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2021年4月30日金曜日

alien

アメリカとメキシコの国境に中米からの移民が殺到している問題はバイデン政権における喫緊の課題ですが、ホワイトハウスは移民を指す表現を改める方針を明らかにし、合衆国税関・国境警備局(Customs and Border Protection; CBP)に指示しました。

具体的には、"alien"という表現を使わず、"noncitizen"、"migrant"などの表現に改める、というものです。

しかし、当の警備局がこの方針に反発しているということです。


Border Patrol Chief Rodney Scott has informed the head of Customs and Border Protection (CBP) that he will not endorse a new language policy that would see the agency stop using terms like "illegal alien" in favor of terms such as "undocumented migrant," Fox News confirmed Wednesday.

In an April 16 memo addressed to acting CBP Commissioner Troy Miller, Scott expressed his "official nonconcurrence to the proposed updated terminology for U.S. Customs and Border Protection communication and materials."
(Adam Shaw. Border Patrol chief tells CBP he won't endorse language policy that stops use of 'illegal alien'. Fox News. April 28, 2021.)


移民問題に対して、国境の壁を建設する強硬姿勢を取ったトランプ前政権に対し、バイデン政権はむしろ融和的な姿勢を取っているように思われます。

問題となっている"alien"という単語を聞いて思い出すことがあります。

昔勤めていた会社の同僚にカナダ人がいたのですが、その彼が日本国の発行する「外国人登録証明書」を見せて、その英語が"alien registration"とあるのを、"alien"とは酷い、と憤慨していました。

ところで、"alien"の定義を改めて確認してみると、外国人、公民権を得ていない在留外国人、という定義があることが分かります。

一方、"alien"にはよそ者、のけ者、といった否定的な意味合いもあり、またカタカナの「エイリアン」は有名な映画の影響で宇宙人のイメージがあるので、"alien"と称されることには抵抗が強いのかもしれません。

くだんの「外国人登録証明書」ですが、少し前に廃止されたらしく、「在留カード」というものに代わったようです。

この「在留カード」は、単にResident Cardと呼ばれており、外国人に関連する表現も"foreign residents"などとされており、"alien"は見られなくなっています。

単語の定義としても、法律の用語としても"alien"は間違いではないのでしょうが、やはり外国人が抵抗を感じることに配慮した結果でしょうか。

バイデン政権が見直しを指示した表現は以下の通りで、主に“alien”が改められるものとなっていますが、“illegal〜”が“undocumented〜”に置き換わっている点も注目すべきところです。


The Biden administration earlier this month instructed CBP and Immigration and Customs Enforcement (ICE) to make several changes on terminology relating to immigration:

"Alien" will now be "noncitizen" or "migrant."
"Alienage" will be changed to "noncitizenship."
"Unaccompanied alien children" will be "noncitizen unaccompanied children."
"Undocumented alien" and "illegal alien" will be "undocumented noncitizen, undocumented individual or migrant."
"Assimilation" will be "integration or civil integration."
"Immigrant assimilation" will be "immigrant integration." 
(ibid.)



2021年4月29日木曜日

豆腐は万能選手? ー tofu

マイクロソフト社が、オペレーティングシステム(OS)のウィンドウズに使われる標準の文字フォントをおよそ15年振りで刷新するそうです。

ウィンドウズOSに詳しい方は良くご存知だと思いますが、現在使われている標準フォントは、Calibriと呼ばれるフォントです。

Calibriは見た目が良く、かつクセが無いので、どのようなシチュエーションにも適しているという良さがあると評価されていますが、これに代わる新しい文字フォントの候補5つを提示し、ユーザーによる人気投票で決めるということのようです。


Microsoft is changing its default font for the first time in nearly 15 years, and it wants your help selecting the new one. 

(中略)

The company has commissioned five new custom typefaces to replace Calibri, a workhorse of a font that has been the default for all your Word docs and Outlook emails since 2007. Calibri replaced Times New Roman (a noble type family but one with decidedly pre-internet aesthetic).

Default fonts are designed to be unobtrusive and adaptable, and Calibri has served that role capably. It renders well on just about any screen, at any size, but it still has a bit of character. Its subtle curves make it a bit warmer than its blocky sans serif cousins Helvetica and Arial, two designer favorites that are famous — or infamous, in some circles — for their brutal simplicity and balanced stroke weight. (Sans serif means no curly bits at the ends of the letters.)
(Allison Morrow. Microsoft is retiring its default font, and it wants your help choosing a new one. CNN. April 28, 2021.)


昔々、多分ウィンドウズが世に出たての頃(因みに、小生は大学生でした)の標準フォントはTimes New Romanでしたが、それが2007年にCalibriに取って代わられ、そして今、また新しいものになろうとしているということになります。

Calibriの特長については上記の引用でも説明されているところですが、記事では以下のように続きます。


Calibri's finest attribute, however, is that few people, apart from designers and typographers, even notice it. It's the tofu of the type world. But after 13 years, Calibri is starting to look a little dated, and Microsoft wants to give your emails and documents a fresh coat of paint.
(ibid.)


そうです、Calibriについて、


the tofu of the type world


と言い切っているのですが、"tofu"(豆腐)を持ち出して何を言わんとしているのでしょうか。

直前の部分、Calibriについては、(フォントデザイナーなど専門家は別として)普通の人はその良さや特長に気づかない、とあります。これは、優れて当たり前の存在になっている、ということでしょう。

従って、"tofu"(豆腐)にそのような意味合いがある、もしくは込められていると解釈できるのですが、残念ながら色々な辞書を当たってみましたが、そのような用例は見当たりません。

豆腐が栄養価が高く、健康食品として認知されていることは我々日本人にとっては当たり前ですが、欧米でもその価値が認められているということはよく知られています。

故に、"tofu"として英単語になっているものですが、栄養価のみならず、そのシンプルな見た目や味わい、様々な料理に使われる万能さ、などといった特質がこのような用法を生み出しているように思われます。

というところで、わたくしは今日も冷奴をいただきます。



2021年4月28日水曜日

goose

ウチにも2足あります。

日本でもクロックスという名称は“ツッカケ”の代名詞みたいになっています。

そのクロックスですが、パンデミック下で売上が伸びているらしく、同社の株価も上昇中ということです。


Crocs shares soared to an all-time high on Tuesday, goosed by an upbeat sales forecast as the coronavirus has led to an epidemic of people lounging around the house.

