起床して朝刊を拡げると、坂本龍一さんの訃報記事に最初に目が留まりました。
YMOのメンバーとして、また作曲家、ピアノ奏者、と多方面の活動で有名ですが、映画音楽でアカデミー賞(作曲賞)を受賞した初めての日本人ということで、海外メディアでも報じられています。
CNNの記事から引用します。
Japanese composer Ryuichi Sakamoto -- who wrote the haunting score to 'Merry Christmas, Mr. Lawrence' and won an Oscar for 1987's 'The Last Emperor' -- has died aged 71.
His management team announced that he died on March 28. He had been treated for cancer in recent years.
"We would like to share one of Sakamoto's favorite quotes: 'Ars longa, vita brevis.' Art is long, life is short," a statement read.
Born 1952 in Tokyo, Japan, the composer enjoyed the music of The Beatles in his early years as well as classical greats like Bach.
(Oscar-winning Japanese composer Ryuichi Sakamoto dies aged 71. CNN. April 2, 2023.)
記事中、坂本さんの座右の銘として、
Ars longa, vita brevis.
という言葉が引用されています。これはラテン語のフレーズで、記事中にも英訳、
Art is long, life is short.
が続きますが、文字通り、「芸術の道のりは長く、人生は短い」という意味です。
小生の手元にある研究社新英和大辞典には、ラテン語を始めとする人口に膾炙した慣用句などをリストした付録があり、このフレーズも載っているのですが、その説明によれば、このフレーズは元はヒポクラテスがギリシャ語で書いたもので、"ars"の意味するところ(ギリシャ語でtekhnē)は「医術」のことである、ということです。
つまり、医術を習得するには人生は短すぎる、というヒポクラテスの嘆きだった訳です。
その後、このフレーズはセネカの「人生の短さについて」(De Brevitate Vitae)という著書の中で引用されて人口に膾炙するようになったようですが、奇遇にもセネカを丁度読んでいたところでした。
なお、書中の記載は、
vitam brevem esse, longam artem
となっています。
セネカはこのフレーズを引用しながらも、有効に活用すれば生は十分に長い、と説くのですが・・・。なお、このフレーズにおけるラテン語Arsは「術」と訳され、医術に限らず、様々な学問や技術、芸術などあらゆるものを包含していますが、今日では「芸術」や芸事と解釈(訳)されるのがもっぱらのようです。
坂本龍一さんは癌を患っていたそうですが、余命を自覚しつつこの警句を座右の銘としたのでしょうか。
小生は坂本龍一さんの音楽には中学生の頃にハマり、当時はCDを買うお金が無かったのでレンタルCDをカセットテープに録音してよく聴いたものです。
ご冥福をお祈りします。
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