東京オリンピック注目の競技、男子100メートル走で波乱の展開がありました。
「世界最速男子」といえばジャマイカのウサイン・ボルト選手の独壇場でしたが、ボルト選手が引退後の今大会、誰も予測しえなかった、イタリア代表のJacobs選手が優勝するという結果になりました。
Jacobs選手は今年に入るまで10秒を切っておらず、同じレースに参加した有力選手もこの無名のイタリア人選手はノーマークだったようです。
Usain Bolt once tightly held on to the mantle of World’s Fastest Man in his lightening quick sprints at multiple Olympic Games.
That mantle now, however, has passed on to a Texas-born Italian — 26-year-old Lamont Marcell Jacobs who finished the 100-meter race in 9.8 seconds, clinching Italy’s first medal in the event.
“I mean, 9.8 from the Italian guy?” Canada’s Andre DeGrasse said. “I didn’t expect that. I thought my main competition would be the Americans.” DeGrasse won a bronze in the sprint with a time of 9.89.
(Italian Stuns in 100-Meter Sprint. Voice of America. August 02, 2021.)
引用した記事で、"mantle"という表現が2度出てきます。
the mantle of World’s Fastest Man
そして、
That mantle now, however, has passed on to a Texas-born Italian
という部分ですが、この"mantle"というのはマント(フランス語のmanteauに同じ)のことで、ゆったりした外套のことですが、
a figurative cloak symbolizing preeminence or authority
(Merriam-Webster Dictionary)
と定義されており、権威としての象徴、という意味合いです。
ランダムハウス英和辞書では「衣鉢」という日本語が見えます。「衣鉢を継ぐ」などと言いますが、「衣鉢」の衣とは僧侶が身に付ける袈裟、鉢は托鉢に使う鉢(はち)のことだそうです。この「衣鉢」を授けることで、師匠から弟子へと奥義を引き継ぎ、表現として定着したということです。
ちなみに、"mantle"という単語については、聖書の列王記伝に由来するという説明も見えます。
列王記伝下に以下のくだりがあります。
エリヤの来ていた外套が落ちて来たので、彼はそれを拾い、ヨルダンの岸辺に引き返して立ち、落ちて来たエリヤの外套を取って、それで水を打ち、「エリヤの神、主はどこにおられますか」と言った。エリシャが水を打つと、水は左右に分かれ、彼は渡ることができた。
(列王記伝下2:13-14、新共同訳)
偶然ですが、昨日に続き聖書由来の英語表現となりました。
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