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2024年2月29日木曜日

neopronoun

アメリカでテレビ放送されている人気クイズ番組が炎上しています。

番組内で出題されたクイズの内容が物議を醸しているというのですが・・・。


Jeopardy! has come under fire on social media over the inclusion of a clue regarding neopronouns during Monday's Tournament of Champions quarterfinal.

During the episode, contestant Cris Pannullo selected a category called "Speech! Parts of Speech!" for $600. He was then presented with the words "Xem, Xyrs, Xemself," to which he correctly responded: "What are pronouns?"

"Those are pronouns," host Ken Jennings responded. "Neopronouns."
(Ryan Smith. 'Jeopardy!' Is in Hot Water—'Never Watching Again'. Newsweek. February 28, 2024.)


問題になっているのは、クイズの設問(ここではヒントというのが近いと思われます)の内容、


Xem, Xyrs, Xemself


です。

これらは性自認を男性もしくは女性に特定されることに反発する考え方、いわゆるgender neutralityに配慮した代名詞で"neopronoun"と呼ばれています。これについては以前取り上げたMx.、"they"などをご覧下さい。

このヒントに対するクイズ挑戦者の回答、


What are pronouns?


が正答とされたということに対し、昨今のgender neutralityを苦々しく思っている視聴者が一斉に番組を批判した、ということです。

なお、この設問と正答の解釈については、若干補足説明が必要でしょう。

当該クイズ番組では、設問(ヒント)としていくつかの単語、もしくはステートメントを与え、対して回答者はそれらを導く質問を疑問文の形式で回答する、という形式になっています。つまり、普通のクイズであるような、質問、回答の位置付けが逆になっているのです。

これは今回のケースで何を意味するでしょうか?

例えば、「ジョージ・ワシントン」と設問(ヒント)が提示されたとします。それに対する正答は、「アメリカ合衆国の初代大統領は誰か?」というものとなります。

従って、"Xem, Xyrs, Xemself"という提示があって、"What are pronouns?"という回答は、gender neutralityを支持する人達にとってはそういう捉え方は当然あり得ますが、そうでない人々にとっては正答たり得ません。gender neutralityを苦々しく思っている人達からすれば、それらは正しい代名詞(pronoun)ではないのですから。

今日の1語、"neopronoun"についてはくどい解説は不要でしょう。

今回の反発を受けて、番組側が、


What are pronouns?


は不正解で、


What are neopronouns?


が正解でした、と訂正するならば、そうした人達の溜飲も多少は下がるかも知れません。

2024年2月28日水曜日

surge pricing

ハンバーガーチェーンのWendy’sが店舗の混雑に応じて商品価格を変動する仕組みを導入すると発表しました。

これは店舗が混雑する昼食時などにはハンバーガーの値段が通常より高くなるということを意味する訳ですが、


surge pricing


と表現されています。


More fast-food joints, restaurant chains and brick-and-mortar retailers are taking advantage of technological advances to tap into real-time trends and swiftly adjust prices, sometimes in seconds.

It’s a tempting proposition for big businesses that can dramatically increase revenue with slight pricing changes.

Wendy’s is the latest to say it will fluctuate prices of chicken nuggets or a classic chocolate frosty based on demand.
(Jessica Guynn. Wendy's CEO announces surge pricing for menu. Here's what you can expect. USA Today. February 27, 2024.)


"surge"を辞書で引くと、


(特に短期間の価格・活動などの)高騰、需要の高まり
(ランダムハウス英和辞書)


とあり、"surge pricing"の意味するところは繁忙期に価格を上げる仕組み、と解釈できます。

この"surge pricing"は、


dynamic pricing


とも呼ばれるそうなのですが、こちらは需給や繁閑に応じて価格が変動するというように読めます。つまり、通常価格が設定されているとして、高くなることもあれば安くなることもある、ということかと。

Wendy’sの"surge pricing"は来年以降導入ということでどういう仕組みなのか詳細は分かりませんが、引用記事によれば秒単位で価格調整することもあるようで、こうした仕組みにはやはりAIが絡んでいるようです。

繁忙期価格と聞いてまず思い浮かべるのが鉄道や飛行機などの運賃、ホテルやテーマパークの利用料金ではないでしょうか。

交通機関や施設の繁忙期価格は「ピークシーズン料金」などと呼ばれますが、英語でも"peak pricing"などと表現されます。

混雑時の料金を割り増しとする、"congestion pricing"という言い方もあります。

どんな商売も利益確保のために色んな仕組みを考え出すものだと思いますが、ファーストフードチェーンにおける"surge pricing"は賛否両論、議論が起きるところではないでしょうか。

例えば、昼食時間を自由に選択できる人もいれば、昼休みが限定されていて混雑時の利用が避けられない人には不満となるでしょう。また、もし本当に秒単位で価格が変わるとしたら、同じ注文でも直前の客が支払った価格よりも高い価格を払う、なんてこともあり得そうですからね。

でもAIの時代、こんなことが当たり前になる日も近いのかも知れませんね。

2024年2月27日火曜日

dumb phone

以前ですが、いわゆるガラケーのことを英語で何と言うか?というテーマで、"flip phone"という表現を取り上げました。

今日も同じはなしになるのですが、別の表現に出会したので取り上げます。


The company behind Nokia-branded smartphones, HMD, short for Human Mobile Devices, says it is launching a Barbie flip phone this summer, in partnership with toy maker Mattel.

(中略)

The device, which is slated for launch this summer, "promises to embody the vintage chic of the original girl empowerment brand with a dash of pink and of course, sparkle," according to a HMD press release.

It won't be connected to the internet, making it a throwback to the "dumb phones" of yesteryear before smartphones became popular.

So-called dumb phones have become more popular, especially with Gen Z consumers, who are trying to limit their digital activity and move away from toxic content found on platforms like Instagram, TikTok, Snapchat, and YouTube.
(Ryan Browne. A hot pink Barbie flip phone is launching this summer. CNBC. February 25, 2024.)


