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2024年4月17日水曜日

tenor

米大学などはこれからが卒業式シーズンでしょうか、ある記事が目に留まりました。

南カリフォルニア大の卒業式で予定されていた卒業生総代によるスピーチがキャンセルされることになったという話です。


The University of Southern California said its valedictorian will no longer deliver a graduation speech this year, citing "substantial risks relating to security" over social media chatter surrounding the Israel-Hamas conflict.

The Los Angeles school revealed that Asna Tabassum, a fourth-year student from Chino Hills, California, was selected as the valedictorian and would give a speech alongside two salutatorians. In a news release Monday, the university said she would no longer speak at the ceremony after the discussion about her selection took on "an alarming tenor."
(Anthony Robledo. California valedictorian will no longer give graduation speech over 'alarming' discussion. USA Today. April 15, 2024.)


卒業生総代としてスピーチすることになっていた成績優秀の女子学生はイスラム教徒ということですが、昨年勃発したハマスとイスラエルの戦争に関連して、イスラエルを批判、パレスチナ支持を訴える投稿をSNSなどで活発に行っていることが分かり、卒業生総代としての選出に議論を呼んだようです。

大学側は学内に混乱が生じる懸念があるとして、スピーチを取り止めることにしたとあります。

さて、引用した記事に、


the discussion about her selection took on "an alarming tenor"


というくだりがありますね。

ここでの"tenor"という単語の用法は馴染みがなく、初めて見るように思います。

テナー(テノール)と言えば、声楽の用語で、男声の最も高音域を担当するパート、またその歌い手ですね。

そういう先入観があったので、ここでの"tenor"の解釈にちょっと躓いたというのが正直なところです。

英和辞典を引いてみると、"tenor"には声楽のパートを指す以外に、


進路、傾向、方向


といった意味があることが確認出来ます。

つまり上記くだりの箇所は、卒業生総代の選出にまつわる議論がどうも危ういことになっている、と言いたいようです。

イスラエルとハマスの戦争を契機にパレスチナ人を支持する立場とイスラエルを支持する立場とが対立構図となり、米国内でも世論を二分するような政治問題になっています。本来祝福されるべき卒業式というセレモニーが、また誉ある卒業生総代のスピーチの人選が、こうした対立構図に絡められてしまうことを大学側は避けたかったものと思われます。

ところで、同じような表現でよく見かけるものに、


take an unusual course
take an unexpected turn


などの言い回しがありますが、"tenor"も同じような文脈で使われると言えるでしょう。

声楽のテナーもこの"tenor"も語源はラテン語tenereという動詞で、その意味は保持する、ある方向へ舵を取る、といったものです。

手元にある英和辞典では2つの"tenor"を別々のエントリとしていますが、American Heritage DictionaryやMerriam-Websterは1つのエントリに両方の意味を載せています。

また、American Heritage Dictionaryでは"tenor"を"tremd"や"drift"、"current"などと共に、"tendency"の同義語としてあげています。

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