新型コロナによるパンデミックは、デルタ株などによる感染の再拡大が各国で見られ、マスク着用等の感染拡大防止ガイドラインを一旦は緩和した米国でも新たな危機感が広がっています。
米国では今週、Veteran's Affairs(退役軍人省)に勤務する医療スタッフらのワクチン接種を義務化すると発表しましたが、ワクチン接種義務化を他省庁に勤務するスタッフにも拡げるようです。
WASHINGTON (CNN) -- President Joe Biden, who for months used techniques like public service announcements to persuade Americans to get vaccinated, feels he has struck a "brick wall" in convincing holdouts to get shots, according to people familiar with his thinking. In private meetings with top aides, Biden has raised one question repeatedly: "What's the problem?"
Now, he is adopting a tougher approach as caseloads surge: vaccine requirements and blame.
(中略)
Instead of merely asking Americans to get vaccinated, the President on Thursday took his first steps toward ordering it.
(Kevin Liptak. Biden unveils federal worker vaccine requirement as he strikes a 'brick wall' convincing unvaccinated Americans to get the shot. CNN. July 29, 2021.)
ワクチン接種の「推奨」から「義務化」は大きな方針転換です。
この方針転換について、引用した記事ではバイデン大統領の側近などへの取材から、
(President Joe Biden...) feels he has struck a "brick wall" in convincing holdouts to get shots
と分析しています。
ここで、"strike a brick wall"というフレーズを取り上げたいと思います。
"brick wall"はレンガの壁ということですが、「レンガの壁を叩く」とはどういう意味でしょうか。
"brick wall"を辞書で引いてみますと、
批判を受けつけない人; 殴られても平気な人
(ランダムハウス英和辞書)
とありました。
記事のコンテクストにあてはめて考えると、「レンガ壁を叩く」とは、ワクチン接種をお願いしてももはや接種率は上がらなくなった、ということを言っているのであろうと思われます。
つまり、「協力依頼」ではもう通じない、だから義務化、ということだと思われます。
これと似た表現に、“hit the wall”というものがあります。壁にぶつかった、ということですが、それ以上先に行くことができない、ということで、スポーツ選手の記録が頭打ちになるというようなコンテクストで用いられることが多いです。
一方、“brick wall”ですが、こちらには消極的な意味合いが前面に出ているようです。
つまり打てども響かない、といったニュアンスではないでしょうか。