アメリカで人気の着せ替え人形Barbieが持っている携帯電話はピンク色の旧式、つまりガラケーなのですが、それを再現した本物の携帯電話が発売されるそうです。

記事を読んでいただくとお分かりのように、ガラケーを指すもうひとつの表現とは、


dumb phone


です。

スマートフォン(smart phone)、つまりスマート(smart)に対立する形容詞として"dumb"(頭が鈍い)ということなんですが、"flip phone"でも取り上げましたように、スマホ世代の若い人たちにはスマートでない、"dumb phone"故のシンプルさ、機能が限定され、カメラや画像の解像度も低品質なのが逆に新鮮で受けているということのようです。

ストリーミングサービスに飽いた音楽好きが、レコードやカセットテープに魅力を再発見するのと似ています。

2024年2月26日月曜日

プロンプト ー prompt

グーグルは同社が提供する生成AIであるGeminiの画像イメージ生成機能を停止すると発表しました。

背景には生成AIが不正確、また不適切な画像イメージを生成してしまうという問題があるようです。


Google halted its image generation feature within its Gemini artificial intelligence platform from making images of people Thursday after the program created inaccurate responses to prompts.

The Verge published multiple screenshots of the program creating historically inaccurate images Wednesday, including people of color in Nazi uniforms when the program was prompted to "generate an image of a 1943 German Solder."
(James Powel. Google suspends AI image feature from making pictures of people after inaccurate photos. USA Today. February 25, 2024.)


生成AIのこうした問題点については今日大きな問題になっています。AIに指示を出すのは人間であり、その指示内容に応じてどのような出力をするのかも現段階では人間が調整しているところ、内容の正確性、適切性のコントロールは完璧たり得ない、といったところでしょうか。

さて、生成AIのコンテクストにおいて最近とみに使われるようになった言葉に、「プロンプト」(prompt)があります。上記引用では動詞、名詞、両方で使われています。

英単語の"prompt"には、まず動詞として、刺激する、促す、誘発する、という意味があります。また、指示する、という意味もありますので、AIに対して問い掛けをしたり、アウトプットを要求する際の具体的な質問、指示内容がプロンプトと言われている訳です。

コンピュータの扱いに慣れている人がプロンプトと聞いて思い浮かべるのは、ウィンドウズOSでコマンド入力によって様々な情報を出力することができる機能である「コマンドプロンプト」ではないでしょうか。

American Heritage Dictionaryの"prompt"のエントリには。


Computers A symbol that appears on a monitor to indicate that the computer is ready to receive input.


という定義が載っており、"prompt"はコンピュータがユーザの入力待ち状態であることを示す「記号」とあり、これはウィンドウズOSだと例の「>」の符号を指すものと思われます。

手元にある研究社新英和大辞典(第五版)は1995年の版で、ウィンドウズ元年ではありますが、このような意味合いは載っていません。

"prompt"にはこの他、舞台などでセリフを思い出せるようにかける言葉や合図、きっかけ、またそうした手助けをする、という意味もあります。政治家などがスピーチの際に演台に用意された「プロンプター」はここから来ています。

英単語"prompt"の語源はラテン語promoで、提示する、という意味です。正確には、動詞promoの完了受動分詞形promptusから来ており、提示された(もの)、という意味になります。

2024年2月23日金曜日

bully pulpit

ここ数日のバイデン大統領の舌鋒には鋭いものがあります。

1つには、今年行われる大統領選を争うことになるトランプ氏に対して。ウクライナ支援への反対やNATOの足並みを乱すような発言に対する批判の口調はこれまでになく強いものになっています。

もう1つは、ロシアのプーチン大統領に対して。反体制指導者であったナワリヌイ氏の獄中死はプーチン氏の手によるものと断じました。プーチン氏を"SOB"とまで呼んだのには驚きました。


President Joe Biden is embracing his bully pulpit as he calls out resistance from former President Donald Trump and Republicans on Ukraine and Russia.

The tactic – which is playing out mostly in off-camera fundraisers and in public events - has become more pronounced in recent days as the president has latched on to House Republicans’ refusal to approve additional aid for Ukraine and Donald Trump’s refusal to condemn Russia for the death of Alexey Navalny, Vladimir Putin’s top critic.

The president has turned up the heat on Trump and Republicans in California this week in a series of fundraisers, venues where the president tends to speak a bit more freely and bluntly.
(Biden embraces bully pulpit as he escalates fight against Trump and GOP over Russia. CNN. February 22, 2024.)


バイデン氏のこうした発言、とりわけヒートアップした状況を報じる記事に目が留まったのですが、引用したCNNの記事では、


bully pulpit


という表現が使われており、これは一体何だ?ということになりました。

"pulpit"とはご存知のように、演台のことです。そして、"bully"という単語はまず「いじめっ子」というのが思い浮かぶところですが、「いじめっ子の演台」では意味不明です。大統領はいじめっ子だとでも!?

"bully pulpit"という表現は手元の英和辞書には載っていないのようなのですが、American Heritage Dictionaryでは、


A position, especially a public office, from which one may expound one's views to a wide audience.


と定義されています。つまり、"bully pulpit"とは、例えばここでは大統領職のように、多くの人々に自身の考え、見解を発信することができる地位を指すもので、これはメトニミーの一種と言えるかと思います。

ところで、なぜ、"bully"なのでしょうか?

同辞書の語源解説によれば、"bully pulpit"なる表現を最初に用いたのはルーズベルト大統領で、"bully"が意味することは"splendid"(素晴らしい)という意味である、ということなのです。つまり、"bully pulpit"は「素晴らしい演台」ということなのです。

辞書で"bully"の形容詞の意味をチェックしてみると、


りっぱな、素敵な、素晴らしい


といったポジティブな意味合いがもあることが確認できるのですが、知りませんでしたね。


2024年2月22日木曜日

kiss the ring

今年行われる米大統領選の共和党候補はトランプ元大統領がほぼ確実視されています。最近見る報道には、国内外問わず、トランプ政権発足を前提とした政治外交政策の変化や経済対策等の分析に関するものが目立ちます。

尤も、共和党の候補者選びは決着した訳ではなく、元国連大使のニッキ・ヘイリー氏は指名候補争いからの離脱をきっぱりと否定しています。

これまでに行われた州選挙でも大差をつけられていることから、離脱も時間の問題かと思っていました。そんな中、何故ヘイリー氏は戦い続けるのか?という記事が目に留まりました。


Why is Nikki Haley staying in the GOP primary?

Yet Haley did the opposite, vowing instead to keep “campaigning every day until the last person votes.”

