アメリカ・ミネソタ州で発生した黒人男性暴行死に端を発する抗議デモは止む気配がありませんが、週末、デトロイトでのデモ活動では、パトカーとデモ参加者の大事故につながりかねない危険な状況があったようです。
USA Today紙の記事からの引用です。
DETROIT - What had been a mostly peaceful protest took a dangerous turn late Sunday when a Detroit police officer drove an SUV through a crowd of protesters after they surrounded the vehicle and began pounding on it.
With the overhead lights flashing, the officer behind the wheel gunned the accelerator, sending protesters flying onto the pavement while others scurried out of the way as the vehicle lurched through the crowd. At one point, the SUV jerked to a stop and then sped away with at least two protesters on the hood, throwing them to the ground a dozen yards later.
One of the men thrown from the hood clutched his leg and limped after he stood up. The other man appeared unharmed. Both men continued to march back to Patton Park.
(Detroit police SUV drives through crowd after protesters climb on hood. USA Today. June 29, 2020.)
デモ参加者が道路を練り歩くシーンが想像されます。その間を縫うように低速で進むパトカー。何があったのか判然としませんが、パトカーを取り囲むような格好になったデモ参加者の一部が車体を叩いたりボンネットに乗りかけたりしたようです。急発進させたパトカーのボンネットに男性2名を乗せて前進し、ふるい落とすようなことになったようです。
ところで、記事の中で、
the officer... gunned the accelerator...
というくだりに、おや、と思いました。
"gunned"というのは、銃を意味する"gun"の動詞形だと分かりましたが、その"gun"と"accerelator"が結び付くとは思わなかったからです。
辞書を引いて納得、なのですが、"gun"という動詞には、
(車などの)速度を急に増す、猛スピードで運転する、エンジンをふかす
という意味があるんですね。
「ガン」(gun)というのは拳銃に限らず、噴霧器のような構造の器具において、対象物に向けて液体などを射出するパーツを指しますが、自動車のエンジンも恐らくこのような機構があることから、この“gun the accelerator”という表現になっているのでしょう。
ちなみに、車をぶっ飛ばして運転する、という時に、“gun it”という表現があるそうです。
同じような意味合いで、以前取り上げた、“hit the gas”という表現も参考下さい。
2020年6月30日火曜日
2020年6月29日月曜日
robust
新型コロナウィルスに感染した人は世界で一千万人を超えました。
第2波とも言われる感染者の増加が各国で懸念されている中、アメリカでも感染者の急増が見られています。
共和党のペンス副大統領がスピーチを行ったテキサス州での集会では、2,000人以上の出席者が参加する大規模イベントとなりましたが、イベント中、100人以上からなる合唱団がマスクを着用せず合唱のパフォーマンスを披露するという内容が報じられ、物議を醸しています。
Washington (CNN) — A choir of more than 100 people performed without masks at a robustly attended event in Texas at the First Baptist Church on Sunday that featured a speech by Vice President Mike Pence.
Nearly 2,200 people attended the "Celebrate Freedom Rally," in the Lone Star State, according to rally organizers, which has seen a severe surge in coronavirus cases since easing restrictions. The venue capacity for the indoor event was close to 3,000 attendees, organizers say.
Throughout the service, the members of the choir sang at full volume, behind an orchestra. Between songs, the choir members put their masks back on when they sat down, according to pool reports from the event. The members of the choir had space between them, but it was not clear if it was the recommended six feet.
(Jamie Ehrlich. Choir of more than 100 people perform without masks at Pence event. CNN. June 28, 2020.)
ご存知のように、コーラスやカラオケ、音楽のライブ演奏等は集団感染が発生しやすい、リスクの高い活動とされているところです。
最近も新聞を読んでいますと、団員がステージで密集しないよう2メートル以上の距離をあけて少ないメンバーで着席し、それぞれのプレーヤーの前には飛沫防止の透明カーテンを置いているオーケストラ公演の記事や、能の地謡がマスクを着用している写真など、見るも痛々しい感じがします。
しかしながら、このような対応策を取らざるを得ないのが現実で、記事で報じられているような、100人以上の合唱団がマスクをせずに大きな声で歌唱するというのはちょっと日本では考えられない出来事でしょう。
さて、今日気になった表現ですが、
at a robustly attended event in Texas
という部分に着目してみました。
言わんとするところは分かるんですが、"robust(ly)"という修飾語に疑問を覚えたというところです。
ご存知のように、"robust"というのは、頑健な、とか頑丈な、しっかりした、というのが主要な意味で(robust architecture、など)、その他としては活発な、とか活況のある、という意味(robust economy、など)、また味覚に関して豊潤である、とかコクがある、フルボディーの、といった意味(robust flavor of freshly brewed coffee、等)で使われます。
ロバスト設計とか、ロバストネス、ロバストデザインなど、カタカナ語としても定着しつつある単語です。つまり、ロバスト("robust")、イコール、ストロング("strong")と思って差し支えないのですが、上記で取り上げた"robustly attended"はイベントの出席者の数が多かったということを指していることは文脈から読み取れるものの、形容(修飾)としてピンと来なかったということがあります。
言い換えると、"robust"という単語を、あるものの性質やキャラクターに関してその強さ(strength)を言及したものであると考えたときに、上記の例のような数や量の大きさ(magnitude)に言及した用法は果たしてスタンダードな用法なのだろうか、という疑問です。
これはなかなかチャレンジングな命題で、しばらく色々な辞書(シソーラスを含めて)に当たってみた結果、あまり頻繁に用いられる用法ではなさそうであるが、スタンダードではないとも言えないようである、という結論に達しました。
例えば、American Heritage Dictionaryでは、
Substantial in amount: robust gains in stock prices.
というように、用例と共に載せています。(このような説明はMerriam-Webster Dictionaryやそのほかの辞書には見られないのですが。)
また、コーパスを当たってみますと、"attendance"の類語として見ると、
robust presence
robust turnout
robust crowd
robust audience
などの実例が少数ながら見られ、数に関する修飾語として用いられていることが分かります。
よくよく考えてみると、数は力なり、で、数が大きい、多いということは、強さの象徴でもあるのですが。
ちなみに、“robust”の語源はラテン語で樫の木を意味するroburから来ており、硬く強い材質の木であることが意味上も受け継がれているようです。
第2波とも言われる感染者の増加が各国で懸念されている中、アメリカでも感染者の急増が見られています。
共和党のペンス副大統領がスピーチを行ったテキサス州での集会では、2,000人以上の出席者が参加する大規模イベントとなりましたが、イベント中、100人以上からなる合唱団がマスクを着用せず合唱のパフォーマンスを披露するという内容が報じられ、物議を醸しています。
Washington (CNN) — A choir of more than 100 people performed without masks at a robustly attended event in Texas at the First Baptist Church on Sunday that featured a speech by Vice President Mike Pence.
Nearly 2,200 people attended the "Celebrate Freedom Rally," in the Lone Star State, according to rally organizers, which has seen a severe surge in coronavirus cases since easing restrictions. The venue capacity for the indoor event was close to 3,000 attendees, organizers say.
Throughout the service, the members of the choir sang at full volume, behind an orchestra. Between songs, the choir members put their masks back on when they sat down, according to pool reports from the event. The members of the choir had space between them, but it was not clear if it was the recommended six feet.
(Jamie Ehrlich. Choir of more than 100 people perform without masks at Pence event. CNN. June 28, 2020.)
ご存知のように、コーラスやカラオケ、音楽のライブ演奏等は集団感染が発生しやすい、リスクの高い活動とされているところです。
最近も新聞を読んでいますと、団員がステージで密集しないよう2メートル以上の距離をあけて少ないメンバーで着席し、それぞれのプレーヤーの前には飛沫防止の透明カーテンを置いているオーケストラ公演の記事や、能の地謡がマスクを着用している写真など、見るも痛々しい感じがします。
しかしながら、このような対応策を取らざるを得ないのが現実で、記事で報じられているような、100人以上の合唱団がマスクをせずに大きな声で歌唱するというのはちょっと日本では考えられない出来事でしょう。
さて、今日気になった表現ですが、
at a robustly attended event in Texas
という部分に着目してみました。
言わんとするところは分かるんですが、"robust(ly)"という修飾語に疑問を覚えたというところです。
ご存知のように、"robust"というのは、頑健な、とか頑丈な、しっかりした、というのが主要な意味で(robust architecture、など)、その他としては活発な、とか活況のある、という意味(robust economy、など)、また味覚に関して豊潤である、とかコクがある、フルボディーの、といった意味(robust flavor of freshly brewed coffee、等)で使われます。
ロバスト設計とか、ロバストネス、ロバストデザインなど、カタカナ語としても定着しつつある単語です。つまり、ロバスト("robust")、イコール、ストロング("strong")と思って差し支えないのですが、上記で取り上げた"robustly attended"はイベントの出席者の数が多かったということを指していることは文脈から読み取れるものの、形容(修飾)としてピンと来なかったということがあります。
言い換えると、"robust"という単語を、あるものの性質やキャラクターに関してその強さ(strength)を言及したものであると考えたときに、上記の例のような数や量の大きさ(magnitude)に言及した用法は果たしてスタンダードな用法なのだろうか、という疑問です。
これはなかなかチャレンジングな命題で、しばらく色々な辞書(シソーラスを含めて)に当たってみた結果、あまり頻繁に用いられる用法ではなさそうであるが、スタンダードではないとも言えないようである、という結論に達しました。
例えば、American Heritage Dictionaryでは、
Substantial in amount: robust gains in stock prices.
というように、用例と共に載せています。(このような説明はMerriam-Webster Dictionaryやそのほかの辞書には見られないのですが。)
また、コーパスを当たってみますと、"attendance"の類語として見ると、
robust presence
robust turnout
robust crowd
robust audience
などの実例が少数ながら見られ、数に関する修飾語として用いられていることが分かります。
よくよく考えてみると、数は力なり、で、数が大きい、多いということは、強さの象徴でもあるのですが。
ちなみに、“robust”の語源はラテン語で樫の木を意味するroburから来ており、硬く強い材質の木であることが意味上も受け継がれているようです。
2020年6月26日金曜日
swing states
以前取り上げたことがあったかな?と思って振り返ってみましたが、取り上げていなかったようです。
今日の単語は、"swing states"です。
ご存知の方には釈迦に説法ですが、"swing states"というのは、アメリカ大統領選で共和党と民主党の支持が拮抗している州を指し、日本では激戦州などと訳されます。
今年11月に予定されている大統領選では、トランプ氏が民主党のバイデン候補に水をあけられている状況が明らかになっています。
President Donald Trump is trailing presumptive Democratic nominee Joe Biden in six crucial swing states – all of which Trump won in 2016 – according to a New York Times/Siena College poll released Thursday.
The poll found Biden ahead of Trump 47%-36% in Michigan, 49%-38% in Wisconsin, 50%-40% in Pennsylvania, 47%-41% in Florida, 48%-41% in Arizona and 49%-40% in North Carolina.
Narrow wins in those six states were crucial to Trump's defeat of Hillary Clinton four years ago. He won Michigan, Wisconsin and Pennsylvania by less than 1 percentage point each in 2016. He won Florida by about 1 point, and Arizona and North Carolina by about 4 points.
The 2020 election is still more than four months away, but Trump's chances of winning the Electoral College would become slim or impossible if even half of those states break for Biden.
(William Cummings. Trump trails Biden in Michigan, Wisconsin, Pennsylvania, Florida, North Carolina and Arizona, poll finds. June 25, 2020.)
USA Today紙の記事から引用しましたが、直近で行われた世論調査によれば、トランプ大統領は、2016年の大統領選で僅差勝利したミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニア、フロリダ、アリゾナ、そしてノースカロライナの6州で、いずれもバイデン氏に大差をつけられている模様です。
「激戦州」は時代によって変わるようですが、上記の6つの州はいずれも歴史的に"swing states"とされてきた州で、トランプ氏はこれらの州を落としてしまうと再選は厳しいものになると考えられます。
尤も、トランプ氏は今回の世論調査について、フェイクだとツイッター上で豪語しているようですが。
今日の単語は、"swing states"です。
ご存知の方には釈迦に説法ですが、"swing states"というのは、アメリカ大統領選で共和党と民主党の支持が拮抗している州を指し、日本では激戦州などと訳されます。
今年11月に予定されている大統領選では、トランプ氏が民主党のバイデン候補に水をあけられている状況が明らかになっています。
President Donald Trump is trailing presumptive Democratic nominee Joe Biden in six crucial swing states – all of which Trump won in 2016 – according to a New York Times/Siena College poll released Thursday.
The poll found Biden ahead of Trump 47%-36% in Michigan, 49%-38% in Wisconsin, 50%-40% in Pennsylvania, 47%-41% in Florida, 48%-41% in Arizona and 49%-40% in North Carolina.
Narrow wins in those six states were crucial to Trump's defeat of Hillary Clinton four years ago. He won Michigan, Wisconsin and Pennsylvania by less than 1 percentage point each in 2016. He won Florida by about 1 point, and Arizona and North Carolina by about 4 points.
The 2020 election is still more than four months away, but Trump's chances of winning the Electoral College would become slim or impossible if even half of those states break for Biden.
(William Cummings. Trump trails Biden in Michigan, Wisconsin, Pennsylvania, Florida, North Carolina and Arizona, poll finds. June 25, 2020.)
USA Today紙の記事から引用しましたが、直近で行われた世論調査によれば、トランプ大統領は、2016年の大統領選で僅差勝利したミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニア、フロリダ、アリゾナ、そしてノースカロライナの6州で、いずれもバイデン氏に大差をつけられている模様です。
「激戦州」は時代によって変わるようですが、上記の6つの州はいずれも歴史的に"swing states"とされてきた州で、トランプ氏はこれらの州を落としてしまうと再選は厳しいものになると考えられます。
尤も、トランプ氏は今回の世論調査について、フェイクだとツイッター上で豪語しているようですが。
2020年6月25日木曜日
Jell-O
アメリカの対中政策に関する評論記事からの引用です。
Since President Nixon’s historic “opening to China” in 1972 and President Carter’s formal recognition of the communist regime in Beijing, U.S. policy has been to promote trade and investment with China. I myself was a leader of the first U.S. trade mission to Beijing in 1982. Our strategy then and thereafter was founded on the notion that free global trade and investment would stimulate not only economic growth but also the spread of democracy and peace.
