今年11月に行われる予定のアメリカ大統領選。
6月くらいからの世論調査では、現職のトランプ大統領が民主党候補のバイデン氏に支持率で劣るという結果が出ており、トランプ氏も焦りを隠すことができない状況なのかもしれません。
(11月に行われる)選挙結果を受け入れるか、とのインタビューにトランプ氏は明言を避けているという報道も目にしました。
そして、本日(アメリカ時間木曜日朝)、11月の大統領選は延期するべきだ、というトランプ氏の仰天発言がツイッターに投稿されました。
メディア各社は、民主主義に対する冒涜、などと批判する記事を出しています。
(CNN) — President Donald Trump explicitly floated delaying November's presidential election on Thursday, lending extraordinary voice to persistent concerns that he will seek to circumvent voting in a contest where he currently trails his opponent by double digits.
Hours later, Trump seemed to acknowledge the move was meant primarily to inject uncertainty into an election he appears determined to undermine, though didn't entirely back away from the notion of a delay.
Trump has no authority to delay an election, and the Constitution gives Congress the power to set the date for voting. Lawmakers from both parties said almost immediately there was no likelihood the election would be delayed and even some of Trump's allies said his message reflected the desperate flailing of a badly losing candidate.
(Trump floats delaying election despite lack of authority to do so. CNN. July 30, 2020.)
トランプ氏の懸念は"mail-in ballot"(郵便による投票)にあります。
集計が不当に操作されるリスクを以前から指摘しており、コロナウィルス影響下においても、有権者が投票所に赴いて直接投票することが望ましいと述べています。
一方、民主党はそのような意見表明は、トランプ氏が選挙結果自体を受け入れないためのこじつけであるとみなしているようです。
大統領選の日程を変更する権限は、現職大統領とても無いことははっきりしており、日程は米議会にその審議を行う権限が与えられているということですが、トランプ氏の爆弾発言に、トランプ氏が何をしでかすか分からないといった、警戒感が広がっているようです。
さて、今日の表現ですが、記事の冒頭で、
lending extraordinary voice to persistent concerns...
とある部分が引っ掛かったので取り上げたいと思います。
まず、"lend one's voice to..."というような動詞句の類かと思って辞書を引いてみたのですが、載っていません。
文の構造としては、「トランプ氏のツイッターでの発言」が、"persistent concern"に対して"extraordinary voice"を"lend"している、ということになるのですが、やはり"lend voice to"をどのように解釈するのか、またどう訳すのかが判然としないでいました。
ここで"persistent concern"とは、トランプ氏がまさに負けそうになっている選挙戦を回避しようとしているのではないかという恐れのことを指しています。トランプ氏が最近のインタビューで選挙結果を受け入れるかとの問いに対して明確な回答を避けたという事実、そういった状況からアメリカ国民や民主党関係者らが抱いている懸念であると思われます。
そのような懸念に"voice"(声)を"lend"(貸す)という英語の表現は何を言わんとしているのでしょう。
"voice"という単語の意味を改めて辞書で確認します。
すると、数ある定義の中で、
right of expression
also : influential power
(Merriam-Webster Dictionary)
という定義が目に留まりました。
取り上げた部分において、"voice"を"influential power"(影響、あるいは威力、勢力)に置き換えると分かりやすいと思われます。
つまり、予定されている大統領選で負けそうになっているトランプ氏が結果受け入れを拒否するのではないか、という懸念が元々あったところ、今日のツイートでの爆弾発言でその懸念がますます強まった、ということだと解釈できます。
辞書でも解説が欲しいところですが、手持ちの辞書には見当たりませんでしたので、コーパスで用例を拾ってみます。
But the Arizona Republican did not embrace the FCC proposal. Instead, he lent his voice to a chorus of powerful senators who condemned the move as an incursion on congressional power, prompting the FCC to retreat and effectively killing the idea for the time being.
(Washington Post, 2000)
上記の例では、同調する、といった訳語がぴったりきそうです。
The mayor's office did not comment about the Burgess contract, but it noted that it recently "launched new tools that will help level the playing field" for businesses owned by minorities and women. "We thank the auditor for lending his voice to the importance of a robust and accountable M/WBE program," spokeswoman Rowena Alegria said.
(Denver Post, 2014)
この例では、賛成する、と置き換えることもできそうです。
こうして見ていくと、何となくですが、"lend (one's) voice to"の意味するところが何となく見えてくるようです。
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