The famously ugly clogs — which have been called the “it” shoe of the pandemic — are on track to increase revenues by an eye-popping 50 percent this year, the company said on Tuesday.
(Lisa Fickenscher. Crocs shares hit all-time high as pandemic fuels torrid demand. New York Post. April 27, 2021.)


取り上げたかったのは、"goose"という表現です。

ガチョウを意味する"goose"ですが、ここでは動詞で使われています。

辞書を引くまで知りませんでしたが、刺激する、強める、活力を与える、という意味で用いられる俗語表現だそうです。

何でガチョウがそのような意味になるのか?

小学生の頃を思い出して、思わず笑ってしまいますが・・・。

ガチョウの口先から連想される「親指の先」は、洋の東西を問わず(!?)、「カンチョウ!」(お尻に指先を突き立てる行為)に使われ、故に、「刺激する」、の意味だとか。

手元にあるOxford Dictionary of Euphemismにもエントリーがあり、以下のような解説があります。


goose to pinch the buttocks of.
A male sexual approach as delicate as a nip from the bird’s beak — or as indelicate.


これ以外にも、goose(=duck)がf - - -と韻を踏むことから、性行為の意味合いでも用いられるということです。



2021年4月27日火曜日

doghouse

Why Boris Johnson's apartment renovations could land him in the political doghouse

というタイトルの記事につられて読んでみました。

"in the doghouse"という表現ですが、


面目を失って(in disgrace)、嫌われて、人気を落として(in disfavor)


という意味だそうです。

記事を引用します。


London (CNN) - Boris Johnson is under fire over renovations to his apartment, after the British Prime Minister's former chief aide leveled accusations of "unethical, foolish, (and) possibly illegal" behavior against his old boss.

The claims come amid questions over who initially paid for Johnson's apartment to be upgraded -- and they hit very close to home for the Prime Minister, directing public attention to both his former closest ally, Dominic Cummings, and his fiancée, Carrie Symonds.
(Rob Picheta. Why Boris Johnson's apartment renovations could land him in the political doghouse. CNN. April 26, 2021.)


ジョンソン英首相が自身の住むアパートの改装費にウン十万ドルをかけたそうですが、資金の出所に問題があるとされているらしく、日本の政治家にもよくある話ですが、透明性が問題になっているということのようです。

“in the doghouse”の意味するところは、記事冒頭の“under fire”とほぼ同じであろうと想像がつきます。

英国の首相の住まいが普通のアパート(!?)という訳ではありませんが、ホワイトハウスや日本の首相官邸の威容とはまた違う、極めて質素な建物だそうです。


Compared with the Executive Residence at the White House or the various presidential palaces dotted around the world's capital cities, the British Prime Minister's London living quarters are relatively humble.

Leaders would traditionally live in a flat above Number 10 Downing Street, but recent Prime Ministers have instead moved into the larger apartment next door, at Number 11 -- above the offices of the Chancellor of the Exchequer.
(ibid.)


英首相にはアパート改装の予算がちゃんとあるそうですが、今回は献金を流用した疑惑が持ちあがっているということのようです。

カネに汚い政治家は有権者から嫌われるのがオチです。ジョンソン首相が"political doghouse"に置かれる事態になったというのは、有権者からの不評を買っている、というのが意味するところでしょう。

犬小屋を意味する"doghouse"がこのような意味で使われるようになった経緯は定かではありませんが、夫婦喧嘩で妻から不評を買った挙句、外の犬小屋で寝る嵌めになった夫(sleeping in the doghouse)に因む(!?)という、まことしやかな話があります。

この表現のニュアンスを知るために、コーパスでもう少し用例を探ってみました。


During the last week of November, the toysrus.com Web site was the nation's third most frequently visited -- after eBay and Amazon.com, Goldstein says. "We went from being in the doghouse to being one of the top dogs," he says.
(USA Today, 1999)


不評の象徴としての"doghouse"から、いわゆる「勝ち組」を意味する"top dog"まで、英語の中のイヌ(犬)は毀誉褒貶が激しいようです。



2021年4月26日月曜日

procure

記事の引用からどうぞ。


Ghislaine Maxwell and Jeffrey Epstein were once White House guests of former President Bill Clinton, new pictures prove.

The images were published by The Sun, days after Maxwell’s last court appearance on sex trafficking charges in Manhattan, related to her alleged procurement of underage rape victims for the convicted pedophile.

The disgusting duo were invited to the White House in 1993, after Epstein reportedly donated money to have the Oval Office refurbished.
(Clinton’s White House welcomed Epstein, Maxwell as VIP guests, new photos show. Fox News. April 25, 2021.)


数多くの女性に対する性的暴行や児童買春などの罪で有罪判決を受け、獄中で不審死を遂げたJeffrey Epstein容疑者とそのパートナーの女性Maxwell容疑者の両名がクリントン前大統領と共に写った写真が英紙にすっぱ抜かれたというニュース記事です。

注目したいのは、


alleged procurement of underage rape victims


というくだりにおける、"procurement"という単語です。

カタカナでも「プロキュアメント」というのは、企業などでは社外からモノやサービスを調達する調達部門、購買部門の名称となっていますが、動詞"procure"には調達という意味の他に、


To obtain (a sexual partner) for another.
(American Heritage Dictionary)


といういかがわしい意味合いがあります。

女を取り持つ、買春の斡旋をする(ランダムハウス英和辞書)、という意味です。

動詞の"procure"が持つこのような二面性のある意味合いについては、Merriam-Webster onlineでも取り上げられています。

Procure, like many other English words, has a split personality. On the one hand, it may carry a perfectly benign meaning, such as "to obtain" (“she procured supplies”) or "to bring about" (“the settlement was successfully procured”). On the other hand, it has long been used in the specific sense of obtaining someone for, or bringing about, sexually promiscuous purposes.