(中略)
Clinton campaigned for President under the slogan “no coddling of dictators from Baghdad to Beijing,” but as President adopted a policy of “positive engagement,” eventually negotiating to bring China into the World Trade Organization. Of China’s attempts to censor the internet, he joked: “I’d like to see them try to control the internet. It will be like trying to nail jello to the wall.”
(Clyde Prestowitz. America’s Big China Mistake. Washington Monthly. June 7, 2020.)
共産主義国である中国を、自由主義経済などの西側諸国のイデオロギーに取り込むか。現在に至るまでの米国の試みは残念ながら失敗しているという見方です。
約20年前、クリントン政権の時代には、インターネットの普及が中国における言論の自由を促進するという期待がありました。期待も虚しく、中国国内ではネットの言論も規制される状況にあるという見方が支配的です。
当時のクリントン大統領の発言が引用されています。
“I’d like to see them try to control the internet. It will be like trying to nail jello to the wall.”
後半部分の、”nail jello to the wall”という表現をご存知でしょうか。
手元にあるCollins Cobuild Dictionary of Idiomsの解説によれば、
If you say that something is like trying to nail Jell-O to the wall, you are emphasizing that it is extremely difficult or impossible.
ということなんですが、では“Jell-O”というのは何かというと、ゼリーのお菓子の商品名(商標)なんだそうです。
この表現にはバリエーションがあって、“...to the wall”は、“...to the tree”だったり、イギリスでは“Jell-O”ではなくて、“jelly”を使う、など、違いがあります。
動詞の“nail”がポイントでしょうか、ゼリーみたいな軟らかいものを壁や木に打ち付けて固定することなど出来ませんから、ある意味、強意表現の一種とも言えます。
Since President Nixon’s historic “opening to China” in 1972 and President Carter’s formal recognition of the communist regime in Beijing, U.S. policy has been to promote trade and investment with China. I myself was a leader of the first U.S. trade mission to Beijing in 1982. Our strategy then and thereafter was founded on the notion that free global trade and investment would stimulate not only economic growth but also the spread of democracy and peace.
(中略)
Clinton campaigned for President under the slogan “no coddling of dictators from Baghdad to Beijing,” but as President adopted a policy of “positive engagement,” eventually negotiating to bring China into the World Trade Organization. Of China’s attempts to censor the internet, he joked: “I’d like to see them try to control the internet. It will be like trying to nail jello to the wall.”
(Clyde Prestowitz. America’s Big China Mistake. Washington Monthly. June 7, 2020.)
共産主義国である中国を、自由主義経済などの西側諸国のイデオロギーに取り込むか。現在に至るまでの米国の試みは残念ながら失敗しているという見方です。
約20年前、クリントン政権の時代には、インターネットの普及が中国における言論の自由を促進するという期待がありました。期待も虚しく、中国国内ではネットの言論も規制される状況にあるという見方が支配的です。
当時のクリントン大統領の発言が引用されています。
“I’d like to see them try to control the internet. It will be like trying to nail jello to the wall.”
後半部分の、”nail jello to the wall”という表現をご存知でしょうか。
手元にあるCollins Cobuild Dictionary of Idiomsの解説によれば、
If you say that something is like trying to nail Jell-O to the wall, you are emphasizing that it is extremely difficult or impossible.
ということなんですが、では“Jell-O”というのは何かというと、ゼリーのお菓子の商品名(商標)なんだそうです。
この表現にはバリエーションがあって、“...to the wall”は、“...to the tree”だったり、イギリスでは“Jell-O”ではなくて、“jelly”を使う、など、違いがあります。
動詞の“nail”がポイントでしょうか、ゼリーみたいな軟らかいものを壁や木に打ち付けて固定することなど出来ませんから、ある意味、強意表現の一種とも言えます。
2020年6月24日水曜日
plunk down
新型コロナウィルス感染症の拡大の影響で、テレワークやリモートワークを採用する企業が増えてきています。
サラリーマンも通勤の苦痛から解放されたり、上司の顔を見なくても良いのが幸い、などと歓迎する向きはありますが、実は隠れたコストというのもある、という記事に目が留まりました。
If you thought working at home was going to save you money, think again.
Despite the potential for savings on commuting-related expenses, dry cleaning bills, and shopping for work attire, there are other less-obvious expenses that can really pile up while working from home.
Many employees may not realize they are likely plunking down significant change on below-the-radar things like electricity bills, phone data plans, supplies for their home office, and personal device wear and tear, says Patrick Donnelly, vice president and senior wealth advisor at The Colony Group, a registered investment advisor.
(中略)
Then there are even more under-the-surface expenses—like the potential cost of increased wear and tear on employees’ personal technology devices. “Home computers, laptops, and tablets are getting worked harder than ever and these devices will not last as they otherwise would,” Donnelly says.
(Cheryl Winokur Munk. The Hidden Expense Of Working At Home. Forbes. June 22, 2020.)
会社(オフィス)に出社しないリモートワークでは、通勤交通費がセーブできることが大きいことは言うまでもありませんが、その他、ビジネスに適した服装や靴の購入費用などを抑えられるという側面もあります。
一方、リモートワークが続くことで見過ごされがちなのはネット環境にかかる通信費の他、光熱費でしょうか。PC電源は元より、これから暑くなってくると自宅のエアコンも入れっぱなしでないと辛いということもあるでしょうし、出勤していた時間帯はかからなかったコストがのしかかってくるとも言えます。
さて、記事の中で、
Many employees may not realize they are likely plunking down significant change on below-the-radar things like electricity bills...
というくだりがあるのですが、"plunk down"という動詞句が見慣れないものだったので辞書を引いてみると、
(金を)(ポンとほうり出して)払う
という意味でした。(ランダムハウス英和辞書)
"plunk"にはそもそも、弦を弾く、ポロンとかき鳴らす("pluck"という動詞と同根)という意味があるのは知っていましたが、お金を払うという意味があるとは知りませんでした。
弦楽器をつま弾く際の音と、コインや札束といった実際のお金を置く(放り出す)際の音に類似性を見出した故にこのような意味に発展したのだろうと想像します。
今後、感染症対策の一環でキャッシュレス社会がますます進んでいくことが予想される中、お金を払うこととその際の音というものの結びつきも希薄になると考えると、"plunk down"という表現を後世の人たちはどのように想像することになるのだろうかと、いささかどうでもいいようなことを考えたりします。
サラリーマンも通勤の苦痛から解放されたり、上司の顔を見なくても良いのが幸い、などと歓迎する向きはありますが、実は隠れたコストというのもある、という記事に目が留まりました。
If you thought working at home was going to save you money, think again.
Despite the potential for savings on commuting-related expenses, dry cleaning bills, and shopping for work attire, there are other less-obvious expenses that can really pile up while working from home.
Many employees may not realize they are likely plunking down significant change on below-the-radar things like electricity bills, phone data plans, supplies for their home office, and personal device wear and tear, says Patrick Donnelly, vice president and senior wealth advisor at The Colony Group, a registered investment advisor.
(中略)
Then there are even more under-the-surface expenses—like the potential cost of increased wear and tear on employees’ personal technology devices. “Home computers, laptops, and tablets are getting worked harder than ever and these devices will not last as they otherwise would,” Donnelly says.
(Cheryl Winokur Munk. The Hidden Expense Of Working At Home. Forbes. June 22, 2020.)
会社(オフィス)に出社しないリモートワークでは、通勤交通費がセーブできることが大きいことは言うまでもありませんが、その他、ビジネスに適した服装や靴の購入費用などを抑えられるという側面もあります。
一方、リモートワークが続くことで見過ごされがちなのはネット環境にかかる通信費の他、光熱費でしょうか。PC電源は元より、これから暑くなってくると自宅のエアコンも入れっぱなしでないと辛いということもあるでしょうし、出勤していた時間帯はかからなかったコストがのしかかってくるとも言えます。
さて、記事の中で、
Many employees may not realize they are likely plunking down significant change on below-the-radar things like electricity bills...
というくだりがあるのですが、"plunk down"という動詞句が見慣れないものだったので辞書を引いてみると、
(金を)(ポンとほうり出して)払う
という意味でした。(ランダムハウス英和辞書)
"plunk"にはそもそも、弦を弾く、ポロンとかき鳴らす("pluck"という動詞と同根)という意味があるのは知っていましたが、お金を払うという意味があるとは知りませんでした。
弦楽器をつま弾く際の音と、コインや札束といった実際のお金を置く(放り出す)際の音に類似性を見出した故にこのような意味に発展したのだろうと想像します。
今後、感染症対策の一環でキャッシュレス社会がますます進んでいくことが予想される中、お金を払うこととその際の音というものの結びつきも希薄になると考えると、"plunk down"という表現を後世の人たちはどのように想像することになるのだろうかと、いささかどうでもいいようなことを考えたりします。
2020年6月23日火曜日
moggy
自宅で猫を飼っています。6~7年前、里親募集していた子猫を引き取りました。子供が可愛がっています。
ところで猫好きな男性は、女性にはあまり魅力に映らない(!?)、という報告があるそうです。
男性のプロフィール写真で、猫を抱いて映っている写真と、猫と一緒ではない、ソロでの写真とを比較すると、女性が抱く印象は、猫と一緒でない方が好印象であるという結果が出ているそうです。
Women looking for romance on dating apps perceive are less likely to swipe right if their potential suitor is holding a cat, according to new research.
The study, carried out by scientists at the College of Veterinary Medicine and Biomedical Sciences, at Colorado State University, found that profile photos of men holding cats were seen as 'less dateable' and 'less masculine' by many women.
Men who held a confident pose and appeared alone in their profile pic were more likely to attract women, the survey found.
(Emily Webber. Dating cat-astrophe! Women are less likely to 'swipe right' for men whose profile picture shows them cuddling a moggy - saying it makes them appear 'less masculine' and 'less dateable.' The Daily Mail. June 20, 2020.)
猫と一緒でない写真の方が、より男性らしさを感じさせる、ということのようですが・・・。
この話題は様々なニュースメディアで報じられているもので、私も最初はCNNで見つけたのですが、上記の引用は英紙デーリーメールからです。
記事のタイトルで、
moggy
という単語が使われています。
他紙では"cat"ですが、"moggy"というのは、イギリス英語で猫を意味する単語だということを初めて知りました。
なぜ、"moggy"なのでしょうか。
語源欄には、女性のファーストネームMargaretから来ているという説明がありますが、なぜマーガレットさんが猫を指すようになるのか、不思議です。
"moggy"にはいくつかバリエーションがあって、"maggie"、"mog"、"margie"、等、いずれもMargaretという名前の短縮形とされていますが、一説によれば、牛(cow)のことを愛着を込めて呼ぶ際に"moggy"等の呼称を使っていたそうです。
牛に対しての呼称が猫に使われるようになった背景はよく分かりません。
猫にはオス、メス限らず、やはり女性のイメージがあるように思います。
ところで猫好きな男性は、女性にはあまり魅力に映らない(!?)、という報告があるそうです。
男性のプロフィール写真で、猫を抱いて映っている写真と、猫と一緒ではない、ソロでの写真とを比較すると、女性が抱く印象は、猫と一緒でない方が好印象であるという結果が出ているそうです。
Women looking for romance on dating apps perceive are less likely to swipe right if their potential suitor is holding a cat, according to new research.
The study, carried out by scientists at the College of Veterinary Medicine and Biomedical Sciences, at Colorado State University, found that profile photos of men holding cats were seen as 'less dateable' and 'less masculine' by many women.
Men who held a confident pose and appeared alone in their profile pic were more likely to attract women, the survey found.
(Emily Webber. Dating cat-astrophe! Women are less likely to 'swipe right' for men whose profile picture shows them cuddling a moggy - saying it makes them appear 'less masculine' and 'less dateable.' The Daily Mail. June 20, 2020.)
猫と一緒でない写真の方が、より男性らしさを感じさせる、ということのようですが・・・。
この話題は様々なニュースメディアで報じられているもので、私も最初はCNNで見つけたのですが、上記の引用は英紙デーリーメールからです。
記事のタイトルで、
moggy
という単語が使われています。
他紙では"cat"ですが、"moggy"というのは、イギリス英語で猫を意味する単語だということを初めて知りました。
なぜ、"moggy"なのでしょうか。
語源欄には、女性のファーストネームMargaretから来ているという説明がありますが、なぜマーガレットさんが猫を指すようになるのか、不思議です。
"moggy"にはいくつかバリエーションがあって、"maggie"、"mog"、"margie"、等、いずれもMargaretという名前の短縮形とされていますが、一説によれば、牛(cow)のことを愛着を込めて呼ぶ際に"moggy"等の呼称を使っていたそうです。
牛に対しての呼称が猫に使われるようになった背景はよく分かりません。
猫にはオス、メス限らず、やはり女性のイメージがあるように思います。
2020年6月22日月曜日
throw up the sponge
ボクシングの試合でリングサイドからタオルを投げ込むのは敗北を認めての行為であることはよく知られています。
映画やドラマのワンシーンの影響でしょうか、圧倒的に攻勢にさらされ、勝つ見込みなく、試合続行には生命の危険すらあるという時、セコンドがタオルを投げ込み、試合終了。そんなイメージです。
以前も取り上げましたが、
throw in the towel
という成句は、タオルを投げ込む行為を文字通りに表現したものであると同時に、敗北を認めるという意味合いで比喩的に用いられる表現です。
ところで、この"throw in the towel"とよく似た表現に、
throw up the sponge
というものが存在するということを最近になって知りました。
ある小説を読んでいたところ使われていた表現です。
調べてみると、"throw up the sponge"(もしくは、"chuck up the sponge")は、"throw in the towel"よりも昔から使われていたらしいということでした。
Anthony Barile, the owner of this wood-oven veteran where other pizza-makers honed their skills, said he was tired and throwing in the towel after nearly 26 years. Food, March 27.
