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2020年9月30日水曜日

大統領選:第1回討論会終わる ― "China ate your lunch."

今日のトップニュースは何を置いてもこれに尽きるでしょう。

アメリカ大統領選を約1か月後に控えた9月29日、第1回目となる討論会がオハイオ州クリーブランドで行われ、現職のトランプ氏と民主党候補のバイデン元副大統領が初対決に臨みました。

COVID-19の影響から、恒例とされる両候補者の握手は省略され、聴衆も80名程度に制限されたものでしたが、内容は両者がお互いを口汚く罵ったり、相手の発言を遮るという、子供の喧嘩のような低レベルのものだったと概ね報じられています。


President Donald Trump and former Vice President Joe Biden had their first chance to challenge each other face to face. They did – a lot.

Hardly a minute went by in the 90-minute brawl without one of the candidates angrily interrupting the other, whether on the coronavirus pandemic, the Supreme Court, the economy or anything else, including each other’s families.

“Will you shut up, man?” Biden snapped at Trump at one point. “You’re the worst president America has ever had,” he said later.

China ate your lunch,” Trump shot back at Biden during questions on the economy.

Even the moderator, Fox News’ Chris Wallace, couldn’t always stay above the fray.

“I hate to raise my voice, but why shouldn’t I be different than the two of you?” the exasperated host said at one point.

(The highlights from the vicious first debate between Trump and Biden. CNBC. September 29, 2020.)


日本時間の昼前にかけて行われたのでテレビやネットの中継をご覧になった方もおられるかと思います。

約1時間半ほどの討論会では、新型コロナウィルス感染症対策など、米国が直面している主要な政治課題を含む6つのテーマについて、Fox News社のモデレータが進行を務める形式で両者の意見交換が行われるものでしたが、モデレータも呆れるような応酬が繰り広げられたということで、ある意味歴史に残る討論会かも知れません。

メディア各社が詳報していますが、第1回目の討論会結果としては、バイデン氏がやや優勢であったとするメディアがある一方、トランプ氏が僅差で有利、とか、発言時間はどちらが長かった、等々、分析がされています。

ところで、引用した記事の中で、トランプ氏の発言に、


"China ate your lunch."


というものがあります。

この発言が出てきたくだりは以下のようなものだったようです。


Biden and Trump sparred over their children, with Trump launching a misleading attack on Biden’s son Hunter over his consulting business.

China ate your lunch, Joe. No wonder, your son goes in and he takes out billions of dollars. takes out billions of dollars to manage. He makes millions of dollars,” Trump said.

“That’s simply not true,” said Biden.

Trump continued with another unfounded claim: “Why is it, just out of curiosity, the mayor of Moscow’s wife gave your son $3.5 million?” 

“None of that is true,” Biden said again.

(ibid.)


トランプ氏はバイデン氏の息子をも引き合いに出して、同氏と息子のHunter Biden氏の中国寄りの姿勢を揶揄したようです。

私はここで使われている表現(辞書を引いた結果、"eat one's lunch"という表現と分かりましたが)を知らなかったのですが、これはアメリカ英語の俗語表現で、


to deprive of profit, dominance, or success

(Merriam-Webster Dictionary)


という意味だそうです。

文字通りには、(相手の、他人の)ランチを食べてしまう、ということですが、ビジネスのコンテクストとして、利益やシェアを相手に奪われる、というような意味で用いられるようです。

つまり、バイデン氏とその息子が中国寄りであり、アメリカには国益にはならず、中国側に食われる一方だ、と批判しているものです。

バイデン氏は言下に否定していますが、トランプ氏としては自身の強硬な対中国政策との違いを際立たせる目的があるのだろうと思われます。



2020年9月29日火曜日

mover and shaker

COVID-19の影響でリモートワーク(在宅勤務)を取り入れる企業が加速していますが、ニューヨークのウォール街では、従業員にオフィスに復帰するよう呼び掛け始めているそうです。

名だたる金融、証券企業が軒を連ねるオフィス街は、新型コロナウィルス感染症の拡大の中、閑散とする状況が続いてきたものの、トレーダーなどの一部専門職のワーカーがオフィスに戻りつつあるというような報道も先日目にしました。

オフィス回帰の動きは加速するのでしょうか。


Slowly but surely, the movers and shakers are dribbling back from their Hamptons and Connecticut basements to their office desks. The question is how much longer it will take for the rank-and-file to follow.

The latest two Wall Street companies returning high-level staffers to their Midtown digs are investment- banking advisory firm Evercore and P. Schoenfeld Asset Management (PSAM), Realty Check has learned.

Evercore will begin bringing some of its trading and executive staff back to four floors at 55 E. 52nd St. in early October, with more employees to follow. PSAM has already returned to its offices at 1350 Sixth Ave. Neither firm responded to requests for comment.

(Steve Cuozzo. Wall Street firms’ return-to-work movement gaining steam. New York Post. September 27, 2020.)


ウォールストリートでのオフィス回帰への取り組みは、いわゆる「隗より始めよ」、つまり上級職からということのようです。

"movers and shakers"という表現が使われていますが、これは成句で、有力者とか大立者、というような意味です。

"mover"(動かす人;引越し屋の意味もありますが・・・)と"shaker"(他人に影響を及ぼす人;扇動者の意味もあるようですが・・・)、ということで、同じような意味の名詞を並列させた、一種の冗語表現とも言えるでしょう。

対比されているのは、“rank and file”ですが、こちらは(わたくしのような)「下々の者たち」ということになりますか。




2020年9月28日月曜日

You gotta be kidding me.

数年前から自宅で猫を飼っています。

里親募集だった仔猫をもらってきたものですが、このオスは気性が激しく、特に私はかなり噛み付かれたり、引っ掻かれたりしています。

朝昼夕、空腹になるとエサを早くくれと言うように、まつわりついて来ます。

それだけならどの猫でも普通だと思うのですが、なぜか私に対しては攻撃性が増すらしく、爪を立てて、また噛みついてくるので、私は血だらけになりながらエサを準備しているという次第です。

ですので、この記事を見たときには、まさか!というような気になり、今度試してみようかとまで思っています。


A new study has revealed some a-meow-zing new purr-spectives on cats and their dietary needs.

New research from animal nutrition specialists at the University of Guelph, in Ontario, Canada, found that cats who are fed one big meal each day may be more satisfied and beg for food less than cats fed multiple smaller meals.

The findings were published in the journal PLOS One Friday.

(James Leggate. You gotta be kitten me: Study says cats are not fed enough times. New York Post. September 24, 2020.)


元記事はFox Newsのようですが、猫の食事は複数回に分けるよりも、一度に沢山やる方が猫にとっては満足度が高い、というような内容です。

この記事は語呂合わせが随所に見られ、英文での「しゃれ」を収集している当ブログでは面白い収集対象ですが、元記事のFox Newsにはない、New York Post独自と思われる語呂合わせが、記事のタイトルにあります。

タイトル部分の、


You gotta be kitten me


は、


You gotta be kidding me.