以前取り上げた、"pander"、"pimp"もご覧ください。



2021年4月23日金曜日

運転免許証の性別表記に"X" ― X

アメリカ・ニュージャージー州で、運転免許証の性別表記に"X"の表記が導入されることになったと報じられています。

アメリカでは既に19の州で先行して導入されているそうです。

男性を示す"M"、女性を示す"F"、に加え、"X"は「いずれにも特定されない」("unspecified")という意味合いの表記となるということです。

ダイバーシティ、性的マイノリティへの配慮は時代の趨勢、こうした動きは今後加速するのでしょう。(日本の運転免許証には性別表記は無いですが。)


New Jersey is now joining at least 19 states and Washington, DC, in allowing an "X" gender identifier on driver's licenses and other identification.

The additional gender option was officially made available to comply with part of legislation passed in 2018 to allow residents to change their gender identification more easily, the New Jersey Motor Vehicle Commission (MVC) announced Monday.

The new gender "X" identifier will indicate that a person's gender is unspecified, a big step for those who identify as nonbinary, or someone who doesn't identify as male or female. The department noted that the "X" marker can also be used by residents who don't want their gender specified on their license or other identification.

The change was originally planned for late 2020 but was delayed due to the pandemic, the commission said.
(Taylor Romine. New Jersey adds 'X' gender marker on driver's licenses and other state identification. CNN. April 20, 2021.)


今日の単語は、"X"としました。(単語ではない!?)

英和、英語辞書で敢えて"X"を引いたことがあるでしょうか。

アルファベットの24番目の字という定義を皮切りに、多くの意味があるということが分かります。一度お手元の辞書をチェックしてみて下さい。

アルファベットの"X"で始まる単語はそもそも少ないですが、当ブログで取り上げたことも非常に少ないです。

ちなみに、以前取り上げました"X"はこちらです。



2021年4月22日木曜日

skivvies

スイスで下着を地中に埋める不思議な社会実験が行われているそうです。

聞いただけでは意味不明ですが、土壌の微生物活動などを調べるための極めて真面目な研究なのだそうです。


Scientists plan to bury thousands of pairs of underwear in gardens across Switzerland to measure “soil health,” according to a report.

Researchers from the agricultural institute Agroscope will send 2,000 pairs of cotton undies to volunteers to cover in dirt for a project dubbed Proof by Underpants, according to Science Focus.

They’ll dig them up one to two months later and examine how much damage organisms — including fungi, insects, and worms — have done to the skivvies. The more holes, the healthier the soil, according to researchers.

(中略)

The University of Zurich, which is contributing to the study, said the goal is to “shine a spotlight on the essential but rather unknown and fascinating universe below our feet.”
(Natalie O'Neill. Why Swiss scientists are burying thousands of pairs of underwear. New York Post. April 21, 2021.)


下着(underwear)ということですが、以前に"undies"を取り上げたことがあります。

今日取り上げるのは、また別の単語ですが、"skivvies"は男性用のパンツを指す米語表現だそうです。

特にボクサーパンツのことを指すのですが、元は商標名であったものが、一般名詞化したものだそうです。



2021年4月21日水曜日

サシ?テタテ? ー tete-a-tete

菅首相が訪米し、就任後初めての米大統領との会談を果たしました。

この件に関する米メディアの記事をあまり見かけなかったので、米国内ではあまり注目度が高くないのかな、などと思っておりましたが、USA Today紙のサイトで検索するとあっさり出てきました。 


WASHINGTON – It wasn’t your typical meeting of two world leaders. But it was diplomacy in the era of COVID-19.

President Joe Biden welcomed Japanese Prime Minister Yoshihide Suga to the White House on Friday for talks that touched on the growing economic and military threat posed by China, the coronavirus pandemic, Indo-Pacific security, technology policy and even this summer’s Tokyo Olympics.

The sit-down was Biden’s first in-person tête-à-tête with a foreign leader since taking office in January. Missing was the pomp and circumstance that often accompany visits by a foreign dignitary – a nod to the reality of carrying out the business of the two countries in the middle of a deadly pandemic.
(Michael Collins. Face masks, social distancing: Biden, Japanese Prime Minister Suga practice diplomacy in COVID era. USA Today. April 16, 2021.)


別記事によれば、昼食のハンバーガーに手も付けずに会話に没頭したそうですが、パンデミック下でのソーシャルディスタンスを取りつつ、両首脳は親密さと対中国への連携をアピールしたようです。

この会談については、記事中、


Biden’s first in-person tête-à-tête with a foreign leader


と表現されており、バイデン首相にとっても初めての首脳会談であったとされています。

"tête-à-tête"というのはフランス語の表現ですが、"tête"はフランス語で頭を意味し、逐語訳すれば"head to head"、つまり頭を突き合わせて、ということになります。

差し向かいで、また、打ち解けて、という意味合いですが、会談では通訳のみを交えた二人だけの時間もあったということですから、字義通り、親密な状況だったのでしょう。

ところで、日米首脳会談を伝える邦紙朝刊で、「テタテ」というカタカナを見つけました。

内容から、この"tête-à-tête"を意味しているのは明らかなのですが、「テタテ」と言われて(書かれて)しまうと、この英語(フランス語)表現を知らない人にはもちろん、知っている人にも、何それ?と思ってしまいそうです。