In boxing, a fighter’s cornerman throwing a towel into the ring has traditionally been a sign of surrender, quitting or giving up. But in earlier times, it was a sponge that was hurled, and “chuck up the sponge” was the more common phrase.
A 1911 article in The New York Times about a fight in the Bronx used both terms: “His seconds threw a towel in the ring announcing defeat at the beginning of the fifth round” and “Johnson’s seconds threw up the sponge for their man and saved him a further beating.”
(Victor Mather. We Use Sports Terms All the Time. But Where Do They Come From? August 6, 2018.)
タオルとスポンジとの間に厳密な違いや区別があるのか、ボクシング用語としての知識がありませんが、"the sponge"も選手の体から出る汗を吸い取るものであり、タオルと目的は同じようです。
その後、なぜか理由は分かりませんが、"throw in the towel"の方が表現としてはポピュラーなものになったのでしょうか、"throw up the sponge"の実例はあまり多く見られません。
映画やドラマのワンシーンの影響でしょうか、圧倒的に攻勢にさらされ、勝つ見込みなく、試合続行には生命の危険すらあるという時、セコンドがタオルを投げ込み、試合終了。そんなイメージです。
以前も取り上げましたが、
throw in the towel
という成句は、タオルを投げ込む行為を文字通りに表現したものであると同時に、敗北を認めるという意味合いで比喩的に用いられる表現です。
ところで、この"throw in the towel"とよく似た表現に、
throw up the sponge
というものが存在するということを最近になって知りました。
ある小説を読んでいたところ使われていた表現です。
調べてみると、"throw up the sponge"(もしくは、"chuck up the sponge")は、"throw in the towel"よりも昔から使われていたらしいということでした。
Anthony Barile, the owner of this wood-oven veteran where other pizza-makers honed their skills, said he was tired and throwing in the towel after nearly 26 years. Food, March 27.
In boxing, a fighter’s cornerman throwing a towel into the ring has traditionally been a sign of surrender, quitting or giving up. But in earlier times, it was a sponge that was hurled, and “chuck up the sponge” was the more common phrase.
A 1911 article in The New York Times about a fight in the Bronx used both terms: “His seconds threw a towel in the ring announcing defeat at the beginning of the fifth round” and “Johnson’s seconds threw up the sponge for their man and saved him a further beating.”
(Victor Mather. We Use Sports Terms All the Time. But Where Do They Come From? August 6, 2018.)
タオルとスポンジとの間に厳密な違いや区別があるのか、ボクシング用語としての知識がありませんが、"the sponge"も選手の体から出る汗を吸い取るものであり、タオルと目的は同じようです。
その後、なぜか理由は分かりませんが、"throw in the towel"の方が表現としてはポピュラーなものになったのでしょうか、"throw up the sponge"の実例はあまり多く見られません。
2020年6月19日金曜日
Juneteenth
今日、6月19日金曜日ですが、アメリカでは企業によっては休日で、仕事はお休みという会社勤めの人がいます。
そして今年はそのようなお休みの人が例年よりも増えているということなんですが、その背景とは・・・。
Uber will honor Juneteenth and elections days around the world as company holidays, CEO Dara Khosrowshahi announced Wednesday.
“To embrace the meaning of #Juneteenth this year, we’re making it a paid day off. We encourage employees to spend it in a way that allows them to stand up against racism, whether that’s by learning, participating in a community action, or reflecting on how to make change,” Khosrowshahi said on Twitter.
(中略)
Uber’s announcement is the latest effort among tech companies to support and honor the Black community. Twitter and Square CEO Jack Dorsey announced last week that Juneteenth would become a company holiday.
Juneteenth celebrates the end of slavery in the United States. A combination of the words June and nineteenth, the holiday commemorates when an U.S. army general informed enslaved African Americans in Galveston, Texas on June 19, 1865 that the Civil War had ended and they were free.
(Jessica Bursztynsky. Uber is making Juneteenth and election days around the world company holidays. NPR. June 17, 2020.)
6月19日をアメリカにおける奴隷解放の日として祝う慣例はこれまでからあったようですが、今年は特にミネソタ州での黒人死亡事件をきっかけとした抗議デモの拡大を受けて、この6月19日を有給休暇の休日扱いをする動きが、大手企業などを始めとして拡大しているそうです。
"Juneteenth"という見慣れない単語は、6月を意味するJuneと、19日を意味するnineteenthを1つにした、いわゆるかばん語でした。
歴史的には、1863年、リンカーンによる黒人奴隷解放宣言が有名ですが、その後1865年1月に合衆国憲法改正(憲法修正第13条、奴隷解放)、同年6月19日はテキサス州Galvestonで奴隷制が終わったことが公式に宣言されたということで、記念日となっているということです。
そして今年はそのようなお休みの人が例年よりも増えているということなんですが、その背景とは・・・。
Uber will honor Juneteenth and elections days around the world as company holidays, CEO Dara Khosrowshahi announced Wednesday.
“To embrace the meaning of #Juneteenth this year, we’re making it a paid day off. We encourage employees to spend it in a way that allows them to stand up against racism, whether that’s by learning, participating in a community action, or reflecting on how to make change,” Khosrowshahi said on Twitter.
(中略)
Uber’s announcement is the latest effort among tech companies to support and honor the Black community. Twitter and Square CEO Jack Dorsey announced last week that Juneteenth would become a company holiday.
Juneteenth celebrates the end of slavery in the United States. A combination of the words June and nineteenth, the holiday commemorates when an U.S. army general informed enslaved African Americans in Galveston, Texas on June 19, 1865 that the Civil War had ended and they were free.
(Jessica Bursztynsky. Uber is making Juneteenth and election days around the world company holidays. NPR. June 17, 2020.)
6月19日をアメリカにおける奴隷解放の日として祝う慣例はこれまでからあったようですが、今年は特にミネソタ州での黒人死亡事件をきっかけとした抗議デモの拡大を受けて、この6月19日を有給休暇の休日扱いをする動きが、大手企業などを始めとして拡大しているそうです。
"Juneteenth"という見慣れない単語は、6月を意味するJuneと、19日を意味するnineteenthを1つにした、いわゆるかばん語でした。
歴史的には、1863年、リンカーンによる黒人奴隷解放宣言が有名ですが、その後1865年1月に合衆国憲法改正(憲法修正第13条、奴隷解放)、同年6月19日はテキサス州Galvestonで奴隷制が終わったことが公式に宣言されたということで、記念日となっているということです。
2020年6月18日木曜日
AuntとUncle
美味しそうなホットケーキの絵柄と共に描かれた、巻き毛と赤い口紅が特徴的な黒人女性は笑っています。蝶ネクタイを締めた黒人男性は誠実そうに見え、その微かな笑みには親しみも覚えます。
いずれも米国内で販売されている食料品のパッケージです。黒人女性を描いたものは130年の永きに渡って販売されているホットケーキシロップで、黒人男性を描いたパッケージも大手食品メーカーのものです。
日本人の私にはあまり違和感も感じない、これらの商品パッケージですが、アメリカにおいては黒人に対するステレオタイプ的な見方を反映したものとして、見直しがされています。
きっかけは、ミネソタ州での事件に端を発し、全米に拡大する黒人人種差別抗議デモです。
Aunt Jemima will change its name and logo, acknowledging the brand's origins rooted in a racial stereotype, which hearkens back to nostalgia for the South in the times of slavery.
Toward the end of 2020, the 130-year-old pancake and syrup brand will remove the image of "Aunt Jemima" from packaging, parent companies Quaker Foods and PepsiCo said on Wednesday. The name change will follow.
"We recognize Aunt Jemima's origins are based on a racial stereotype," Kristin Kroepfl, chief marketing officer at Quaker Foods North America, said in a statement. "While work has been done over the years to update the brand in a manner intended to be appropriate and respectful, we realize those changes are not enough."
Following the news, food giant Mars also said it's "evaluating all possibilities" for changing its Uncle Ben's brand, which has long been criticized as a stereotype.
(Alina Selyukh. Aunt Jemima Will Change Name, Image As Brands Confront Racial Stereotypes. NPR. June 17, 2020.)
黒人のモデルがこうした食料品等のパッケージに使われている事例はこれらに留まらないようです。問題はその描き方であり、黒人を白人よりも一段下に見下しているとみなされる要素があるということのようです。
その背景には、奴隷制の時代に、黒人は白人にサービスを提供する下僕のように扱われてきたという歴史があります。
ところで、これらのパッケージのキャラクターは、"Aunt Jemima"とか、"Uncle Ben"といった名前が付けられているのですが、この"aunt"、"uncle"にも、差別的な響きがあるということについては、これまた意識したことがありませんでした。
Both Aunt Jemima and Uncle Ben's have also been criticized for relying on titles "aunt" and "uncle," which historically were used by people who resisted applying the honorific "Mr." or "Ms." to an African American person.
(ibid.)
記事によりますと、かつて白人の中には黒人を対等に見なすことを拒否するあまり、"Mr."や"Ms."という敬称を使わず、敢えて"Unle"や"Aunt"という呼称を使う傾向があったということです。
"Uncle"はおじ、おじさん、"aunt"はおば、おばさん、で、小生は中学生になって初めて英語を学校で習った時に、最初に教わる単語のうちの1つだったことを思い出します。
勿論ですが、差別的な響きのある単語であると教わった記憶はありません。
いずれも米国内で販売されている食料品のパッケージです。黒人女性を描いたものは130年の永きに渡って販売されているホットケーキシロップで、黒人男性を描いたパッケージも大手食品メーカーのものです。
日本人の私にはあまり違和感も感じない、これらの商品パッケージですが、アメリカにおいては黒人に対するステレオタイプ的な見方を反映したものとして、見直しがされています。
きっかけは、ミネソタ州での事件に端を発し、全米に拡大する黒人人種差別抗議デモです。
Aunt Jemima will change its name and logo, acknowledging the brand's origins rooted in a racial stereotype, which hearkens back to nostalgia for the South in the times of slavery.
Toward the end of 2020, the 130-year-old pancake and syrup brand will remove the image of "Aunt Jemima" from packaging, parent companies Quaker Foods and PepsiCo said on Wednesday. The name change will follow.
"We recognize Aunt Jemima's origins are based on a racial stereotype," Kristin Kroepfl, chief marketing officer at Quaker Foods North America, said in a statement. "While work has been done over the years to update the brand in a manner intended to be appropriate and respectful, we realize those changes are not enough."
Following the news, food giant Mars also said it's "evaluating all possibilities" for changing its Uncle Ben's brand, which has long been criticized as a stereotype.
(Alina Selyukh. Aunt Jemima Will Change Name, Image As Brands Confront Racial Stereotypes. NPR. June 17, 2020.)
黒人のモデルがこうした食料品等のパッケージに使われている事例はこれらに留まらないようです。問題はその描き方であり、黒人を白人よりも一段下に見下しているとみなされる要素があるということのようです。
その背景には、奴隷制の時代に、黒人は白人にサービスを提供する下僕のように扱われてきたという歴史があります。
ところで、これらのパッケージのキャラクターは、"Aunt Jemima"とか、"Uncle Ben"といった名前が付けられているのですが、この"aunt"、"uncle"にも、差別的な響きがあるということについては、これまた意識したことがありませんでした。
Both Aunt Jemima and Uncle Ben's have also been criticized for relying on titles "aunt" and "uncle," which historically were used by people who resisted applying the honorific "Mr." or "Ms." to an African American person.
(ibid.)
記事によりますと、かつて白人の中には黒人を対等に見なすことを拒否するあまり、"Mr."や"Ms."という敬称を使わず、敢えて"Unle"や"Aunt"という呼称を使う傾向があったということです。
"Uncle"はおじ、おじさん、"aunt"はおば、おばさん、で、小生は中学生になって初めて英語を学校で習った時に、最初に教わる単語のうちの1つだったことを思い出します。
勿論ですが、差別的な響きのある単語であると教わった記憶はありません。
2020年6月17日水曜日
mace
全米に広がる黒人差別反対デモに関する記事の中で、見慣れない表現に出くわしました。
"macing"、"maced"、など、恐らく"mace"という動詞の変化形と思しき単語ですが、"mace"という動詞を見たことも聞いたこともありませんでしたので、辞書を引くことに。
記事を引用します。
Video footage captured at a Seattle protest on May 30 showed a small child in distress.
The footage was posted online by a man named Evan Hreha, who attended the Black Lives Matter demonstration and said the child in the video had just been maced by the police.
“First person maced is a little girl,” Hreha wrote in a caption alongside the video, originally mistaking the young child for a girl. “What the f— is wrong with you people.”
(Rosie Perper. The Seattle police were accused of macing a 7-year-old boy at a Black Lives Matter protest. The protester who filmed the aftermath was held in jail for 2 days a week later. Business Insider Australia. June 16, 2020.)
黒人差別反対デモに参加していた人たちの中に子供も混じっていたようですが、記事の写真では子供の顔に牛乳と思しき液体を注ぐ大人が写っています。
恐らくは警官によって吹きかけられた催涙スプレーによって引き起こされた症状を緩和するために洗浄を施している様子だと思われました。写真のキャプションには、
Video captured at a Seattle Black Lives Matter protest on May 30 showed a young boy who was said to have been sprayed with mace by the police.
(ibid.)
