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2022年9月29日木曜日

fascism/fascist

イギリスで女性首相が誕生したと思ったら、今度はイタリアでも女性首相が誕生しました。新首相ジョルジャ・メローニ氏が党首を務める「イタリアの同胞」(Fratelli d’Italia; Brother of Italy)は極右政党とされ、かつてムッソリーニが率いたファシスト党の流れを汲むものと言われています。

新首相をムッソリーニと重ね合わせる報道も目にします。


Italy, wrote the situationist philosopher Guy Debord in 1968, “sums up the social contradictions of the entire world”. As such, it was a “laboratory for international counter-revolution”.

Political analysts the world over are now busy parsing Giorgia Meloni’s statements to determine if she is a fascist, a neofascist or a post-fascist. Why, they ask, are Italians seemingly willing to consider a return to the politics of their country’s darkest hour?

But is Italy really dealing with the resurrection of its fascist past? And, more important, is Italy a laboratory whose experiment the rest of the world could eventually follow? The answers, respectively, are: no and (therefore) yes.
(Lorenzo Marsili. Italy’s Giorgia Meloni is no Mussolini – but she may be a Trump. The Guardian. September 28, 2022.)


今日は、"fascist"、また"fascism"という単語を取り上げたいと思います。

先述したように、第二次世界大戦前の1922年にイタリアでムッソリーニを党首とするファシスト党が政権を掌握したことから、"fascism"という単語が独裁者による全体主義的な政治体制を意味することは周知の通りです。

ところで、この"fascism"という単語は語源を辿るとラテン語fascisに遡るのですが、その意味は、


束(たば)


という、ファシズムの過激さとは縁も無いように思える、何とも他愛のないものです。

このラテン語はイタリア語fascioにつながりますが、そのイタリア語も団体、グループ、という意味です。「束」から「グループ」の意味の発展は自然に思われます。

1914年、イタリアに、


Fascio rivoluzionario d’ azione internazionalista


という政治団体が誕生しますが、Fascio〜、は単に〜グループ、という名称に過ぎません。この政治団体のメンバーは、イタリア語でFascista(複数形Fascisti)と呼ばれました。

ムッソリーニが1919年に結成した、ファシスト党の前身Fasci di CombattimentoもFascio〜ですが(FasciはFascioの複数形)、Fascista(Fascisti)という言葉のきっかけとなった1914年結成の政治団体とは直接の関係は無いと言われています。(Merriam-Webster Onlineによる。)

つまり、語源的には(あくまでも、「語源」という観点ですが)、ムッソリーニと"fascist"、また"fascism"という単語には直接的な関係がない(ムッソリーニ以前に端を発する)、ということなのです。

さて、ラテン語のfascisに話を戻します。

束という意味だと書きましたが、もうひとつの意味に、


束桿(そっかん)


というものがあります。(複数形でfascesと綴られます。)

これは斧を複数の木の棒で包み、皮紐で束ねたもので、斧の刃が側面から出ているような形をしています。(イメージはこちら。)古代ローマでは権威の象徴として用いられたものです。

実際、この束桿のシンボルはファシスト党の党章や党旗に用いられました。

しかしながら、束桿のシンボルはローマにあるとは言え、権威の象徴としてはファシスト党に限らず、様々な国で用いられており、紋章を始め、アメリカの10セント硬貨のデザインにも使われていたことがあったそうです。



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