この「テタテ」というカタカナ語は外交用語として定着しているらしく、歴代総理大臣が外国首脳と会談した際にも用いられています。

"tête-à-tête"を敢えてカタカナにすれば、テット ア テット、に近くなるので、誰が「テタテ」というカタカナにしてしまったのかと思う次第です。

日本語にするなら、やっぱり「サシ」ですよね。(ちょっとヤクザっぽいですが。)




2021年4月20日火曜日

ambleとambulance

先の週末のこと。

4月から高校生になった娘が英単語の意味が分からないと、あるテキストを持ってきました。

分からない単語というのは、"ambling"という単語だったのですが、辞書を引こうとして原形が分からない、ということだったようです。

言うまでも無く、"ambling"は動詞"amble"の現在進行形(あるいは現在分詞形)です。

真新しい中辞典を引いて、"amble"はぶらつく、ぶらぶらと歩き回る、という意味だと確認して納得していました。

そこで、"ambulance"という単語は知っているか、と尋ねたところ、こちらは「救急車」という答えが返ってきました。

さらに、"amble"と"ambulance"は語源が同じなんだよ、と説明すると、困惑している様子。

その場で辞書を引くように言ったのですが、何と買ったばかりの中辞典には語源欄がありませんでした。(語源欄のある中辞典を買わせるべきだったと反省・・・。)

ご存知の方も多いかとは思いますが、"amble"も"ambulance"もラテン語のambulare(あちこち歩く、遊歩する、旅する)という語に由来します。

なぜ「救急車」(ambulance)が、歩くという意味の単語から派生したのでしょうか?

お手持ちの英和辞典に語源欄があれば、救急車というものが元々「移動する病院」(野戦病院)を指していた、という説明が載っているかもしれません。



2021年4月19日月曜日

"not"の位置

今日は文法のお話です。

いわゆる"to"プラス動詞の原形(不定詞)となる構文において、否定形となる場合は"not"が入りますが、その"not"の位置については"to"不定詞の直前に置かれるべし、と学校で習ったと記憶します。

例えば、以下のような構文です。


Try not to be late.
(*Try to not be late. とは言いません。)


ところが、このような構文において、"not"が"to"と動詞(不定詞)の間に入っている文をたまに見ることがあり、気になっていました。

今朝方読んだニュース記事では、以下のようなくだりがありました。


White House National Security Advisor Jake Sullivan said Sunday that the Biden administration warned the Russian government to not let jailed Putin critic Alexey Navalny die in custody.
(Amanda Macias. Russia will face consequences if Putin critic Alexei Navalny dies in prison, White House warns. CNBC. April 18, 2021.)


上述したルールに従えば、


warned the Russian government to not let... Alexey Navalny die


は間違いで、正しくは、


warned the Russian government not to let... Alexey Navalny die


となるべきです。

記載しておりますように、引用元はCNBCという権威あるメディアですから、proofreadもちゃんとされていると思うのですが・・・。

これをきっかけに改めて手元の文法書、英文ライティングのスタイルガイドなどをひっくり返してみました。

Practical English Usage (Michael Swan, Oxford) では、不定詞(infinitives)の項で、否定形(negative forms)の語順については、"to"不定詞の前に置かれる、と規則を説明しています。(ちなみに、この規則を説明する例文として最初に挙げたものは同書からの引用です。)

この他、いくつかの古い参考書が手元にありますが、概ね同じような解説です。

言語の運用は時代につれ変化するものですから、ネットでも検索してみました。

権威あるCambrdige DictionaryとOxfordのサイトを参照してみました。

Cambridgeのサイトでは、non-finite clause(非定形節)においては、"to not 動詞"となる語順も許容される、とあります。ただし、これをいわゆる"split infinitive"として、良くないとする専門家もある、との但し書きはあります。

Oxfordのサイトでは、やはりこの問題を"split infinitive"の一種として扱っており、"to not 動詞"の語順はイギリス英語よりもアメリカ英語で許容される傾向にあるとしています。


The negative adverbs never and not are often inserted in AmE, less commonly in BrE: e.g. a perfect morning to not read ‘Moby Dick’—New Yorker, 1986; Many professional players hope to never play there again—American Way, 1987; The only unforgivable sin is to not show up—G. Keillor, 1991.


きっかけとなったCNBCの記事は米国メディアなので、さもありなん、というところでしょうか。

ところで、ネット掲示板でのディスカッションでも興味深い投稿が見られました。

“to not 動詞”の語順が許容されるケースとして、意味合いが変わってしまう場合が挙げられる、というものです。

例文として、


My aim is not to kill him.
My aim is to not kill him.


が挙げられます。

1番目の解釈は、「目的は彼を殺すことではない。」(彼を生かすことが目的)、もしくは「目的は彼を殺すこと以外である」(生かす、殺すではなく、また別の話)、のいずれの解釈も許容するものです。

2番目では、1番目の表現の曖昧さがなく、「彼を殺さないこと(生かすこと)が目的だ」、となります。

これは特定の動詞がto不定詞をとる場合のケース(上記のwarn...to...)とは異なり、non-finite clause(不定形節)の類いと思われますが、split infinitiveが許容される事例の一種としてはなるほどと思いました。


2021年4月16日金曜日

pipe down

"pipe down"という表現をご存知でしょうか?

