タリバンによる政権が実質的にアフガニスタン全土を掌握し、対テロ戦争から20年にしてまた振り出しに戻ったと言われていますが、タリバン政権を国際的に認知するか否か、各国の対応は割れています。
現時点では主要国のいずれもタリバン政権を正式には認めていないという状況のようですが、これには複雑な国際関係が背景にあります。
The last time the Taliban ruled Afghanistan, from 1996 to 2001, it was an international pariah. Under heavy international sanction for its support for terrorism, abuses of human rights, and involvement in drug trafficking, it was officially recognized by just three other countries—Pakistan, the United Arab Emirates, and Saudi Arabia. Even those few allies backed away from the Taliban after the 9/11 attacks.
Little is known about how the group now plans to govern the country it once again rules — and any statement it has made this week should be taken with many grains of salt. The optimistic view in the lead-up to the U.S. withdrawal was that the Taliban did not want to repeat the experience of the 1990s and would therefore somewhat moderate its behavior in order to win some kind of acceptance from the international community.
(Joshua Keating. No One Wants to Be the First Country to Recognize the Taliban. Politico. August 18, 2021.)
かつて政権の座にあった1996年から2001年までの間に、タリバン政権を認知していたのは、アラブ首長国連邦とサウジアラビア、そしてパキスタンの3か国に過ぎなかった、とあります。
今回、アラブ、サウジアラビア両国は態度を明確にしていないとされ、またパキスタンについては、以下のように記事が続きます。
Pakistan is a more complicated case. Afghanistan’s neighbor has given support to the Taliban and provided its fighters with safe haven — one major factor behind the failure of counterinsurgency over the past 20 years — but now the Pakistan’s military and intelligence commanders are a bit like the dog that caught the car: The Taliban insurgency, they believe, served their interests. A Taliban victory, which could result in a full-scale civil war across their border, new refugee outflows, and new life for Pakistan’s own domestic insurgents, is a different story. For whatever it’s worth, Pakistan has signed on to an international statement stating its opposition to the reestablishment of an Islamic Emirate by the Taliban.
(ibid.)
パキスタンについては置かれている状況がより複雑ということなのだと思われますが、ここで興味深い表現が使われているので取り上げました。
パキスタン(の置かれている状況)を指して、
a bit like the dog that caught the car
と表現しているのですが、この"the dog that caught the car"という表現は初めて見るものでした。
直訳すると、自動車に追い付いた犬、ということになりますが、何を言わんとしているのでしょうか。
辞書には載っておらず、ネットを頼りにせざるを得ませんでしたが、多くのサイトで、
A person who has reached their goal but doesn't know what to do next.
というような説明がされており、なるほどと思いました。
犬がそばを走りぬける車(でも人でも、自転車でもよいのですが)を見て、思わず追いかける、しかし追い付いてしまった、という状況がイメージできます。
追いかけるのが目的だったところ、追い付いてしまったらその後することがない、という状況でしょうか。
アフガン情勢におけるパキスタンの立場というコンテクストにおいてこのフレーズを解釈すると、アフガニスタンと国境を接するパキスタンにとって、これまでアフガニスタン国内で反乱勢力を強めていたタリバンは自国を利する存在でもあったということがあります。故に、タリバンへの支援も行ってきたことについて記事で触れられています。
これには、対立するインドとの関係や、タリバンを抑え込もうとしてきた米国との関係など、複雑な国際情勢が絡んでいたもののようです。
しかしながら、タリバンが政権を奪還するという目的が達成された今、アフガニスタンが不安定な状況になると、それはそれでパキスタンにとっては大変に困った状況になる、ということのようです。
タリバンによる政権の奪還は、直接的にはパキスタンの目的とするところではなかったかもしれませんが、政権奪還を目論むタリバンを自国の利益のために支援してきたという事実は、車を追いかける犬になぞらえられているものと思われます。
このフレーズですが、バリエーションとして、
the dog that caught the bus
the dog that caught the truck
というものもあるようです。
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