というところ、"kidding"を"kitten"(猫)で置き換えたものです。

口語表現ですが、「冗談でしょう?」、「まさか!」、「マジか?」という、驚きを表す際のフレーズです。



2020年9月25日金曜日

jimmies

男性避妊具(つまり、コンドームのことですが)を使いまわして販売していた業者が摘発されたという、胸が悪くなるようなニュース記事です。

ちなみにヴェトナムでの話です。(日本でなくて良かった・・・。)


A factory in Vietnam was busted washing and reselling more than 320,000 used condoms to pass them off as new, according to police who raided the dangerous operation.

To “recycle” the dirty rubbers, Pham Thi Thanh Ngoc, 32, allegedly had roughly 1,000 of them delivered per month to the facility in Tan Uyen Town, where she cleaned and reshaped them, according to the Vietnam Insider.

Pham, who rented the facility, remolded the jimmies with a wooden shaft to make them look fresh again — then placed them in new packaging, the local outlet reported.

During the raid on Saturday, local police seized a total of 324,000 used condoms, officials said. Thousands more had already been sold to unsuspecting customers.

(Natalie O'Neill. Vietnamese factory busted recycling hundreds of thousands of used condoms. New York Post. September 23, 2020.)


記事中に、


jimmies


という単語が出てきますが、恐らく"condom"のことを指しているというのは想像できます。

ところが、手持ちの辞書のどれをチェックしてみても、"jimmies"、もしくは"jimmy"にコンドームの意味が載っていません。

これはどうしたことでしょう。

恐らくアメリカ英語の俗語としてもかなりマイナーなものに入るのかもしれません。

ネット検索の情報では、"jimmy"には男性器を意味する俗語の意味もあるようなのですが、こちらもランダムハウス英和や研究社の英和大辞典、American Heritage Dictionary、Merriam-Websterなどのちゃんとした辞書(!?)では確認できない意味となっています。

“jimmy”に関しては、“crowbar”(テコのように使う、先が曲がっているバールを指します)の意味があるということで、その形状から(!?)男性器を意味するのは想像できるところです。

そして「男性器」との連想で、男性避妊具の意味が付加されてくることもこれまた想像できます。

ところで、問題の単語は"jimmy"とは別の単語としての、"jimmies"である(つまり、複数形が見出し単語となっているもの)と考えると、Merriam-WebsterやAmerican Heritage Dictionaryでは"jimmies"を別エントリで扱っており、


tiny rod-shaped bits of usually chocolate-flavored candy often sprinkled on ice cream


と定義しています。


百聞は一見に如かずなのですが、アイスクリームなどにトッピングする小さなチョコレートの粒で、カラフルなものがありますが、あれを指しています。

良く見てみると、粒の1つ1つが小さいのですが、円筒状のようになっており、形といい、カラフルさといい、例の避妊具と似ていなくもありません。

由来についてはっきりした説明が見当たらないところからすると、“jimmies”がコンドームを指すようになったのは、“jimmy”と“jimmies”の両方の影響があるのかも知れません。

実にややこしい・・・



2020年9月24日木曜日

シズラーが破産申請 ― sizzle

日本にもチェーン展開しているステーキレストランのシズラー(Sizzler)が連邦破産法チャプター11の申請を行ったという記事を読みました。

やはり新型コロナウィルス感染症の拡大により客足が遠のき、売上が下がったことが大きかったようです。


Even Sizzler has lost its sizzle amid the COVID-19 pandemic.

The steakhouse chain known for its grilled meats and giant salad bars filed for bankruptcy Monday after the coronavirus pandemic shuttered its restaurants and strained its finances.

“The filing is a direct result of the financial impact the COVID-19 pandemic has had on the casual dining sector, particularly long-term indoor dining closures and landlords’ refusal to provide necessary rent abatement,” Sizzler said in a statement, according to Restaurant Business News.

Sizzler says it has struggled to bounce back from virus-related lockdowns that forced all of its 14 company-operated restaurants to close at least twice.

(Noah Manskar. Sizzler steakhouse chain files for bankruptcy amid COVID-19. New York Post. September 22, 2020.)


引用した記事の冒頭部分で、


Even Sizzler has lost its sizzle


とありますが、"sizzle"とは肉を焼く時のジュージューいう音のことです。

暑い日のことを表現するのにこの"sizzle"を使う例を以前取り上げたことがありますが、ここでは、


The appeal of or the excitement generated by a product or service

(American Heritage Dictionary)


という定義が当てはまりそうです。

シズラーは"Sell the sizzle, not the steak."(ステーキではなく、「シズル」を売れ)という、マーケティングの教科書に出てくる言葉で有名です。

つまりは、商品を売るのではなく、その魅力、イメージを前面に押し出して、顧客の心を引き付けよ、ということですが、そのシズラーが経営が立ち行かなくなってしまい、「シズル」を失ってしまったのは皮肉な話としか言いようがありません。



2020年9月23日水曜日

bodily expulsion

ニューヨークの地下鉄を運営するMTA (Metropolitan Transportation Authority) が、車内で“う〇ち”を公式に(!?)禁止する規則改正を行う予定だということです。

信じられないような話ですが、まじめな話のようです。


The only No. 2 allowed on the MTA is the train line.

The Metropolitan Transportation Authority’s board is slated to formally ban defecating on its subways, buses and transit facilities during its meeting on Wednesday.

The dirty deed is already barred under current rules, which subject any rider to a $100 fine for “create[ing] a nuisance, hazard, or unsanitary condition (including, but not limited to, spitting or urinating).” But the rule change will specifically add “defecating” to the list of bodily expulsions.

Complaints of “soiled” subway trains surged in 2019, according to MTA data. The agency had insisted at the time that the increase in reports of disgusting subway cars was the result of more vigilant riders — not worsening conditions.

(Vincent Brone. MTA board to officially ban pooping in subways, buses. New York Post. September 22, 2020.)


記事によりますと、現行のルールでは唾を吐いたり、小便をしたり、といった行為については言及しているものの、"defecation"(つまり、脱糞行為)については明示されておらず、近年増加している件数に対応すべく、追加することにした、ということのようです。

東京メトロなどの日本の地下鉄では考えられないようなことですが、24時間運行しているニューヨーク地下鉄ではありうる話なのかもしれません。

禁止行為の一つ一つについて、明記をしないことには対策ができないというのは腑に落ちないところがありますが、記事では、"defecation"を、


a list of bodily expulsions


に追加することにした、とあります。

"bodily expulsion(s)"とはこれまた持って回ったような表現ではないでしょうか。

"expulsion"は、動詞"expel"の名詞形ですが、排斥する、駆逐する、追い出す、というような意味が一般的です。

これらに加えて、放出する(eject)の意味があり、例えば口から息を吐き出すのも"expulsion"という行為であることから、"bodily expulsion(s)"は、我々の体内からの排泄を意味します。



2020年9月22日火曜日

レコードとワイン ー vinyl

 今時の若い人(などと言うと、私自身が年寄りを自認するようなものですが)はレコードなんて見たことがないのではないでしょうか。

音楽はオンラインで購入するもので、CDやMDすら知らず、ましてやカセットテープなど・・・。

中学〜高校時代に録り貯めたカセットテープを未だ愛聴しています。

ですので、この時代にもアナログレコードに根強い人気があるというのは驚きませんが、CDの売上げを凌ぐものがあるというCNNの記事には正直なところ驚きました。


The days of vinyl records being a nostalgic relic of the past are long gone. This year, vinyl sales have outpaced CD sales in the United States for the first time since the 1980s. 