とあり、"mace"は名詞としても使われることが分かります。
ランダムハウス英和辞書を引いてみますと、
メース(Chemical Mace):非致死性散布剤;精製催涙ガスと溶剤から成り、主に目と皮膚を刺激する;特に暴徒鎮圧用
とあり、やはり催涙スプレーの類であるということが分かりました。
ところで、このメース(Mace)というのは商標名であり、語頭を大文字にするのが普通ですが、メースと言えば催涙スプレーというのがほとんど定着しているからでしょうか、語頭を大文字にしない、一般的な名詞や動詞としても用いられるようになったもののようです。
“Mace”という商標名は、中世の武器で、棍棒のような把手に棘のような突起のあるヘッドがついた、“mace”から来ているようです。
"macing"、"maced"、など、恐らく"mace"という動詞の変化形と思しき単語ですが、"mace"という動詞を見たことも聞いたこともありませんでしたので、辞書を引くことに。
記事を引用します。
Video footage captured at a Seattle protest on May 30 showed a small child in distress.
The footage was posted online by a man named Evan Hreha, who attended the Black Lives Matter demonstration and said the child in the video had just been maced by the police.
“First person maced is a little girl,” Hreha wrote in a caption alongside the video, originally mistaking the young child for a girl. “What the f— is wrong with you people.”
(Rosie Perper. The Seattle police were accused of macing a 7-year-old boy at a Black Lives Matter protest. The protester who filmed the aftermath was held in jail for 2 days a week later. Business Insider Australia. June 16, 2020.)
黒人差別反対デモに参加していた人たちの中に子供も混じっていたようですが、記事の写真では子供の顔に牛乳と思しき液体を注ぐ大人が写っています。
恐らくは警官によって吹きかけられた催涙スプレーによって引き起こされた症状を緩和するために洗浄を施している様子だと思われました。写真のキャプションには、
Video captured at a Seattle Black Lives Matter protest on May 30 showed a young boy who was said to have been sprayed with mace by the police.
(ibid.)
とあり、"mace"は名詞としても使われることが分かります。
ランダムハウス英和辞書を引いてみますと、
メース(Chemical Mace):非致死性散布剤;精製催涙ガスと溶剤から成り、主に目と皮膚を刺激する;特に暴徒鎮圧用
とあり、やはり催涙スプレーの類であるということが分かりました。
ところで、このメース(Mace)というのは商標名であり、語頭を大文字にするのが普通ですが、メースと言えば催涙スプレーというのがほとんど定着しているからでしょうか、語頭を大文字にしない、一般的な名詞や動詞としても用いられるようになったもののようです。
“Mace”という商標名は、中世の武器で、棍棒のような把手に棘のような突起のあるヘッドがついた、“mace”から来ているようです。
2020年6月16日火曜日
nerves
先日、米国市場が回復の兆しにあるかのような報道の記事を取り上げたのと相反するかのように、昨日読んだ記事では、週明けのウォールストリートでの株価急落を伝えています。
どうやら、コロナショック後の回復への期待は、第2波への恐れや未だ回復が見込めないビジネスと政府の支援への懐疑にかき消されてしまったようです。
The shockingly smooth ride on Wall Street is suddenly bumpy again.
Coronavirus fears are back, bringing an unwelcome return of the turbulence that rocked financial markets in March.
The Dow plunged 6.9% Thursday, managed a shaky rebound on Friday and promptly sold off again Monday as it briefly tumbled below 25,000 — before rapidly recovering once again.
Investors’ nerves make sense. The 44% spike in the S&P 500 since March 23 was overdone. The pandemic isn’t over. Nor is the economic pain from the crisis. And the recovery faces real challenges — including a potential second wave of infections — that weren’t being priced in.
The VIX volatility index has nearly doubled in the past week to levels unseen since late April. And the CNN Business Fear & Greed Index of market sentiment has flipped out of “greed” territory.
But the return of volatility is also a signal from Wall Street to Washington that its work to rescue the American economy isn’t nearly done.
“Markets are starting to believe more fiscal stimulus is needed, and soon,” Nicholas Colas, co-founder of DataTrek Research, wrote in a note to clients Monday.
(Wall Street to Washington: Way more emergency aid is needed. CNN. June 15, 2020.)
記事の中で、
Investors’ nerves make sense.
というくだりがあります。
株価急落について、投資家(investors)の"nerves"が影響しているということに一定の理解を示しています。
ここで複数形で使われている"nerves"は、神経過敏とか神経質、臆病、といった意味になるのですが、そもそも"nerve"とは医学・解剖学的に「神経」を指すところが、このような意味で使われるようになったのは、1890年頃からだそうです。(Online Etymology Dictionary)
辞書で"nerve"を引いてみると、神経の意味は元より、上述した、神経質や神経衰弱、さらに図々しさ、厚かましさ、図太さ(これらの意味の場合は、単数形)、勇気や度胸、頑強さ、といった、様々な意味があることが分かります。
ところで、"nerve"はラテン語を語源とするものですが、ラテン語nervusは腱(tendon)のことを意味するもので、古くは神経(nerve)と腱(tendon)が混同されていたらしいです。
"nerve"が頑強さといった、強さを意味するようになったのは、この腱が意味するところが影響しているそうです。
以前取り上げた、"strike a nerve"、"touch a raw nerve"の成句もご参考下さい。
どうやら、コロナショック後の回復への期待は、第2波への恐れや未だ回復が見込めないビジネスと政府の支援への懐疑にかき消されてしまったようです。
The shockingly smooth ride on Wall Street is suddenly bumpy again.
Coronavirus fears are back, bringing an unwelcome return of the turbulence that rocked financial markets in March.
The Dow plunged 6.9% Thursday, managed a shaky rebound on Friday and promptly sold off again Monday as it briefly tumbled below 25,000 — before rapidly recovering once again.
Investors’ nerves make sense. The 44% spike in the S&P 500 since March 23 was overdone. The pandemic isn’t over. Nor is the economic pain from the crisis. And the recovery faces real challenges — including a potential second wave of infections — that weren’t being priced in.
The VIX volatility index has nearly doubled in the past week to levels unseen since late April. And the CNN Business Fear & Greed Index of market sentiment has flipped out of “greed” territory.
But the return of volatility is also a signal from Wall Street to Washington that its work to rescue the American economy isn’t nearly done.
“Markets are starting to believe more fiscal stimulus is needed, and soon,” Nicholas Colas, co-founder of DataTrek Research, wrote in a note to clients Monday.
(Wall Street to Washington: Way more emergency aid is needed. CNN. June 15, 2020.)
記事の中で、
Investors’ nerves make sense.
というくだりがあります。
株価急落について、投資家(investors)の"nerves"が影響しているということに一定の理解を示しています。
ここで複数形で使われている"nerves"は、神経過敏とか神経質、臆病、といった意味になるのですが、そもそも"nerve"とは医学・解剖学的に「神経」を指すところが、このような意味で使われるようになったのは、1890年頃からだそうです。(Online Etymology Dictionary)
辞書で"nerve"を引いてみると、神経の意味は元より、上述した、神経質や神経衰弱、さらに図々しさ、厚かましさ、図太さ(これらの意味の場合は、単数形)、勇気や度胸、頑強さ、といった、様々な意味があることが分かります。
ところで、"nerve"はラテン語を語源とするものですが、ラテン語nervusは腱(tendon)のことを意味するもので、古くは神経(nerve)と腱(tendon)が混同されていたらしいです。
"nerve"が頑強さといった、強さを意味するようになったのは、この腱が意味するところが影響しているそうです。
以前取り上げた、"strike a nerve"、"touch a raw nerve"の成句もご参考下さい。
2020年6月15日月曜日
thuggery
アメリカ・ミネソタ州での警官による黒人男性の暴行死をきっかけに発生した抗議デモが世界にも飛び火していますが、イギリスの首都ロンドンではこの週末に人種差別に抗議するデモと極右団体が衝突する騒ぎになったようです。
ジョンソン首相は一連の騒ぎについて、ツイッターでの投稿で、
racist thuggery
と嘆きました。
United Kingdom Prime Minister Boris Johnson on Saturday decried "racist thuggery" after violent clashes broke out between far-right protestors and anti-racism demonstrators in London.
The violence took place amid escalating unrest in the U.S. and other parts of the world in wake of the death of George Floyd, a black man who died in police custody in Minneapolis. In response, protestors in the U.K. have targeted monuments of figures they've deemed symbols of racism in recent weeks.
(中略)
"Racist thuggery has no place on our streets," Johnson said on Twitter. "Anyone attacking the police will be met with full force of the law. These marches & protests have been subverted by violence and breach current guidelines."
"Racism has no part in the UK and we must work together to make that a reality," he added.
(Justin Wise. Boris Johnson decries 'racist thuggery' after London protests become violent. The Hill. June 14, 2020.)
この"thuggery"という単語は見慣れないものですが、"thug"(暴漢、殺し屋)という単語は目にしたことがあるのではないでしょうか。
"thuggery"、もしくは"thugee"という単語は、この"thug"から来ているもので、殺人者の行為、暴力行為、という意味で用いられます。
ところで、"thug"の語源をチェックしてみると、悪党や詐欺師を意味するヒンディー語から来ているということでした。(初出が1810年)
インド北部で、破壊の女神Deviを崇拝し旅人を殺害したりして略奪した盗賊団のことを、タグと呼んだそうです。(ランダムハウス英和辞書;ちなみに英単語“thug”の発音は、「タグ」というよりも、「サグ」に近いです。)
ここで改めて世界史の教科書や史料集を引っ張り出してきたのですが、19世紀前後というのは、英国やオランダ、フランスなど西欧諸国がこぞって東アジアに進出し、植民地化していった歴史があります。
イギリス東インド会社を設立した英国は、最終的にインドを統治下に置きましたが、インド国内にイギリス文化の影響を残す一方、ヒンディー語を含む現地の言葉が英語に及ぼした影響も少なからずあるようです。
恐らくは、イギリス人がインドの現地で「タグ」の被害にもあったことから英国人に恐れられたのではないかと・・・、これは全くの想像ですが、恐らくはヒンディー語から英語に輸入されたと思われる、"thug"という単語の語源に思いました。
ジョンソン首相は一連の騒ぎについて、ツイッターでの投稿で、
racist thuggery
と嘆きました。
United Kingdom Prime Minister Boris Johnson on Saturday decried "racist thuggery" after violent clashes broke out between far-right protestors and anti-racism demonstrators in London.
The violence took place amid escalating unrest in the U.S. and other parts of the world in wake of the death of George Floyd, a black man who died in police custody in Minneapolis. In response, protestors in the U.K. have targeted monuments of figures they've deemed symbols of racism in recent weeks.
(中略)
"Racist thuggery has no place on our streets," Johnson said on Twitter. "Anyone attacking the police will be met with full force of the law. These marches & protests have been subverted by violence and breach current guidelines."
"Racism has no part in the UK and we must work together to make that a reality," he added.
(Justin Wise. Boris Johnson decries 'racist thuggery' after London protests become violent. The Hill. June 14, 2020.)
この"thuggery"という単語は見慣れないものですが、"thug"(暴漢、殺し屋)という単語は目にしたことがあるのではないでしょうか。
"thuggery"、もしくは"thugee"という単語は、この"thug"から来ているもので、殺人者の行為、暴力行為、という意味で用いられます。
ところで、"thug"の語源をチェックしてみると、悪党や詐欺師を意味するヒンディー語から来ているということでした。(初出が1810年)
インド北部で、破壊の女神Deviを崇拝し旅人を殺害したりして略奪した盗賊団のことを、タグと呼んだそうです。(ランダムハウス英和辞書;ちなみに英単語“thug”の発音は、「タグ」というよりも、「サグ」に近いです。)
ここで改めて世界史の教科書や史料集を引っ張り出してきたのですが、19世紀前後というのは、英国やオランダ、フランスなど西欧諸国がこぞって東アジアに進出し、植民地化していった歴史があります。
イギリス東インド会社を設立した英国は、最終的にインドを統治下に置きましたが、インド国内にイギリス文化の影響を残す一方、ヒンディー語を含む現地の言葉が英語に及ぼした影響も少なからずあるようです。
恐らくは、イギリス人がインドの現地で「タグ」の被害にもあったことから英国人に恐れられたのではないかと・・・、これは全くの想像ですが、恐らくはヒンディー語から英語に輸入されたと思われる、"thug"という単語の語源に思いました。
2020年6月12日金曜日
FOGO
新型コロナウィルス感染症の拡大による緊急事態宣言は先月末解除され、ウィルスの恐怖に脅かされながら日常生活を送る、ウィズコロナの時代と呼ばれるフェーズに入ったようです。
この「ウィズコロナ」の時代に即した新語でしょうか、FOGO、という略語が広まりつつあります。
"FOGO"は、"Fear Of Going Out"の頭文字を取ったものです。
In a pre-lockdown world, fear of missing out (FOMO) was a thing. We didn’t want to lose out on the cool new restaurant taking bookings and the party everyone was going to. Holiday destinations were chosen based on the photos that could be taken and the Instagram likes secured from envious onlookers. If you weren’t in the place to be, you might as well be nowhere.
Staying in was something you had to justify, lest you were seen as dull. Perhaps you’re jetlagged from a two-week business trip, you’re doing something amazing tomorrow instead, or you’re just exhausted from all that hustlin’.
At the time, it was normal to board crowded trains and planes, visit packed bars and stand close to others in lines.
(中略)
Now there a genuine fear of going out, and we’re truly better off staying in. It’s transpired that lockdown has taught us much about our true selves.
(Jodie Cook. Fear Of Going Out (FOGO) Is Now A Thing, But Was Lockdown The Excuse To Stay In We Always Wanted? Forbes. June 10, 2020.)