黙れ!おとなしくしろ、という意味の表現で、命令形で使われることが多いようです。

小説を読んでいたら出くわした次第です。


"Tell him Brett wants to see him put on those green pants."
"Pipe down, Mike."
(Ernest Hemingway, Fiesta: The Sun Also Rises)


この"pipe down"という表現の"pipe"というのは笛、ホイッスルのことで、船で使われる「号笛」と呼ばれるものを指すそうです。

船乗りの生活に詳しくありませんが、一番えらい甲板長は号笛を鳴らして様々な指示を船員たちに出すのだそうです。

号笛の鳴らし方には色々あるらしく、ピッチ(音高)を変えることもできるので、組み合わせにより、何種類かの「指示事項」が決まっているそうです。

そのうちの1つが"pipe down"と呼ばれるもので、これは乗組員に対し、解散の号令を出すことなのだそうです。

「解散」後は静かになることから、"pipe down"は静かにする、おとなしくする、という意味で使われるようになったのだそうです。(Merriam-Webster onlineの解説による。)



2021年4月15日木曜日

cold comfort

史上最大のねずみ講(Ponzi scheme)の首謀者として、禁固150年の判決を受けたBernard Madoff氏が獄中死したというニュースがトップで報じられています。

被害総額は200億ドル超、被害者は有名人から一般投資家までウン万人(!?)だそうです。


New York (CNN Business) - Bernard Madoff, whose name became synonymous with financial fraud, died while serving a 150-year sentence in Federal Prison. He was 82 years old.

His death Wednesday at the Federal Medical Center in the prison in Butner, North Carolina, was confirmed by the US Bureau of Prisons. A cause of death was not released.

In February 2020, he petitioned the courts for an early release from prison, stating that he had terminal kidney failure and a life expectancy of less than 18 months. But the US Attorney's office for the southern district of New York said Madoff's crime was "unprecedented in scope and magnitude" and is "sufficient reason" to deny Madoff's request.

Madoff was the mastermind behind a $20 billion Ponzi scheme — the largest financial fraud in history.
(Chris Isidore. Bernie Madoff, infamous Ponzi schemer, has died. CNN. April 15, 2021.)


記事の写真に見るMadoff氏は落ち着いた品の良い紳士に見えます。

実際、物腰の柔らかい、家族思いの実業家だったということですが、告発されて以降、長男は自殺、妻とも疎遠となり、罪を認め、悔いていたといいます。

もうひとつ別の記事から引用します。


In a 2013 jailhouse interview, Bernie Madoff — whose death from kidney disease stole headlines early Wednesday — once admitted that he was "ashamed" of cheating thousands of people out of their life savings.  

That admission, however, may be cold comfort to the lengthy list of people who have suffered in the wake of a scandal that first broke during the financial crisis over a decade ago. 
(Adam Shapiro. 'Not diminished by his death': Shamed Bernie Madoff leaves behind long list of victims. Yahoo! Finance. April 15, 2021.)


同氏に騙された多くの人は、死去の報道を受けて複雑な気持ちだろうと思います。

"cold comfort"というのは、慰めにもならない慰め、という意味です。

詐欺師の晩年の苦しみもその死も、騙された被害者にはお金が戻ってくるわけでも無く、何の慰めにもならない、ということです。



2021年4月14日水曜日

green

私事ですが、3月から4月にかけて、愚息らが進学ということもあって、何かとお金がかかり、目減りする通帳の残高を見るにつけ憂鬱です。

減る分だけ入ってくれば嬉しいのですが、しがないサラリーマンでは毎月入ってくる分は決まっていますから、残高が増えるなんてことは夢想でしかありません・・・。

ですが、ある日突然、自分の口座に大金が振り込まれていると知ったら、どう対応するでしょうか。

アメリカで実際にそんなことがあったそうです。


A former Louisiana sheriff’s dispatcher was busted for allegedly refusing to return more than $1.2 million that was accidentally deposited into her account — and splurging some of it on a new car and house, according to a local report.

Kelyn Spadoni, 33, who worked for the Jefferson Parish Sheriff’s Office, was seeing green when Charles Schwab accidentally deposited the hefty sum into her brokerage account back in February — when it meant only to transfer about $82, according to court records obtained by nola.com.
(Amanda Woods. Dispatcher allegedly pocketed $1.2M accidentally deposited in account. New York Post. April 12, 2021.)


銀行の手違いで、なんと120万ドル(!)もの大金が33歳女性の口座に振り込まれたそうです。

女性は大金を別口座に移し、高級車などを購入したそうですが、窃盗などの罪で逮捕されたそうです。

記事中、


seeing green


という表現が出てきますが、ここでの"green"は恐らく俗語の意味で、金(カネ)を指すのでしょう。

米ドル紙幣が緑がかっていることと関係があります。

緑色は我々日本人には植物や自然のイメージがあり、またエコロジーのコンテクストで使われることが多いですが、面白い用例をコーパスで見つけました。


The color green is used to represent environmentally sensitive products and companies. And, of course, it is also the color of money. Well, a lot of companies are seeing green now that consumers are buying green.
(CNN Moneyline, 1990)


この引用で"green"が複数個所出てきますが、「エコ」の"green"と「カネ」の"green"が巧みに使い分けられています。

以前も取り上げた、"greenmail"もどうぞ。



2021年4月13日火曜日

wall-to-wall

エディンバラ公フィリップ殿下の死去は日本でもトップニュースで報じられました。

イギリス本国での報道は勿論この件一色だろうと想像していましたが、驚いたことに国民からは苦情が寄せられているということです。


The BBC's decision to cut into its television and radio schedule and devote wall-to-wall coverage of the death of Prince Philip last Friday led to over 110,000 complaints from the public.

The Guardian newspaper reports that a record number of people in the U.K. complained directly to the BBC over the public broadcaster's coverage in the 24 hours after the announcement of the Duke of Edinburgh's death at the age of 99.

Buckingham Palace released official news of the prince's death on Friday noon, local time, at which point the BBC cleared its schedules to cover the news with BBC One, BBC Two and BBC News all carrying the same feed and BBC Four taken completely off-the-air.
(Abid Rahman. BBC Receives 100,000 Complaints Over Prince Philip Coverage. The Hollywood Reporter. April 12, 2021.)


