾のメーカーだと私は知っていましたが、実際のところその製造拠点は中国にあったようですね。
同社はトランプ政権が関税引き上げを表明するや否や、その拠点を台湾に移したといいます。
何故かと言えば、
(the company) saw the writing on the wall early on
ということなのですが、早いうちから嫌な予感がしていたから、ということのようです。この"the writing on the wall"という表現をご存知でしょうか?
ランダムハウス英和には、
(特に失敗・災害の)前兆、兆し;悪運、凶運
と載っています。つまり、ジャイアントは米中摩擦の状況からして早い段階から不吉な予感がしていたということですね。
"the handwriting on the wall"とも使われることのあるこの表現、文字通りに訳すならば、「壁に書いたもの(文字)」となるのですが、どうやら由来は聖書にあるそうです。
旧約聖書のダニエル書には下記のようなストーリーがあるそうです。
王宮で酒池肉林の放蕩にふけるベルシャザールに、どこからともなく手が現れて壁に文字を書き残した。その意味が分からずにいたところ、ダニエルが解読した。その内容は、ベルシャザールとその王国が滅ぶことを予言する内容であった。ベルシャザールはその後まもなく殺された。
新共同訳を改めて読んでみたところ、ベルシャツァルという表記になっていましたが、「ベルシャザールの饗宴」という知られるこのエピソードは絵画作品やオラトリオなどの音楽作品テーマにもなっています。
ところで、壁に書かれた文字というのは、
mene, mene, tekel, upharsin
というもので、これはアラム語らしいのですが、同じくランダムハウス英和に載っています。(神がベルシャツァルを見離したというのが大意です。)
2019年6月19日水曜日
末端価格 ― street value
フィラデルフィアの港湾に停泊中の船舶から、16トンにものぼるコカインが当局によって押収されました。
史上最大規模の押収となったようです。
(CNN) — Federal authorities seized about 16½ tons of cocaine Tuesday from a large ship at the Packer Marine Terminal in Philadelphia, prosecutors said.
Members of the ship's crew were arrested and federally charged. The investigation is ongoing, said a tweet form US Attorney's Office for the Eastern District of Pennsylvania.
It's the largest seizure in the district's history, the office said.
The drugs were found inside eight containers on a cargo ship, according to CNN affiliate WPVI.
A kilogram of cocaine sells for about $28,000, according to the UN Office on Drugs and Crime's 2016 estimate. At that price, sold by the kilo, the drugs would be worth more than $419 million.
The US Attorney's Office estimates the street value at more than $1 billion.
(Feds seize more than 16 tons of cocaine at Philadelphia terminal. CNN. June 18, 2019.)
コカインはキログラム当たり大体2万8千米ドルが相場ということですが、そうすると今回の押収量では4億米ドル(400億円以上!)に相当するものです。
そして、
The US Attorney's Office estimates the street value at more than $1 billion.
ということなのですが、この"street value"というのは、いわゆる麻薬の「末端価格」というやつですね。(つまり、10億米ドル以上、1000億円超!)
ランダムハウス英和辞書にはちゃんとエントリとして載っています。
史上最大規模の押収となったようです。
(CNN) — Federal authorities seized about 16½ tons of cocaine Tuesday from a large ship at the Packer Marine Terminal in Philadelphia, prosecutors said.
Members of the ship's crew were arrested and federally charged. The investigation is ongoing, said a tweet form US Attorney's Office for the Eastern District of Pennsylvania.
It's the largest seizure in the district's history, the office said.
The drugs were found inside eight containers on a cargo ship, according to CNN affiliate WPVI.
A kilogram of cocaine sells for about $28,000, according to the UN Office on Drugs and Crime's 2016 estimate. At that price, sold by the kilo, the drugs would be worth more than $419 million.
The US Attorney's Office estimates the street value at more than $1 billion.
(Feds seize more than 16 tons of cocaine at Philadelphia terminal. CNN. June 18, 2019.)
コカインはキログラム当たり大体2万8千米ドルが相場ということですが、そうすると今回の押収量では4億米ドル(400億円以上!)に相当するものです。
そして、
The US Attorney's Office estimates the street value at more than $1 billion.
ということなのですが、この"street value"というのは、いわゆる麻薬の「末端価格」というやつですね。(つまり、10億米ドル以上、1000億円超!)
ランダムハウス英和辞書にはちゃんとエントリとして載っています。
2019年6月18日火曜日
men in blue
“Men in black”ではありませんが、”Men in blue”で警察官の意味があるそうです。初めて知りました。
考えてみたら警察官は世界中どこも青みがかった色の制服を着ていますよね。
An NYPD sergeant was harassed by his brothers in blue because he’s Egyptian, he claims in a lawsuit.
Higher-ups at Staten Island’s 123rd Precinct allegedly harangued Kappa Farid, 54, for his Arabic accent, called him “sand monkey,” refused to let him speak at meetings and switched him to a midnight tour against his wishes — prompting his wife to ask for a divorce, according to the Brooklyn Federal Court lawsuit he filed against the city and the NYPD.
(Kathianne Boniello. Sergeant claims cops called him ‘sand monkey’ in lawsuit filed against NYPD. New York Post. June 16, 2019.)
引用した記事では、”brothers in blue”ですが、”gentlemen in blue”という場合もあるようです。
また、単に"the blues”で警官を意味するのはアメリカ英語のスラングだそうです。
実際の用例は確認出来ていませんが。
考えてみたら警察官は世界中どこも青みがかった色の制服を着ていますよね。
An NYPD sergeant was harassed by his brothers in blue because he’s Egyptian, he claims in a lawsuit.
Higher-ups at Staten Island’s 123rd Precinct allegedly harangued Kappa Farid, 54, for his Arabic accent, called him “sand monkey,” refused to let him speak at meetings and switched him to a midnight tour against his wishes — prompting his wife to ask for a divorce, according to the Brooklyn Federal Court lawsuit he filed against the city and the NYPD.
(Kathianne Boniello. Sergeant claims cops called him ‘sand monkey’ in lawsuit filed against NYPD. New York Post. June 16, 2019.)
引用した記事では、”brothers in blue”ですが、”gentlemen in blue”という場合もあるようです。
また、単に"the blues”で警官を意味するのはアメリカ英語のスラングだそうです。
実際の用例は確認出来ていませんが。
2019年6月17日月曜日
freeload
"freeload"、または"freeloader"という単語をご存知でしょうか?
アメリカ英語のスラングなのですが、いわゆる「たかり屋」のことを"freeloader"と言います。対価を払わずして、タダ(無料)でモノやサービスを得ようとする人たちのことです。
動詞の"freeload"は、"freeloader"からの逆成です。
(CNN) — Fed up with hearing from wannabe-Instagram "influencers" asking for free stuff in exchange for publicity, the owner of a beach club in the Philippines decided to take a stand.
In a caustic Facebook post calling for "help," Gianluca Casaccia, manager and co-owner of the White Banana Beach Club on the island of Siargao, went bananas at a whole section of the blogosphere.
"We are receiving many messages regarding collaborations with influencers, Instagram influencers," he wrote. "We kindly would like to announce that White Banana is not interested to 'collaborate' with self-proclaimed 'influencers'.
