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2024年6月7日金曜日

with it

昨日6月6日は、D-dayから80周年を迎えた日でした。

以前(10年前)取り上げましたが、D-dayとは第二次世界大戦時、連合国軍がフランス、ノルマンディーへの上陸作戦を開始した日です。

80年という節目の年ということで、邦紙でも比較的大きく取り上げられています。

以下に引用するのは、アメリカの退役軍人がこの80年記念式典の参加途上、帰らぬ人となったというニュースです。


A World War II Navy veteran has died at the age of 102 while traveling to France to attend a D-Day 80th anniversary event.

Robert "Bob" Persichitti's death, which occurred on Friday, May 31, was confirmed by Honor Flight Rochester – an organization that honors America's Veterans for their sacrifices by flying them to Washington and hosting events.

Persichitti, a New York resident, fought to help put an end to World War II and witnessed the raising of the U.S. flag at Iwo Jima, Rich Stewart, president and CEO of Honor Flight Rochester, told Fox News Digital.

Stewart said Persichitti became ill last week while traveling on a ship that was en route to Normandy for the D-Day tribute. He was then brought to a hospital in Germany where he died peacefully, Stewart said.

Stewart said Persichitti was extremely active, in good health and "with it" until the very end. 

(Ashley J DiMella. 102-year-old WWII veteran from New York dies while traveling to France for D-Day anniversary. Fox News. June 6, 2024.)


亡くなったPersichittiさんは式典に参加するため船でノルマンディーに向かっていたそうですが、途中で体調に異変を来たし、ドイツの病院に搬送されたものの帰らぬ人となった、とあります。102歳でした。

Persichittiさんの人となりについて、記事では、


was extremely active, in good health and "with it" until the very end


とあります。

亡くなる直前まで活動的で健康そのもの、そして、"with it"、とあるのですが、この"with it"という表現を知りませんでした。

敢えて引用符で括ってありますので、特別な意味があるようですね。

英和辞書を引いてみると、


流行(時代)に通じている、モダンである


といった意味が載っています。

"it"という単語自体、既出のものを指す代名詞としての役割の他、何かを特定するのではなく、漠然と動詞の目的語として用いられることがありますが、"with it"の"it"もこれに近いように思われます。

記事によればPersichittiさんは退役軍人として国内外で精力的な活動に従事していたそうです。80年記念式典への参加もこうした活動の一環であった訳で、現地へ向かう途中で病気になることなど想像もしなかったのではないかと。つまり、退役軍人とは言え、現役という気概だったのだろうと思います。

ここでの"with it"を、「時代に通じている」と訳すのは無理ではないとは思いますが、「現役で」という方がしっくりくるように思いました。最後の最後まで「現役」。辞書には載っていませんけれども。

2024年6月6日木曜日

crow

ニューヨーク州ではマンハッタン中心部に乗り入れる自動車に対して渋滞税(congestion pricing)なる課金を計画し、法案まで可決していましたが、導入を無期限延期すると発表しました。

一律15ドルという課金は、慢性的な渋滞の緩和が期待されると共に、地下鉄等公共交通機関の利用増と増収も見込んだものでしたが、導入には否定的な意見が多く寄せられていました。

とりわけ不評だったのは仕事のために都心へクルマで出入りせざるを得ない立場にある人達、つまり会社員や店舗店員、運輸業務に携わるドライバーなどで、特にタクシーや運送業者に至っては渋滞税がサービスや商品の価格に上乗せとなり更なる物価高騰をもたらす可能性が指摘されていました。

治安の悪さからニューヨーク市地下鉄は敬遠されており、クルマの代替にはなり得ないということもあるようです。

要は誰も望んでいない施策だった訳ですが、結局6月30日のスタートを目前にして頓挫し、反対派からはそれ見たことか、という反応なのです。


Everyday New Yorkers bid good riddance to congestion pricing after Gov. Kathy Hochul’s shock announcement that she’ll indefinitely pause the detested toll program.

Rideshare app drivers, salesmen and other working-class New Yorkers crowed to The Post about the congestion pricing’s apparent downfall Wednesday.

“Hell yeah!” said Tony Robinson, a self-employed chauffeur, when told about Hochul’s move.
(Working-class New Yorkers cheer congestion pricing’s downfall after Hochul’s stunning reversal. New York Post. June 5, 2024.)