パンデミック以前、よく似た略語表現に"FOMO"がありました。こちらは、"Fear Of Missing Out"で、以前当ブログでも取り上げました。
"FOGO"は直訳すれば、感染が怖いので外出できない、ということになりますが、パンデミックによる外出規制や自粛により大きな変化を強いられた我々の日常生活のスタイルを表現する含蓄のある表現かも知れません。
時代に乗り遅れるな、というのが“FOMO”だとしますと、それは時流ではあったかも知れませんが、実際には我々の多くが心の底ではそれに疲れていたのかも知れません。パンデミックと「ウィズコロナ」の時代は“FOGO”が言い訳を作ってくれたと言えるかも知れません。
As we move out of lockdown, decisions are made on different foundations. The difference between a Zoom conference call and an in-person meeting now isn’t just the travel time and cost.
(中略)
Health reasons aside, in-person time might come at a premium that some aren’t prepared to pay. If someone can pack and deliver my shopping to my door, why would I visit a supermarket? If I can pitch, sell and scale whilst wearing comfy leggings, why would I do it any other way? If I can stay at home and grow my company, what’s the benefit to leaving the house?
(ibid.)
欧米におけるロックダウン下での外出制限や、日本の緊急事態宣言下での外出自粛を強いられた我々は、外出できない不自由さに喘ぎながらも、ある程度のことは外出せずとも成し得るということも学びましたが、そうした経験が「新しい日常」として定着しつつあり、パンデミック以前に普通であったことに戻ることが億劫だったり、困難に感じていたりといった現象が生じていることは疑いようがありません。
FOGOは恐らくはそのような意識を包括的に示唆する表現であり、記事でも触れられていますが、「ウィズコロナ」の時代にあっては、対面行事というものは、とても贅沢な(!?)行為になるのかもしれません。
FOGO, or fear of going out, presents a challenge for individuals and for businesses alike. It means that each invitation comes with a more complex set of pros and cons, to assess if the occasion is really worth it.
(ibid.)
余談ですが、スポーツ観戦はパンデミック以前のような大勢の観客をスタジアムに入れて開催するというようなことはできなくなるだろうと言われています。感染のリスクを抑えるため、観客席を減らせば、収入が減るため、いきおい、一人当たりの入場料が上がります。
スポーツ観戦を含め、色々な催しはオンラインが普通になり、臨場感を味わうというのは途轍もなく贅沢で、一部のお金持ちくらいしかできないものになるだろう、というのは今後あり得そうな話です。
この「ウィズコロナ」の時代に即した新語でしょうか、FOGO、という略語が広まりつつあります。
"FOGO"は、"Fear Of Going Out"の頭文字を取ったものです。
In a pre-lockdown world, fear of missing out (FOMO) was a thing. We didn’t want to lose out on the cool new restaurant taking bookings and the party everyone was going to. Holiday destinations were chosen based on the photos that could be taken and the Instagram likes secured from envious onlookers. If you weren’t in the place to be, you might as well be nowhere.
Staying in was something you had to justify, lest you were seen as dull. Perhaps you’re jetlagged from a two-week business trip, you’re doing something amazing tomorrow instead, or you’re just exhausted from all that hustlin’.
At the time, it was normal to board crowded trains and planes, visit packed bars and stand close to others in lines.
(中略)
Now there a genuine fear of going out, and we’re truly better off staying in. It’s transpired that lockdown has taught us much about our true selves.
(Jodie Cook. Fear Of Going Out (FOGO) Is Now A Thing, But Was Lockdown The Excuse To Stay In We Always Wanted? Forbes. June 10, 2020.)
パンデミック以前、よく似た略語表現に"FOMO"がありました。こちらは、"Fear Of Missing Out"で、以前当ブログでも取り上げました。
"FOGO"は直訳すれば、感染が怖いので外出できない、ということになりますが、パンデミックによる外出規制や自粛により大きな変化を強いられた我々の日常生活のスタイルを表現する含蓄のある表現かも知れません。
時代に乗り遅れるな、というのが“FOMO”だとしますと、それは時流ではあったかも知れませんが、実際には我々の多くが心の底ではそれに疲れていたのかも知れません。パンデミックと「ウィズコロナ」の時代は“FOGO”が言い訳を作ってくれたと言えるかも知れません。
As we move out of lockdown, decisions are made on different foundations. The difference between a Zoom conference call and an in-person meeting now isn’t just the travel time and cost.
(中略)
Health reasons aside, in-person time might come at a premium that some aren’t prepared to pay. If someone can pack and deliver my shopping to my door, why would I visit a supermarket? If I can pitch, sell and scale whilst wearing comfy leggings, why would I do it any other way? If I can stay at home and grow my company, what’s the benefit to leaving the house?
(ibid.)
欧米におけるロックダウン下での外出制限や、日本の緊急事態宣言下での外出自粛を強いられた我々は、外出できない不自由さに喘ぎながらも、ある程度のことは外出せずとも成し得るということも学びましたが、そうした経験が「新しい日常」として定着しつつあり、パンデミック以前に普通であったことに戻ることが億劫だったり、困難に感じていたりといった現象が生じていることは疑いようがありません。
FOGOは恐らくはそのような意識を包括的に示唆する表現であり、記事でも触れられていますが、「ウィズコロナ」の時代にあっては、対面行事というものは、とても贅沢な(!?)行為になるのかもしれません。
FOGO, or fear of going out, presents a challenge for individuals and for businesses alike. It means that each invitation comes with a more complex set of pros and cons, to assess if the occasion is really worth it.
(ibid.)
余談ですが、スポーツ観戦はパンデミック以前のような大勢の観客をスタジアムに入れて開催するというようなことはできなくなるだろうと言われています。感染のリスクを抑えるため、観客席を減らせば、収入が減るため、いきおい、一人当たりの入場料が上がります。
スポーツ観戦を含め、色々な催しはオンラインが普通になり、臨場感を味わうというのは途轍もなく贅沢で、一部のお金持ちくらいしかできないものになるだろう、というのは今後あり得そうな話です。
2020年6月11日木曜日
mom-and-pop
新型コロナウィルス感染症の世界的拡大によって、各国の経済は大打撃を受け、その影響は計り知れないものがあります。
しかしながら、株式市場では投資の活発化の兆しも見え始め、ニューヨークダウ平均株価はCOVID-19の影響が出始めた年初の水準近くまで戻っているということです。
The recent rally, which has pushed the Dow up 45 percent from its coronavirus lows, is being driven in good part by mom-and-pop investors high on stimulus checks, the rise of free trades and apps like Robinhood, experts say.
The Dow on Wednesday closed at 26,989.99 — just 5.4 percent below where it was at the start of the year before the coronavirus sent the economy into a tailspin. The rebound has caught many stock market pros off guard amid record unemployment and sagging corporate profits, including hedge fund founder Paul Tudor Jones, who said on Tuesday that he’s baffled by the rally.
(Thornton McEnery. Small investors with stimulus funds drive post-coronavirus market surge. New York Post. June 10, 2020.)
この背景には投資家の動きは勿論あるのですが、
mom-and-pop investors
の投資活動もあるようです。
"mom-and-pop"という形容は、直訳するとお母さん(mom)とお父さん(pop)(の、による)、ということになるでしょうか。
辞書を引くと、夫婦(家族)経営の、という意味で、言わんとするところは企業活動などその営みが小規模で、零細、ということです。
ところで、"mom-and-pop investors"という場合には、投資関連の表現として定着しているらしく、手元資金が潤沢にあるプロの投資家に対比して、経験の少ない、素人の投資家を指すそうです。
アメリカでは新型コロナウィルス感染症の拡大を受けて、一人当たり1,200ドルの"stimulus check"が給付されましたが、それを手元資金として投資するという人が増えているという観測があります。
日本における定額給付金は、申請方法が分かりにくいとか、実際の給付が遅い、とかさんざんですが、果たして日経平均に寄与したという話は聞いた記憶はありません。
しかしながら、株式市場では投資の活発化の兆しも見え始め、ニューヨークダウ平均株価はCOVID-19の影響が出始めた年初の水準近くまで戻っているということです。
The recent rally, which has pushed the Dow up 45 percent from its coronavirus lows, is being driven in good part by mom-and-pop investors high on stimulus checks, the rise of free trades and apps like Robinhood, experts say.
The Dow on Wednesday closed at 26,989.99 — just 5.4 percent below where it was at the start of the year before the coronavirus sent the economy into a tailspin. The rebound has caught many stock market pros off guard amid record unemployment and sagging corporate profits, including hedge fund founder Paul Tudor Jones, who said on Tuesday that he’s baffled by the rally.
(Thornton McEnery. Small investors with stimulus funds drive post-coronavirus market surge. New York Post. June 10, 2020.)
この背景には投資家の動きは勿論あるのですが、
mom-and-pop investors
の投資活動もあるようです。
"mom-and-pop"という形容は、直訳するとお母さん(mom)とお父さん(pop)(の、による)、ということになるでしょうか。
辞書を引くと、夫婦(家族)経営の、という意味で、言わんとするところは企業活動などその営みが小規模で、零細、ということです。
ところで、"mom-and-pop investors"という場合には、投資関連の表現として定着しているらしく、手元資金が潤沢にあるプロの投資家に対比して、経験の少ない、素人の投資家を指すそうです。
アメリカでは新型コロナウィルス感染症の拡大を受けて、一人当たり1,200ドルの"stimulus check"が給付されましたが、それを手元資金として投資するという人が増えているという観測があります。
日本における定額給付金は、申請方法が分かりにくいとか、実際の給付が遅い、とかさんざんですが、果たして日経平均に寄与したという話は聞いた記憶はありません。
2020年6月10日水曜日
under water
昨日の話題と関連しますが、トランプ大統領の支持率が急降下していることについて、各種メディアが伝えています。
新型コロナウィルス感染症や黒人差別反対デモへの対処のまずさが影を落としているようです。
The coronavirus pandemic, a severe economic downturn and the widespread demonstrations in the aftermath of the death of George Floyd in police custody would pose a serious political challenge to any president seeking re-election. They are certainly posing one to President Trump.
His approval rating has fallen to 13.2 percentage points under water among registered or likely voters, down from negative 6.7 points on April 15, according to FiveThirtyEight estimates. And now a wave of new polls shows Joe Biden with a significant national lead, placing him in a stronger position to oust an incumbent president than any challenger since Bill Clinton in the summer of 1992.
(Nate Cohn. Wave of New Polling Suggests an Erosion of Trump’s Support. The New York Times. June 9, 2020.)
引用した記事中、
His approval rating has fallen to 13.2 percentage points under water among registered or likely voters
というくだりがありますが、この"under water"という表現が引っ掛かりました。
支持率が下がっていることを伝えているのは明らかですが、具体的には13.2%下がったとしているところ、敢えて"under water"という表現にはどのような意味合いがあるのだろうと疑問に思った次第です。
そこで色々調べてみると、辞書には載っていないようなのですが、この表現は政治指導者の支持率、不支持率に関してしばしば用いられる表現らしいということが見えてきました。
同じく、コロナウィルス対策(のまずさ)がトランプ氏の支持率に与えた影響を報じるニュース記事では、以下のようなものがあります。
WASHINGTON — New surveys out Thursday show President Donald Trump’s approval rating for his handling of the coronavirus pandemic is underwater among voters in four critical states this election while state governors receive high marks for their responses to the virus. By and large, these key voters also oppose protests against stay-at-home orders and efforts to relax social distancing measures.
The polling, conducted by the progressive firm, Public Policy Polling, on behalf of Protect Our Care — a left-of-center health care advocacy group — finds that 45 percent of voters in Michigan, North Carolina, Pennsylvania, and Wisconsin approve of Trump’s management of the crisis while 50 percent disapprove on average.
(Liz Brown-Kaiser. Meet the Press Blog: Latest news, analysis and data driving the political discussion. NBC News. April 24, 2020.)
この記事では、"under water"ではなく、1語の"underwater"となっている点は異なりますが、意味合いは同じようです。
その具体的内容はというと、ミシガン州など、大統領選でキーとなる4州におけるトランプ氏の支持率は45%と低く、不支持率が平均して50%であった、という内容です。
支持よりも不支持が勝った、という事態を報じたもので、"underwater"とはつまりそのような意味合いかと思われました。
下記も同じく、トランプ氏の支持率と不支持率が、今年の3月1日以降初めて、逆転に転じたことを報じるコンテクストで、"underwater"と表現しています。
President Donald Trump's approval rating for how he's handled the coronavirus outbreak is underwater for the first time since March 1 in Morning Consult's polling.
In the April 10 to 12 version of the survey, 45% of respondents approved of Trump's handling of the crisis compared with 49% who disapproved, leaving him with a net negative approval of four percentage points.
(Grace Panetta. Americans' approval of the Trump administration's handling of the coronavirus has been steadily falling, but for the first time it's net negative. Business Insider. April 13, 2020.)
最後に、今となっては古い記事ですが、オバマ前大統領の支持率に関する記事でも使われています。
Something remarkable just happened to Barack Obama's poll numbers: For the first time since September 2013 -- over 450 days ago -- as many people approve of his job performance as disapprove.
Politicians generally hope to be "above water," having more people approve of your work than disapprove. The converse, naturally, is to be "under water," flailing and gasping for breath and, more often than not, sinking. Since September 2013, Obama has been underwater in Gallup polling, with more people saying he's doing a bad job than saying he's doing a good one. Until Gallup's most recent data, out on Tuesday (and aggregating responses from the last three days of polling). At this point, 48 percent of Americans approve and 48 percent disapprove of Obama -- not exactly fantastic, but better than he's been.
Since he took office, here's when Obama has been above water.
(Philip Bump. Barack Obama is no longer underwater on his approval, ending the longest stretch in over 30 years. The Washington Post. December 30, 2014.)