“I refuse to quit,” Haley said. “I feel no need to kiss the ring. I have no fear of Trump’s retribution. I’m not looking for anything from him.”
(Andrew Romano. Why is Nikki Haley staying in the GOP primary? Yahoo! News. February 22, 2024.)


ヘイリー氏の発言が引用されている部分です。

最後の有権者が投票を終えるまで選挙活動はやめない、という発言と共に、


I feel no need to kiss the ring.


というくだりがあります。

ここでの"kiss the ring"という表現を知らなかったのですが、


敬意を示す


というような意味だそうです。辞書では見つけられなかったのですが、この表現は特に権威や上の立場にある人に対して屈従的な態度を示す、というニュアンスがあるようです。

ヘイリー氏にしてみれば、トランプ氏には屈しない、という旗色を鮮明にしたものと思われます。

"the ring"というのは指輪のことで、権力者の指輪に跪いて口づけをすることで恭順を示すというイメージは映画のワンシーンなどでもお馴染みでしょうか。カトリック教会の最高権威であるローマ法王に謁見する人が法王の指輪に口づけをすることに由来するという解説もネットには見られます。

2024年2月21日水曜日

shimming/shimmer

クレジットカードの磁気情報を盗み出す手口のことを「スキミング」と呼ぶというのは、多くの方が聞いたことがあると思います。

カードには情報を記録した磁気ストライプがあり、店舗やATMではそれを読み取って決済する訳ですが、そこを悪用するというものです。

「スキミング」は英語で"skimming"と書きます。掬い取る、最良(最上)の部分を取るという意味の動詞"skim"から来ています。

ところで、こうしたスキミングを防止するために、最近のカードにはICチップが埋め込まれていると理解していましたが、それさえもかいくぐり、情報を窃取する方法があるとは知りませんでした。

あまり聞いたことがないと思うのですが、"shimming"と呼ばれる手口があるそうです。「スキミング」を悪用する輩、また用いられる仕掛けは"skimmer"ですが、"shimming"に対しては"shimmer"となります。


Have you ever had your debit card or credit card information stolen from an ATM? If you have, you may have fallen victim to a skimmer. Tiny devices used by fraudsters called "skimmers" can be attached to ATMs and used to steal data off of your debit or credit card magnetic strip.

There's also an even smaller device called a "shimmer" that can be installed by fraudsters into an ATM that steals data from your credit or debit card chip if you have a newer chip-based card.
(Kurt Knutsson. How crooks use skimmers, shimmers to steal your money at ATM. Fox News. February 19, 2024.)


"skimming"と"shimming"の違いは、チップの情報を読み取るか否かの違いです。スキミングではチップの情報を窃取することはできませんが、"shimming"はそれが出来てしまう、ということです。

また、スキミングにおいて、ATMなどに施された仕掛けは見た目にも分かるということですが、"shimming"のそれは一見して分からないということらしく、被害にあわないためには、怪しいATMを利用しないということくらいしかないようです。

さて、疑問は"shimming"という名称はどこから来ているのか、ということでしたが、なかなか説明したものにあたりませんでした。

以下の記事(2018年と5年以上も前のものですが)によると、"shimming"に用いる薄い板のような仕掛けを"shim"と呼び、ここから来ているようです。


The emergence of chip-enabled credit cards was supposed to help eliminate vulnerability to identity theft and fraud because those cards could not be "skimmed." But fraudsters are persistent, and they've found a way to lift information from chip cards using this new technique called "shimming," which first occurred in places like Mexico and Arizona several years ago.

With this new technique, scammers insert a paper-thin device, or "shim," enabled with a microchip and flash storage directly into the dip-and-wait slot on card readers that accepts chip-enabled cards.
(Ismat Mangla. ‘Shimming’ Is the Latest Credit Card Scam. Experian. May 10, 2018.)


American Heritage Dictionaryでは"shim"を、


A thin, often tapered piece of material, such as wood, stone, or metal, used to fill gaps, make something level, or adjust something to fit properly.


と定義しています。

機械や器具などにおいて傾きやすり減った部分を補正するために詰めたり差し込んだりする薄い木片や金属片、くさびのようなものをシムと呼ぶそうですが、その「シム」から来ています。


2024年2月20日火曜日

cypher

英国政府のウェブサイトのロゴが変更されたそうです。

その変更というのがかなり微妙な違いで、言われなければ気が付かないレベルだということで話題になっています。

変更は国王チャールズ3世の即位を受けて、ロイヤル・サイファー(Royal Cypher)が変わったことを受けたものですが、王冠のデザインが故エリザベス女王のものと微妙に異なるというものです。

故エリザベス女王の王冠(St Edwards crown)がチャールズ国王の王冠(Tudor crown)に変わった、ということなのですが、百聞は一見に如かず、下記引用の記事のグラフィックをご覧下さい。


King Charles' preferred crown has replaced Queen Elizabeth II's favoured symbol on the government website, marking his role of the head of state.

The logo can be seen on key pages on gov.uk as the site rebrands this month.

King Charles chose the rounded Tudor Crown for his royal cypher when he took the throne in 2022 - and it is being changed in places where his late mother's St Edward's Crown was shown.

These include post boxes, police uniforms and official buildings.
(King Charles' crown appears in change of logo on government's gov.uk website. BBC. News. February 20, 2024.)


ということで、本日の1語は"cypher"なのですが、これはイギリス英語のスペルになっており、アメリカ英語では"cipher"とつづられます。

そうです、暗号を意味する単語ですが、"royal cypher"(ロイヤル・サイファー)は日本語では王室暗号と訳すらしいです。

"cypher"には暗号の意味の他、名前の頭文字などを組み合わせたものを指す意味もあるそうなのですが、知りませんでした。

チャールズ国王の"royal cypher"は、テューダー王冠にC、R、そして3世を示すIIIのローマ数字が組み合わされたものになっています。Cは言うまでもなくCharlesの頭文字であり、RはRex(王を意味するラテン語)です。

微妙に異なる王冠のデザインを反映させた今回の変更は政府関連組織の広範囲に及ぶらしく、そのコストもそれなりの額になるという話もあります。

日本の皇室は菊花紋章で良かった(!?)