知事が導入を見送る決定したというニュースに、多くの人達が「歓声を上げた」(crowed)とあります。

ここで使われている"crow"という動詞が今日の1語です。

"crow"はカラスを意味する名詞ですが、動詞の意味に、


歓声を上げる、狂喜する、勝ち誇る
(ランダムハウス英和辞書)


という意味があるんですね。

スペルが同じだけに、このような動詞の意味にはカラスと何らかの関係があるのか?と思いますよね。

興味深いことに、カラスを意味する"crow"というのは擬声語で、カラスの鳴き声から来ているそうです。

そして歓喜するという動詞の"crow"も名詞の"crow"と同語源、つまりカラスと関係があるんです。

この動詞"crow"は元々カラスの鳴き声のような音をたてるという意味だったようですが、その後、雄鶏の鳴き声のような音を立てる、という意味にもなり、いつの間にかカラスの鳴き声ではなく、雄鶏の鳴き声の意味が優勢となり、カラスの鳴き声という意味は消えてしまったようなのです。(Online Etymology Dictionaryの解説による。)

そう言えば、"cockcrow"は、(〜crowとありますが)鶏の鳴き声の意味です。

つまり、これら"crow"は、カラスであって、カラスでない、というややこしい話です。

カラスの鳴き声を思い出してみますが、歓声や勝利の雄叫びといったイメージは無いですね・・・。屍肉を漁るカラスとの連想から生じたとの説明も見受けられますが、雄鶏の鳴き声の方がイメージとしては近いでしょうか。



2024年6月5日水曜日

subtweet

一昨日に続き、今日もまた人工知能(AI)の話題です。

AI企業草分けとも言えるOpenAIに勤務していた元社員らが、AI技術の安全性などについて懸念を表明するレターを一般公開したことが物議を醸しています。

元社員らは、AI関連企業の社員は革新的技術がもたらすリスクや負の側面について意見表明する機会が与えられていないなどとして、業界全体の変革が必要であると主張している模様です。

AI関連企業の「闇」を暴露、という感じでしょうか。


In the latest development of the OpenAI-is-a-disaster saga, a group of current and former OpenAI employees has gone public with concerns over the company's financial motivations and commitment to responsible AI. In a New York Times report published Tuesday, they described a culture of false promises around safety.

"The world isn't ready, and we aren't ready," Daniel Kokotajlo, a former OpenAI researcher, wrote in an email announcing his resignation, according to the Times report. "I'm concerned we are rushing forward regardless and rationalizing our actions."

Also on Tuesday, the whistleblowers, along with other AI insiders, published an open letter demanding change in the industry. The group calls for AI companies to commit to a culture of open criticism and to promise not to retaliate against those who come forward with concerns.

While the letter isn't specifically addressed to OpenAI, it's a pretty clear subtweet and another damaging development for a company that has taken more than enough hits in the last couple of weeks.
(Madeline Berg. It's all unraveling at OpenAI (again). Business Insider. June 4, 2024.)


OpenAI社はここのところ様々なゴタゴタに見舞われているそうですが、元社員によるオープンレターは同社を巡る混乱を改めて印象づけるものと見られているようです。

引用した部分の最後の方に、


While the letter isn't specifically addressed to OpenAI, it's a pretty clear subtweet and another damaging development for a company


とあります。ここで"subtweet"という表現が目に留まりました。

ツイート(tweet)というからにはSNSのツイッター(現在の呼称はX)にまつわる表現と思われるものの、その意味するところは実のところ知りませんでした。

調べてみると、"subtweet"というのは他人について、その相手を直接引用、またメンションすることなく、話題にするツイート(投稿)を指すのだそうです。

そして、この"subtweet"という単語がMerriam-Webster Dictionary(オンライン版)ではエントリになっているのを知って正直驚きました。

以下のように定義されています。


a usually mocking or critical tweet that alludes to another Twitter user without including a link to the user's account and often without directly mentioning the user's name


「メンション」というのは、これもSNS用語として定着している感がありますが、SNSの投稿で他人の名前(アカウント名)を引用することを指します。アットマーク(@)はそのメンションに際して使われますが、そうするとメンションされたユーザーは通知を受け取ることになり、自分が話題にされているということを知ることになる訳です。

"subtweet"とはこのようなメンションをしないやり方、つまりアットマークを使わずに他人について話題にするもので、つまり話題にされている本人には言及されたことが分からないことになります。このようなやり方は相手に対する陰口を叩いているようなことにもなるのですが、実際、"subtweet"はネガティヴな話題や批判的な言及をする際に用いられることが多いといいます。