Vinyl records accounted for $232.1 million of music sales in the first half of the year, compared to CDs, which brought in only $129.9 million, according to a report from the Recording Industry Association of America.

Vinyl records, also known as "records pressed on wax," were commonplace before other formats, such as cassette tapes and CDs, become the preferred mode of listening to music. But that hasn't stopped vinyl records from making a resurgence. Since 2005, sales for vinyl have grown consecutively. In the first half of 2020, vinyl revenue was up 4%, while CD revenue was down 48%, according to the RIAA.
(Jazzmin Goodwin. Vinyl record sales surpass CDs for the first time since the 1980s. CNN. September 13, 2020.)


ずばり、“vinyl”です。

記事中は“vinyl record”と表現されていますが、随所で見られるように、“vinyl”だけでもいわゆるアナログレコードのことを指します。

我々がカタカナでも使う「ビニール」と同じですが、発音は「ヴァイナル」と表記するのに近いです。

ところで、“vinyl”がレコードを指すのは素材であるビニールに由来しています。

文系学生だった私は生物を取ったため、化学の勉強をしませんでしたので、説明するだけの知識を持ち合わせておりませんが、“vinyl”とは化学でいうビニル基のことを指すようです。

語源を紐解くと、ラテン語のvinum、つまりワインから来ているそうですから、これは驚きです。

化学的には、ビニル基もアルコールとしてのワインも、アルコールの成分としてのエチレンを有しているからとか。

4連休中の昨日、今日、NHKラジオでは蓄音機時代のSPレコードの録音を特集する番組をやっていました。




2020年9月21日月曜日

litterbug

公園や公共施設でゴミが散乱しているのを見ると、自分が出したゴミの始末すら出来ない人に辟易します。

人の迷惑も嫌悪をも顧みず、ゴミを捨てて平気な人のことを表現する単語が英語にはあります。

“litterbug”という単語です。


If you’re going to litter in Thailand’s Khao Yai National Park, authorities want you to know that you’re trash. 

 In a heated series of Facebook posts this week, Varawut Silpa-archa, Thailand’s minister of natural resources and environment, has stressed that any rubbish left behind, which can endanger the park’s wildlife, will be packed up and sent right back to the offending visitor. 

 “I will pick up all of your garbage,” he wrote in one post regarding the new initiative. 

“Postage back … home as souvenir.” 
(Zacchary Kussin. This national park mails trash back to litterbug tourists. New York Post. September 18, 2020.)

タイの国立公園では入場者は住所の申告を求められ、ゴミを持ち帰らなかった訪問者には後日、そのゴミが「お忘れ物」として届けられるということです。

何とも痛快な仕組みではないでしょうか。

最寄り駅までの道のり、前を歩いている人が吸いさしのタバコを投げ捨てるのを目にする度、落とし物ですよ、と突き返してやりたくなる衝動に駆られることがありますが、それを実現してくれるような気分です。

それにしても、“litterbug”とはこれまた痛快な表現だと思います。虫ケラ(bug)というのですから。

イギリス英語では、”litter lout”というそうです。




2020年9月18日金曜日

kingmaker

アメリカで人気のSNSアプリTikTokを巡る米中の応酬については先日も取り上げたところです。

その後、同アプリの米国内での事業を巡って複数企業が名乗りを上げていましたが、最新状況はどうなっているのか、に答える記事です。


With roughly 100 million users in the United States, it's no surprise that TikTok videos have taken over the internet.

But as the relationship between Washington and Beijing frays, the fate of the video app, which is owned by China's ByteDance, looks uncertain. In recent weeks, US government officials have claimed that TikTok poses a serious threat to national security, and President Donald Trump has threatened to ban it unless an American company takes control of its domestic operations.

That set off a bidding contest that's roped in some of America's top corporations, including Microsoft (MSFT), Oracle (ORCL) and Walmart (WMT). While Microsoft is no longer a contender — the company on Sept. 13 announced its bid was rejected by ByteDance — Oracle appears to have emerged victorious and Walmart may still have a small part to play. While Oracle has agreed to become TikTok's business partner in the United States, it's not clear that the proposed deal will appease government officials on either side, who have indicated they intend to carefully review any new arrangement. 

(Julia Horowitz. What's happening with TikTok? Here's the latest. CNN. September 17, 2020.)


マイクロソフト(MS)社やオラクルが名乗りを上げていたのは知っていましたが、どうやらMS社は脱落、オラクルが有力候補のようです。

振り返ってみますと、トランプ氏はTikTokが米国の安全保障に及ぼす影響に言及し、米国内の事業については、9月20日までにパートナーが見つからなければ同アプリの使用を禁止するとしたのでした。


The frenzy kicked off in early August when Trump signed an executive order that would effectively ban TikTok in the United States unless ByteDance could find an American owner for its US operations by Sept. 20.

(ibid.)


アメリカの大統領というのは強大な権限を持っているものだと思わせられます。


Trump has positioned himself as the kingmaker of any TikTok deal, making clear that he must agree to the terms before anything is made official.

(ibid.)


ことTikTokの米国内事業に関する問題については、トランプ氏は"kingmaker"という位置づけです。

"kingmaker"を辞書で引いてみると、


(支配者・公職候補者・企業指導者の選任に影響力を持つ)実力者

(ランダムハウス英和辞書)


とあります。

物事の決定を左右する、エラい人と言われる人を指すようです。

"kingmaker"は文字通りには、王を立てる人、という意味になりますが、語源的にもどうやらそのような背景があるようです。

イギリスでバラ戦争(Wars of the Roses)と呼ばれた時代において、Richard Neville Warwickという政治家が、対立するYork家とLancaster家から交代で王を擁立する立役者となったことから、"kingmaker"と呼ばれるようになったということです。



2020年9月17日木曜日

pander

米大統領選民主党候補のバイデン氏がフロリダ州での遊説の舞台で、スピーチの前にレゲエ音楽を流したことで話題になっています。

バイデン氏はスピーチを始める前に、自身のスマホを取り出し、レゲトンの人気ナンバーである「デスパスィート」を流し、聴衆の注目を集めました。


Democratic presidential nominee Joe Biden, who is struggling to win over Latino voters, made his first campaign appearance in Florida on Tuesday, at the opening of Hispanic Heritage Month.

But Biden's address at the event is likely to be remembered more for its opening music number than the content of the speech after the former vice president pulled out his phone and played "Despacito," a Spanish-language pop song, when he first took the stage.