BBC Newsでは、殿下の死去が公表されてからほとんど24時間、"wall-to-wall"で関連のニュースをずっと流していたそうですが、通常の番組枠が削られるなどしたことに不満を覚えた視聴者からの苦情が何と10万件を超えたということで、これは史上最高の記録だそうです。

"wall-to-wall"というのは、部屋の壁からもう一つの壁までを埋め尽くすというのが原義ですが、空間のみならず、時間に関しても、ぶっ続けで、という意味で用いられる表現です。

国営放送のBBCですからニュースが訃報一色に染まるのは想定内のように思われますが、視聴者にしてみれば、パンデミック関係など他にも重要な報道があるだろう、ということもあるようです。



2021年4月12日月曜日

border

国境を意味する"border"には動詞の意味もあります。

カマラ・ハリス副大統領の国境問題への対応姿勢についてはここのところ風当たりが強くなっています。


It’s humiliating for the president that almost three weeks since he appointed Kamala Harris as his border point-woman she still hasn’t visited the disaster zone, come up with a plan or held a press conference on the migrant crisis. 

Instead, she’s visited a water- treatment plant in California and a bakery in Chicago, where the press pool reported on her sweet tooth last week. 
(Miranda Devine. VP Harris’ response to migrant crisis borders on the absurd: Devine. New York Post. April 11, 2021.)


国境問題だけに語呂合わせのしゃれが利いているというべきでしょうか。

記事のタイトル部分で、


VP Harris’ response to migrant crisis borders on the absurd


とあるのですが、この"border on"は動詞としての用法で、


ほとんど~に近い


といった意味合いです。

ハリス氏が国境へは一度も足を運んでいないことなどを取り上げ、同氏の対応はほとんど不条理である、とその姿勢を痛烈に批判しているものです。



2021年4月9日金曜日

knock one's socks off

おとといの記事で取り上げたジル・バイデン米大統領夫人の「網タイツ」事件(!?)ですが、もうひとつ、面白い記事に出くわしました。

New York Post紙からの引用です。


It’s a delicate subject for FLOTUS.  

Jill Biden, 69, knocked observers’ socks off when she strutted off Executive One at Andrews Air Force Base in Maryland last week sporting a pair of black patterned fishnet pantyhose. 

While some took to social media to celebrate her stylish stockings, others annihilated the president’s wife for rocking the head-turning nylons. 

But she’s not the first first lady whose fashion-forward legs have sparked sheer chaos. 
(Asia Grace. Jill Biden’s fishnets reignite high-power women in pantyhose debate. New York Post. April 6, 2021.)


取り上げたいのは、


knock one's socks off


という表現です。

足元のおしゃれの話題だけにこの表現を使っているのはしゃれのセンスが利いているというべきでしょう。

この表現を知りませんでしたが、手元のCollins Cobuild Dictionary of Idiomsには、


If you say that something or someone knocks your socks off, you are saying in a light-hearted way that they are very good and that you are very impressed by them.


と解説されています。

大統領夫人の装いとして賛否両論といったところですが、"knock one's socks off"の意味するところは、どちらかというと称賛といったところです。

ところで、なぜ"socks"(靴下)なのか、については明確な説明は見当たりません。

よく似た表現に"knock one's block off"というものがあり、こちらは人の頭をぶん殴る、といった意味合いなのですが、"knock one's socks off"も元は相手を当惑させるというようなネガティヴな意味合いだったようです。

それが次第にポジティヴな意味合いで使われるようになったということなのですが、こうした意味の変容というのは言語につきものですね。

最近の若者言葉だと、「やばい」という表現がありますが、これも元々は危険、とか危ない、といったネガティヴな意味だったものが、近年では強い印象を受けた時にポジティヴな意味合いで使われるようになっていることはご存知の通りで、それに近いものがあるかもしれません。



2021年4月8日木曜日

Windy City

カマラ・ハリス副大統領は先日、喫緊の課題である国境問題の担当に指名されましたが、実のところ一度もメキシコと米国の国境に足を運んでいないようです。

その一方で、シカゴを訪問した際にはお気に入りのパン屋さんを訪問したということで、優先順位が違うのではないかとの批判を受けています。


White House Press Secretary Jen Psaki got snippy with a reporter on Wednesday who questioned why Vice President Kamala Harris had time to visit a Chicago bakery amid the lingering border crisis she has been tasked to deal with.

(中略)

Harris was in the Windy City on Tuesday, where she toured a vaccination site that opened to union workers. She also visited Brown Sugar Bakery on the city’s South Side, where she met with owners and employees and came away with a piece of German chocolate cake.

She also flew into California on Thursday and stayed through Monday, just a few hours driving distance from the U.S.-Mexico border but also didn't go to ground zero
(Bradford Betz. Psaki snaps when asked why VP Harris had time to visit Chicago bakery but not border, 'she got a snack'. Fox News. April 7, 2021.)

 
イリノイ州・シカゴの別称を、


Windy City


というのですが、ご存知の方も多いかと思います。

米国北部に位置するこの都市には五大湖の1つであるミシガン湖がありますが、その湖を渡る冷たい風に由来してこの名が付いたというのが定説になっています。

米国の州や都市にはこのようなニックネームがついたものが多くあります。

当ブログでもこれまで取り上げたものがありますので、「地名」のタグで検索してみて下さい。



2021年4月7日水曜日

fly in the face of

パンデミックの収束はまだまだ見通しが立ったというのには程遠いものがありますが、企業によっては在宅勤務からオフィスでの通常勤務に切り替える動きがあるようです。

先日、グーグルは社員向けに通達を出したそうですが、その内容はちょっと意外なものでした。

というのは、従業員による在宅勤務を継続して推奨するというよりも、むしろオフィスに出社することを推奨する内容だったからです。


On Wednesday last week, Google's Fiona Cicconi wrote to company employees.

