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2023年6月7日水曜日

lounger

アメリカで、乳幼児向けのベビークッションの使用にまつわる死亡事故が増加しているとそうです。

問題の製品は既にリコールされていますが、SNS上のサービスを通じて未だ流通している現実があるということで、広く注意喚起されているというのが以下に引用する記事の趣旨です。

この「ベビークッション」ですが、記事では"lounger"、"baby lounger"、"baby pillow"という名称になっています。

"lounger"はゆったりとした椅子を指すようですが、記事の写真で見てみると、椅子(ベビーチェア)というよりも座布団みたいなクッションというのが近いように思われます。


Two more infants have died since the Boppy Newborn Lounger was recalled in 2021, bringing the total number of known deaths linked to the baby pillow to 10.

On Tuesday, federal safety regulators at the U.S. Consumer Product Safety Commission once again urged consumers to immediately stop using the product, which has been banned from sale since the recall. The agency also pressured Facebook to block the sale of recalled Boppy loungers on Facebook Marketplace, saying that on average the agency finds 1,000 of the products listed there each month.
(Tricia L Nadolny. Two more deaths linked to recalled baby lounger still for sale on Facebook Marketplace. USA Today. June 6, 2023.)


 "lounger"については、"lounge"という単語から来ているのですが、"lounge"とは日本語でもカタカナで言うところの「ラウンジ」に同じです。

この「ラウンジ」は社交場だったり、クッションのある椅子やソファがしつらえられた酒場など、リラックスした雰囲気を醸すスペースのことです。英単語の"lounge"にもこれらの意味合いがありますが、名詞としては寝椅子、安楽椅子の意味があり、"lounger"はこの拡張であろうと思われます。

ところで、"lounge"の動詞の意味には、ぶらぶらする、もたれかかる、横になる、というものがあり、これらに共通するのは怠け者という概念で、"lounge"の語源は怠け者を意味する古フランス語longisだそうです。

興味深いことに、"lounge"という単語の語源欄を見ると、古フランス語longis、さらに遡るとラテン語Longinum(十字架のイエスの脇腹を槍で突いたと伝えられる兵士の名)から来ているという説明があります。(研究社新英和大辞典)

確かに、聖ロンギヌスはローマ帝国の百卒長として、イエスキリストがゴルゴタの丘で磔になった際に、その生死を確かめるためにその脇腹に槍を突き刺した、とされるのですが、その人物の名前が「怠け者」という概念と結びつけられた経緯、また"lounge"という英単語になった背景について詳しい説明は見当たりません。

いわゆる民間語源(folk etymology)のようにも思われますが、ちょっと変わった、また意外なストーリーではないでしょうか。



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