(中略)

The moment quickly went viral on social media. Critics accused Biden of pandering to Latino voters, supporters fired back that the critics were not putting the moment in context and others lamented that people were not focused on more substantive issues.

(William Cummings. Google News - Biden goes viral after playing 'Despacito' at Florida campaign stop, as he tries to win Latino voters. USA Today. September 16, 2020.)


バイデン氏の意図は、まずはスピーチを開始する前に聴衆の注目を集めることにあったのだと思われますが、ラテンアメリカ系が集中する同州にあって、人気取りの意図も透けて見えるようです。

要は得票につなげる、ということになりますが、バイデン氏の行為については早速ネット上で賛否両論が戦わされているようです。

引用した記事では、


Critics accused Biden of pandering to Latino voters


と表現もされています。

ここで"pander(ing)"という動詞を取り上げたいと思います。

"pander"を辞書で引くと、


売春(情事)の仲介をする

(ランダムハウス英和辞書)


という、非常にいかがわしい意味が最初に出てきます。そして、もう一つの意味が、


迎合する、おもねる

(同上)


とありまして、記事のコンテクストではこちらの意味が相当するのであろうということなのですが、語源は興味深いものがあります。

語源欄を見ると、人の名前Pandarusに由来するとあるのですが、このPandarusという人は、ギリシャ神話のトロイア戦争に出てくる兵士で、AthenaにそそのかされてMelaneusの暗殺を企てた人物だということです。

尤も、このギリシャ神話の話はあまり知られておらず、英国詩人のチョーサーの著作になる「トロイラスとクレシダ」において、クレシダを慕うトロイラスにその仲を取り持った男ということで知られます。

「トロイラスとクレシダ」はシェークスピアの劇としても有名ですが、実のところまだ読んだことがありませんので、今度読んでみたいと思います。

情事の仲介をする、という意味合いは恐らく後者のストーリーから生まれた意味合いであろうと思われます。

2020年9月16日水曜日

conflate

トランプ大統領という人は元は実業家であり、ビジネスや経済活動に関することはまだしも、新型コロナウィルス感染症や地球温暖化など、サイエンスに関することについては素人だというのが正しい見方かもしれません。

コロナにしろ、温暖化問題にしろ、いずれの問題に関しても、同氏の見識と大統領としての発言、対応が疑問視されていますが、温暖化問題に関連して、CNNの記事から引用しました。


(CNN) "It'll start getting cooler. You just watch."

Just as he has tried at times with the Covid-19 pandemic, President Trump's solution to climate change seems to be to wish it away.

When presented with facts by Gov. Gavin Newsom of California and then Wade Crowfoot, secretary of California's Natural Resources Agency, about how warming temperatures brought on by the burning of fossil fuels worsened the wildfires, President Donald Trump just shrugged it off and again doubted the consensus of every major scientific organization that studies out planet.
    "I don't think science knows, actually," the President said at the briefing on the California wildfires that have destroyed millions of acres in recent weeks.
    (Climate is not weather: Trump continues to get the two conflated. CNN. September 16, 2020.)


    トランプ氏とのやり取りに垣間見えるのは、同氏は温暖化の何たるかが分かっていないのではないか、という疑問です。

    例えば、これから夏の危険な暑さが落ち着いて涼しくなってくるということをもって、温暖化は然程大変な状況ではないと勘違いしているのではないか、ということです。

    つまり、天気の話(weather)と気候(climate)を混同しているのでは?ということです。


    With climate change, it is the difference between weather and climate that continually trips him up.
    He is right that yes, it will get cooler. We are heading into winter in the US -- and all the global warming in the world won't change Earth's annual trip around the sun or its tilt, which brings about the change in seasons.

    But that doesn't mean an end to global warming.
    (ibid.)


    記事のタイトルに着目しましょう。


    Climate is not weather: Trump continues to get the two conflated


    注目したいのは、“conflate”という単語ですが、


    get the two conflated


    とあります。

    "conflate"の意味は、融合する、合成する、と辞書に載っていますが、ここでは"confused"と同じような意味合いで用いられています。

    調べてみますとこの用法には言語学者の間でも議論があるそうで、American Heritage Dictionaryでは下記のような解説がされています。


    Traditionally, conflate means "To bring together; meld or fuse," as in the sentence I have trouble differentiating Jane Austen's heroines; I realized I had conflated Elizabeth Bennet and Emma Woodhouse into a single character in my mind. In our 2015 survey, 87 percent of the Usage Panelists accepted this traditional usage. Recently, a new sense for conflate has emerged, meaning "To mistake one thing for another," as if it were a synonym for confuse. In 2015, our usage panelists found this new sense to be marginally acceptable, with 55 percent accepting the sentence People often conflate the national debt with the federal deficit; when the senator talked about reducing the debt, he was actually referring to the deficit.


    つまり、"conflate"を"confuse"の意味で用いるのは、近年増えてはいるものの、誤用であるという見解も半数くらいはある、ということです。

    勿論、言葉の意味というものは時代を経て変化していくものですので、CNNの記事タイトルにケチをつけるつもりなどないのですが。



    2020年9月15日火曜日

    hit the ground running

    日本の新しい首相が誕生しました。

    持病のため辞任した安倍首相の後任となる自民党総裁選挙が昨日、9月14日月曜日に行われ、官房長官の菅氏が他の候補者2名を抑えて圧勝しました。

    海外メディアも大きく報じています。


    TOKYO — Yoshihide Suga charted an unlikely course to the cusp of Japan’s premiership.

    While most leading Japanese lawmakers come from elite political families, Mr. Suga is the son of a strawberry farmer and a schoolteacher from the country’s rural north. He is known more for expressionless recitations of government policy than flashes of charisma. And at 71, he’s even older than Shinzo Abe, who suddenly announced in late August that he was resigning as prime minister because of ill health.

    Yet on Monday, Mr. Suga, the longtime chief cabinet secretary to Mr. Abe, was overwhelmingly elected as leader of the conservative Liberal Democratic Party during a conclave at a luxury Tokyo hotel. The party has governed Japan for all but four years since World War II and controls Parliament, virtually assuring that Mr. Suga will be elected prime minister during a special session this week.

    He will have to hit the ground running.
    (Japan’s Next Prime Minister Emerges From Behind the Curtain. The New York Times. September 14, 2020.)


    ニューヨークタイムズ紙の記事から引用しましたが、その最後のところで、


    He will have to hit the ground running.


    とあります。この"hit the ground running"というのはいわゆる慣用句で、


    (新しい事業などを)(準備段階を終えて)本式に活動を開始する
    (ランダムハウス英和辞書)


    という意味だそうですが、知りませんでした。

    手元にあるCollins Cobuild Dictionary of Idiomsには下記のように載っています。


    If you hit the ground running, you start a new activity with a lot of energy and enthusiasm, and do not waste any time.
    (Collins Cobuild Dictionary of Idioms)


    また、例文に挙げられているものに以下のようなものがありました。


    The last thing we want is to have someone who really does not have experience in that field, someone who needs on-the-job training. Instead, we need someone who can hit the ground running, who has background and experience.
    (ibid.)


