全米に広がる黒人差別反対デモに関する記事の中で、見慣れない表現に出くわしました。
"macing"、"maced"、など、恐らく"mace"という動詞の変化形と思しき単語ですが、"mace"という動詞を見たことも聞いたこともありませんでしたので、辞書を引くことに。
記事を引用します。
Video footage captured at a Seattle protest on May 30 showed a small child in distress.
The footage was posted online by a man named Evan Hreha, who attended the Black Lives Matter demonstration and said the child in the video had just been maced by the police.
“First person maced is a little girl,” Hreha wrote in a caption alongside the video, originally mistaking the young child for a girl. “What the f— is wrong with you people.”
(Rosie Perper. The Seattle police were accused of macing a 7-year-old boy at a Black Lives Matter protest. The protester who filmed the aftermath was held in jail for 2 days a week later. Business Insider Australia. June 16, 2020.)
黒人差別反対デモに参加していた人たちの中に子供も混じっていたようですが、記事の写真では子供の顔に牛乳と思しき液体を注ぐ大人が写っています。
恐らくは警官によって吹きかけられた催涙スプレーによって引き起こされた症状を緩和するために洗浄を施している様子だと思われました。写真のキャプションには、
Video captured at a Seattle Black Lives Matter protest on May 30 showed a young boy who was said to have been sprayed with mace by the police.
(ibid.)
とあり、"mace"は名詞としても使われることが分かります。
ランダムハウス英和辞書を引いてみますと、
メース(Chemical Mace):非致死性散布剤;精製催涙ガスと溶剤から成り、主に目と皮膚を刺激する;特に暴徒鎮圧用
とあり、やはり催涙スプレーの類であるということが分かりました。
ところで、このメース(Mace)というのは商標名であり、語頭を大文字にするのが普通ですが、メースと言えば催涙スプレーというのがほとんど定着しているからでしょうか、語頭を大文字にしない、一般的な名詞や動詞としても用いられるようになったもののようです。
“Mace”という商標名は、中世の武器で、棍棒のような把手に棘のような突起のあるヘッドがついた、“mace”から来ているようです。
2020年6月17日水曜日
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蘭です。
返信削除ゲームの中で男性聖職者が持つ武器は「mace」が多いようです。調べてみると、これは「中世ヨーロッパにおいて戦争に参戦した聖職者は血を流すことを禁じるという戒律のため刀剣を扱うことを許されなかったため、血を流さないメイス(鈍器)を用いたとされる」(Wiki)からです。今まで武器のことは特に気になっていませんでしたが、調べてみれば案外面白いです。
勉強になりました。ありがとうございます。