オープンレターはOpenAI社を名指ししていないものの、同社の(杜撰な?)内部状況を想起させる内容であるが故に、"subtweet"とここで表現されているものだと考えることができるでしょう。

ちなみに"subtweet"のsub-とはサブリミナル(subliminal)のことだそうです。

サブリミナル効果という言葉を聞いたことがあるかと思います。サブリミナルとは識閾下と訳されますが、ある刺激にさらされる際にその刺激を意識することができる境界ギリギリのことを言う用語です。

つまり直接意識させることなく訴えかけるということであり、直接相手を言及しないけれども言及している相手を思い起こさせるという"subtweet"の効果を言っているものです。

2024年6月4日火曜日

sashay

今日の1語は、"sashay"です。

歩くという意味ですが、単に歩く(walk)というより、気取って歩く、目立つように歩く、という意味合いの表現です。

モデルがファッションショーで舞台や花道を颯爽と歩き回る、あの感じです。


Models sashayed down the runway in nothing but strategically placed duct tape this weekend during Miami Swim Week 2024.
(Adriana Diaz. Models strut down the runway in nothing but duct tape at Miami Swim Week. New York Post. June 3, 2024.)


たまたま別の記事も見つけたので、もうひとつ引用です。


The 2023 line-up of contestants also saw the first appearance of married women, Miss Guatemala Michelle Cohn and Miss Camila Avella. Miss Nepal Jane Dipika Garrett was the first plus-size contestant to sashay across the stage during the 72nd Miss Universe competition. 
(Alba Cuebas-Fantauzzi. Miss Universe co-owner says trans and married women ‘can compete’ under new guidelines ‘but they cannot win’. Fox News. June 2, 2024.)


この"sashay"という単語の語源が面白いので取り上げた訳ですが、フランス語chasséから来ていると辞書の語源欄にあります。

chassé(シャッセ)というのはバレエ、ダンスの用語で、左右の足を滑らせるようにして交代させる動きのことを指すようです。

この「シャッセ」が、「サシェイ」("sashay")という発音の単語になった訳ですが、音が前後入れ替わって生まれたようにも見えます。

言語学では音位転換とか、言い間違いにより生まれた単語など、興味深い現象がありますが、"sashay"については「変形」という解説があるのみで、それ以上の説明は見当たりません。

ちなみに、フランス語chasséは英単語"chase"と語源を同じくします。

2024年6月3日月曜日

treacherous

人工知能(AI)がホットな話題ですが、グーグルがこのほど発表したAI Overviewはある意味、新技術の限界を露呈させました。

AI Overviewは大規模言語モデル(LLM)と呼ばれる技術に基づき、膨大なテキストを処理して自然な応答を生成することができるものですが、公開以降、プロンプトに入力された問い掛けに対して不適切な回答を生成する事例が指摘されています。


A week after its algorithms advised people to eat rocks and put glue on pizza, Google admitted Thursday that it needed to make adjustments to its bold new generative AI search feature. The episode highlights the risks of Google’s aggressive drive to commercialize generative AI—and also the treacherous and fundamental limitations of that technology.
(Google's AI Overviews Will Always Be Broken. That's How AI Works. Wired. May 31, 2024.)


記事によりますと、問題はウェブ上に存在する情報がそもそも不正確であることからくるものだそうです。ウェブ検索の進化版とも言えるこのサービスは結局のところ、インターネット上にある玉石混交の情報をベースにしたものであり、検証がなされた正確な情報も、SNS上の投稿などにおける断片的なコメントのような、真偽の程も分からないような情報も同等に扱ってしまうことが問題だということです。

そうなってくるとAIが生成する回答は信用できない、つまり、当てにならない、ということなのですが、記事では、


treacherous


という表現を使っています。

小生は高校の時、この"treacherous"という単語を、不誠実な、裏切りの、という日本語で暗記していました。他人を裏切るような、背反の心を持った人間、というイメージでしたが、人に限らず、モノや事柄についても、当てにならない、頼りにならない、という意味で使われることはポイントです。

"treacherous"は"treachery"という名詞から派生した形容詞ですが、これらの単語の語源は、詐欺師を意味するフランス語tricheurに遡るとの説明があります。古フランス語の動詞trichierは騙すという意味で、これは英単語の"trick"と同じなんですね。

"treacherous"という単語のスペルや意味合いがいまいちピンと来ないという人は、「トリック」(trick)という英単語を思い出すと良いでしょう。