She announced that Google was bringing forward its timetable of moving people back into the office.

As of 1 September, she said, employees wishing to work from home for more than 14 days would have to apply to do so.

Employees were also expected to "live within commuting distance" of offices. No cocktails by the beach with a laptop, then.

The intention was very clear. Sure, you can do more flexible working than you did before - but most people will still have to come into the office.

That thinking seemed to fly in the face of much of what we heard from Silicon Valley executives last year, when they championed the virtues of remote working.

For example, Twitter's Jack Dorsey made headlines across the world last May, when he said "Twitter employees can now work from home forever".

It was speculated that after Covid, the "new normal" for Silicon Valley might be a workforce heavily geared around remote working, with tech companies needing only minimal staff on-site.
(James Clayton. Remote working: Is Big Tech going off work from home? BBC News. April 6, 2021.)


グーグルのこのような方針を目にして、在宅勤務を拡大する方針を示す他の先進(!?)企業と真反対であると思った人は少なくないのではないでしょうか。

記事で使われている表現、"fly in the face of~"は、


(権威・慣習・忠告・危険などを)無視して行動する、・・・に公然と反抗する、挑戦する; ・・・と正反対である
(ランダムハウス英和辞書)


という意味の表現です。

手元にCollins Cobuild Dictionary of Idiomsがあるのですが、そのエントリでは、


If you say that something flies in the face of accepted ideas, rules, or practices, you mean that it conflicts with them or contradicts them.


と解説されています。

記事のこのくだりの部分は、グーグルの従業員への通達の内容、つまり在宅ではなくオフィス勤務を促すその内容が、他のシリコンバレー企業の在宅勤務推奨の動きとは真反対であると言っています。

ところが、最近の動き、特にシリコンバレーの情報通信産業大手のトップの発言は、昨年の在宅勤務の推奨、全面的支持から少し後退している、というのが事実のようです。

詳しくは記事をお読みください。



2021年4月6日火曜日

clutch one's pearls

アメリカ大統領夫人(FLOTUS)であるジル・バイデン夫人のファッションがSNSで話題になっているらしく、今日のニュース記事で取り上げられています。

人の注目を集める有名人や政治家ともなれば、その身のこなしやファッションが取り沙汰されるのは普通のことではありますが、今回注目を集めているのは、いわゆる「網タイツ」なのだそうです。

多くの記事では、"fishnet"などと呼ばれていますが、一部"patterned stockings"などとも表現されており、「網タイツ」は英語ではそう表現するんだと知りました。


US First Lady Dr Jill Biden set social media alight when she stepped out in a pair of fishnet-style patterned tights, a black leather skirt, and stiletto ankle boots.

The 69-year-old was pictured exiting her plane at Andrews Air Force Base, after arriving back in Washington DC following a trip to California, with her bold look receiving a very mixed reaction online.
(Kristine Tarbert. Jill Biden, 69, rocking fishnet-style tights sparks social media storm. Yahoo! Lifestyle. April 6, 2021.)


何を着用しようが個人の自由ではありますが、SNSでは大統領夫人に似つかわしくないとの批判が挙がっているとのことです。

一方、ジル夫人を擁護する声も当然ながらあるようで、この件に関する別記事では、下記のように取り上げられているのが目に留まりました。


Conservatives are losing their minds over FLOTUS Jill Biden wearing stockings with a pair of black booties. They’re clutching their pearls over her daring to wear anything that isn’t pastel and matching as FLOTUS. This outrage, reaction, and behavior towards Dr. Jill Biden is sexist and shows conservatives’ skewed concept of what is important in this day and age.

Instead of focusing on COVID-19 relief or the problems we have in the United States when it comes to gun control, conservatives are focusing on what Dr. Jill Biden is wearing. That is sexist, derogatory, and critical of a woman who has done nothing but support her country, her family, and her husband as POTUS.
(Lyra Hale. FLOTUS Jill Biden Wore Fishnets and Conservatives Are Clutching Their Pearls. The Mary Sue. April 5, 2021.)


網タイツのジル夫人を揶揄する声に対する反論であることは読んで取れると思いますが、


clutch(ing) their pearls (over)...


という部分に注目したいと思います。

初めてみる表現でしたが、字義通りの意味ではなさそうだということは分かります。

手元の辞書を引いてみたのですが、載っていません。

よって、ネットで検索せざるを得なかったのですが、Cambridge Dictionaryのオンライン版では、


to behave as if you are very shocked, especially when you show more shock than you really feel in order to show that you think something is morally bad


という説明があり、つまりは「過剰反応を示す」ということだと思います。

些細なことに対して、自身の不快感を示すのに、あたかも強いショックを受けたかの如く振る舞うことであると定義されています。

この表現は形容詞表現として、


pearl-clutching


としても用いられるようです。

さて、ここでの"pearls"は複数形であり、真珠のネックレス、ということになります。そのネックレスをつかむ、握る(clutch)というのが字義通りの意味となります。

真珠のネックレスをするのは普通は女性ですから、即ち「過剰反応」を示すのは女性という前提があったと思われます。

大体において、モノの見方に保守的なものと、そうでないものとの間に軋轢が生まれる訳で、この表現の背景には保守的な女性が物事に過剰反応するということがあったのかもしれませんが、今時は男性、女性にこだわらないことは言うまでもないでしょう。

私個人としては、69歳になるおばあさん(!?)が網タイツを穿こうが、それが似合っていれば何とも思いませんが、古い考えの保守的な人には「まぁ!」と思ってしまうものなのかもしれません。

その「まぁ!」を表現するのに過剰なやり方に訴えるのが“clutch one’s pearls”ということだろうと思います。


2021年4月5日月曜日

dust off

フランス・パリのルーブル美術館が、所蔵品をオンライン公開するということです。

コレクション総数は48万点以上、しかも無料ということですので小生も早速アクセスしてみようと思いました。


There is nothing like spending a rainy afternoon at a museum, soaking in the beauty and wonder of art and history. Now the Louvre, the world's most visited museum, is letting you do that right from home.