2024年2月19日月曜日

popcorn brain

インターネット、SNS全盛の今日、現代人は集中力が低下していると指摘されています。

SNSやネット動画のサイトは画面をスクロールしていっても終わりが無く、次から次へと新しいコンテンツが表示されるものが主流となっています。

また何かひとつの投稿やコンテンツにアクセスすると、類似する投稿、コンテンツが表示され、それらにアクセスすると、また次・・・、といったようにキリがありません。

こうした刺激に晒され続け、大量のネット上のコンテンツを消費していくうちに、はてな、そもそも何をしようとしていたんだったっけ?というような事になります。膨大な情報にただ促されるが如く脳の注意力は四散しているという訳です。こうして本来の注意力や集中力を保つことが出来なくなった現代人の脳を、


popcorn brain


と呼ぶのだそうです。

その心は、多方面の刺激に注意や関心が削がれてあちこちに四散する我々の脳を、フライパンの中で音を立てて弾けるポップコーンに喩えた、というものです。


Experts are warning of a new medical issue caused by excessive scrolling on social media.

The issue has been dubbed “popcorn brain,” a term used to describe the shifting attention of social media users.

A study published in Nature Communications in 2019, revealed that people’s collective attention spans are becoming increasingly shorter, due to the rapid consumption of social media.

Popcorn brain refers to the tendency for our attention to shift and jump from one thing to another quickly, just like the kernels in a popcorn bag whizzing inside. It’s a  phenomenon in the psychology world, first coined by iSchool researcher David Levy in 2011.
(Ayan Omar. What is 'popcorn brain'? Social media could be ruining our attention span. Yahoo! News. February 16, 2024.)


私自身、仕事でもプライベートでも覚えがあります。

パソコンやスマホで作業をしていても、新着メールやメッセージの通知、15分後の予定のアラーム、読んでいるニュース記事の至るところに現れては更新される無数の広告、等々、本来行おうとしていた事への集中力を妨げる要素はキリがありません。

マルチタスクと言えば効率的なようにも聞こえますが、実のところは集中できておらず、却って非効率の典型とも言うべき状況という訳です。

ではどうすれば良いのか?

ノートパソコンを閉じ、スマホは置きましょう。デバイスから離れ、外でも歩いてみることです。私はジョギングに出掛けます。

2024年2月16日金曜日

put on paws

年始、1月2日に羽田空港で発生した旅客機と自衛隊機の衝突炎上事故では、迅速な避難誘導により旅客機の乗客は奇跡的に全員が無事でしたが、預けたペットは犠牲となったことが程なくして明らかとなりました。家族同然のペットを貨物として預けるのではなく、乗客と同じ機内に持ち込むことは許されないのかという意見が有名タレントなどから出たことをきっかけに、ネット上などではその是非を巡る議論が過熱しました。

ところで、以下の引用はニューヨークポスト紙の記事なのですが、アメリカではこれまで当たり前のように機内でのペット同伴が行われてきたようなのですが、そんなことは知りませんでしたし、実際目にしたこともありませんでしたので、ちょっとびっくりしてしまいました。

尤も、この記事では、とある乗客のペットが機内への同伴を拒否された、という話なんですが。


Their travel plans were put on paws.

Perplexed dog owners are scratching their heads as to why and how their cute, and often well-behaved, companions got banned from air travel.
(Alex Mitchell. My dog wasn’t allowed to board my flight — I’m convinced there’s a no-fly list for pets. New York Post. February 13, 2024.)


話の流れとしては分かったものの、冒頭の、


Their travel plans were put on paws.


という文の"put on paws"という表現が引っ掛かりました。

ペットと楽しい旅行を、と計画立てていたところ、土壇場で同乗(機内持ち込み)NGとなり、計画が台無しになった、というような意味合いと解釈しました。

そこで、"put on paws"なるフレーズがあるのかと思って辞書を引くのですが、そのような表現は載っていません。"paw"は動物の脚、鉤爪や肉球のある犬猫の手を指しますから、ここで敢えて"put on paws"というフレーズを使っているのはペットの話題にかけたしゃれの意図があるのだろうとは思いました。

しかしながら、例えば"cat’s paw"のような特別な由来や意味合いがある表現を見てきたこともあって、"put on paws"というフレーズが存在するのではないか、という思いにとらわれてしまったというのが本日の投稿のきっかけとなっています。

普通の辞書に載っていないのは仕方がないとして、もしかしたらスラングの類かもしれず、またネットで検索すれば出てくるかも、コーパスは?などと奮闘すること約1時間・・・。

出てきません・・・。探し方が悪い?

しゃれというものは元になる表現があるものですが、"put on paws"についてはその元になる表現が何なのかすら掴めず、ジリジリとする思いでした。

例えば、"paw"は人間の手(hand)の意味もありますから、"put on hands"というところを"〜paws"に置き換えたものかとも考えたのですが、そのような表現がある訳ではなく、また納得感もありません。

英語表現としての解説は見当たらなかったのですが、その後、ニュース記事を検索してみるといくつかの用例が見つかりました。

一つ目。(タイトル部分で使われています。)


White Rock dog owners are running out of time to take their furry friends to the waterfront.

The city’s program that allows dogs on the White Rock promenade during off-peak months is set to change Thursday (March 31), and dogs will not be allowed on the walkway again until Oct. 1.
(Nick Greenizan. Pups’ promenade passage to be put on ‘paws’ after Thursday. Peace Arch News. March 27, 2022.)


二つ目。


A MOTORBIKE-RIDING pooch who has helped to raise hundreds of pounds for good causes is back in the saddle.

Adorable Jack Russell Cookie and her owner Dave Hall have won an army of fans for their amazing exploits while travelling the length and breadth of Britain on their BMW R1250.

Sadly, their charity work had to be put on ‘paws’ for 18 months after Dave was struck down by a bout of ill health. 
(Amanda Keenan. Motorbike-riding dog back in the saddle after 18-month ‘paws’. Glasgow Evening Times. April 15, 2023.)


これら二つの記事で共通する背景としては、(最初のニューヨークポスト紙の記事もそうですが)これまで問題なく出来ていたことが出来なくなった、中止せざるを得なくなった、というものです。

そこのところを念頭に置きながら、"put on paws"、「プットオンポーズ」・・・、と念仏を唱えるようにつぶやいていたところ・・・。

ひらめきました!

「ポーズ」は、"pause"のことだったのです!

