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2020年6月29日月曜日

robust

新型コロナウィルスに感染した人は世界で一千万人を超えました。

第2波とも言われる感染者の増加が各国で懸念されている中、アメリカでも感染者の急増が見られています。

共和党のペンス副大統領がスピーチを行ったテキサス州での集会では、2,000人以上の出席者が参加する大規模イベントとなりましたが、イベント中、100人以上からなる合唱団がマスクを着用せず合唱のパフォーマンスを披露するという内容が報じられ、物議を醸しています。


Washington (CNN) — A choir of more than 100 people performed without masks at a robustly attended event in Texas at the First Baptist Church on Sunday that featured a speech by Vice President Mike Pence.

Nearly 2,200 people attended the "Celebrate Freedom Rally," in the Lone Star State, according to rally organizers, which has seen a severe surge in coronavirus cases since easing restrictions. The venue capacity for the indoor event was close to 3,000 attendees, organizers say.

Throughout the service, the members of the choir sang at full volume, behind an orchestra. Between songs, the choir members put their masks back on when they sat down, according to pool reports from the event. The members of the choir had space between them, but it was not clear if it was the recommended six feet.
(Jamie Ehrlich. Choir of more than 100 people perform without masks at Pence event. CNN. June 28, 2020.)


ご存知のように、コーラスやカラオケ、音楽のライブ演奏等は集団感染が発生しやすい、リスクの高い活動とされているところです。

最近も新聞を読んでいますと、団員がステージで密集しないよう2メートル以上の距離をあけて少ないメンバーで着席し、それぞれのプレーヤーの前には飛沫防止の透明カーテンを置いているオーケストラ公演の記事や、能の地謡がマスクを着用している写真など、見るも痛々しい感じがします。

しかしながら、このような対応策を取らざるを得ないのが現実で、記事で報じられているような、100人以上の合唱団がマスクをせずに大きな声で歌唱するというのはちょっと日本では考えられない出来事でしょう。

さて、今日気になった表現ですが、


at a robustly attended event in Texas


という部分に着目してみました。

言わんとするところは分かるんですが、"robust(ly)"という修飾語に疑問を覚えたというところです。

ご存知のように、"robust"というのは、頑健な、とか頑丈な、しっかりした、というのが主要な意味で(robust architecture、など)、その他としては活発な、とか活況のある、という意味(robust economy、など)、また味覚に関して豊潤である、とかコクがある、フルボディーの、といった意味(robust flavor of freshly brewed coffee、等)で使われます。

ロバスト設計とか、ロバストネス、ロバストデザインなど、カタカナ語としても定着しつつある単語です。つまり、ロバスト("robust")、イコール、ストロング("strong")と思って差し支えないのですが、上記で取り上げた"robustly attended"はイベントの出席者の数が多かったということを指していることは文脈から読み取れるものの、形容(修飾)としてピンと来なかったということがあります。

言い換えると、"robust"という単語を、あるものの性質やキャラクターに関してその強さ(strength)を言及したものであると考えたときに、上記の例のような数や量の大きさ(magnitude)に言及した用法は果たしてスタンダードな用法なのだろうか、という疑問です。

これはなかなかチャレンジングな命題で、しばらく色々な辞書(シソーラスを含めて)に当たってみた結果、あまり頻繁に用いられる用法ではなさそうであるが、スタンダードではないとも言えないようである、という結論に達しました。

例えば、American Heritage Dictionaryでは、


Substantial in amount: robust gains in stock prices.


というように、用例と共に載せています。(このような説明はMerriam-Webster Dictionaryやそのほかの辞書には見られないのですが。)

また、コーパスを当たってみますと、"attendance"の類語として見ると、


robust presence
robust turnout
robust crowd
robust audience


などの実例が少数ながら見られ、数に関する修飾語として用いられていることが分かります。

よくよく考えてみると、数は力なり、で、数が大きい、多いということは、強さの象徴でもあるのですが。

ちなみに、“robust”の語源はラテン語で樫の木を意味するroburから来ており、硬く強い材質の木であることが意味上も受け継がれているようです。


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