昨日の投稿でも取り上げましたが、イギリスではバーナム新政権が誕生しました。新しい内閣の人事では、スターマー前首相に近かった人たちは遠ざけられたとの報道です。
主要閣僚の中で、"chancellor"というポジションが出てきます。
"chancellor"の指すポジションには様々あるようですが、例えばドイツでは首相を指すのに使われるということは知っていました。イギリスでは?
知らなかったのですが、イギリスで"chancellor"は大蔵大臣、財務大臣のことなんだそうです。
Andy Burnham pledged to "bring back hope" to Britain, as he began his tenure as prime minister by appointing Labour stalwart John Healey as chancellor.
(中略)
Speaking to broadcasters, Healey said the pair will "work in lockstep to meet the fiscal rules with a buffer against uncertainty" and on how they will "make life more affordable for working people right across the UK".
(Burnham pledges to 'bring back hope' as he makes Healey chancellor. BBC News. July 21, 2026.)
バーナム首相は財務相("chancellor")にヒーリー氏を指名、英国民の生活を豊かにすることを誓っています。税負担の軽減などの施策は財務大臣の職務範囲でしょう。
辞書を引いてみますと、
Chancellor of the Exchequer
というのが正式な名称のようです。
The senior finance minister in the British government and a member of the prime minister's cabinet.
(American Heritage Dictionary)
この"Exchequer"というのは何かと言うと、"checker"、つまりチェス盤などに見られる、四角の格子で構成される市松模様のことを指します。ノルマンディー公国の時代、テーブルに拡げた市松模様の布の上にカウンターを配置して収支の計算を行ったことに由来するんだとか。
"Exchequer"というスペルについては、元々はアングロフランス語eschekerだったものが、語頭のes-がラテン語の接頭辞ex-に誤解されたものだとの語源解説を辞書に認めることができます。ちなみに、"check"という単語の語源については以前取り上げました。
この"Chancellor of the Exchequer"が"chancellor"と省略されたものだと解釈されますが、"chancellor"という単語についても興味深い語源があるようです。
"chancellor"というのは元は玄関番を指す言葉で、柵(の棒の1本)を意味する"cancellus"という単語(ラテン語で格子を意味するcancer)と関連があるそうです。柵によって中(内)と外を隔てたんですね。"chancellor"は色々なポジションを指すと書きましたが、そのひとつには大法官(Lord Chancellor)というものがあり、これは法官が柵によって隔てられた場所に位置しているからだそうなんですね。身分が違う、ということですね。
また、"chancellor"と関連する"cancellus"にはそのスペルに"cancel"(キャンセル)という単語を認めることができますが、取り消す、やめる、という現代の意味は文字に棒線を引いて消す、すなわち取り消すということから来ているんだそうです。
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