つまり、休止に追い込まれたという事。"(be) put on pause"というところを、発音が同じ"paws"で置き換えた、ということなんですね。

最後にもう一つ用例を挙げておきます。


They were put on “paws” during COVID-19 lockdowns, but the loveable Labradors of the Canine Court Companion Program (CCCP) are back on deck at Gosford courthouse, along with several others in the state.
(Therapy dogs back on deck at Gosford courthouse. coastcommunitynews.com.au. April 23, 2022.)


知ってしまえば何ということも無いのですが、字面だけを見ていては駄目なんだなぁと思いましたね。尤も、発音だけでは"pause"も"paws"も全く同じに聞こえるので、これがしゃれとして通用するのは文字化されてこそなのですが。



2024年2月15日木曜日

au naturel

今日の1語はフランス語なんですが、


au naturel


という表現です。ご存知でしょうか?

自然のまま、という意味です。コンテクストにより、裸で、ヌードで、という意味合いで用いられます。

記事の引用をどうぞ。


Cover up when you go Down Under.

Nudists may soon be prohibited from going au natural [sic] at a popular clothing-optional Australian beach — despite them staunchly defending naked recreation as a “legitimate way of life.”

The NSW Parks and Wildlife Service (NPWS) is considering enacting the ban at Tyagarah Beach, one of the few remaining nudist spots in New South Wales, according to 9 News.

Nudity is “not consistent with the values the reserve is managed under,” the NPWS wrote in a December letter to the local government.
(Katherine Donlevy. Nudist beach in Australia threatened with closure: ‘Not consistent with values’. New York Post. February 14, 2024.)


ヌーディストビーチというものを体験したことはありませんが、海外ではプールなどでもヌーディスト専用区域というのがあるのを目にしたことがあります。

記事はオーストラリアのとあるヌーディストビーチが存続の危機にある、といった内容のものです。

"au natural"となっていますが、正しくはフランス語スペルの"au naturel"で、英和辞典にもこのスペルでエントリがあります。

ヌードで、という意味の他、(食材などを)生のままで、という意味でも用いられます。



2024年2月14日水曜日

in a froth

久しくビアホールに行っていません。ビアホールで飲むビールは家では味わえない格別なものがあります。

「プロ」が注ぐ一杯は泡の配分、きめ細かさが抜群で、見た目も味も真似できないものがあると多くの人が感じているのではないでしょうか。

さて、イギリスと言えばアイルランドのお隣ということでギネスビールが有名ですが、そのギネスビールの注ぎ方を巡って論争になっているそうです。

パーフェクトな泡の配分のための「二度注ぎ」、つまり一度グラスに一定量を注いで、ある程度の時間を置いてから残りを注ぐという手法、は根拠が無いと明かしたバーマンの発言にギネスファンからは異議が噴出、ということのようです。

バーマンの発言は、二度注ぎだから泡の質が、また味が向上するということはなく、マーケティングの一種に過ぎないと主張しました。つまり、客が極上の一杯が供されるまでの待ち時間に意味は無く、ギネス社のマーケティングに踊らされているだけだ、というのです。


Guinness fans are in a froth over incendiary claims the double pour does not make the perfect pint and is just a 'marketing ploy'. 

Pouring two-thirds of the pint and leaving it to rest for 60 to 80 seconds has become regular practice for any barman worth their salt - with Guinness insisting it is necessary to achieve the 'perfect head height' and 'balanced flavour profile'.

As the company itself says: 'Good things come to those who wait.' 

But now an Irish barman based in the UK has ignited an almighty row by insisting the double pour is simply a marketing ploy and does not affect the stout's quality or taste.
(Rory Tingle. Guinness fans are in a froth over claims the double pour does NOT make the perfect pint: Stout aficionados rubbish Irish bartender's revelation that 60 second resting time is just a 'marketing ploy'. Daily Mail. February 13, 2024.)


味わいと泡のきめ細かさのために二度注ぎ、三度注ぎといった手法があるというのは聞いた事がありますが、それが単なるマーケティングと言われてしまうとファンならずとも、消費者としてはがっかりしてしまうのではないでしょうか。

記事では、


Guinness fans are in a froth (over)


とあります。

この慣用句は、怒っている、腹を立てている、という意味なんですが、ビールの話題だけに、"froth"(泡)とはシャレが効いています。

"froth"(泡)と腹立ちが結びつく理由はよくわかりませんが、


froth at the mouth


という慣用句もあり、こちらは怒って興奮している人が口角に泡を飛ばしている様子を指したもので、日本語の感覚と共通するものがあります。

2024年2月13日火曜日

scarf

記事の引用からどうぞ。


A British bodybuilder is doubling down on his decision to eat a daily “brick” of butter to improve his body’s “function” and subsequently avoid being hangry.

And butter is only one part of 28-year-old Jonathan Griffiths’ aggressive eating plan.

The Dorset, England, man puts Rocky Balboa to shame by scarfing down 1.5 pounds of meat, half a liter of raw milk, 4 ounces of cheese, and four eggs a day, SWNS reports.
(Alex Mitchell. I eat a block of butter a day — my physique is much leaner now. New York Post. February 12, 2024.)


ボディビルダーの食生活を話題にしていますが、毎日バターの塊を食べるという、ちょっと常人離れした食習慣です。

また、ムキムキの筋肉をつけるにはたくさん食べなければならないのでしょう、


scarfing down 1.5 pounds of meat, half a liter of raw milk, 4 ounces of cheese, and four eggs a day


ともあります。ここで、"scarf (down)"という動詞が使われていますね。

"scarf"を辞書で引くと、おしゃれに使うスカーフを指す名詞の他にもエントリがあります。

動詞"scarf (down)"はその1つで、


ガツガツと食べる、貪り食う、ガブガブと飲む


といった意味合いで、暴飲暴食のきらいがあります。

この"scarf (down)"は"scoff"という別の単語から来ていると語源欄にあります。

"scoff"という動詞には嘲笑うという意味がありますが、やはり別の単語としてガツガツ食べるという意味があり、これが転じて"scarf"になったとされます。

また、"scoffing"という名詞があり、これはアメリカ英語で「食い物」という意味です。労働者階級や浮浪者の使う俗語だそうで、あまり上品な言葉ではありません。

2024年2月12日月曜日

vilify

アメリカの歌手テイラー・スイフトさんの人気はものすごいそうですが、今年行われた大統領選への影響力が取り沙汰されています。

というのも、テイラーさんは前回の大統領選ではバイデン氏支持を公言しており、性的マイノリティの権利擁護などの政治的問題においても民主党寄りの意見を表明しているということがあるからです。

人気歌手の政治的主張になびくファンの影響力は絶大と思われ、トランプ陣営は警戒、テイラーさんをバイデン政権の回し者とみなす陰謀論まであるようです。

一方、人気歌手が政治に関わることに警鐘を鳴らす専門家もいます。


Taylor Swift will be vilified by millions of Americans and risk her own safety if she endorses Joe Biden in the 2024 election, a top talent agent has warned.

