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2023年3月22日水曜日

grin and bear it

ウィスキー好きの人ならば言うに及ばず、普段お酒をたしなまないという人でも、ジャックダニエルズのラベルには見覚えがあるのではないでしょうか。

スーパーのお酒コーナーでも必ずといっても良いくらい置いてあると思いますが、黒地に白抜き文字のラベルはバーボンの代名詞と言ってもいいかも知れません。

そのジャックダニエルズのラベルを真似たイヌ用のオモチャ(!?)が、商標権侵害を巡る係争に発展し、最高裁の判断に委ねられる事態になっているそうです。

まずはCNNの記事をお読みください。


Lawyers for Jack Daniel's will argue to the Supreme Court on Wednesday that a dog toy company violated federal trademark law when it parodied the distiller's bottle to sell a "Bad Spaniels Silly Squeaker" toy replete with poop-themed jokes.

The case pits the rights of a famous trademark holder against the First Amendment rights of a company that wants to use those marks to sell a humorous product.

At the center of the case is a squeaky toy created by VIP Products that is strikingly similar to Jack Daniel's bottles. Apart from the general shape of the toy, the plastic bottle, like its glass counterpart, has a similar font style and uses a black label.

VIP borrows Jack Daniel's "Old No. 7 Brand Tennessee Sour Mash Whiskey" to sell "The Old No. 2 On Your Tennessee Carpet," a reference to dog excrement. And it changes the liquor bottle's "40% ALC. BY VOL. (80 PROOF)" with "43% POO BY VOL." and "100% SMELLY."
(Devan Cole. Jack Daniel's says a dog toy company is ripping off its brand. What will the Supreme Court say? CNN. March 21, 2023.)


問題は、VIP Products社が販売するイヌ用オモチャが、ラベルから形状からジャックダニエルズの商品を模倣しているということですが、それに加えて、同社製品がイヌのウ○チを彷彿とさせるものであるということがあります。

嗜好飲料が排泄物と同一視されてしまってはブランドにとって大変な損失であるという主張は確かにその通りと思わされるものがあります。一方、VIP社は表現の自由を主張しており、両者の見解の相違は司法判断に委ねられることになったようです。商標権を巡る係争の典型例かとも思われます。

ところで、同じ話題の別記事を引用します。


WASHINGTON — The Supreme Court on Wednesday will debate whether Jack Daniel's has to grin and bear it over humorous dog "poop-themed" toys that bear a resemblance to its iconic whiskey bottles.
(Lawrence Hurley. 'Poop-themed dog toys' shaped like whiskey bottles face Supreme Court trademark showdown. NBC News. March 22, 2023.)


今回の係争は明らかにVIP社がその原因を作り出していますが、


whether Jack Daniel's has to grin and bear it over humorous dog "poop-themed" toys


という部分は、つまりそもそもの商標権を持つジャックダニエルがそれを認めるか否か、が焦点だという訳です。

ここでの、


grin and bear it


というフレーズは慣用句として定着しており、


(不愉快なことを)笑って(黙って)我慢する
(研究社新英和大辞典)


という意味で用いられます。

ご存知のように"grin"とは歯を見せて笑顔を作る所作を指します。私のイメージでは口角を上げて作り笑いをするイメージですが、外国人、特にアメリカ人にこのような所作が見られることが多いように思われます。特に面白いことがあるわけでも、嬉しいことがあるわけでもないのに作る笑顔は、ある意味本心とは別だという印象を持ちます。

"grin and bear it"という表現も同様に、本心では受け入れ難いのに、「笑って、コラえて」というような感じではないかと。

今回の話は笑って済ませられるような話ではないということで、商標権に絡む係争の事例として語り継がれることでしょう。


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