The French museum has released an online platform featuring all of the museum's artworks, consisting of more than 480,000 pieces, the Louvre announced Friday in a press release.

Art lovers and researchers alike will now be able to view the entire Louvre collection online for free.

(中略)

"Today, the Louvre is dusting off its treasures, even the least-known," Jean-Luc Martinez, the president and director of the Louvre, said in a statement. "For the first time, anyone can access the entire collection of works from a computer or smartphone for free, whether they are on display in the museum, on loan, even long-term, or in storage."

"The Louvre's stunning cultural heritage is all now just a click away!" he added.
(Alaa Elassar. Miss art museums? The Louvre just put its entire art collection online. CNN. March 28, 2021.)


"dust off"という表現ですが、しまってあるものを取り出す、という意味で使われる口語表現です。

"dust"はご存知のように埃(ほこり)のことですから、物置かなんかでほこりを被っていた、長年使っていないものを引っ張り出してきてまた使う、といったニュアンスですね。

以前取り上げた、"gather the dust"、"dustup"もどうぞ。



2021年4月2日金曜日

コモディティとは? ― commodity

4月になりました。値上げの季節です。

毎年3月末くらいになると、新年度(4月以降)の物価上昇などを伝える記事が目立ちますが、アメリカではトイレットペーパーなどの値上げについて報じられています。

まずはUSA Today紙の記事から引用です。


First came the toilet paper shortages.

Now come the price increases.

The maker of the Cottonelle, Scott and Viva brands announced Wednesday that it will hike prices on "a majority of its North America consumer products business," including toilet paper and baby care items.

Kimberly-Clark Corporation blamed rising commodity costs for the increases.

"The percentage increases are in the mid-to-high single digits," the company said in a news release. "Nearly all of the increases will be effective in late June."
(Nathan Bomey. Toilet paper prices to rise: Maker of Cottonelle, Scott brands plans to increase prices. USA Today. March 31, 2021.)


日本でもキムワイプなどでおなじみのメーカーであるKimberly-Clark社などが値上げを宣言しているようですが、記事のくだりで、


Kimberly-Clark Corporation blamed rising commodity costs for the increases.


とあるのを読んで、戸惑いを覚えました。

この部分の意味するところは、値上げの理由として"commodity costs"の上昇を挙げている、ということです。つまり、"commodity costs"の上昇をトイレットペーパーの価格に転嫁せざるを得ない状況である、ということだと思います。

ここでいう"commodity"とは何を指すのでしょうか。

私は、"commodity"、イコール「日用品」と思っていましたので、トイレットペーパーは日用品、その値段がまた別の(?)日用品の価格上昇の影響を受ける、という上記のような説明はおかしなものに思えたのです。

同じ話題の別記事からの引用では下記のようにあります。


Kimberly-Clark said Wednesday that it was raising prices dues due to rising commodity costs in the U.S. and Canada.

(中略)

The decision by Kimberly-Clark to raise its prices is in reaction to the swelling costs of raw materials such as pulp, recycled fiber, and resins used to make its products despite the high demand for paper products amid the pandemic, Reuters reported.
(Dawn Geske. Toilet Paper, Diapers Are Going To Cost You More: Here’s Why. International Business Times. March 31, 2021.)


この記事でもトイレットペーパーの値上げは"rising commodity costs"の影響によるものである、としていますが、後段では、


in reaction to the swelling costs of raw materials such as pulp, recycled fiber, and resins used to make its products


とあり、"commodity"とは即ち"raw material"(原材料)のことである、と解釈できます。

慌てて辞書を引いて分かったのですが、"commodity"には日用品の他に、


穀類、青果、貴金属など第一次産品、原材料など未加工または部分加工品
(ランダムハウス英和辞書)


という意味があるのでした。

実のところ、研究社の新英和大辞典(第五版)やAmerican Heritage Dictionaryには上記のような"raw materials"の意味が載っていないのですが、改めて不勉強を反省した次第でした。

「コモディティ」は、日用品かもしれないし、原材料の意味もあり得る、と覚えておきましょう。



2021年4月1日木曜日

chalk and cheese

昨日の投稿で取り上げた「チョーク」(chalk up)つながりということで、今日は、


chalk and cheese


という表現を取り上げたいと思います。

字義通りにはチョークとチーズということになりますが、似て非なるもの、外見は同じでも中身が違う、という意味で使われます。

最近のニュースから用例を拾ってみました。


Prince Edward’s children are embracing virtual learning in very different ways.

Speaking to Sky News on Wednesday, the Earl of Wessex, 56, revealed that daughter Lady Louise Windsor, 17, and son James, Viscount Severn, 13, are "chalk and cheese" in regards to homeschooling amid the COVID-19 pandemic.

"The eldest one Louise, she had her GCSEs interrupted last year," Edward told the outlet. "So we went through that whole pain of just having all of that suddenly taken away and so she sort of struggles a bit with the online learning because she'd much prefer to be with everyone…"
(Andy Sahadeo. Prince Edward says kids Louise and James are 'chalk and cheese' with homeschooling. Fox News. February 26, 2021.)


「チョーク」と「チーズ」が似ていると思うのは色だけのことでしょうか?それとも形も?(細長い形状のチーズも無い訳ではありませんが・・・。)

もしかしたらですが、"chalk"は粉状になっている石灰で、チーズも粉末チーズを想定して、似ているとしているのかもしれません。

あるいはどちらもch-で始まる単語、という共通点はありますが。

確かにチョークをチーズのように食べる訳にはいきませんから、見た目が同じだからと言って、またスペルが似通っているからと言って、実質は違う、という意味になるのはわかりますね。