The Love Story singer’s fame has reached dizzying heights in the months since she began dating Kansas City Chiefs player Travis Kelce, with pictures of their pitch-side kiss reverberating around the world last month.

(中略)

While it is not out of the realms of possibility (Swift endorsed Mr Biden and Kamala Harris in 2020 and appeared to regret not vocalising her disdain for Donald Trump in 2016), Prof Jonathan Shalit has warned of the risks she faces by inserting herself into politics at such a “polarising” time.
(Susie Coen. Swift warned against further shows of public support for President Biden. The Telegraph. February 11, 2024.)


今日取り上げるのは、


vilify


という動詞です。辞書を引くと、中傷する、という意味になっています。つまり悪く言う、貶す、という意味です。国を二分するような政治的問題に首を突っ込むと、人気歌手の看板に傷が付く、ということだと思われます。引用した記事では身辺にも危険が及ぶことも危惧されるとあります。

ところで、この"vilify"という動詞はラテン語の形容詞vilisから来ており、その意味は安価な、価値の低い、という意味です。よって、"vilify"の元々の意味は価値を下げる、というものでした。英和辞典には、廃語としての意味に、下劣にする、堕落させる、というものが載っています。

同じくラテン語vilisから来ている単語に、vile(ひどい、不快な、下劣な)、vilipend(貶す;"vilify"に同義)があります。


2024年2月9日金曜日

misspeak

バイデン大統領の認知機能低下が懸念される新たな事例です。

先週行われた選挙集会の中で、バイデン氏は2021年のG7首脳会議時の逸話に触れ、ドイツのコール首相と2021年1月6日のワシントン議事堂で起きた暴動について話をした、と発言。コール首相は2017年に亡くなっており、2021年はメルケル首相ですから、メルケル氏とコール元首相を混同したと思われるというものです。

また、同じく2021年のG7において、フランスのミッテラン大統領とも話した、とも発言。ミッテラン元大統領は1996年に亡くなっており、こちらは当時のマクロン大統領と混同したもののようです。

多くのメディアが新たな"gaffe"と取り上げています。


President Biden claimed he spoke with the late German Chancellor Helmut Kohl, who died in 2017, in 2021 while recalling past conversations during fundraising events on Wednesday. The gaffe marks his second of the week.

(中略)

The gaffe on Wednesday is similar to the one Biden made on Sunday after he claimed he spoke with François Mitterrand, a French president who died in 1996, at the same G7 meeting.
(Elizabeth Pritchett. Biden claims he spoke with German chancellor who died in 2017 at first G7 meeting in latest gaffe. Fox News. February 8, 2024.)


立て続けに起きた"gaffe"について、ホワイトハウス報道官は、


misspeak


という言葉を使い、バイデン氏を擁護しています。


White House press secretary Karine Jean-Pierre defended President Biden on Thursday when asked about a gaffe in which the president said he spoke in 2021 with German Chancellor Helmut Kohl – who actually died four years earlier – arguing that misspeaking "happens to all of us, and it is common." 
(Greg Norman. White House defends Biden after he mixed up world leaders with dead people: 'It happens'. Fox News. February 8, 2024.)


"misspeak"の定義を確認すると、


To speak or pronounce incorrectly.
To speak mistakenly, inappropriately, or rashly.
(American Heritage Dictionary)


とあります。英和辞典では、言い間違える、間違って話す(言う)、などとあります。

大統領の発言は単なる言い間違いであり、認知機能の低下などではない、という思いが滲んでいるようです。

言い間違いは誰にでもよくある、という事なんですが、果たして?

2024年2月8日木曜日

prognosticator

今年行われるアメリカ大統領選、現時点ではまだ民主、共和、両党内での指名候補者を選出する段階ですが、早くもバイデン氏とトランプ氏両名に目を向けた記事が目立ちます。

1984年以降、全ての大統領選の結果を予想的中させたという預言者(prognosticator)の勝敗予想によれば、現時点ではバイデン氏に分があるということです。


The "Keys to the White House" are being handed out, predicting President Biden currently holds a slight lead in a hypothetical 2024 matchup against former President Donald Trump.

Allan Lichtman, an election prognosticator who has correctly predicted nearly every presidential race since 1984, developed a formula that is used to make predictions about an upcoming presidential election - and in many cases, it proves to be accurate.
(Historian who correctly predicted almost every election winner since 1984 reveals who is likely to win in 2024. Fox News. February 7, 2024.)


"prognosticator"という単語ですが、予想するという意味の動詞"prognosticate"から来ていますが、これは接頭辞pro-と、知る、学ぶという意味のギリシャ語gignoskeinから成り、つまりは前もって知る、ということから、予言する、という意味になります。

このギリシャ語はラテン語でgnosco(また、nosco、やはり知る、認識する、という意味)となり、英語では-gnosisという語形で現れます。"prognosis"(病気の予後)や"diagnosis"(診断)といった語がその例です。

この預言者のよる予想では、候補者の資質や選挙戦を取り巻く環境など、13の指標で評価を行うそうですが、現時点ではバイデン氏がポイントを上回っているとのことです。


2024年2月7日水曜日

cry uncle

インフレ、物価高は今に始まったことではありませんが、モノの値段が上がったなぁと思うシーンとして、外食する時が挙げられます。

最近聞いた話では、ラーメンには1,000円の壁というものがあるのだとか。ラーメン1杯の値段が1,000円を超えると客足に響くため、おいそれと値上げに踏み切ることが出来ない、という店舗側のジレンマを言うようです。もちろん、客側としても、1杯が1,000円を超えるラーメンに躊躇するというのもあるかと思います。小生は余程でない限り、パスします。

アメリカ国内の物価高については、昨年3月に旅行した際にも肌で感じたのですが、ここ数日話題になっているのがマクドナルドの値段。

ビッグマックのセットメニューが20ドルに迫る店もあるらしく、顧客の反発を買い、売上げ、さらには同社の株も下落しているようです。


Corporate America may be bumping up against the limit of its power to keep raising prices as consumers in some markets cry uncle.