"And we would like to suggest to try another way to eat, drink, or sleep for free. Or try to actually work."
Casaccia, who is 40 and co-owns the club with his wife, Manila-born Gayle Villaluz, says his post was a "sarcastic and direct attempt" to discourage wannabe-influencers from messaging them asking for a free stay, free food and free drinks.
"These freeloaders would write 'Hi, I'm an influencer, we like your place, we're staying from xxx February to xxx February, we're three people, you provide food and drinks and we draft an Instagram post and we tag you on our story,'" Casaccia told CNN. "I think it's offensive. I initially thought they were trolling us."
(Gianluca Mezzofiore. Beach club owner rips into freeloading Instagram 'influencers.' CNN. April 6, 2019.)
ネット全盛時代の今日、YouTubeやフェースブック、インスタグラムなどのソーシャルメディアが人々の行動や購買意欲に与える影響が大きくなっています。
こうしたメディアを活用したメッセージ発信によって人々の購買行動に影響を与える、インフルエンサーと呼ばれるユーザーが出現しており、一部のインフルエンサーはそれによって生活収入も得るほどであるとも聞きます。
一方で、頼みもしないのに、勝手に商品やサービスを紹介し、その代りに無料のサービス提供を無心する輩(似非インフルエンサーとでも呼びましょうか)がいるということですから、厚顔無恥にも程があるというものです。
アメリカ英語のスラングなのですが、いわゆる「たかり屋」のことを"freeloader"と言います。対価を払わずして、タダ(無料)でモノやサービスを得ようとする人たちのことです。
動詞の"freeload"は、"freeloader"からの逆成です。
(CNN) — Fed up with hearing from wannabe-Instagram "influencers" asking for free stuff in exchange for publicity, the owner of a beach club in the Philippines decided to take a stand.
In a caustic Facebook post calling for "help," Gianluca Casaccia, manager and co-owner of the White Banana Beach Club on the island of Siargao, went bananas at a whole section of the blogosphere.
"We are receiving many messages regarding collaborations with influencers, Instagram influencers," he wrote. "We kindly would like to announce that White Banana is not interested to 'collaborate' with self-proclaimed 'influencers'.
"And we would like to suggest to try another way to eat, drink, or sleep for free. Or try to actually work."
Casaccia, who is 40 and co-owns the club with his wife, Manila-born Gayle Villaluz, says his post was a "sarcastic and direct attempt" to discourage wannabe-influencers from messaging them asking for a free stay, free food and free drinks.
"These freeloaders would write 'Hi, I'm an influencer, we like your place, we're staying from xxx February to xxx February, we're three people, you provide food and drinks and we draft an Instagram post and we tag you on our story,'" Casaccia told CNN. "I think it's offensive. I initially thought they were trolling us."
(Gianluca Mezzofiore. Beach club owner rips into freeloading Instagram 'influencers.' CNN. April 6, 2019.)
ネット全盛時代の今日、YouTubeやフェースブック、インスタグラムなどのソーシャルメディアが人々の行動や購買意欲に与える影響が大きくなっています。
こうしたメディアを活用したメッセージ発信によって人々の購買行動に影響を与える、インフルエンサーと呼ばれるユーザーが出現しており、一部のインフルエンサーはそれによって生活収入も得るほどであるとも聞きます。
一方で、頼みもしないのに、勝手に商品やサービスを紹介し、その代りに無料のサービス提供を無心する輩(似非インフルエンサーとでも呼びましょうか)がいるということですから、厚顔無恥にも程があるというものです。
2019年6月14日金曜日
cotton
記事の引用からどうぞ。
A school district employee at an Oregon elementary school has resigned after she told a group of noisy students that they were lucky they weren’t “picking cotton,” The Oregonian reports.
While she was supervising lunch at Linwood Elementary School on May 31, the instructional aide reprimanded a group of students, most of whom were students of color, for being too loud.
She reportedly made references to slave and manual labor, telling the kids she’d record them while acting out and show the clip to their parents at graduation, the paper reported. Then, she told them they should be grateful they weren’t “picking cotton and cleaning or painting a house.”
(Jessica Campisi. School worker resigns after telling black students they're lucky they weren't 'picking cotton.' The Hill. June 12, 2019.)
小学校の教諭が昼食時間中にやかましい生徒に放った一言が原因でクビになったという話です。
どういう発言だったのでしょうか?
女性教諭が放った言葉の、
they were lucky they weren’t “picking cotton,”
という部分が問題になったようです。
"picking cotton"は引用符で囲っているあたり、特別な意味がありそうです。直訳すれば、綿摘みをする、というところだと思われますが、この表現が問題になるのは、生徒たちが"students of color"、つまり黒人だったことにあります。
記事には出てきませんが、"cottonpicker"という単語は役立たずとか間抜けという意味があり、差別的な表現とされています。
また、"cotton-pickin'"という形容詞は、忌々しい、けしからん、といった強意のために使われる表現ですが、これは綿摘み労働が過酷な作業であることから来ているそうです。
いずれも、綿摘みという労働がかつての米南部では黒人奴隷に課せられていたことと関係がありそうです。
A school district employee at an Oregon elementary school has resigned after she told a group of noisy students that they were lucky they weren’t “picking cotton,” The Oregonian reports.
While she was supervising lunch at Linwood Elementary School on May 31, the instructional aide reprimanded a group of students, most of whom were students of color, for being too loud.
She reportedly made references to slave and manual labor, telling the kids she’d record them while acting out and show the clip to their parents at graduation, the paper reported. Then, she told them they should be grateful they weren’t “picking cotton and cleaning or painting a house.”
(Jessica Campisi. School worker resigns after telling black students they're lucky they weren't 'picking cotton.' The Hill. June 12, 2019.)
小学校の教諭が昼食時間中にやかましい生徒に放った一言が原因でクビになったという話です。
どういう発言だったのでしょうか?
女性教諭が放った言葉の、
they were lucky they weren’t “picking cotton,”
という部分が問題になったようです。
"picking cotton"は引用符で囲っているあたり、特別な意味がありそうです。直訳すれば、綿摘みをする、というところだと思われますが、この表現が問題になるのは、生徒たちが"students of color"、つまり黒人だったことにあります。
記事には出てきませんが、"cottonpicker"という単語は役立たずとか間抜けという意味があり、差別的な表現とされています。
また、"cotton-pickin'"という形容詞は、忌々しい、けしからん、といった強意のために使われる表現ですが、これは綿摘み労働が過酷な作業であることから来ているそうです。
いずれも、綿摘みという労働がかつての米南部では黒人奴隷に課せられていたことと関係がありそうです。
2019年6月13日木曜日
crisscross
記事の引用からどうぞ。
When new figures released last week showed a jarring rise in homelessness around Los Angeles, the response throughout Southern California was shock and indignation.
The reaction from the crowded field of Democratic presidential candidates: silence.
While White House hopefuls crisscross the country, making big promises on issues such as college debt relief, climate change and boosting the working and middle classes, they have largely ignored an issue — the soaring number of unsheltered Americans — that has reached a crisis point in communities on the West Coast and elsewhere.
