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2023年8月17日木曜日

pound sand

ハワイでの大規模な山火事被害がクローズアップされています。マウイ島では広範囲が焼け、死者数も100人余りに上っています。

地球温暖化の影響が指摘されています。観光地故の地元民とツーリストの間にある確執を取り上げる記事も見られます。

ところで、この惨事に際してバイデン大統領は現地に赴くどころか、デラウェア州のビーチで休暇を過ごしたとか。コメントを求められても、「ノーコメント」というつれない返事だといいます。


The White House has responded after both Democrats and Republicans criticized President Biden, who said he had "no comment" on the rising death toll from the destructive Hawaiian wildfires during his weekend beach getaway in Delaware.

One Hawaii Democrat called the president’s response "shocking" and out of character.
(Lawrence Richard. White House shoots down critics over Biden's 'no comment' Hawaii response. Fox News. August 16, 2023.)


バイデン氏らしからぬ態度だと言われていますが、災害に見舞われた人達に寄り添う姿勢が政治家には求められるのは当たり前で、その欠如は時に政治生命を危うくします。

別記事では以下のようなくだりがあります。


President Joe Biden’s brand is empathy, but his actions told the devastated victims of the Maui wildfires to pound sand.

(中略)

Given the scope of this disaster, it wasn’t surprising to see Biden on a sandy beach this weekend. It’s the usual protocol for the president to visit the scenes of major natural disasters. But Biden had a view of the Atlantic Ocean — not the Pacific. He spent Sunday lounging on a beach in Delaware. Instead of comforting grieving families, he was soaking in some rays.
After his beach day, he was asked about the rapidly increasing death toll in Hawaii. He replied, “No comment.”
(Victor Joecks. Biden suntans while Hawaii burns. Las Vegas Review Journal. August 15, 2023.)


この記事でも同様に、惨事に対するバイデン氏の態度に疑問を投げかけているものです。

冒頭の部分で、


pound sand


という見慣れない表現が使われています。

被災者に同情を示すどころか、"pound sand"するよう言った、という解釈になるかと思いますが、この部分をどう解釈すべきでしょうか?

字義通りには、砂を打つ、ということになるかと思いますが、一体どういう意味なのでしょうか?

手元にある辞書には載っておらず、ネットで検索しますと、俗語、あるいはかなりインフォーマルな言い回しの類いに分類されるようです。

砂地をいくら叩いたところで何ら有意義とは考えられないことから、意味のない行為に及ぶ、無駄な取り組みをする、というのが"pound sand"の含意するところらしいです。

ネットに散見される説明では、そのような意味合いから、気に入らない相手に対して突き放すような態度を示す時に使うフレーズらしく、あっちへ行け、とか、失せろ、消えろ、というような意味合いだと言います。

しかし、いくら今回の件でバイデン氏にいつもの優しさ(被災者に寄り添う態度)が見られないと言っても、山火事被害に見舞われたハワイの住民に「消え失せろ」は無いと思います。

そこで、"pound sand"の用例を色々と調べてみるのですが、この言い回しには多少の幅があると言いますか、一概に上記のような訳語を当てはめるのは無理があるように思われます。

では、記事の問題の箇所はどう訳すのか?

"pound sand"の基本的な意味は、砂を打つが如く、無意味で得るところの無い行為に及ぶ、ということであり、その心は、相手に対する話者のフラストレーションや突き放そうとする態度であるということです。

文脈によっては、それは「失せろ」だったりする訳ですが、「勝手にしろ」とか、「好きなようにすれば」、というような意味合いかも知れません。

相手に対するフラストレーションというものは、時に無関心という形で非難の感情を表したりもすると思いますが、その場合、日本語だと「(どうなろうと)知ったこっちゃない」、「知らんわ」、ということになるでしょうか。

多数ある用例を整理できていないのですが、一筋縄では行かない表現のようです。


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