At McDonald’s, which has repeatedly boasted about its ability to raise menu prices without denting sales, executives are finally acknowledging that customers need a break.

On Monday, as the burger chain reported weaker-than-expected sales at its US stores, CEO Chris Kempczinski addressed McDonald’s “affordability” problem, and indicated the chain would cut prices on some menu items.
(Allison Morrow. McDonald’s pushed customers to the brink on price. They’re starting to push back. CNN. February 6, 2024.)


このような反発を受けてか、マクドナルド社CEOはより値頃感のある価格維持に努めると表明した模様です。

値上げは消費者には如何ともし難く、店舗やメーカーが「苦渋の判断」とか「心苦しいところやむなく・・・」と踏み切る価格上昇を受け入れざるを得ないのが実情です。

さて、引用した記事に、


consumers in some markets cry uncle


というくだりがあるのですが、ここで使われている"cry uncle"という表現を知りませんでした。

この表現は、


降参する


という意味で、アメリカ英語の口語表現とされています。

類似の言い回しに、


say uncle


というものがあり、こちらは命令文になっています。

いじめっ子がいじめている相手に"say uncle"と言うのですが、降参しろ、という意味になるとか。

"uncle"はおじ(叔父、伯父)さんですが、おじさんのヘルプを求める、という解釈のようです。

ところで、何故「おじさん」なのかについては諸説あるようです。

一説には、この表現がイタリア語(ラテン語?)のフレーズに由来するというもの。

また別の説では、"uncle"というのはアイルランド語のanacalが訛った(変化した)というもの。ちなみに、アイルランド語anacalは助けや慈悲という意味の名詞で、"uncle"とは関係がありません。


2024年2月6日火曜日

piggy bank

宮城県の小学生が能登半島地震の被災地に義援金を送ったというニュースを聞きました。正月に貰ったお年玉を募金にしたということで、心温まる話です。

下記に引用のニュースもまた、貯金を崩してハイチ地震の犠牲者に募金したという18歳の女の子の話です。この女の子は募金の直後、高額の宝くじに当選するという思ってもみなかった幸運に恵まれたということです。


A surprised 18-year-old who emptied her piggy bank as a child to send cash to victims of the terrifying Haitian earthquake has experienced karma in action and won a Canadian $48million ($36m and £27m) lottery jackpot.

(中略)

The Algoma University student believes this win could have been the result of good karma. She and her sister, Sophie, showed the pure generosity of children after they emptied their piggy banks as children to send money to victims of the Haitian earthquake in 2010.
(Imy Brighty-Potts. Teen who emptied piggy bank as kid for earthquake victims wins £27million on lottery. The Mirror. February 4, 2024.)


善行の見返りでしょうか。

さて、


piggy bank


という表現が使われています。そう、ブタの貯金箱です。

ブタの貯金箱というのはよく見かけますが、英語文化圏においても"piggy bank"という表現で定着しているということに今さらながら関心が沸きました。

何ゆえに、コブタ(piggy)?

"piggy bank"の由来には諸説あるらしく、決定的な由来は明らかではないそうですが、ブタという動物と豊穣、幸運や富を関連付ける考え方というのは東アジアでは中国やインドネシアにあるようです。

BBC Newsの記事によれば、英語の"piggy bank"もこの影響を受けているとか。


But, no – the pig remains synonymous with luck and wealth. With February 5 marking the beginning of the Year of the Pig on the Chinese calendar, it’s worth considering how the humble porcine became a symbol of good fortune.

The modern concept of the “piggy bank”, first popularised in the United States in the early 20th century, has a lot to do with this reputation.
(Twisted tale: The great piggy bank mystery. BBC News.)


ところで、諸説ある"piggy bank"の由来のひとつでは、この表現がブタ(pig)とは関係ないとするものもあります。


During The Middle Ages, metal was expensive and seldom used for household wares. Instead, dishes and pots were made of an economical orange-colored clay called pygg. Whenever folks could save an extra coin or two, they dropped it into one of their clay jars — a pygg pot." 

Over time, "pygg" evolved with the English alphabet, turning into "pigge" and, finally, "pig."
(Mandi Woodruff. REVEALED: The True Origins Of The Piggy Bank. Business Insider. June 7, 2012.)


上記の引用はBusiness Insiderの記事からですが、ブタの貯金箱は陶器製の容器が典型であるところ、その材料となる粘土が"pygg"と呼ばれていたことから、"pygg pot"となり、英語に取り入れられる過程で"pig"になった、というものです。

この他、ブタを富の象徴として大切にする文化はドイツにもあるそうですが、"piggy bank"の確定的な由来については謎に包まれているということです。

2024年2月5日月曜日

米で増加する自動車強奪 ー DMV

ワシントンD.C.で自動車強奪事件が発生、かつてトランプ政権の中枢メンバーでもあった人物が犠牲になったと報じられています。


WASHINGTON - Mike Gill, a married father of three who was also a member of former President Donald Trump's administration, has died. He was shot during a deadly carjacking rampage in Washington, D.C. last Monday night.
(Shomari Stone. Mike Gill, former Trump official, dies days after being shot in DMV carjacking spree. Fox 5 DC. February 3, 2024.)


日本では高級車の自動車盗難が後を断ちませんが、米国で増加しているのは自動車の強奪事件(carjacking)で、これは突然ドライバーに銃口を向けて運転席から引きずり下ろし、クルマを奪うというものです。

さて、記事のタイトルに、


DMV carjacking spree


と出てくるのですが、"DMV"が何の略語なのか分からず、暫し難儀しました。

Vとは恐らく"vehicle"の略だろうとあたりをつけたのですが、Department of Motor Vehicleとかかな、などと思ったものの、それだといまいちピンと来ません。

記事中"DMV"を説明したものはなく、他メディアの記事では"DMV"という言葉自体出てこないものもあります。安易にグーグル検索してみましたが、上位に出てくる検索結果は、Dual Mode Vehicleというもので、これまたピンと来ません。

ニュースでは、"DMV" carjackingが連続して発生しているという昨年くらいからあることが分かりました。"DMV"は強奪のターゲットになっている車種を指すのではとも思われましたが、そうでもなさそうです。

あれこれ調べていると、以下のような見出しの記事にあたりました。


DC traffic: Pro-Palestine protest causing lane closures and morning delays across DMV
(Fox 5 DC. February 1, 2024.)