(Homelessness is a crisis in California. Why are 2020 candidates mostly ignoring it? Los Angeles Times. June 10, 2019.)
先進国における貧困の話題です。アメリカではホームレスの人の数が増加しており、特にカリフォルニア州では突出しているそうですが、大統領選に名乗りを上げる政治家達にはこの問題に正面から取り組む様子が見られないとのことです。
今日取り上げる単語は、"crisscross"という単語です。再度引用すると、
White House hopefuls crisscross the country
という部分で"crisscross"は動詞として使われていますが、意味は「縦横に動く、移動する」という意味です。
政治家が遊説のために国中を走り回っている、アメリカだと飛行機で飛び回っているというイメージでしょうか。
単純に"cross"という部分から、十文字、つまり交差のイメージが浮かびます。
ところが興味深いことに、語源としては、"christcross"から来ている、という説明なんですね。"christ-"はキリストのことですね。
American Heritage Dictionaryの語源解説には以下のようにあります。
Alteration of Middle English Cristcrosse, mark of a cross, short for Cristcross (me speed), may Christ's cross (give me success).
解釈すると、"christcross"とは十字架のことで、"may Christ's cross"というお祈りの言葉から来ているんですね。どうかうまく行きますように、という願いです。
昔のアルファベットの教科書には最初に十字架のマークがあって、このお祈りの言葉を唱えてから学習に入ったとか。学業成就の願いが込められていたんですね。
こうしたいきさつは長い月日の中でいつしか失われてしまい、単に十文字のイメージだけが残ってしまったようです。ちなみに、そのスペルからreduplicativeの一種と誤って解釈されてもいます。
When new figures released last week showed a jarring rise in homelessness around Los Angeles, the response throughout Southern California was shock and indignation.
The reaction from the crowded field of Democratic presidential candidates: silence.
While White House hopefuls crisscross the country, making big promises on issues such as college debt relief, climate change and boosting the working and middle classes, they have largely ignored an issue — the soaring number of unsheltered Americans — that has reached a crisis point in communities on the West Coast and elsewhere.
(Homelessness is a crisis in California. Why are 2020 candidates mostly ignoring it? Los Angeles Times. June 10, 2019.)
先進国における貧困の話題です。アメリカではホームレスの人の数が増加しており、特にカリフォルニア州では突出しているそうですが、大統領選に名乗りを上げる政治家達にはこの問題に正面から取り組む様子が見られないとのことです。
今日取り上げる単語は、"crisscross"という単語です。再度引用すると、
White House hopefuls crisscross the country
という部分で"crisscross"は動詞として使われていますが、意味は「縦横に動く、移動する」という意味です。
政治家が遊説のために国中を走り回っている、アメリカだと飛行機で飛び回っているというイメージでしょうか。
単純に"cross"という部分から、十文字、つまり交差のイメージが浮かびます。
ところが興味深いことに、語源としては、"christcross"から来ている、という説明なんですね。"christ-"はキリストのことですね。
American Heritage Dictionaryの語源解説には以下のようにあります。
Alteration of Middle English Cristcrosse, mark of a cross, short for Cristcross (me speed), may Christ's cross (give me success).
解釈すると、"christcross"とは十字架のことで、"may Christ's cross"というお祈りの言葉から来ているんですね。どうかうまく行きますように、という願いです。
昔のアルファベットの教科書には最初に十字架のマークがあって、このお祈りの言葉を唱えてから学習に入ったとか。学業成就の願いが込められていたんですね。
こうしたいきさつは長い月日の中でいつしか失われてしまい、単に十文字のイメージだけが残ってしまったようです。ちなみに、そのスペルからreduplicativeの一種と誤って解釈されてもいます。
2019年6月12日水曜日
オムツ交換したことありますか? ー change
紙おむつメーカーのパンパースが男性用化粧室に5,000台のおむつ交換台を設置するという提案を行ったことが話題になっています。
赤ちゃんを育てる上では母親も父親も等しく役割を分担するという考えは浸透してきていると思いますが、男性化粧室におむつ交換台が無い、という状況はまだまだある、というのが背景にあるようです。
(CNN) — From the trunk of a car to the lid of a piano, dads sometimes have to get creative when it's time to change their child's diaper without a changing station.
Pampers says it's time that men's restrooms catch up with the responsibilities of modern fathers.
The company announced an initiative to install 5,000 changing tables in men's restrooms across the U.S. and Canada. The announcement accompanies Pampers' new ad campaign, which encourages fathers to share moments they bonded with their child during a diaper change.
Along with changing table company Koala Kare, they'll start in "high-need locations" first, providing tables in cities including Cincinnati, Dallas and Detroit, specifically in public spots like parks and libraries. Some 500 locations are set to receive their new tables within the next few weeks, the company said.
(Pampers pledges to install 5,000 baby changing tables in men's restrooms across the U.S. CNN. June 11, 2019.)
記事のタイトルで、
baby changing tables
と出てくるのですが、おむつ交換台のことを指しているのは明らかなんですが、何となく、赤ちゃん("baby")を交換する("changing")ためのテーブル("tables")のように読めてしまい、気になりました。
本文中も、
a changing station
changing table(s)
と出てきます。
そこで改めて、"change"を辞書で引いてみてびっくり!
"change"の動詞の意味として、おむつを交換する、というものがちゃんと載っているのです。
(ベッドの)カバー(敷布)を取り替える、(赤ん坊の)おむつを取り替える
(ランダムハウス英和辞書)
念の為、他の辞書も見てみました。
To put fresh clothes or coverings on
(American Heritage Dictionary)
To put fresh clothes or covering on
(Merriam-Webster Dictionary)
American Heritageに至っては、下記のような例文が添えられています。
It's your turn to change the baby.
"change the baby"とは、先に書いた私の感覚からすると赤ちゃんそのものを交換するようなイメージを彷彿させますが、英語を話すネイティヴとしては赤ちゃんの出てくるコンテクストで"change"とくれば、おむつ交換のことなのです。
赤ちゃんを育てる上では母親も父親も等しく役割を分担するという考えは浸透してきていると思いますが、男性化粧室におむつ交換台が無い、という状況はまだまだある、というのが背景にあるようです。
(CNN) — From the trunk of a car to the lid of a piano, dads sometimes have to get creative when it's time to change their child's diaper without a changing station.
Pampers says it's time that men's restrooms catch up with the responsibilities of modern fathers.
The company announced an initiative to install 5,000 changing tables in men's restrooms across the U.S. and Canada. The announcement accompanies Pampers' new ad campaign, which encourages fathers to share moments they bonded with their child during a diaper change.
Along with changing table company Koala Kare, they'll start in "high-need locations" first, providing tables in cities including Cincinnati, Dallas and Detroit, specifically in public spots like parks and libraries. Some 500 locations are set to receive their new tables within the next few weeks, the company said.
(Pampers pledges to install 5,000 baby changing tables in men's restrooms across the U.S. CNN. June 11, 2019.)
記事のタイトルで、
baby changing tables
と出てくるのですが、おむつ交換台のことを指しているのは明らかなんですが、何となく、赤ちゃん("baby")を交換する("changing")ためのテーブル("tables")のように読めてしまい、気になりました。
本文中も、
a changing station
changing table(s)
と出てきます。
そこで改めて、"change"を辞書で引いてみてびっくり!