この記事を読んでようやく得心するに至ったのですが、やはり支持率と不支持率の関係に着目した表現だということが分かりました。
また、支持率が不支持率を上回っているならば、それは"under water"ならぬ、"above water"ということになるわけです。
泳いでいる時のイメージですが、水中にあっては(under water)自由に呼吸ができず、やがて苦しくなって空気を求めて喘ぐ状況となります。不支持率が支持率を上回れば、それは候補者を不利にし、やがては首を絞めることになりますが、例えとして面白いですね。
水面から浮き上がり(above water)、自由に呼吸できる状況、支持率が不支持率を上回っていれば、安心です。(所詮は数字の上の話ではありますが。)
新型コロナウィルス感染症や黒人差別反対デモへの対処のまずさが影を落としているようです。
The coronavirus pandemic, a severe economic downturn and the widespread demonstrations in the aftermath of the death of George Floyd in police custody would pose a serious political challenge to any president seeking re-election. They are certainly posing one to President Trump.
His approval rating has fallen to 13.2 percentage points under water among registered or likely voters, down from negative 6.7 points on April 15, according to FiveThirtyEight estimates. And now a wave of new polls shows Joe Biden with a significant national lead, placing him in a stronger position to oust an incumbent president than any challenger since Bill Clinton in the summer of 1992.
(Nate Cohn. Wave of New Polling Suggests an Erosion of Trump’s Support. The New York Times. June 9, 2020.)
引用した記事中、
His approval rating has fallen to 13.2 percentage points under water among registered or likely voters
というくだりがありますが、この"under water"という表現が引っ掛かりました。
支持率が下がっていることを伝えているのは明らかですが、具体的には13.2%下がったとしているところ、敢えて"under water"という表現にはどのような意味合いがあるのだろうと疑問に思った次第です。
そこで色々調べてみると、辞書には載っていないようなのですが、この表現は政治指導者の支持率、不支持率に関してしばしば用いられる表現らしいということが見えてきました。
同じく、コロナウィルス対策(のまずさ)がトランプ氏の支持率に与えた影響を報じるニュース記事では、以下のようなものがあります。
WASHINGTON — New surveys out Thursday show President Donald Trump’s approval rating for his handling of the coronavirus pandemic is underwater among voters in four critical states this election while state governors receive high marks for their responses to the virus. By and large, these key voters also oppose protests against stay-at-home orders and efforts to relax social distancing measures.
The polling, conducted by the progressive firm, Public Policy Polling, on behalf of Protect Our Care — a left-of-center health care advocacy group — finds that 45 percent of voters in Michigan, North Carolina, Pennsylvania, and Wisconsin approve of Trump’s management of the crisis while 50 percent disapprove on average.
(Liz Brown-Kaiser. Meet the Press Blog: Latest news, analysis and data driving the political discussion. NBC News. April 24, 2020.)
この記事では、"under water"ではなく、1語の"underwater"となっている点は異なりますが、意味合いは同じようです。
その具体的内容はというと、ミシガン州など、大統領選でキーとなる4州におけるトランプ氏の支持率は45%と低く、不支持率が平均して50%であった、という内容です。
支持よりも不支持が勝った、という事態を報じたもので、"underwater"とはつまりそのような意味合いかと思われました。
下記も同じく、トランプ氏の支持率と不支持率が、今年の3月1日以降初めて、逆転に転じたことを報じるコンテクストで、"underwater"と表現しています。
President Donald Trump's approval rating for how he's handled the coronavirus outbreak is underwater for the first time since March 1 in Morning Consult's polling.
In the April 10 to 12 version of the survey, 45% of respondents approved of Trump's handling of the crisis compared with 49% who disapproved, leaving him with a net negative approval of four percentage points.
(Grace Panetta. Americans' approval of the Trump administration's handling of the coronavirus has been steadily falling, but for the first time it's net negative. Business Insider. April 13, 2020.)
最後に、今となっては古い記事ですが、オバマ前大統領の支持率に関する記事でも使われています。
Something remarkable just happened to Barack Obama's poll numbers: For the first time since September 2013 -- over 450 days ago -- as many people approve of his job performance as disapprove.
Politicians generally hope to be "above water," having more people approve of your work than disapprove. The converse, naturally, is to be "under water," flailing and gasping for breath and, more often than not, sinking. Since September 2013, Obama has been underwater in Gallup polling, with more people saying he's doing a bad job than saying he's doing a good one. Until Gallup's most recent data, out on Tuesday (and aggregating responses from the last three days of polling). At this point, 48 percent of Americans approve and 48 percent disapprove of Obama -- not exactly fantastic, but better than he's been.
Since he took office, here's when Obama has been above water.
(Philip Bump. Barack Obama is no longer underwater on his approval, ending the longest stretch in over 30 years. The Washington Post. December 30, 2014.)
この記事を読んでようやく得心するに至ったのですが、やはり支持率と不支持率の関係に着目した表現だということが分かりました。
また、支持率が不支持率を上回っているならば、それは"under water"ならぬ、"above water"ということになるわけです。
泳いでいる時のイメージですが、水中にあっては(under water)自由に呼吸ができず、やがて苦しくなって空気を求めて喘ぐ状況となります。不支持率が支持率を上回れば、それは候補者を不利にし、やがては首を絞めることになりますが、例えとして面白いですね。
水面から浮き上がり(above water)、自由に呼吸できる状況、支持率が不支持率を上回っていれば、安心です。(所詮は数字の上の話ではありますが。)
2020年6月9日火曜日
slogan
今年11月に予定されているアメリカ大統領選まで5か月あまり、もう半年ありません。
民主党の指名候補となったバイデン氏と現職トランプ氏の一騎打ちとなりますが、新型コロナウィルス感染症の感染拡大、また直近ではGeorge Floydさんの死をきっかけに勃発した全米各地の黒人差別反対デモ、等、予測しえなかった大事件の発生により、大統領選への影響も小さくないものがあります。
直近の調査ではトランプ氏支持率に陰りが見られ、バイデン氏が勢いを増しているとの見方もあるようです。
トランプ氏は再浮揚するための新しい"campaign slogan"を練っているようですが、これがどうもうまく行っていないようです。
President Donald Trump's effort to settle on a campaign slogan for his reelection campaign has been complicated by the coronavirus crisis and repeated street clashes.
The president has repeatedly tried out the fresh 'Transition to Greatness' – a statement born of the grim reality of the start of the coronavirus outbreak. He has repeatedly said there would be improvement in the summer and then a boom in the fall and next year.
With polls showing nearly two-thirds of the country thinks the country is on the 'wrong track,' Trump has also brought back his 'Make America Great Again' slogan. His campaign's online store leans heavily on the 'Keep America Great' slogan, which Trump rolled out after consulting advisors and then polling large campaign rallies before the outbreak.
Trump famously wore a red Keep America Great Again hat while touring the Centers for Disease Control along with top health official in March. But its prominence might not last.
Some Trump campaign officials told The Washington Post that both 'Keep America Great' and the president's insult for rival Joe Biden, 'Sleepy Joe,' are expected to be less prominent going forward. 'When the president decides, there will be a new slogan and there will be new ads,' a campaign advisor told the paper, which examined the array of slogans Trump is sifting through.
(Geoff Earle. Donald Trump searches for a new slogan amid cratering polls against Joe Biden. Daily Mail. June 8, 2020.)
かつては、"MAGA"というフレーズで白人票を掌握してきたものですが、もはや"MAGA"では今年を戦えないだろうというのがワシントンの大方の見方です。
最近では、"Transition to Greatness"というフレーズを織り込んでいるようですが、今一つインパクトに欠けるように思われます。
さて、"slogan"は、日本語でもカタカナで「スローガン」として普通に用いられているのはご存知の通りです。
私などは、小学生の時分に運動会の「スローガン」を作っていたことを思い起こしますね。
この"slogan"という単語ですが、スコットランド・ゲール語の、slaugh-gharim(slaughは軍隊、gharimは叫ぶこと)に由来するそうです。
つまり、スローガンの原形は昔々スコットランド氏族たちが戦いに際してあげた雄叫び(鬨の声)だったという事です。
トランプ氏、バイデン氏が争う大統領職の座を巡る選挙戦も戦いに違いありません。双方の"slogan"がどのような内容になるのか、見ものです。
民主党の指名候補となったバイデン氏と現職トランプ氏の一騎打ちとなりますが、新型コロナウィルス感染症の感染拡大、また直近ではGeorge Floydさんの死をきっかけに勃発した全米各地の黒人差別反対デモ、等、予測しえなかった大事件の発生により、大統領選への影響も小さくないものがあります。
直近の調査ではトランプ氏支持率に陰りが見られ、バイデン氏が勢いを増しているとの見方もあるようです。
トランプ氏は再浮揚するための新しい"campaign slogan"を練っているようですが、これがどうもうまく行っていないようです。
President Donald Trump's effort to settle on a campaign slogan for his reelection campaign has been complicated by the coronavirus crisis and repeated street clashes.
The president has repeatedly tried out the fresh 'Transition to Greatness' – a statement born of the grim reality of the start of the coronavirus outbreak. He has repeatedly said there would be improvement in the summer and then a boom in the fall and next year.
With polls showing nearly two-thirds of the country thinks the country is on the 'wrong track,' Trump has also brought back his 'Make America Great Again' slogan. His campaign's online store leans heavily on the 'Keep America Great' slogan, which Trump rolled out after consulting advisors and then polling large campaign rallies before the outbreak.
Trump famously wore a red Keep America Great Again hat while touring the Centers for Disease Control along with top health official in March. But its prominence might not last.
Some Trump campaign officials told The Washington Post that both 'Keep America Great' and the president's insult for rival Joe Biden, 'Sleepy Joe,' are expected to be less prominent going forward. 'When the president decides, there will be a new slogan and there will be new ads,' a campaign advisor told the paper, which examined the array of slogans Trump is sifting through.
(Geoff Earle. Donald Trump searches for a new slogan amid cratering polls against Joe Biden. Daily Mail. June 8, 2020.)
かつては、"MAGA"というフレーズで白人票を掌握してきたものですが、もはや"MAGA"では今年を戦えないだろうというのがワシントンの大方の見方です。
最近では、"Transition to Greatness"というフレーズを織り込んでいるようですが、今一つインパクトに欠けるように思われます。
さて、"slogan"は、日本語でもカタカナで「スローガン」として普通に用いられているのはご存知の通りです。
私などは、小学生の時分に運動会の「スローガン」を作っていたことを思い起こしますね。
この"slogan"という単語ですが、スコットランド・ゲール語の、slaugh-gharim(slaughは軍隊、gharimは叫ぶこと)に由来するそうです。
つまり、スローガンの原形は昔々スコットランド氏族たちが戦いに際してあげた雄叫び(鬨の声)だったという事です。
トランプ氏、バイデン氏が争う大統領職の座を巡る選挙戦も戦いに違いありません。双方の"slogan"がどのような内容になるのか、見ものです。
2020年6月8日月曜日
ACAB
白人警官による黒人男性の暴行死に端を発し、全米、さらには世界中の大都市にも飛び火したデモは収束する気配がありません。
このデモ行進の中で人々が掲げるプラカードやメッセージボードには、知らないと分からない単語や表現が書かれており、メディアでも取り上げられています。
例えば、BLM。
これは、"Black Lives Matter!"の頭文字を取ったものです。
他にも色々あるようですが、BLMは想像がつくかも知れないところ、ACABは難易度が高いかも知れません。
The rallying cry of 'ACAB' has been met with a lot of confusion and consternation during the George Floyd protests — but the truth is the police are objectively failing to protect the vulnerable.
If you’re at all tuned in to the news or social media, you’re aware of what’s going on in America. If you’re not, Minneapolis police officer Derick Chauvin knelt on George Floyd’s neck for eight minutes, leading to his death, while three other officers looked on. This shouldn’t come as a surprise to you, since getting killed by police is a leading cause of death for black men. Protesters quickly took to the streets in civil disobedience, white bodies put themselves on the line for black bodies, and we made our voices heard. Property can be replaced; human life can not.
And then, almost overnight, it escalated. Protests turned to riots as police started showing up in riot gear and attacking protesters and press en masse with rubber bullets, tear gas, and night sticks.
(中略)
Something is very, very wrong in American police culture. This is why the saying “ACAB” — or “All cops are b*****ds” — has become a popular rallying cry. It doesn’t actually mean every single cop is a bad cop, just like saying Black Lives Matter doesn’t mean white lives don’t. “ACAB” means every single police officer is complicit in a system that actively devalues the lives of people of color. Bad cops are encouraged in their harm by the silence of the ones who see themselves as “good.”
(Victoria Gagliardo-Silver. What I mean when I say I want to abolish the police. The Independent. June 1, 2020.)
記事中、伏字にされている箇所を敢えてスペルアウトするのも気が引けますが、ACABとは、
All Cops Are Bastard
の頭文字を取ったものです。
近年のデモ活動はソーシャルメディアというプラットフォームを活用する傾向にあることから、キャッチフレーズも略語の形式を取ることが増え、またハッシュタグと共に使われるのが普通になってきているようです。
“ACAB”のCは“cop(s)”を指しています。全ての“cop(s)”は“bastard”である、という主張は、警察当局にしてみればこれ以上の侮辱はないというくらいの表現ですが、そもそも"cop"という表現自体、軽蔑的な意味合いのある俗語表現です。
警察官、警官という場合、"police"、もしくは"police officer"と表現しますが、"cop"は、日本語で警察官を「おまわり」とか「ポリ」と呼ぶのに近いものがあるようです。
この"cop"という単語は、"copper"から来ていますが、"copper"とは獲る、捕まえる、という意味の動詞"cop"から来ているそうです。
このデモ行進の中で人々が掲げるプラカードやメッセージボードには、知らないと分からない単語や表現が書かれており、メディアでも取り上げられています。
例えば、BLM。
これは、"Black Lives Matter!"の頭文字を取ったものです。
他にも色々あるようですが、BLMは想像がつくかも知れないところ、ACABは難易度が高いかも知れません。
The rallying cry of 'ACAB' has been met with a lot of confusion and consternation during the George Floyd protests — but the truth is the police are objectively failing to protect the vulnerable.