    先に引いたランダムハウス英和の定義からはちょっとだけニュアンスが違うように思いました。特に上記の例文からは即戦力というような日本語も思い浮かびます。

    そもそも、"hit the ground running"とは何を言わんとしているのでしょうか?

    こういった慣用句の字義通りの意味を分析するのはナンセンスな気もするのですが、"hit the ground"という部分と、随伴する状況としての"running"という構成と考えるべきなのでしょうか?

    色々と調べてみますと、どうやらそう解釈するのが妥当なようで、"hit the ground running"というのは、動いている列車から飛び降りるような行為を指すものと考えられるようです。

    つまり、目的地で一旦停止してから下車する、というのではなく、目的地を通過しようとしている列車など、動いているものから飛び降りる、つまり即座に次のアクションへと移る、ということであり、故に、間髪おかず始動する、というような意味になったものと思われます。

    菅新総裁(新首相)に関して言えば、いわゆる政治空白というのは許されないというような発言をしていますから、官房長官としてこれまでの経緯を熟知した上で、安倍首相の路線を引き継いで、新しい内閣を組閣して本格始動することになるであろう、というようなことを言わんとしているのでしょう。


    2020年9月14日月曜日

    こんな意味もあったの? ー run

    アメリカ・ニューヨークではペーパータオルの品薄状態が続いているようです。

    新型コロナウィルス感染症の拡大の影響で一時品切れになったのですが、その後も店頭に並ぶと同時に売り切れるというような状況が続いているそうです。


    New York (CNN Business) — The paper towel shortage in the United States didn't stop in the spring.

    Although finding paper towels for sale hasn't been quite as difficult as it was when the pandemic first hit the United States, finding them — especially at a normal price — still isn't always easy.

    Paper towels have been in and out of stock on Amazon, Costco and local stores. And when paper towels are available, customers can't always get the brand they want.

    Part of the reason for the shortage is people keep hoarding them: there was a massive surge in sales of Bounty paper towels in July, Procter & Gamble reported, as customers swept them off store shelves.
    (Alexis Benveniste. Paper towel shortage: Why it's hard to find paper towels again. CNN. September 13, 2020.)


    品薄の理由は勿論顧客による買い占めに原因がありますが、メーカーの生産体制にも一因があるようです。

    多くのメーカーではいわゆるリーン方式による生産体制(lean manufacturing)を取っており、実際に売れた分だけを生産する(つまり出て行った分だけを補充する)という方針を取っていますが、それだと急な需要の変動に応えられないということのようです。

    記事は以下のように続きます。


    But the shortage could also have something to do with the way companies produce the paper towels. Lean manufacturing, in which companies make only as much product as they believe customers will buy on a given day -- has borne the brunt of the blame for the shortage. Last month, the Wall Street Journal published an article called "Why are there still not enough paper towels?" laying blame primarily on paper towel manufacturers building their operations to keep costs to a minimum.

    Lean manufacturing is not unique to the paper towel industry -- over the past several decades, it has become prevalent in auto manufacturing, fast-fashion clothing makers and many other industries. But when there's a run on a product, shortages happen. Paper towel manufacturers were left unprepared, as their operations were not built for a pandemic.
    (ibid.)


    上記の部分で、


    But when there's a run on a product, shortages happen.


    という箇所がありますが、ここの"run"の意味を取り上げてみましょう。

    明らかに名詞として使われています。

    動詞としても名詞としても数多い意味の中から、当てはまるのは、


    A series of unexpected and urgent demands, as by depositors or customers
    (American Heritage Dictionary)


    という意味ですが、辞書中もほとんど最後の方に載っている定義です。

    英和辞書では、大需要とか大売れ行き、(銀行における)取付け、という意味で載っています。

    目的語には前置詞onを取ります。


    2020年9月11日金曜日

    epicurean

    好き嫌いのある子のために、栄養バランスが偏らないよう、アニメキャラクターなどに模した独創的な一皿を作るお母さんが紹介されています。

    記事を読んでみると日本人のお母さんでした。

    目玉焼きは卵黄の部分を使ったくまのプーさんになっており、食べるのが憚られるようです。

    このお母さんが工夫を凝らして作った数々の料理がインスタグラムで紹介されていますが、海を越えてアメリカでも評判になっています。


    She’s a gourmet Michelangelo.

    A Japanese nursery schoolteacher has devised a creative way to get her finicky daughters to eat her food — by mimicking pop culture with her meals.

    “I make things for my children that I think they would like,” the 44-year-old mother of three from Tokyo told Jam Press about her tasty pastime.

    Some of her meticulously molded meals include a chocolate Chewbacca, an avocado Jabba the Hutt and a mouthwatering Winnie the Pooh comprised of egg yolks.

    “When I look at the ingredients, I can imagine many characters,” said the “self-taught” home cook, who shares photos of the delicious doppelgangers to her 154,000 followers on Instagram under the name Etoni Mama. She told BuzzFeed she created her handle as an ode to her daughters’ names: Eko, Toko, and Niko.

    Despite her sudden internet fame, the epicurean artist said she initially “put a face” on food to entice her daughter, whose diet had become unbalanced.
    (Ben Cost. This mom makes next-level lunches for her kids. New York Post. September 10, 2020.)


    多くの賞賛の声が寄せられており、記事の冒頭は"gourmet Michelangelo"と持ち上げています。

    また、


    epicurean artist


    とも評されているのですが、この"epicurean"はギリシアの哲学者エピクロスの名前に由来する単語です。

    エピクロスは快楽を最高の善と主張していたので、"epicurean"は快楽至上主義者などと辞書に載っていますが、もう一つの意味としては食通、とか美食家、という意味です。

    快楽にふけるというと何となく後ろめたい感じもしますが、"epicurean"は、食や芸術などに対する洗練された感覚を持つ人のことを指す意味でも用いられるようになりました。

    ちなみに、"epicurean"の対極にあるのがストア派で、ストイック(stoic)、つまり禁欲主義の語源になるものです。


    2020年9月10日木曜日

    shock value

    SNSで自身の自殺を生中継したアメリカ人の映像が拡散し、問題になっています。

    その舞台となったフェースブックを始め、SNSサイトは映像の削除に努めていますが、TikTokなどの他SNSに次から次へと転載され、いたちごっこのようになっている模様です。


    Graphic video of a US Army veteran’s suicide circulated on social media sites for days after the livestreamed death — showing how sites like Facebook are having trouble stopping such disturbing footage.

    A distraught Ronnie McNutt, 33, fatally shot himself during a Facebook Live stream on Aug. 31, according to outlets including the Daily Star.

    Facebook removed the original video on the day it was posted, but it has been repeatedly re-posted there and on other social media sites by internet trolls capitalizing on the shock value.