"change"の動詞の意味として、おむつを交換する、というものがちゃんと載っているのです。
(ベッドの)カバー(敷布)を取り替える、(赤ん坊の)おむつを取り替える
(ランダムハウス英和辞書)
念の為、他の辞書も見てみました。
To put fresh clothes or coverings on
(American Heritage Dictionary)
To put fresh clothes or covering on
(Merriam-Webster Dictionary)
American Heritageに至っては、下記のような例文が添えられています。
It's your turn to change the baby.
"change the baby"とは、先に書いた私の感覚からすると赤ちゃんそのものを交換するようなイメージを彷彿させますが、英語を話すネイティヴとしては赤ちゃんの出てくるコンテクストで"change"とくれば、おむつ交換のことなのです。
2019年6月11日火曜日
moral vacuum
今日はヴァキューム(vacuum)という単語を取り上げたいと思います。掃除機の"vacuum”ですが、使われる意味合いが違ってきます。
まずは、トランプ政権から目の敵にされているスマホメーカーであるファーウェイに関するニュース記事から引用します。
Hong Kong(CNN) A Huawei executive was denounced as a "moral vacuum" in a heated UK parliamentary committee hearing Monday, as lawmakers repeatedly compared the Chinese technology company to Nazi Germany collaborators.
Huawei's global cybersecurity and privacy officer, John Suffolk, was asked multiple times by members of the Science and Technology Committee if the company had problems working with oppressive regimes.
Huawei is in contention to help build part of the UK's super-fast 5G network and has faced increased scrutiny by government and security services. The United States has been pushing hard for the company to be banned from critical infrastructure projects in Europe, claiming it presents an unacceptable security risk.
(Ben Westcott. Huawei executive labeled a 'moral vacuum' in heated UK hearing. CNN. June 11, 2019.)
5Gと呼ばれる新世代の高速ネットワークに強みがある同社ですが、中国共産党の息がかかっているとされる同社に、重要インフラを任せることにリスクがあるという見方が高まっており、アメリカはもとよりイギリスでも問題視されているようです。
冒頭の部分で、ファーウェイ社は、
moral vacuum
と貶され、ナチスドイツ時代の政権協力企業に例えられるほどだといいます。
この”vacuum”の意味合いがちょっとよく分からなかったので、改めて辞書を引いた次第です。
恐らく、モラル(倫理観)の「欠如」という程の意味であろうという想像はつくのですが、”vacuum”とは真空という意味が最初に出てきて、続いて、
空虚、空間、空所、空白
(研究社新英和大辞典)
とあります。添えられた例文は、いわゆる「心の空白」、空虚感、といった意味合いのもので、”moral vacuum”に相当するような意味合いは見られません。
こういう時はコーパスによる検索が勉強になります。似たような"vacuum”の用例を検索してみました。
As long as Assad is killing his own people without international accountability, extremists will continue to exploit the chaos and power vacuum to their benefit.
(Chicago Sun Times, 2017)
Yes, it's easy to get rid of a dictator like Saddam Hussein, but there's going to be a political vacuum. There will be instability.
(PBS Newshour, 2016)
日本語で「政治空白」などという表現がありますが、上に引用した、”power vacuum”や”political vacuum“はそれに近いものがあります。
次に引用する”security vacuum”も概念的には同じでしょうか。
In addition, civil wars in Libya and Syria placed massive arsenals of weapons into the hands of the militant groups, McCants said. " Before, they were fighting to oppose the U.S. presence in the region and overthrow governments. Now they are fighting to establish control of territory in a security vacuum."
(USA Today, 2014)
“moral vacuum”という表現も少なからず実例があります。
"Personally, I believe that human cloning raises deep concerns, given our cherished concepts of faith and humanity," Clinton said. "Scientific advancement does not occur in a moral vacuum.... We must move with caution, care and deep concern about the impact of our actions."
(Atlanta Journal Constitution, 1998)
“vacuum”という単語について言えば、ラテン語で”empty”を意味する形容詞vacuusに由来します。(中性形がvacuumです。)
今回取り上げたフレーズに見られる”vacuum”は本来あるべきもの、あってしかるべきものが無い、というような意味だと解釈されます。
まずは、トランプ政権から目の敵にされているスマホメーカーであるファーウェイに関するニュース記事から引用します。
Hong Kong(CNN) A Huawei executive was denounced as a "moral vacuum" in a heated UK parliamentary committee hearing Monday, as lawmakers repeatedly compared the Chinese technology company to Nazi Germany collaborators.
Huawei's global cybersecurity and privacy officer, John Suffolk, was asked multiple times by members of the Science and Technology Committee if the company had problems working with oppressive regimes.
Huawei is in contention to help build part of the UK's super-fast 5G network and has faced increased scrutiny by government and security services. The United States has been pushing hard for the company to be banned from critical infrastructure projects in Europe, claiming it presents an unacceptable security risk.
(Ben Westcott. Huawei executive labeled a 'moral vacuum' in heated UK hearing. CNN. June 11, 2019.)
5Gと呼ばれる新世代の高速ネットワークに強みがある同社ですが、中国共産党の息がかかっているとされる同社に、重要インフラを任せることにリスクがあるという見方が高まっており、アメリカはもとよりイギリスでも問題視されているようです。
冒頭の部分で、ファーウェイ社は、
moral vacuum
と貶され、ナチスドイツ時代の政権協力企業に例えられるほどだといいます。
この”vacuum”の意味合いがちょっとよく分からなかったので、改めて辞書を引いた次第です。
恐らく、モラル(倫理観)の「欠如」という程の意味であろうという想像はつくのですが、”vacuum”とは真空という意味が最初に出てきて、続いて、
空虚、空間、空所、空白
(研究社新英和大辞典)
とあります。添えられた例文は、いわゆる「心の空白」、空虚感、といった意味合いのもので、”moral vacuum”に相当するような意味合いは見られません。
こういう時はコーパスによる検索が勉強になります。似たような"vacuum”の用例を検索してみました。
As long as Assad is killing his own people without international accountability, extremists will continue to exploit the chaos and power vacuum to their benefit.
(Chicago Sun Times, 2017)
Yes, it's easy to get rid of a dictator like Saddam Hussein, but there's going to be a political vacuum. There will be instability.
(PBS Newshour, 2016)
日本語で「政治空白」などという表現がありますが、上に引用した、”power vacuum”や”political vacuum“はそれに近いものがあります。
次に引用する”security vacuum”も概念的には同じでしょうか。
In addition, civil wars in Libya and Syria placed massive arsenals of weapons into the hands of the militant groups, McCants said. " Before, they were fighting to oppose the U.S. presence in the region and overthrow governments. Now they are fighting to establish control of territory in a security vacuum."
(USA Today, 2014)
“moral vacuum”という表現も少なからず実例があります。
"Personally, I believe that human cloning raises deep concerns, given our cherished concepts of faith and humanity," Clinton said. "Scientific advancement does not occur in a moral vacuum.... We must move with caution, care and deep concern about the impact of our actions."