道路交通情報の類ですが、ここでは"across DMV"ですから、"DMV"とは場所や地域といった概念と思われましたところ、実はそうだったということが分かりました。

実に、"DMV"とは、(ワシントン)D.C.、メリーランド(Maryland)、バージニア(Virginia)の頭文字を取った略称で、それら地域一帯を示すものなのです。日本で言えば、京阪神とか東京を中心とした一都三県のような概念に相当するものです。

つまりはアメリカでは、この"DMV"一帯で自動車強奪事件が増加の一途を辿っており、有名な官僚までもが犠牲になった、というニュースでした。

"DMV"という略語は恐らくはオフィシャルな言葉ではありませんが、米国東海岸や"DMV"地域の人々の間やローカルメディアではごく普通に用いられているものと思われます。

検索している中で、Urban Dictionaryの以下のような定義が目を引きました。


a term referring to the geographical area of DC, Maryland and Virginia, used by people who are from Maryland or Virginia and wish they were from DC.
(Urban Dictionary)


D.C.エリアは高嶺の花、住みたくても住めない人はメリーランドやバージニアから通勤すると聞いたことがあります。

2024年2月2日金曜日

beholden

電気自動車メーカーのテスラ社CEOであるイーロン・マスク氏の報酬560億ドル(!)に物言いがつきました。

前代未聞の巨額な報酬に対し、デラウェア州の裁判所は無効を命じる判決を下したとあります。


Tesla CEO Elon Musk's $55.8 billion pay package was unfair to the electric carmaker's shareholders and must be rescinded, Delaware Court of Chancery Judge Kathaleen McCormick ruled yesterday. Most of the board members were beholden to Musk or had compromising conflicts, she wrote.

"Swept up by the rhetoric of 'all upside,' or perhaps starry-eyed by Musk's superstar appeal, the board never asked the $55.8 billion question: Was the plan even necessary for Tesla to retain Musk and achieve its goals?" McCormick's ruling said.

(中略)

McCormick criticized the Tesla board, writing that Tesla Chair Robyn Denholm had a "lackadaisical approach to her oversight obligations." Although Musk and his brother Kimbal recused themselves from the pay-plan vote, "five of the six directors who voted on the Grant were beholden to Musk or had compromising conflicts." This "allow[ed] Musk to dictate the timing of the process and the terms of the Grant," McCormick.
(Jon Brodkin. Elon Musk’s $56 billion pay plan voided as shareholders beat Tesla in court. Ars Technica. February 1, 2024.)


会社は株主のものであって、社長(CEO)のものではありません。裁判長はマスク氏の報酬は株主意向を無視した不公平な額であるとして無効を命じたもののようです。

記事のくだりに、


Most of the board members were beholden to Musk or had compromising conflicts


という部分があります。これはマスク氏の報酬を決議した取締役会に言及しているものですが、不公平な報酬に異を唱えるどころか同調していることに対する批判となっています。

"beholden (to)"という表現が目に留まったのですが、これは(to以下に対して)


恩義を受けている、お陰を被っている、義理があって


という意味です。

"behold"という動詞は、見る、眺める、注視する、といった意味合いですが、"beholden (to)"についてはまた異なった意味合いで用いられています。

"behold"にしろ、"beholden (to)"にしろ、元の意味は"to hold or retain"、すなわち掴む、保持するというもの(Merriam-Webster Dictionary)だそうですが、2つの単語は異なる意味合いに発展したもののようです。



2024年2月1日木曜日

objectification

アメリカの人気歌手、テイラー・スイフトさんの画像をAIで加工したと思われる猥褻な画像がSNSで多数拡散され、AI利用の問題点が改めて浮き彫りにされました。

ところで、似たような問題はオーストラリアでも起きており、下記によれば、ニュースメディアが「加工編集」した女性議員の画像を記事に用い、謝罪に追い込まれたということです。


A national news service in Australia has been criticized for using AI to sexualize an image of Victoria state parliament member Georgie Purcell.

The photo, published by Nine News earlier this month, was torn apart by Purcell on social media, who called the channel out for the "constant sexualization and objectification" that female politicians in Australia are subjected to.

The doctored image appears to emphasize the politician's breasts and mysteriously exposes her midriff, despite the original image showing her wearing a one-piece dress.
(Victor Tangermann. Scandal Mounts as TV Network Used AI to Sexualize Image of Politician. Yahoo! News. February 1, 2024.)


オーストラリアのニュースメディアであるNine Newsは女性議員の写真をアドビ社の画像編集ソフトウェアで加工編集したということですが、オリジナルの画像と並べて比較すると、胸元が強調され、さらにワンピースにもかかわらず上半身の着衣は丈が短くなってウエスト部分を露出したものになっています。

女性議員はこれに反発、男性だったならばこんなことは起きないのではないかと疑問を投げかけています。

さて、今日の1語は、"objectification"です。

動詞"objectify"が名詞化したものですが、"objectify"を英和辞典で引くと、客観化する、客体化する、といった漠然とした和訳で、ここではしっくりきませんね。

記事では、オーストラリアの女性議員は


constant sexualization and objectification


にさらされている、とあります。

これは女性を性的な対象と見做し(sexualization)、また「モノ」のように扱う、さらに言えば商品化している、ということの批判が込められているものと思われます。

Merriam-Webster Dictionaryの定義もやや漠然としたものですが、以下のようにあり、


to treat as an object or cause to have objective reality


また添えられた例文、


They believe that beauty pageants objectify women.


は女性をモノ扱いすることに触れていると思われます。

この騒動に関する記事を他にもいくつか読みましたが、Nine News側は謝罪はしながらも、意図的な加工編集はしておらず、悪意も無かったと弁明し、画像編集ソフトの機能により問題の写真が生成されたとも主張しています。

当該のソフトウェアにはAIによる自動編集機能があるのは確かなようですが、これに対しアドビ社は加工編集の結果は人間の目を通して確認してから使うべきであった、とのコメントを出しています。

恐らくは今後も同様の問題が多方面で発生し、議論沸騰することだろうと思われます。