    “We removed the original video from Facebook last month, on the day it was streamed, and have used automation technology to remove copies and uploads since that time,” Facebook said in a statement to outlets including the BBC.
    (Aaron Feis. Facebook scramble to remove video of Ronnie McNutt suicide. New York Post. September 8, 2020.)


    記事のくだりで、


    but it has been repeatedly re-posted there and on other social media sites by internet trolls capitalizing on the shock value


    という部分があります。

    言わんとするところは分かるように思いますが、ここでの"shock value"という表現が気になったので取り上げました。

    いわゆる「グロな」コンテンツというものは人に嫌悪感を催させるものですが、怖いもの見たさの興味や関心を引くことも確かで、ネット上はそのようなコンテンツに溢れています。

    また、そのようなコンテンツをネットに投稿することでアクセス数を稼ぎ、ひいては収入につなげようという輩が後を絶たないのでしょう。

    この"shock value"という表現ですが、手持ちの英和辞書には載っているものがありませんでしたが、Merriam-Websterでは、


    usefulness to surprise and usually upset people


    と定義されています。問題は何と訳すかでしょう。

    "value"という単語からは価値、価格、値段、とか値打ち、という日本語がまず思い浮かびますが、「グロな」画像がそれを見る人にもたらすであろう"shock"(衝撃)が、直接的な価値や値段を持つということではないので、ここではしっくりこないように思われます。

    むしろ、衝撃がもたらす効果のことを指していると言えるでしょう。

    "shock value"の用例は意外にも少なくなく、様々なコンテクストで使われているようです。

    例えば、以下のような用例はこの表現の意味するところを理解するのを助けてくれます。


    Unfortunately, Kevin Williamson's ("Scream") drama focuses too much on shock value and not enough on content.
    (Christian Science Monitor, 1998)


    つまりは、本当に中身があるような価値ではなく、単なる受け狙い、効果を狙ったもの、といったところが含意されているのではないでしょうか。


    2020年9月9日水曜日

    pick up the slack

    先の見えないCOVID-19パンデミックにより、世界中の人々が「新たな日常」を強いられています。

    その「新たな日常」のひとつの側面に過ぎませんが、いわゆるサラリーマン(会社勤めの人たち)の在宅勤務があります。

    全ての人が在宅勤務に移行できるわけではありませんが、在宅勤務は通勤時間の削減や時間の使い方に裁量の余地が出るなどのメリットが言われます。

    一方で、同じ在宅勤務でも、子供などの世話をしなければならない親(parent worker)とそうでない人との違いが浮き彫りになってきました。

    引用するCNNのオピニオン記事はいわゆる先進ネット企業での事例ですが、小生の勤務先でも程度の差はあれ似たような福利制度を展開しており、同じような日本企業も多いと思うところ、興味深く読みました。


    (CNN) — Six months into the Covid-19 pandemic that has shut down schools and day care centers and forced millions of Americans to work from home, the stressors of our no longer new normal are only growing. As it dawns on many of us that this situation is not an acute emergency but rather a protracted disaster with no end in sight, our collective patience is thinning. Which is perhaps why workplace tensions between people with children at home and those without seem higher than ever.

    The latest example came from The New York Times this past weekend, in a story about some of the highly paid employees of Big Tech in Silicon Valley squabbling over Covid-related benefits and dispensations for parents. At various big tech companies, parents dealing with child care were given more time off and bonuses that were once tied to performance now given to everyone. The Times reported that some employees without children complained that the new benefits based on caregiving status were unfair, and that the childless were expected to pick up the slack from parents who were no longer pulling their own weight at work.
    (Jill Filipovic. Child-free workers aren't selfish. They're being exploited. CNN. September 8, 2020.)


    どういうことが起きているかと言うと、シリコンバレーの大手ネット企業では子を持つ親(多くは女性)に対しては、パンデミックの最中、特別な休暇等が与えられる一方、子供のいない社員にはそのようなベネフィットが無く、不公平だとの声があがっている、ということのようです。

    子供のいない社員(childless、あるいはnonparent)にしてみれば、


    that the childless were expected to pick up the slack from parents who were no longer pulling their own weight at work


    ということなのですが、"pick up the slack"という表現が目に留まりました。

    "slack"は弛み、とか緩んだ状態を意味する単語ですが、怠けている、やるべきことをやらない、というような意味があります。

    "pick up the slack"はその不足分を補うというような意味合いの慣用句で、要は、子を持つ社員が持ち場を離れることで生ずる労働力の不足分(slack)を、子供のいない社員が肩代わりしている、ということを言っており、強烈な不満をぶちまけているようです。


    2020年9月8日火曜日

    ジョコビッチ選手の代償 ー love

    昨日の投稿で、テニスのジョコビッチ選手が全米オープンで失格処分になった記事を取り上げました。

    自身の劣勢に腹を立てて怒りに任せて放ったボールは、グランドスラム達成の目標を台無しにしてしまうという高い代償となってしまいました。

    今日もこの話題に関する記事から引用します。


    Tennis star Novak Djokovic is getting some tough love after an accidental ball flub got him tossed from the U.S. Open.

    Fellow tennis great John McEnroe said Sunday that the Serbian pro would "be the bad guy the rest of his career" after he accidentally hit a line judge with a tennis ball Sunday in a stunning turn of events that saw him disqualified from the tournament in just his fourth-round match.

    "The pressure just got to him, I think," McEnroe said on ESPN. "I think a lot’s been going on off the court, it’s obviously affected him. And now, whether he likes it or not, he’s going to be the bad guy the rest of his career. It’ll be interesting to see how he handles it."
    (Melissa Leon. John McEnroe on Novak Djokovic's US Open disqualification: He'll 'be the bad guy the rest of his career'. Fox News. September 7, 2020.)


    記事の冒頭部分ですが、


    Tennis star Novak Djokovic is getting some tough love...


    という部分の"love"は、愛情の「ラブ」ではなく、テニスのスコアでいう、零点(ゼロ)を意味しています。

    なぜ"love"がゼロの意味になるのでしょうか?

    これには諸説あるらしく、Merriam-Webster Onlineの解説が参考になります。

    まず、テニスがフランスで生まれ、その後英国に渡ったということなんですが、フランスで卵を意味するl'oaefが、イギリス人には発音が似ている"love"と誤って解釈されたというものです。

    卵の形状が数字のゼロを想起させる、ということなのですが、どうやらこれはいわゆる民間語源(folk etymology)というやつで、信憑性に欠けるということです。(何より、フランス語で卵が数字のゼロを意味するという根拠は乏しいようです。)

    もう1つの説が、"love"はその本来の意味である「愛」のことであり、プレーヤーが得点や勝ち負け、賞のためではなく、テニスというスポーツそのものへの「愛」があればこそプレーする、というそのことから得点ゼロを"love"というようになったというもので、どちらかと言えばこちらの説が支持されているようです。

    それにしても、テニスにおけるスコアリングというのは変わっているようで、1点目は"fifteen"(15)、2点目が"thirty"(30)、というそうです。

    そして、3点目は「45」かというと、そうではなく、"forty"(40)、と言いますから、不思議なものです。

    ジョコビッチ選手は今回の件により今年の全米オープンは4回戦目にして失格となってしまい、つまりは戦績を残すことが出来ず「ゼロ」になってしまいました。

    今後のテニス人生を、テニスというスポーツに対する純粋な愛により取り戻すことができるでしょうか。



    2020年9月7日月曜日

    default

    テニスはやったこともなく、また試合を観戦するのが好きという訳でもありませんが、ノヴァク・ジョコビッチという有名な選手の名前はよく聞きます。

    そのジョコビッチ選手が、開催中の全米オープンで、対戦するスペインの選手との第1セットを落としてしまったのですが、腹立ち紛れに放ったボールがジャッジに当たり、ケガをさせてしまうというハプニングがあったようです。


    (CNN) — The US Open was supposed to be a slam dunk for Novak Djokovic but instead of moving closer to Roger Federer in the Grand Slam record books, the world No. 1 was defaulted Sunday when he struck a line judge with a ball.