(Atlanta Journal Constitution, 1998)
“vacuum”という単語について言えば、ラテン語で”empty”を意味する形容詞vacuusに由来します。(中性形がvacuumです。)
今回取り上げたフレーズに見られる”vacuum”は本来あるべきもの、あってしかるべきものが無い、というような意味だと解釈されます。
2019年6月10日月曜日
sleazebag
米大統領トランプ氏の口汚さというのは今に始まったことではありませんが、前もこのブログで話題にしたことがありますけれども、同氏の発言やツイートはスラング辞書になるのではないかと思うほどです。
今日見たニュース記事では、"sleazebag"という表現が出てきました。
WASHINGTON — President Trump called Nixon’s White House Counsel John Dean a “sleazebag” in a tweet Sunday.
The president once again hammered Democrats for wanting a “Redo, or Do Over” on the heels of special counsel Robert Mueller’s investigation wrapping up.
House Judiciary Chairman Jerrold Nadler (D-N.Y.) is kicking off a series of Mueller-related hearings on Capitol Hill Monday with an appearance from Dean.
“They are even bringing in @CNN sleazebag attorney John Dean,” Trump commented. “Sorry, no Do Overs – Go back to work!” he told the Democrats.
Dean is a CNN contributor and has been critical of Trump.
(Nicki Schwab. Trump slams Watergate figure Dean as ‘sleazebag’ amid Dem testimony. New York Post. June 9, 2019.)
2016年のアメリカ大統領選を巡って、ロシアによる介入疑惑が取り沙汰されてきましたが、司法省の特命調査班による調査が終了し、いわゆるMuller Reportが公表されました。
レポートは公開されたものの黒塗りだらけで、民主党などの反発が高まっています。内容についてはよく分かりませんが、つまるところ大統領は「シロ」ということで、トランプ体制に反発する人達は批判を強めているものです。
民主党などは再調査を主張しているようですが、Muller氏に対する議会でのヒアリング開催も含めて、ニクソン大統領時代の法律顧問であったJohn Dean氏を起用して徹底追及を図る模様です。
トランプ氏が"sleazebag"呼ばわりしたのがこのJohn Dean氏で、大統領がフェイクニュースネットワークと揶揄するCNNでもトランプ氏に批判的な同氏に対して敵意をむき出しにしているようです。
"sleazebag"については、以前取り上げた"sleazy"という表現からも想像がつくように、中心的な意味は、下品、低劣、安っぽさ、というような意味合いです。
見下げた野郎、下品な奴、という訳です。
"sleazeball"という単語もあり、同じ意味合いで使われます。以前取り上げた、"slimeball"もご覧ください。
今日見たニュース記事では、"sleazebag"という表現が出てきました。
WASHINGTON — President Trump called Nixon’s White House Counsel John Dean a “sleazebag” in a tweet Sunday.
The president once again hammered Democrats for wanting a “Redo, or Do Over” on the heels of special counsel Robert Mueller’s investigation wrapping up.
House Judiciary Chairman Jerrold Nadler (D-N.Y.) is kicking off a series of Mueller-related hearings on Capitol Hill Monday with an appearance from Dean.
“They are even bringing in @CNN sleazebag attorney John Dean,” Trump commented. “Sorry, no Do Overs – Go back to work!” he told the Democrats.
Dean is a CNN contributor and has been critical of Trump.
(Nicki Schwab. Trump slams Watergate figure Dean as ‘sleazebag’ amid Dem testimony. New York Post. June 9, 2019.)
2016年のアメリカ大統領選を巡って、ロシアによる介入疑惑が取り沙汰されてきましたが、司法省の特命調査班による調査が終了し、いわゆるMuller Reportが公表されました。
レポートは公開されたものの黒塗りだらけで、民主党などの反発が高まっています。内容についてはよく分かりませんが、つまるところ大統領は「シロ」ということで、トランプ体制に反発する人達は批判を強めているものです。
民主党などは再調査を主張しているようですが、Muller氏に対する議会でのヒアリング開催も含めて、ニクソン大統領時代の法律顧問であったJohn Dean氏を起用して徹底追及を図る模様です。
トランプ氏が"sleazebag"呼ばわりしたのがこのJohn Dean氏で、大統領がフェイクニュースネットワークと揶揄するCNNでもトランプ氏に批判的な同氏に対して敵意をむき出しにしているようです。
"sleazebag"については、以前取り上げた"sleazy"という表現からも想像がつくように、中心的な意味は、下品、低劣、安っぽさ、というような意味合いです。
見下げた野郎、下品な奴、という訳です。
"sleazeball"という単語もあり、同じ意味合いで使われます。以前取り上げた、"slimeball"もご覧ください。
2019年6月7日金曜日
piggyback
“piggyback”という単語の意味をご存知でしょうか?
今日は答えを先に書いてしまいますが、いわゆる「おんぶ」のことです。
「おんぶに抱っこ」の「おんぶ」です。
Social media users are praising a young delivery worker for coming to the rescue of an elderly man struggling to cross a busy street this week.
The senior had slowly been making his way through a busy intersection in Singapore when the traffic light turned green.
Thankfully, a nearby DHL driver saw that the man had only made it halfway across the road, and he immediately pulled his van over to the side of the road and rushed to the old man’s side.
At first, the driver can be seen trying to help the man use his walker – but when they failed to make much progress, the driver simply gave the older man a piggyback ride to the other side of the street.
(When Senior Has Trouble Crossing Intersection, Delivery Driver Pulls Over and Offers Him Piggyback Ride. Goodnewsnetwork.org. May 17, 2019.)
なぜ、“piggy”なのでしょうか?豚(pig)と何の関係が?と思われるでしょう。
語源をチェックしてみると、“piggyback”と“pig”には何の関係もなく、“pickaback”(これはつまり背負うことを意味していると思われます)が変化して(訛って?)生まれたものだそうです。
“Pickaback”は“piggyback”と同じ意味で使われる単語として残っていますが、元々は“pick pack”、それが“pickback”、さらに“pickaback”と変化してきたもののようです。
今日は答えを先に書いてしまいますが、いわゆる「おんぶ」のことです。
「おんぶに抱っこ」の「おんぶ」です。
Social media users are praising a young delivery worker for coming to the rescue of an elderly man struggling to cross a busy street this week.
The senior had slowly been making his way through a busy intersection in Singapore when the traffic light turned green.
Thankfully, a nearby DHL driver saw that the man had only made it halfway across the road, and he immediately pulled his van over to the side of the road and rushed to the old man’s side.
At first, the driver can be seen trying to help the man use his walker – but when they failed to make much progress, the driver simply gave the older man a piggyback ride to the other side of the street.
(When Senior Has Trouble Crossing Intersection, Delivery Driver Pulls Over and Offers Him Piggyback Ride. Goodnewsnetwork.org. May 17, 2019.)
