米政府が借金することができる金額には上限が設定されているところ、その上限に近づいている状況なのですが、それを超えてしまうと、それ以上の借金(国債発行)ができなくなり、債務不履行(デフォルト)に陥るというシナリオが待っています。
つまり、資金繰りが間に合わなくなり、政府機能が停止してしまう危険性をはらんでいるもので、これを回避すべく債務上限の引き上げが計画されていました。
引き上げようとする民主党に対し、野党の共和党は拒否姿勢を示すという構図が続いていました。
今日のニュース記事では、共和党が歩み寄り(?)を見せたようですが、それに対しホワイトハウスは・・・。
The White House on Wednesday gave a chilly reception to an offer from Senate Minority Leader Mitch McConnell (R-Ky.) to raise the debt limit for two months to avoid a potential economic crisis.
Press secretary Jen Psaki briefed reporters at the same time some Democratic senators signaled they would accept McConnell's offer. But Psaki argued a more immediate, long-term solution to raise the debt ceiling would be preferable to what few details were available about the compromise.
"We could get this done today. We don't need to kick the can. We don't need to go through a cumbersome process that every day brings additional risks," Psaki said.
(Brett Samuels. White House cool to McConnell debt ceiling offer: 'We don't need to kick the can.' The Hill. October 6, 2021.)
共和党のMcConnell上院議員が、2か月間の債務上限引き上げという提案を行ったそうですが、これに対しホワイトハウスのサキ報道官は否定的な見解で、
We don't need to kick the can.
と発言したと報じられています。
この"kick the can"というフレーズを知りませんでした。(ちなみに、"kick the bucket"とは違います。)
手元の辞書には載っていなかったのですが、続く部分に以下のようなくだりがあり、
"If we're looking at the best options, why kick the can down the road a couple more weeks? Why create an additional layer of uncertainty? Why not just get it done now? That's what we're continuing to press for, and that's our first choice."
(ibid.)
このフレーズは"kick the can down the road"とも表現されることが分かります。
コンテクストからイメージが付くと思いますが、このフレーズの意味するところは、問題や課題解決を先延ばしにする、というものです。
ネット検索で見つけたMacmillan Dictionaryでは以下のように定義されているのですが、例文がまさに今日取り上げた記事にマッチしていますね。
to delay dealing with a serious problem in the hope that it will go away
You can’t solve a debt problem with more debt. That’s just kicking the can down the road.
このフレーズの由来についてもう少し調べてみました。Merriam-Webster Dictionaryによれば、「缶蹴り」遊びから来ているとの説明がありました。
昭和生まれの人なら(!?)、缶蹴りを知っているでしょう。
かくれんぼ遊びの一種ですが、鬼に見つかってしまった仲間を助ける方法は、鬼より早く缶を蹴っ飛ばすことです。缶を蹴っ飛ばすことに成功したら、鬼に捕まった仲間は「解放」されるというルールです。
缶蹴り遊びのルールの解釈が発展して、「缶を蹴る」ことが窮状からの一時的解放、というようなコンテクストで使われるようになった、と解説されています。
Then around the mid-1980s a new phrase began to be heard in the U.S. Congress. To “kick the can down the road” became, in the rhetoric of some lawmakers, a colorful and mildly critical new way of referring to putting off work on an issue for a later date.
なお、Merriam-Websterの解説では由来についてもう一つ別の説に触れています。
Another possible scenario: You see a can discarded in the street near your house and kick it over toward your neighbor’s, thus making it his or her responsibility to pick it up (boo).
こちらは、自宅の敷地に転がっている缶を見つけて、隣の敷地に蹴飛ばすというイメージです。自分で拾ってゴミ箱に捨ててしまえばそれで済む話ですが、他人が始末するように仕向ける、すなわち一時的に面倒なことを回避する、ということですね。
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