If you’re at all tuned in to the news or social media, you’re aware of what’s going on in America. If you’re not, Minneapolis police officer Derick Chauvin knelt on George Floyd’s neck for eight minutes, leading to his death, while three other officers looked on. This shouldn’t come as a surprise to you, since getting killed by police is a leading cause of death for black men. Protesters quickly took to the streets in civil disobedience, white bodies put themselves on the line for black bodies, and we made our voices heard. Property can be replaced; human life can not.
And then, almost overnight, it escalated. Protests turned to riots as police started showing up in riot gear and attacking protesters and press en masse with rubber bullets, tear gas, and night sticks.
(中略)
Something is very, very wrong in American police culture. This is why the saying “ACAB” — or “All cops are b*****ds” — has become a popular rallying cry. It doesn’t actually mean every single cop is a bad cop, just like saying Black Lives Matter doesn’t mean white lives don’t. “ACAB” means every single police officer is complicit in a system that actively devalues the lives of people of color. Bad cops are encouraged in their harm by the silence of the ones who see themselves as “good.”
(Victoria Gagliardo-Silver. What I mean when I say I want to abolish the police. The Independent. June 1, 2020.)
記事中、伏字にされている箇所を敢えてスペルアウトするのも気が引けますが、ACABとは、
All Cops Are Bastard
の頭文字を取ったものです。
近年のデモ活動はソーシャルメディアというプラットフォームを活用する傾向にあることから、キャッチフレーズも略語の形式を取ることが増え、またハッシュタグと共に使われるのが普通になってきているようです。
“ACAB”のCは“cop(s)”を指しています。全ての“cop(s)”は“bastard”である、という主張は、警察当局にしてみればこれ以上の侮辱はないというくらいの表現ですが、そもそも"cop"という表現自体、軽蔑的な意味合いのある俗語表現です。
警察官、警官という場合、"police"、もしくは"police officer"と表現しますが、"cop"は、日本語で警察官を「おまわり」とか「ポリ」と呼ぶのに近いものがあるようです。
この"cop"という単語は、"copper"から来ていますが、"copper"とは獲る、捕まえる、という意味の動詞"cop"から来ているそうです。
2020年6月5日金曜日
weigh in
今週の米国内トップニュースはミネソタ州で発生した黒人男性の死亡事件に関する話題ですが、その死を悼み、不当な人種差別に抗議する声明が、人権団体や著名人はもとより、一般企業からも発信されているという事実があります。
中でもアイスクリーム製造メーカーのBen & Jerry'sが、白人至上主義への反発を鮮明にしていることが取り上げられています。
It's hard for brands to weigh in on social issues. At best, it can reaffirm a loyal customer base of the company's values, and at worst, it'll be seen as a disingenuous publicity stunt.
After protests over the killing of George Floyd while in Minnesota police custody erupted around the nation, many brands have taken the rare step of weighing in.
Brands ranging from Amazon to Peppa Pig have shown their support for the Black Lives Matter movement or against racism. Ben & Jerry's went one step further to call out white supremacy.
The ice cream company posted Wednesday on Twitter, "The murder of George Floyd was the result of inhumane police brutality that is perpetuated by a culture of white supremacy."
(Josh Rivera. Ben & Jerry's calls for the dismantling of 'culture of white supremacy.' USA Today. June 3, 2020.)
一企業が、人種差別のようなセンシティヴな問題に見解を示すというのは、簡単なことではないという見方があります。表層的な、上辺だけの意見表明は却って顧客の反発を招くことになります。
引用した記事の中で、
weigh in (on social issues)
という表現が使われています。
この“weigh in”というフレーズはこれまでにも見かけることがあったのですが、何となく分かったような気になって、きちんと調べてみることをしていませんでした。
日本語には少し訳しにくい気がします。まずは、"weigh”という動詞には目方(重さ)を測る、という意味が最初に思い浮かびますが、ここでは物理的な計測のことを指しているのではないことは明らかですね。
"weigh in"という動詞句として辞書を引いてみると、ボクサーやレスラーの(試合前の)計量という意味の他、
(事実・意見などを)得意になって持ち出す(論じる)、ひっさげて参加する
(ランダムハウス英和辞書)
という意味が載っており、恐らくはこれが相当すると思われます。
ところで、辞書では、"weigh in"という動詞句として載っていますが、上記の意味合いで使われる場合に前置詞withが続くというように補足されています。研究社の新英和大辞典(第五版)においても、
(・・・をもって)参加する、加わる;援助する、仲裁に入る [with]
となっており、"weigh in with~"のパターンを示唆していますが、最初に引用した記事では、"weigh in on~"です。
前置詞がwithとonとで違いがあるのでしょうか。
"weigh in on"の用例が多いですが、それに劣らず、"weigh in with"もかなり定着した用法のようです。
英和辞典では具体的な英文例が記載されていないので、コーパスを頼ってみます。
Memories of hurricane Katrina are still fresh, and anxieties are building over this new disaster. So thousands of Americans would like to pitch in and help as they did after the 2005 hurricane. But with no easy avenue for volunteering, average citizens, along with many independent scientists and entrepreneurs, are instead weighing in with their own ideas for cleaning up America's worst-ever environmental disaster.
(Christian Science Monitor, 2010)
前置詞withを用いた用例は上記の引用のように、手段としての意味合いで使われているようです。(つまり、〜をもって、の意味。)
一方、前置詞onを用いた用例は、対象、トピックを指すもの(つまり、〜について、の意味)であり、そうした違いで前置詞が選択されているものと思われます。
英和辞書で前置詞withについては言及しながら、前置詞onを取る用法が取り上げられていない理由はよく分からないのですが、取り上げても良さそうに思います。
“weigh in”というフレーズに戻りますと、目方を測る、という意味から発展したのではないかという気がしてきます。
つまり、議論の的となっている話題に対して、主語にくる個人、もしくは団体(企業)の表明する意見(立場)がどのように受け止められるのかを「(推し)測る」ということなのだと解釈できるように思います。
中でもアイスクリーム製造メーカーのBen & Jerry'sが、白人至上主義への反発を鮮明にしていることが取り上げられています。
It's hard for brands to weigh in on social issues. At best, it can reaffirm a loyal customer base of the company's values, and at worst, it'll be seen as a disingenuous publicity stunt.
After protests over the killing of George Floyd while in Minnesota police custody erupted around the nation, many brands have taken the rare step of weighing in.
Brands ranging from Amazon to Peppa Pig have shown their support for the Black Lives Matter movement or against racism. Ben & Jerry's went one step further to call out white supremacy.
The ice cream company posted Wednesday on Twitter, "The murder of George Floyd was the result of inhumane police brutality that is perpetuated by a culture of white supremacy."
(Josh Rivera. Ben & Jerry's calls for the dismantling of 'culture of white supremacy.' USA Today. June 3, 2020.)
一企業が、人種差別のようなセンシティヴな問題に見解を示すというのは、簡単なことではないという見方があります。表層的な、上辺だけの意見表明は却って顧客の反発を招くことになります。
引用した記事の中で、
weigh in (on social issues)
という表現が使われています。
この“weigh in”というフレーズはこれまでにも見かけることがあったのですが、何となく分かったような気になって、きちんと調べてみることをしていませんでした。
日本語には少し訳しにくい気がします。まずは、"weigh”という動詞には目方(重さ)を測る、という意味が最初に思い浮かびますが、ここでは物理的な計測のことを指しているのではないことは明らかですね。
"weigh in"という動詞句として辞書を引いてみると、ボクサーやレスラーの(試合前の)計量という意味の他、
(事実・意見などを)得意になって持ち出す(論じる)、ひっさげて参加する
(ランダムハウス英和辞書)
という意味が載っており、恐らくはこれが相当すると思われます。
ところで、辞書では、"weigh in"という動詞句として載っていますが、上記の意味合いで使われる場合に前置詞withが続くというように補足されています。研究社の新英和大辞典(第五版)においても、
(・・・をもって)参加する、加わる;援助する、仲裁に入る [with]
となっており、"weigh in with~"のパターンを示唆していますが、最初に引用した記事では、"weigh in on~"です。
前置詞がwithとonとで違いがあるのでしょうか。
"weigh in on"の用例が多いですが、それに劣らず、"weigh in with"もかなり定着した用法のようです。
英和辞典では具体的な英文例が記載されていないので、コーパスを頼ってみます。
Memories of hurricane Katrina are still fresh, and anxieties are building over this new disaster. So thousands of Americans would like to pitch in and help as they did after the 2005 hurricane. But with no easy avenue for volunteering, average citizens, along with many independent scientists and entrepreneurs, are instead weighing in with their own ideas for cleaning up America's worst-ever environmental disaster.
(Christian Science Monitor, 2010)
前置詞withを用いた用例は上記の引用のように、手段としての意味合いで使われているようです。(つまり、〜をもって、の意味。)
一方、前置詞onを用いた用例は、対象、トピックを指すもの(つまり、〜について、の意味)であり、そうした違いで前置詞が選択されているものと思われます。
英和辞書で前置詞withについては言及しながら、前置詞onを取る用法が取り上げられていない理由はよく分からないのですが、取り上げても良さそうに思います。
“weigh in”というフレーズに戻りますと、目方を測る、という意味から発展したのではないかという気がしてきます。
つまり、議論の的となっている話題に対して、主語にくる個人、もしくは団体(企業)の表明する意見(立場)がどのように受け止められるのかを「(推し)測る」ということなのだと解釈できるように思います。
2020年6月4日木曜日
hit a snag
アイスランド政府は同国を訪問する全ての旅行客に対し、新型ウィルスの検査を空港で実施することを計画していましたが、1日1,000人を検査できる体制が必要なところ、現状のキャパシティは1日500名が限度ということが分かり、はやくも躓いてしまったようです。
Iceland’s plans to test every passenger arriving at its international airport for Covid-19 has hit a snag, after it emerged that the island doesn’t have enough testing facilities.
Opening up the country to foreign travelers is a crucial step to lift the economy, which is forecast to contract 9% this year. Tourism accounts for about 9% of gross domestic product and 35% of Iceland’s currency income.
The plan was to carry out 1,000 tests per day at Keflavik Airport, starting on June 15, at an initial cost of $365 per test. Passengers who tested negative would be spared a mandatory two-week quarantine, with results delivered on the same day as arrival.
But according to an expert report published this week, the island’s hospitals can currently only test a maximum of 500 people per day.
(Ragnhildur Sigurdardottir. Iceland’s Audacious Covid-19 Airport Testing Plan Hits a Snag. Bloomberg. May 28, 2020.)
今日取り上げるのは、
hit a snag
という成句ですが、"snag"というのは切り株の意味です。
切り株にぶつかる、すなわち、躓く、頓挫する、暗礁に乗り上げる、といった意味合いで用いられます。
"hit a snag"という以外では、"run into a snag"や"catch a snag"などという形で用いられることもあります。
The state's effort to privatize its mental hospitals has run into a snag because the only company bidding to develop a forensic facility failed to meet a mandatory state requirement.
(Atlanta Journal Constitution, 2009)
Iceland’s plans to test every passenger arriving at its international airport for Covid-19 has hit a snag, after it emerged that the island doesn’t have enough testing facilities.
Opening up the country to foreign travelers is a crucial step to lift the economy, which is forecast to contract 9% this year. Tourism accounts for about 9% of gross domestic product and 35% of Iceland’s currency income.
The plan was to carry out 1,000 tests per day at Keflavik Airport, starting on June 15, at an initial cost of $365 per test. Passengers who tested negative would be spared a mandatory two-week quarantine, with results delivered on the same day as arrival.
But according to an expert report published this week, the island’s hospitals can currently only test a maximum of 500 people per day.
(Ragnhildur Sigurdardottir. Iceland’s Audacious Covid-19 Airport Testing Plan Hits a Snag. Bloomberg. May 28, 2020.)
今日取り上げるのは、
hit a snag
という成句ですが、"snag"というのは切り株の意味です。
切り株にぶつかる、すなわち、躓く、頓挫する、暗礁に乗り上げる、といった意味合いで用いられます。
"hit a snag"という以外では、"run into a snag"や"catch a snag"などという形で用いられることもあります。
The state's effort to privatize its mental hospitals has run into a snag because the only company bidding to develop a forensic facility failed to meet a mandatory state requirement.
(Atlanta Journal Constitution, 2009)
2020年6月3日水曜日
pillage
ミネソタ州での黒人男性暴行死に端を発した抗議デモが暴徒化し全米各地に飛び火している状況は、新型コロナウィルス感染症の話題を押し退けて、ニュース媒体のヘッドラインのトップニュースを席巻した感があります。
ニューヨークタイムズ紙の記事から引用します。
The looters tore off the plywood that boarded up Macy’sflagship store in Herald Square, swarming by the dozens inside to steal whatever they could find before being chased down by the police. Others smashed the windows at a Nike store, grabbing shirts, jeans and zip-up jackets. They crashed into a Coach store, ransacked a Bergdorf Goodman branch and destroyed scores of smaller storefronts along the way.
(中略)
Beginning Monday afternoon and growing wilder as night fell, small bands of young people dressed mostly in black pillaged chain stores, upscale boutiques and kitschy trinket stores in Midtown Manhattan, as the police at first struggled in vain to impose order.
(After Peaceful Protests, Looters Strike at Macy’s and Across Midtown. New York Times. June 2, 2020.)
暴徒化したデモが、店舗の略奪行為を行っていることについては当然非難が集中しており、人種差別に対して純粋な抗議の声を上げる人たちを阻害する行為だと言えます。
略奪行為については、多くの記事で、
looter
loot(ing)
という単語が使われているのですが、ややマイナーと思われる表現に、
pillage
があります。
同じく、略奪する、強奪する、分捕る、という意味の動詞ですが、フランス語pillerが英語に入ってきたものです。
さらに遡るとラテン語pilareにたどり着くのですが、毛髪を奪う、禿げ頭にする、という意味の動詞です。
関連して、ラテン語の名詞pilusは毛髪の意味で、卑近な例としては(私は大嫌いですが)、毛虫を意味する"caterpillar"はラテン語のcatta pilosa(毛の多い雌猫)から来ています。
ニューヨークタイムズ紙の記事から引用します。
The looters tore off the plywood that boarded up Macy’sflagship store in Herald Square, swarming by the dozens inside to steal whatever they could find before being chased down by the police. Others smashed the windows at a Nike store, grabbing shirts, jeans and zip-up jackets. They crashed into a Coach store, ransacked a Bergdorf Goodman branch and destroyed scores of smaller storefronts along the way.