なぜ、“piggy”なのでしょうか?豚(pig)と何の関係が?と思われるでしょう。
語源をチェックしてみると、“piggyback”と“pig”には何の関係もなく、“pickaback”(これはつまり背負うことを意味していると思われます)が変化して(訛って?)生まれたものだそうです。
“Pickaback”は“piggyback”と同じ意味で使われる単語として残っていますが、元々は“pick pack”、それが“pickback”、さらに“pickaback”と変化してきたもののようです。
2019年6月6日木曜日
nasty
ご存知のように、令和最初の国賓として日本を訪問したトランプ米大統領はその後英国を訪問しました。
大統領はエリザベス女王にも謁見し、王室主催の晩餐会の様子などが報じられています。
ところで、ヘンリー王子と結婚して英王室入りしたメーガン妃については、元々トランプ氏に反感を持っていたそうで、トランプ氏が大統領選の候補だった頃から、同氏の女性蔑視的な発言などに嫌悪感を示していたと言われています。
メーガン妃は第一子の出産直後ということもあってか歓迎行事には一切参加せず、今回は大統領と直接会うことはなかったそうです。
メーガン妃が過去に大統領候補としてのトランプ氏に対して表明した嫌悪感について聞き及んだ大統領はメーガン妃のことを、不快な人間、と発言したそうです。
今回の訪英ではその発言が取り沙汰されました。
Donald Trump has attempted to clear up reports he called Meghan Markle “nasty” by... calling her nasty again.
In an interview for Good Morning Britain, Piers Morgan asked the president to clarify comments he made in an interview with The Sun in which he was told the Duchess of Sussex once said he was “misogynistic” and “divisive.”
Trump had told the paper: “I didn’t know that. What can I say? I didn’t know that she was nasty.”
(Chris York. Trump Explains ‘Nasty’ Meghan Markle Comment, But Basically Calls Her ‘Nasty’ Again. Huffington Post. June 5, 2019.)
「不快な人間」と便宜的に訳しましたが、英語は、
nasty
です。
ネイティヴではない私には"nasty"という単語が嫌悪感としてどれくらい強い意味合いなのかは想像するしかないのですが、相手に面と向かって、
You're nasty!
と言うことを考えると、強烈な表現であることは想像がつきます。
日本語には色々な表現に置き換えられると思われますが、例えば、
むかつく奴!
いけ好かない野郎!
不愉快な奴!
など、どれをとっても相手に対する侮辱的発言には違いありません。
トランプ氏は、メーガン妃に対して、「メーガン妃は"nasty"である」、と発言したことについてテレビのインタビューで問われたのですが、その回答がふるっていると思いました。
When asked by Morgan to explain the comments, Trump said: “They said some of the things that she said and It’s actually on tape. And I said: ‘Well, I didn’t know she was nasty.’
“I wasn’t referring to she’s nasty. I said she was nasty about me. And essentially I didn’t know she was nasty about me.”
When pressed again by Morgan to clarify what he said, Trump added: “She was nasty to me. And that’s OK for her to be nasty, it’s not good for me to be nasty to her and I wasn’t.”
(ibid.)
大統領の回答は、「メーガン妃が"nasty"である」(”she’s nasty”)とは言っていない、
she was nasty about me
と言った積もりだ、ということなのです。
"she was nasty about me"だとニュアンス的には、彼女は私に対して意地悪だ、邪険な感じだ、というくらいの意味になるかと思います。
形容詞の"nasty"が主語であるメーガン妃を修飾するのではなく、"about me"という目的語を持ち出して、トランプ氏を修飾したことになっています。
うまい!というか、姑息な説明のようにも思われました。
ところで、”nasty”という単語の語源は諸説あるようですが不詳とされています。
大統領はエリザベス女王にも謁見し、王室主催の晩餐会の様子などが報じられています。
ところで、ヘンリー王子と結婚して英王室入りしたメーガン妃については、元々トランプ氏に反感を持っていたそうで、トランプ氏が大統領選の候補だった頃から、同氏の女性蔑視的な発言などに嫌悪感を示していたと言われています。
メーガン妃は第一子の出産直後ということもあってか歓迎行事には一切参加せず、今回は大統領と直接会うことはなかったそうです。
メーガン妃が過去に大統領候補としてのトランプ氏に対して表明した嫌悪感について聞き及んだ大統領はメーガン妃のことを、不快な人間、と発言したそうです。
今回の訪英ではその発言が取り沙汰されました。
Donald Trump has attempted to clear up reports he called Meghan Markle “nasty” by... calling her nasty again.
In an interview for Good Morning Britain, Piers Morgan asked the president to clarify comments he made in an interview with The Sun in which he was told the Duchess of Sussex once said he was “misogynistic” and “divisive.”
Trump had told the paper: “I didn’t know that. What can I say? I didn’t know that she was nasty.”
(Chris York. Trump Explains ‘Nasty’ Meghan Markle Comment, But Basically Calls Her ‘Nasty’ Again. Huffington Post. June 5, 2019.)
「不快な人間」と便宜的に訳しましたが、英語は、
nasty
です。
ネイティヴではない私には"nasty"という単語が嫌悪感としてどれくらい強い意味合いなのかは想像するしかないのですが、相手に面と向かって、
You're nasty!
と言うことを考えると、強烈な表現であることは想像がつきます。
日本語には色々な表現に置き換えられると思われますが、例えば、
むかつく奴!
いけ好かない野郎!
不愉快な奴!
など、どれをとっても相手に対する侮辱的発言には違いありません。
トランプ氏は、メーガン妃に対して、「メーガン妃は"nasty"である」、と発言したことについてテレビのインタビューで問われたのですが、その回答がふるっていると思いました。
When asked by Morgan to explain the comments, Trump said: “They said some of the things that she said and It’s actually on tape. And I said: ‘Well, I didn’t know she was nasty.’
“I wasn’t referring to she’s nasty. I said she was nasty about me. And essentially I didn’t know she was nasty about me.”
When pressed again by Morgan to clarify what he said, Trump added: “She was nasty to me. And that’s OK for her to be nasty, it’s not good for me to be nasty to her and I wasn’t.”
(ibid.)
大統領の回答は、「メーガン妃が"nasty"である」(”she’s nasty”)とは言っていない、
she was nasty about me
と言った積もりだ、ということなのです。
"she was nasty about me"だとニュアンス的には、彼女は私に対して意地悪だ、邪険な感じだ、というくらいの意味になるかと思います。
形容詞の"nasty"が主語であるメーガン妃を修飾するのではなく、"about me"という目的語を持ち出して、トランプ氏を修飾したことになっています。
うまい!というか、姑息な説明のようにも思われました。
ところで、”nasty”という単語の語源は諸説あるようですが不詳とされています。
2019年6月5日水曜日
pine
今日の単語は"pine"です。
といっても、パイナップル(pineapple)の「パイン」ではありません。
Millennials pine for lunch breaks
Can you miss something that was never yours in the first place? This isn’t the opening to my terrible romance novel; it’s a question related to lunch breaks. A new survey commissioned by napkin company Tork found Millennials feel much less comfortable than other generations in taking lunch breaks, but that Millennials also yearn for them more than other generations. Just how badly do they want lunch breaks? 16% of Millennials would take a 10% pay cut so they could take a lunch break every day, which is double the percentage of Gen X workers.
As a Millennial myself, I’ve never worked in an office where I took regular lunch breaks. They weren’t ever prohibited, but when you see that the corporate culture involves everyone eating burritos hunched over keyboards, well, it’s bold to be the person who leaves to eat sushi for an hour every day.