    The Serb had just been broken to trail 6-5 in the first set against Spain's Pablo Carreno Busta in New York when he hit a ball behind him. Djokovic wouldn't have been aiming at anyone but it hit the line judge -- seemingly near the face -- and she fell to the ground.
    (Ravi Ubha. Djokovic defaulted from US Open after striking line judge with ball. CNN. September 7, 2020.)


    勿論狙った訳ではありませんが、テニスのスーパープレイヤーが放ったボールはジャッジ(写真から女性のようです)の顔面付近を直撃し(喉に当たったという報道があります)、女性は痛みにうずくまったようです。

    この事故により、ジョコビッチ選手は、


    the world No. 1 was defaulted Sunday


    ということなのですが、ここでの"default"の用法は見慣れないものでした。

    辞書を引くと、不戦敗になる、棄権する、などと載っていました。

    デフォルト、と聞くと、債務不履行とか、近年ではコンピュータなどの入力画面で初めから表示されている内容(デフォルト値)、といった意味をまず思い浮かべますが、"default"に不戦敗とか棄権という意味があるとはこの記事で触れるまで知らなかったです。(以前取り上げた“default”の投稿もご覧下さい。)

    ところで、この事故に関するニュースでは、"defaulted"ではなく、"disqualified"と表現している記事も認められます。

    "disqualify"は、資格を剥奪する、失格させる、という意味であり、"default"よりも馴染みがあるように思います。

    一方、"default"の意味は不戦敗、棄権、ということですが、“disqualify”が意味する失格処分とは少し違うようにも思われます。

    ちなみに、この件に関する全米オープンの公式声明では"default"という表現が使われていました。


    2020年9月4日金曜日

    shalom

    "Shalom"はヘブライ語で、お別れの時の挨拶に使われる言葉です。

    文字通りには、平和(peace)を意味するそうで、別れに際して、相手に対して平和が訪れますように、というほどの意味だそうです。


    BEN GURION AIRPORT, Israel (Reuters) - Hedva Opatovsky’s first flight to the United Arab Emirates was her last for El Al, the Israeli flag carrier whose routes she has plied through almost a half-century of wars and peacemaking.

    The airline’s longest-serving flight attendant retired on Wednesday after leading the cabin crew on a groundbreaking return trip to Abu Dhabi with Israeli envoys who hammered out a deal normalising relations with the Gulf power.

    “This is the historic flight, I think, in (my) 46 years - very, very emotional,” she told Reuters, referring to her long career with the airline. “It’s a good opportunity to open up other countries to make peace with us.”

    “It’s what we wish for, always,” she said, noting that the Hebrew for “hello” or “goodbye” - “shalom” - also means “peace”.
    (Israeli flight attendant says "shalom" to UAE, bye to airline. Reuters. September 2, 2020.)


    英語は、様々な言語から「輸入した」単語や表現にあふれていますが、当ブログでヘブライ語を取り上げるのは初めてです。


    2020年9月3日木曜日

    in the ring

    先日、ミススペルの話題として取り上げた、マサチューセッツ州での上院議員選挙の民主党予備選の記事ですが、名門ケネディ一家の候補、Joe Kennedy氏が現職のEd Markey氏に敗れるという結果に終わったようです。 

     やはり自身の選挙公報で地元の都市名を書き間違えるというミススペルが祟ったのでしょうか。


    The Kennedy family's perfect record in Massachusetts elections ended on Tuesday when Congressman Joe Kennedy III conceded to incumbent Senator Ed Markey in the Democratic Senate primary. The grandson of Robert F. Kennedy took the stage at his campaign headquarters in Watertown shortly after 10 p.m. to address the press and thank campaign staff.
     (Eleanor Watson. Ed Markey beats Joe Kennedy III in hotly contested Massachusetts Senate primary. CBS News. September 2, 2020.) 


    引用したのは記事のリード部分ですが、投票日の深夜、開票の結果がほぼ出たところで、ケネディ氏が敗戦の弁を述べ、選挙応援スタッフに感謝する、といった記述です。(このあたり日本の選挙でもおなじみの光景が思い浮かびます。) 

    ところで、記事を読んでいきますと、さすが名門ケネディ一家とあって、支援者には事欠かなかったようです。

    ケネディ氏は同氏を支えてくれた多くの人に対して感謝のコメントを述べています。 最後の部分で、自身の子供にもメッセージを託すあたり、如何にもアメリカ人っぽい感じがします。


    His final thank you was to his two young children, Ellie and James who are four and two years old. "To Ellie and James, who probably will not see this until tomorrow and won't understand it for a long time, if there's one message from your dad tonight, always spend your life in the ring," Kennedy said. "It is worth the fight." 
     (ibid.) 


    まだ、4歳と2歳という幼い子供(会見が行われた夜10時には既に眠っています)へのコメントなんですが、 


     always spend your life in the ring 


    という部分が目に留まりました。 

    続けて、 


     It is worth the fight. 


    とあることから、"ring"が戦いの場を表していることは明白です。

    自らの子供たちにも政治家としての道を歩んでほしいのでしょうか。(あるいは自身の仇を取って欲しいと?)

    ここで使われている"in the ring"に、選挙戦、政争の意味があるとは、辞書を確認するまで知りませんでした。 

     "ring"と聞くとボクシングリングを思い浮かべますが、敢えて選挙を戦う場、の意味があるとは知らなかった訳です。 

    考えてみれば、選挙戦を"race"(レース)と称することは英語に限らず、日本語でもよくあるので、メタファーの一種としては有り得るのですが、"ring"になぞらえている表現を見たのは初めてでした。 

    調べてみると、"in the ring"が使われている他の表現として、"throw one's hat in the ring"というものがあり、こちらは競争に参加する、という意味ですが、やはり選挙のコンテクストで使われることが多いらしく、政治的な地位や職に立候補する、という意味の成句だそうです。 


    That puts Suga in much better standing than Seiko Noda, who often gets a lot of media play as the only female LDP member who consistently throws her hat in the ring for party president. She is also an independent but is unlikely even to garner the nominations necessary to be able to run.
     (Michael MacArthur Bosack. All you need to know about how Abe’s successor will be chosen. The Japan Times. August 31, 2020.) 


