ミスター・ビーンで知られるイギリス人コメディアンのローワン・アトキンソンさんが自動車好きとは知りませんでしたが、数ある愛車の中には電気自動車も含まれていると聞き興味をそそられました。
アトキンソンさんは大学では電気・電子工学を専攻したそうで、故に電気自動車にも当然関心があり、ハイブリッド車は18年前から、電気自動車は9年前から運転し始めたということで、いわゆるアーリーアダプターです。
ところが、そのアトキンソンさんが、最近になって電気自動車の掲げる理想には騙されたように感じる、というちょっと意外な意見。ガーディアン紙への寄稿を興味深く読みました。
Electric vehicles may be a bit soulless, but they’re wonderful mechanisms: fast, quiet and, until recently, very cheap to run. But increasingly, I feel a little duped. When you start to drill into the facts, electric motoring doesn’t seem to be quite the environmental panacea it is claimed to be.
(Rowan Atkinson. I love electric vehicles – and was an early adopter. But increasingly I feel duped. The Guardian. June 3, 2023.)
アトキンソンさんが投げかける疑問は、電気自動車は本当に環境に優しいのか、というものです。
EUでは内燃機関を動力とする自動車(ガソリン車、ディーゼル車)の販売を2030年に全面的に禁止すると打ち出しています。目的は温室効果ガスの排出削減です。
しかしながら、アトキンソンさんは、冷静に事実に目を向ければ電気自動車が温室効果ガスの削減に貢献するものなのか、疑問が残る、と言います。
そして、
electric motoring doesn’t seem to be quite the environmental panacea it is claimed to be
というくだりになるのですが、ここで、"panacea"という表現が使われています。
"panacea"とは、"cure-all"(万能薬)という意味で、ギリシャ神話に出てくる治療の女神パナケイアに由来する単語です。
そこから、病を治すというだけに留まらず、困難や問題に対処するにあたっての万能の方策というような意味で用いられます。
"panacea"という単語のスペルには、ギリシャ語で「全」、全て(all)を意味する接頭辞pan-が含まれています。
つまり、電気自動車が温室効果ガス削減、脱炭素社会実現のための切り札とも期待されている現状がある訳ですが、非の打ち所がない万能の技術かと言えば疑問が残る、ということです。
アトキンソンさんは、電気自動車のバッテリーとなるリチウムイオン電池の製造にはレアアースが不可欠であり膨大なエネルギーが消費される他、流行り廃りで3年くらいで買い替えられる自動車のライフサイクルを考えると果たして環境に優しいと言えるのかと疑問を呈しています。
なるほどです。小生は最近クルマの買い替えを検討していて、電気自動車という選択肢も一応視野にはあるのですが、専門家が同様の意見を述べているのを読んだことがあります。また、電気自動車の充電に伴う電力についても、日本においては火力が7割を占める現状を考慮するならば、いくら電気自動車が排気ガスを出さないといっても、その駆動力である電気の源(すなわち、火力)を無視することは出来ないという主張もあります。
詳細は記事をお読みいただくとして、ここのところ声高に唱えられるエコやSDGといった掛け声に感じる漠然とした違和感に近いものがあるようにも思うのですが、みなさんはどう思われるでしょうか?
0 件のコメント:
コメントを投稿