(中略)
Beginning Monday afternoon and growing wilder as night fell, small bands of young people dressed mostly in black pillaged chain stores, upscale boutiques and kitschy trinket stores in Midtown Manhattan, as the police at first struggled in vain to impose order.
(After Peaceful Protests, Looters Strike at Macy’s and Across Midtown. New York Times. June 2, 2020.)
暴徒化したデモが、店舗の略奪行為を行っていることについては当然非難が集中しており、人種差別に対して純粋な抗議の声を上げる人たちを阻害する行為だと言えます。
略奪行為については、多くの記事で、
looter
loot(ing)
という単語が使われているのですが、ややマイナーと思われる表現に、
pillage
があります。
同じく、略奪する、強奪する、分捕る、という意味の動詞ですが、フランス語pillerが英語に入ってきたものです。
さらに遡るとラテン語pilareにたどり着くのですが、毛髪を奪う、禿げ頭にする、という意味の動詞です。
関連して、ラテン語の名詞pilusは毛髪の意味で、卑近な例としては(私は大嫌いですが)、毛虫を意味する"caterpillar"はラテン語のcatta pilosa(毛の多い雌猫)から来ています。
2020年6月2日火曜日
insurrection
ミネソタ州で黒人が警官の過剰な拘束により死亡したのをきっかけに勃発した抗議デモが過激化し、全米各地に拡大する状況を受けて、トランプ大統領が、
Insurrection Act
の発動を検討していると報じられています。
President Trump threatened Monday to take military action in American cities if the violent demonstrations that have been taking place in recent days aren't stamped out.
"If a city or state refuses to take the actions that are necessary to defend the life and property of their residents, then I will deploy the United States military and quickly solve the problem for them," Trump said in a short statement in the Rose Garden at the White House.
To do that, the president would need to invoke what's known as the Insurrection Act of 1807.
(Domenico Montanaro. What Is The Insurrection Act That Trump Is Threatening To Invoke?. NPR. June 1, 2020.)
1807年制定の”Insurrection Act”は反乱法と訳されるようですが、”insurrection”というのは、暴動、反乱、謀反、などという意味の名詞です。暴動を鎮圧する目的で、大統領が軍隊を配備することを可能にする法律と言われています。
この単語を知りませんでした。
そのスペルから、接頭辞のin-とsurrect(ion)からなるものだろうとまずは分析、接頭辞のin-は否定の意味合いだろう、ではsurrect(ion)は何だろう、というところで分からず辞書を引くことになったのです。
実のところこの接頭辞in-は強意の接頭辞で、surrectionは英単語の”surge”(to rise up)に相当するものと分かりました。
ほぼ同じ意味合いで、語源的にも、スペルでも近い単語に、
insurgence
insurgency
という2つの単語があります。こちらは、surgeがスペルに見えるという点で違いがあります。意味はやはり、反乱、暴動、といったものです。
使われ方やニュアンスの違いは見出せませんが、“insurrection”の方が古くから存在するらしく、初出は15世紀とあります。(“insurgence”、“insurgency”は19世紀になってから。Merriam-Webster Dictionaryによる。)
Insurrection Act
の発動を検討していると報じられています。
President Trump threatened Monday to take military action in American cities if the violent demonstrations that have been taking place in recent days aren't stamped out.
"If a city or state refuses to take the actions that are necessary to defend the life and property of their residents, then I will deploy the United States military and quickly solve the problem for them," Trump said in a short statement in the Rose Garden at the White House.
To do that, the president would need to invoke what's known as the Insurrection Act of 1807.
(Domenico Montanaro. What Is The Insurrection Act That Trump Is Threatening To Invoke?. NPR. June 1, 2020.)
1807年制定の”Insurrection Act”は反乱法と訳されるようですが、”insurrection”というのは、暴動、反乱、謀反、などという意味の名詞です。暴動を鎮圧する目的で、大統領が軍隊を配備することを可能にする法律と言われています。
この単語を知りませんでした。
そのスペルから、接頭辞のin-とsurrect(ion)からなるものだろうとまずは分析、接頭辞のin-は否定の意味合いだろう、ではsurrect(ion)は何だろう、というところで分からず辞書を引くことになったのです。
実のところこの接頭辞in-は強意の接頭辞で、surrectionは英単語の”surge”(to rise up)に相当するものと分かりました。
ほぼ同じ意味合いで、語源的にも、スペルでも近い単語に、
insurgence
insurgency
という2つの単語があります。こちらは、surgeがスペルに見えるという点で違いがあります。意味はやはり、反乱、暴動、といったものです。
使われ方やニュアンスの違いは見出せませんが、“insurrection”の方が古くから存在するらしく、初出は15世紀とあります。(“insurgence”、“insurgency”は19世紀になってから。Merriam-Webster Dictionaryによる。)
2020年6月1日月曜日
handiwork
ミネソタ州ミネアポリスで、Memorial Dayの祝日に、黒人男性が警官に拘束されてその後死亡するという事件が発生し、事件に抗議する暴動が発生しました。
暴動はミネソタ州に留まらず、全米各地へと飛び火し、警察車両や建物への放火、果ては近隣店舗での略奪まで発生し、留まることがないようです。各州では鎮圧のために州兵が動員され、トランプ大統領は、ワシントンD.C.でのデモが過激化する中、不測の事態に備えて、ホワイトハウスの地下シェルターに避難したとか。
ツイッターのタイムラインは各都市での惨状を撮影した動画や写真で溢れています。
事の次第は、アフリカ系アメリカ人のGeorge Floydさんは偽造紙幣を使おうとした嫌疑をかけられ、通報によって現場に駆け付けた警察官に拘束されましたが、その際に地面に押さえつけられ、首の部分を警官の膝で数分間に渡って圧迫されたことが原因で窒息死したと見られています。
週末、このニュースを知りましたが、必要限度を超えると思われる対応が疑われ、ひどい事件だと思いました。枚挙の暇のない、過去の同様の事例を思い起こすと、暴動の発生もむべなるかなと思われるのですが、果たして店舗の略奪行為までは正当化されるのか、はなはだ疑問です。
Rioters broke into the Minneapolis Police 3rd Precinct just after 10 p.m. Thursday night and set the building on fire. They tossed fireworks into the blaze. Chants of "George Floyd" and "I can't breathe" echoed from below the smoke and bright explosions while hundreds gathered to record the moment on their cellphones.
Gov. Tim Walz responded by calling in the largest national National Guard deployment in state history, the first of dozens of police escalations around the country responding to eruptions of outrage over the weekend after Floyd, an unarmed black man, died during an arrest by white police officers in Minneapolis on May 25.
By Saturday, local politicians were casting the chaos as the handiwork of outside agitators. Walz estimated that about 80% of those being destructive do not live in the state. The mayor of St. Paul, Melvin Carter, said every person arrested in the city Friday night was not a Minnesotan, a sentiment parroted by Minneapolis Mayor Jacob Frey.
(Officials blame 'out-of-state' agitators but those at the heart of protests are homegrown. USA Today. May 31, 2020.)
ミネソタ州のデモの暴徒化に関しては、その多くがミネアポリス市外からの参加者が認められ、直接事件に関わりのない人たち(すなわち「部外者」)と思われるという分析もあるようです。(引用したUSA Today紙の記事ではそれに対して否定的ですが。)
トランプ大統領はデモが過激化している背景にANTIFAと呼ばれる反ファシズム過激派や反白人至上主義者、極左集団の関与が疑われるとツイッターでコメントし、ANTIFAのテロ指定を検討しているそうです。
さて、本日の単語ですが、記事では、
the chaos as the handiwork of outside agitators
というくだりがあるのですが、この"handiwork"という単語が気になったので調べたという次第です。
辞書を引きますと、いくつかある意味のうち、「仕業」という日本語がぴったりくるようです。
"handiwork"、すなわち"hand"(手)による"work"(作ったもの、作品)ということで、手作り品、手工品という意味もあるのですが、「仕業」という場合、そこにはネガティヴな含みがあります。
“deed”や“act”といった一般的な単語を置いて、“handiwork”という単語は知らないと出てきません。
ところで、単純な疑問として、handy-workではなく、なぜhandi-work、なのかというのが気になりました。
ハンディワイパーとかハンディクリーナーではありませんが、カタカナの「ハンディ」からはhandy-のスペルが想起されます。(実際、国内で販売されているこれら商品には、「手軽さ」を意味するhandy-のスペルが使われています。)
ところが、語源欄を見てみますと、"handiwork"はhandi-(handy-)と-workに分割して解釈するものではなく、むしろhand-と-iworkと解釈すべきだということが分かり、びっくり。
"-iwork"って一体どういうこと?と思われるかもしれませんが、この-i-という一文字は古英語における過去分詞や集合名詞を作る働きをしているものだそうです。(ある意味接頭辞みたいなものでしょうか。)
この"-iwork"という部分は、古英語ではgeweorcという形だったそうで、ge-は集合名詞を形成する要素です。(過去分詞形ということでは、ドイツ語ではge-で始まる変化形が多くありますね。)
このge-は、その後中英語や近代英語ではa-や、i-、ei-、y-、などと形を変えて残っているそうです。(研究社新英和大辞典による。)
暴動はミネソタ州に留まらず、全米各地へと飛び火し、警察車両や建物への放火、果ては近隣店舗での略奪まで発生し、留まることがないようです。各州では鎮圧のために州兵が動員され、トランプ大統領は、ワシントンD.C.でのデモが過激化する中、不測の事態に備えて、ホワイトハウスの地下シェルターに避難したとか。
ツイッターのタイムラインは各都市での惨状を撮影した動画や写真で溢れています。
事の次第は、アフリカ系アメリカ人のGeorge Floydさんは偽造紙幣を使おうとした嫌疑をかけられ、通報によって現場に駆け付けた警察官に拘束されましたが、その際に地面に押さえつけられ、首の部分を警官の膝で数分間に渡って圧迫されたことが原因で窒息死したと見られています。
週末、このニュースを知りましたが、必要限度を超えると思われる対応が疑われ、ひどい事件だと思いました。枚挙の暇のない、過去の同様の事例を思い起こすと、暴動の発生もむべなるかなと思われるのですが、果たして店舗の略奪行為までは正当化されるのか、はなはだ疑問です。
Rioters broke into the Minneapolis Police 3rd Precinct just after 10 p.m. Thursday night and set the building on fire. They tossed fireworks into the blaze. Chants of "George Floyd" and "I can't breathe" echoed from below the smoke and bright explosions while hundreds gathered to record the moment on their cellphones.
Gov. Tim Walz responded by calling in the largest national National Guard deployment in state history, the first of dozens of police escalations around the country responding to eruptions of outrage over the weekend after Floyd, an unarmed black man, died during an arrest by white police officers in Minneapolis on May 25.
By Saturday, local politicians were casting the chaos as the handiwork of outside agitators. Walz estimated that about 80% of those being destructive do not live in the state. The mayor of St. Paul, Melvin Carter, said every person arrested in the city Friday night was not a Minnesotan, a sentiment parroted by Minneapolis Mayor Jacob Frey.
(Officials blame 'out-of-state' agitators but those at the heart of protests are homegrown. USA Today. May 31, 2020.)
ミネソタ州のデモの暴徒化に関しては、その多くがミネアポリス市外からの参加者が認められ、直接事件に関わりのない人たち(すなわち「部外者」)と思われるという分析もあるようです。(引用したUSA Today紙の記事ではそれに対して否定的ですが。)
トランプ大統領はデモが過激化している背景にANTIFAと呼ばれる反ファシズム過激派や反白人至上主義者、極左集団の関与が疑われるとツイッターでコメントし、ANTIFAのテロ指定を検討しているそうです。
さて、本日の単語ですが、記事では、
the chaos as the handiwork of outside agitators
というくだりがあるのですが、この"handiwork"という単語が気になったので調べたという次第です。
辞書を引きますと、いくつかある意味のうち、「仕業」という日本語がぴったりくるようです。
"handiwork"、すなわち"hand"(手)による"work"(作ったもの、作品)ということで、手作り品、手工品という意味もあるのですが、「仕業」という場合、そこにはネガティヴな含みがあります。
“deed”や“act”といった一般的な単語を置いて、“handiwork”という単語は知らないと出てきません。
ところで、単純な疑問として、handy-workではなく、なぜhandi-work、なのかというのが気になりました。
ハンディワイパーとかハンディクリーナーではありませんが、カタカナの「ハンディ」からはhandy-のスペルが想起されます。(実際、国内で販売されているこれら商品には、「手軽さ」を意味するhandy-のスペルが使われています。)
ところが、語源欄を見てみますと、"handiwork"はhandi-(handy-)と-workに分割して解釈するものではなく、むしろhand-と-iworkと解釈すべきだということが分かり、びっくり。
"-iwork"って一体どういうこと?と思われるかもしれませんが、この-i-という一文字は古英語における過去分詞や集合名詞を作る働きをしているものだそうです。(ある意味接頭辞みたいなものでしょうか。)
この"-iwork"という部分は、古英語ではgeweorcという形だったそうで、ge-は集合名詞を形成する要素です。(過去分詞形ということでは、ドイツ語ではge-で始まる変化形が多くありますね。)
このge-は、その後中英語や近代英語ではa-や、i-、ei-、y-、などと形を変えて残っているそうです。(研究社新英和大辞典による。)
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