(Kate Bernot. Millennials pine for lunch breaks. TheTakeout.com. June 5, 2019.)
引用した記事のタイトルで使われている"pine"は"pine for~"となっていますが、動詞です。
果物のパイナップル、あるいは松の"pine"とは全く別の単語で、切望する、という意味です。
全く別の単語、と書きましたが、語源を見てみましょう。
今日取り上げる動詞の"pine"は、ラテン語で罰を意味するpoenaから来ています。"punish"や"penalty"といったよくご存知の単語もこのラテン語から来ています。
ゲルマン語系に入ってくる過程において、罰という意味から、その罰がもたらす苦痛という意味、さらに、苦しめる、という意味に変容してきたようです。
苦しくなるほどに焦がれる、求める、という意味です。
さて、単語をネタとした話はここまでなのですが、記事の内容は興味深いものがあります。
ミレニアル世代と呼ばれる若い人たちの間には、職場で昼食休憩を取らない傾向があるそうです。ランチは取るのですが、食べながら仕事をしているというのが実態だそうで、その背景には昼食休憩をまるまる1時間も取ることで周りから怠け者と見られる恐怖感があるといいます。
日本と欧米の労働環境や就業規則、文化に違いがあることは分かっていますが、日本人の中には昼食休憩をまるまる1時間取ることの罪悪感はないのではないでしょうか。
昼食休憩は休憩時間であり、本来は労働してはならないという考え方であると理解しています。
この記事を読んで思い出したのが、喫煙者が離席することについての議論です。1日5分~10分を離席して喫煙する人たちは、非喫煙者よりも多くの「休憩時間」を享受している、という見方がありますね。
といっても、パイナップル(pineapple)の「パイン」ではありません。
Millennials pine for lunch breaks
Can you miss something that was never yours in the first place? This isn’t the opening to my terrible romance novel; it’s a question related to lunch breaks. A new survey commissioned by napkin company Tork found Millennials feel much less comfortable than other generations in taking lunch breaks, but that Millennials also yearn for them more than other generations. Just how badly do they want lunch breaks? 16% of Millennials would take a 10% pay cut so they could take a lunch break every day, which is double the percentage of Gen X workers.
As a Millennial myself, I’ve never worked in an office where I took regular lunch breaks. They weren’t ever prohibited, but when you see that the corporate culture involves everyone eating burritos hunched over keyboards, well, it’s bold to be the person who leaves to eat sushi for an hour every day.
(Kate Bernot. Millennials pine for lunch breaks. TheTakeout.com. June 5, 2019.)
引用した記事のタイトルで使われている"pine"は"pine for~"となっていますが、動詞です。
果物のパイナップル、あるいは松の"pine"とは全く別の単語で、切望する、という意味です。
全く別の単語、と書きましたが、語源を見てみましょう。
今日取り上げる動詞の"pine"は、ラテン語で罰を意味するpoenaから来ています。"punish"や"penalty"といったよくご存知の単語もこのラテン語から来ています。
ゲルマン語系に入ってくる過程において、罰という意味から、その罰がもたらす苦痛という意味、さらに、苦しめる、という意味に変容してきたようです。
苦しくなるほどに焦がれる、求める、という意味です。
さて、単語をネタとした話はここまでなのですが、記事の内容は興味深いものがあります。
ミレニアル世代と呼ばれる若い人たちの間には、職場で昼食休憩を取らない傾向があるそうです。ランチは取るのですが、食べながら仕事をしているというのが実態だそうで、その背景には昼食休憩をまるまる1時間も取ることで周りから怠け者と見られる恐怖感があるといいます。
日本と欧米の労働環境や就業規則、文化に違いがあることは分かっていますが、日本人の中には昼食休憩をまるまる1時間取ることの罪悪感はないのではないでしょうか。
昼食休憩は休憩時間であり、本来は労働してはならないという考え方であると理解しています。
この記事を読んで思い出したのが、喫煙者が離席することについての議論です。1日5分~10分を離席して喫煙する人たちは、非喫煙者よりも多くの「休憩時間」を享受している、という見方がありますね。
2019年6月4日火曜日
lampoon
メキシコの麻薬王との異名を持つEl Chapo、ことJoaquin Guzman容疑者は3度目の逮捕以降、塀の中にありますが、最近の報道では母親の面会が認められたというようなものがありました。
一方で、2度に渡って脱走した容疑者に対しては最大級の監視体制が敷かれており、独房外で体操したいといった要求は却下された模様です。
Joaquin “El Chapo” Guzman won’t be breathing fresh air anytime soon, a judge has ruled.
Brooklyn federal court Judge Brian Cogan sided with prosecutors in his Monday decision, lampooning Guzman’s hopes for outdoor exercise and other prison comforts, such as earplugs and bottled water.
“Defendant’s conditions of confinement are tailored to his specific history, including two prior prison escapes, and his specific crimes, including previously running the Sinaloa Cartel from prison and engaging in multiple murder conspiracies to kill his enemies,” Cogan writes.
The 62-year-old drug kingpin previously requested outdoor exercise, bottled water, access to the general commissary and earplugs — complaining he’d been forced to stuff toilet paper in his ears
(Emily Saul. El Chapo’s hopes of breathing fresh air squashed by judge. New York Post. June 3, 2019.)
記事の中で、
lampooning Guzman’s hopes for outdoor exercise and other prison comforts, such as earplugs and bottled water
という部分がありますが、この”lampoon”という単語をご存知でしょうか。
辞書を引くと、
嘲る、皮肉る
という意味があります。動詞、また名詞としても用いられますが、風刺、皮肉というのが主な意味です。
この単語の語源が興味深いのですが、フランス語に由来するという説明があります。ランダムハウス英和辞書によると、フランス語のlamponsは「がぶがぶ飲もう」という、動詞の一人称複数形であり、酒宴の歌の一節だということです。
酒をたくさん飲むことがどのように皮肉、あるいは風刺という意味に発展したのかの詳しい解説はなく、他の辞書も当たりましたが同じような説明に終始しているようでした。
サラリーマンの酒の席は会社や組織の批判や上役への不満をぶちまける機会と相場が決まっていますが、アルコールに頼ることでしか皮肉や風刺を口にすることができないのは今も昔も同じだったのかもしれません。
ところで、私は手元にあるロワイヤル仏和辞典を引いてみたのですが、フランス語の動詞laperは、
(犬や猫などが)舌を鳴らして飲む
という意味で載っていました。また、この動詞が名詞化したlapementとは、
舌を鳴らして飲むこと;ぺちゃぺちゃいう音
ということで、一概に「飲む」とは言ってもあまりお行儀の良い飲み方ではなさそうです。
一方で、2度に渡って脱走した容疑者に対しては最大級の監視体制が敷かれており、独房外で体操したいといった要求は却下された模様です。
Joaquin “El Chapo” Guzman won’t be breathing fresh air anytime soon, a judge has ruled.
Brooklyn federal court Judge Brian Cogan sided with prosecutors in his Monday decision, lampooning Guzman’s hopes for outdoor exercise and other prison comforts, such as earplugs and bottled water.