    引用したのはジャパン・タイムズの記事ですが、先週末、持病の再発を理由に突然辞任表明した安倍首相の後継に立候補する顔ぶれについての記事です。



    2020年9月2日水曜日

    dibs

    アメリカ・シカゴにある、アマゾンの配送センター周辺などで、スマホが木にぶら下がっている奇妙な光景が広がっているそうです。

    誰が、何のために?と思うところですが、アマゾンから配送を請け負うドライバーによるものだそうです。

    詳しい背景は以下に。


    Amazon drivers are hanging phones from trees outside Chicago Amazon delivery stations and Whole Foods stores so that they will have first dibs on accepting new orders, according to a new report from Bloomberg.

    The outlet viewed footage of drivers syncing their phones up to the devices that are suspended in trees and then parking nearby to wait. Amazon's system chooses drivers based on who is closest to the pickup location — meaning drivers with access to phones even slightly closer to the stores and delivery stations have a leg up on accepting orders before competing drivers.

    There is a coordinated group of drivers that uses the process, Bloomberg reported. By using multiple smartphones suspended in trees that alert multiple drivers, they make it more difficult for Amazon to discover their system.

    The report is an example of the increasing level of competition in the gig economy as workers face a steep drop in business during the COVID-19 pandemic. Drivers with the ride-hailing giants Uber and Lyft have found themselves with less work and, in turn, have sought out other gig options, including picking up Amazon orders, to earn more money, further intenintensifying the competition, according to the report.
    (Katie Canales. Amazon drivers hang phones in trees to compete for new orders. Business Insider. September 1, 2020.)


    記事を読んで分かりましたが、配送ドライバーはアマゾンからのオーダーをいち早く受けるため、こうしたやり方を思いついた(!?)ようです。

    背景にはアマゾンが配送ドライバーを選択する際のシステムの仕組みにあります。

    配送のスピードと効率を上げるため、同社のシステムは配送センターに近い場所にいるドライバーに配送依頼を行うようになっているということのようです。

    スマホの位置情報が利用されるので、ドライバーは自分自身が最も近くにいるように見せるために、スマホを配送センター至近の木にぶら下げておくのだそうです。

    配送ドライバーは請負とはいえ、いわゆる歩合制なのでしょうか、複数いるドライバー間での争いが熾烈であることを示しているようです。

    さて、今日取り上げる表現なのですが、冒頭の


    Amazon drivers are hanging phones from trees... so that they will have first dibs on accepting new orders


    とある部分の"dibs"という単語です。

    初めて見る単語ですが、辞書では俗語表現として、(少額の)金銭、と載っていました。

    "dibs"の由来ですが、アメリカで"dibstone"、イギリスでは"jacks"と呼ばれる、子供の遊び(ゲーム)にあるらしく、そのゲーム自体は紀元前にも遡るような歴史があるようです。

    小石(dibstone)や動物の骨を使ったこのゲームでは、それらを多く集めることで勝ち負けを競うものらしく、故に子供の間では"dibs"(dibstoneを約めた表現)は、分け前とか取り分、という意味で使われたということです。


    2020年9月1日火曜日

    battle royale

    ミススペルがニュース記事の話題になることが偶にありますが、見つけたら欠かさずチェックするようにしています。

    たかがミススペル、されどミススペル・・・、であり、高い代償となることも少なくありません。

    さて、今回の話題は、米国上院議員選挙にまつわる話です。マサチューセッツ州での民主党予備選挙では現職に対して、J.F.ケネディ元大統領の家系に連なるJoe Kennedy氏が挑む構図となっているそうですが、同氏の選挙公報にミススペルがあったそうです。

    マサチューセッツ州の都市ウースター(Worcester)を、"Worchester"と書いてしまったというものですが、自らの地盤の都市名を書き間違えるという失態は面目まるつぶれです。(ManchesterやRochesterなどの都市名に引っ張られたのでしょうか?)


    A scion of the Kennedy family running for US Senate in Massachusetts is getting mocked for a campaign ad that committed a cardinal sin — misspelling the name of a prominent city two days before his primary election.

    The Rep. Joe Kennedy III Sunday newspaper ad financed by Local 103 IBEW union said the Democratic candidate seeking to unseat Democratic Sen. Ed Markey in Tuesday’s Democratic primary is “For Worchester.”

    One problem. It’s the City of Worcester — without the “h.”

    Even more embarrassing is that the goof ran in an ad that was placed in Sunday’s Worcester Telegram & Gazette.
    (Carl Campanile. Joe Kennedy III ad misspells Worcester on eve of Mass. primary fight. New York Post. August 31, 2020.)


    ところで、2名の候補者については、民主党内でも支持が分かれているそうで、現職のMarkey氏には史上最年少下院議員として一躍有名になったAlexandria Ocasio-Cortez氏が支持を表明、Kennedy氏は下院議長のPelosi氏の支持を取り付けている、ということで、さながら「バトルロワイアル」(battle royale)の状況である、と報じられています。


    The primary race has become a battle royale with both candidates attracting star power endorsements.

    Lefty Democratic socialist Rep. Alexandria Ocasio-Cortez and other progressives have endorsed Markey, first elected to the Senate in 2013 after serving in the House of Representatives for three decades.

    Markey sponsors AOC’s Green New Deal legislation in the Senate.

    Kennedy has attracted support from House Speaker Nancy Pelosi and moderates, including pro-Israel Democrats.
    (ibid.)


    「バトルロワイアル」(battle royale)を辞書で引くと、死闘とか乱戦、大論戦などと載っています。日本語としてもカタカナ書きで使われることがありますが、その意味合いや由来を深く考えたことはありませんでした。(確か、邦画のタイトルになったこともありました。)

    まずもってスペルですが、"battle royale"は、名詞の後に形容詞が来ており、また"royale"のスペルからして、フランス語のようです。

    実際そうなのですが、英単語としては"battle royal"としても正しく(!?)、辞書のエントリとしてはどちらもあるようです。

    ところが、その複数形となると、"battles royal"だったり、"battle royals"だったり、"battle royales"だったりするそうで、扱いが一定しないというややこしさ。

    ところで、"battle royale"の由来は闘鶏だということをご存知でしょうか。ランダムハウス英和辞書の語源欄では、2羽の鶏の死闘を意味した、という解説があります。

    2羽か、それ以上かはさて置くとして、最後の1羽が残るまで戦わせる闘鶏のことを“battle royale”と呼んだそうです。

    "royale"(royal)という形容詞からは、王室、国王、君主に関するもののようなイメージが喚起されますが、"battle royale"においては王様とかとは一切関係がありません。

    ここでの"royal(e)"は単に強調の意味合いで置かれた形容詞で、("a royal pain"などの表現に見られる)程度が並大抵ではない、すごい、という程の意味として使われているに過ぎません。これは知りませんでしたね。