“Defendant’s conditions of confinement are tailored to his specific history, including two prior prison escapes, and his specific crimes, including previously running the Sinaloa Cartel from prison and engaging in multiple murder conspiracies to kill his enemies,” Cogan writes.
The 62-year-old drug kingpin previously requested outdoor exercise, bottled water, access to the general commissary and earplugs — complaining he’d been forced to stuff toilet paper in his ears
(Emily Saul. El Chapo’s hopes of breathing fresh air squashed by judge. New York Post. June 3, 2019.)
記事の中で、
lampooning Guzman’s hopes for outdoor exercise and other prison comforts, such as earplugs and bottled water
という部分がありますが、この”lampoon”という単語をご存知でしょうか。
辞書を引くと、
嘲る、皮肉る
という意味があります。動詞、また名詞としても用いられますが、風刺、皮肉というのが主な意味です。
この単語の語源が興味深いのですが、フランス語に由来するという説明があります。ランダムハウス英和辞書によると、フランス語のlamponsは「がぶがぶ飲もう」という、動詞の一人称複数形であり、酒宴の歌の一節だということです。
酒をたくさん飲むことがどのように皮肉、あるいは風刺という意味に発展したのかの詳しい解説はなく、他の辞書も当たりましたが同じような説明に終始しているようでした。
サラリーマンの酒の席は会社や組織の批判や上役への不満をぶちまける機会と相場が決まっていますが、アルコールに頼ることでしか皮肉や風刺を口にすることができないのは今も昔も同じだったのかもしれません。
ところで、私は手元にあるロワイヤル仏和辞典を引いてみたのですが、フランス語の動詞laperは、
(犬や猫などが)舌を鳴らして飲む
という意味で載っていました。また、この動詞が名詞化したlapementとは、
舌を鳴らして飲むこと;ぺちゃぺちゃいう音
ということで、一概に「飲む」とは言ってもあまりお行儀の良い飲み方ではなさそうです。
2019年6月3日月曜日
kneecap
中国のスマホメーカーであるファーウェイはトランプ政権のアメリカから目の敵にされていますが、実際のところファーウェイ製品が禁制品になることで諸外国に影響が出ているという話があります。
Trump’s Huawei Problem: Asia Doesn’t Want U.S. to Kneecap China
Smoking cigarettes at Singapore’s Shangri-La Hotel, the site of Asia’s most prominent annual defense forum, members of China’s military found themselves surprisingly upbeat this weekend.
They expected the event to follow a typical routine: The U.S. and its friends gang up on China, leaving it alone to push back against a host of complaints. But this year, with an escalating trade war threatening global growth, the People’s Liberation Army officers saw other Asian leaders critiquing key aspects of the Trump administration’s attacks on China.
Singapore Prime Minister Lee Hsien Loong set the tone in his opening remarks, calling on the U.S. to accommodate China’s rise while downplaying the threat posed by Huawei Technologies Co. A Myanmar minister suggested U.S. warnings about China’s debt-trap diplomacy were overblown. And nearly everyone wanted the trade war to end.
(Trump’s Huawei Problem: Asia Doesn’t Want U.S. to Kneecap China. Bloomberg. June 2, 2019.)
中国と米国という2大国が衝突することで、周辺の小国は迷惑するという構図です。米中双方が互いに高い関税を課す応酬が高じると、生産拠点や部品などを提供している側にも影響が及ぶことを避けられません。
Fears are growing throughout Asia that a clash of superpowers will end up hurting smaller nations, many of which rely on exports to fuel the economic growth that provides jobs for millions of people. And while many Asian countries view the U.S. as an essential check on China’s power, they are also wary that President Donald Trump is going too far in trying to halt its rise.
(ibid.)
記事のタイトルで、
kneecap
という単語が使われています。医学用語としては、膝蓋骨(いわゆる膝のお皿のこと)を指します。"knee"(膝)の"cap"(覆い)ということで、膝当ての意味もありますが、ここでの意味は、膝を狙い撃ちする、というものです。
膝を攻撃されるとひどい場合には歩けなくなってしまいます。敵の動きを封じるために膝を攻撃するということで、(人の)影響力を奪う、というような意味で用いられるようです。
警官が凶悪犯の脚を狙って発砲するのも、いわゆる"kneecapping"と呼ばれるようです。
The largest number of the victims in the sample -- 40 percent -- were struck in the legs and buttocks. Police theorize that these are retaliatory shootings, the current version of kneecapping, in which the assailant meant to warn -- but not kill -- the target. Officers note also that most of the gunmen out there are not very good shots and that many of the wounds may be caused by bullets that hit the pavement and ricochet into the victims' legs.
(Washington Post, 1990)
Trump’s Huawei Problem: Asia Doesn’t Want U.S. to Kneecap China
Smoking cigarettes at Singapore’s Shangri-La Hotel, the site of Asia’s most prominent annual defense forum, members of China’s military found themselves surprisingly upbeat this weekend.
They expected the event to follow a typical routine: The U.S. and its friends gang up on China, leaving it alone to push back against a host of complaints. But this year, with an escalating trade war threatening global growth, the People’s Liberation Army officers saw other Asian leaders critiquing key aspects of the Trump administration’s attacks on China.
Singapore Prime Minister Lee Hsien Loong set the tone in his opening remarks, calling on the U.S. to accommodate China’s rise while downplaying the threat posed by Huawei Technologies Co. A Myanmar minister suggested U.S. warnings about China’s debt-trap diplomacy were overblown. And nearly everyone wanted the trade war to end.
(Trump’s Huawei Problem: Asia Doesn’t Want U.S. to Kneecap China. Bloomberg. June 2, 2019.)
中国と米国という2大国が衝突することで、周辺の小国は迷惑するという構図です。米中双方が互いに高い関税を課す応酬が高じると、生産拠点や部品などを提供している側にも影響が及ぶことを避けられません。
Fears are growing throughout Asia that a clash of superpowers will end up hurting smaller nations, many of which rely on exports to fuel the economic growth that provides jobs for millions of people. And while many Asian countries view the U.S. as an essential check on China’s power, they are also wary that President Donald Trump is going too far in trying to halt its rise.
(ibid.)
記事のタイトルで、
kneecap
という単語が使われています。医学用語としては、膝蓋骨(いわゆる膝のお皿のこと)を指します。"knee"(膝)の"cap"(覆い)ということで、膝当ての意味もありますが、ここでの意味は、膝を狙い撃ちする、というものです。
膝を攻撃されるとひどい場合には歩けなくなってしまいます。敵の動きを封じるために膝を攻撃するということで、(人の)影響力を奪う、というような意味で用いられるようです。
警官が凶悪犯の脚を狙って発砲するのも、いわゆる"kneecapping"と呼ばれるようです。
The largest number of the victims in the sample -- 40 percent -- were struck in the legs and buttocks. Police theorize that these are retaliatory shootings, the current version of kneecapping, in which the assailant meant to warn -- but not kill -- the target. Officers note also that most of the gunmen out there are not very good shots and that many of the wounds may be caused by bullets that hit the pavement and ricochet into the victims' legs.
(Washington Post, 1990)
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