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2021年9月30日木曜日

tizzy

この数週間、マスコミを賑わせている秋篠宮内親王の結婚にまつわる話題はいよいよ海外メディアでも取り上げられるようになりました。

結婚に伴い内親王が皇室離脱し、さらにアメリカに居住するということで、同じく結婚後にイギリス王室を離脱したハリー元王子とメーガン元妃の夫妻になぞらえられています。


TOKYO – At first glance, it’s a classic royal tale: A princess falls in love with a commoner, and decides to buck imperial traditions by giving up her royal title to marry her college sweetheart.

But for Japanese Princess Mako and her controversial fiance Kei Komuro, both 29, it’s gotten really complicated. Komuro has become such a vilified figure that even his new ponytail hairdo has become a symbol of his unfitness to be involved with the royal family.
(You’ve heard of Harry and Meghan. Now meet Mako and Kei, who have Japan in a tizzy. Seattle Times. September 29, 2021.)


記事のタイトルで、"tizzy"という見慣れない単語が使われています。

内親王の婚約相手の母親に持ち上がった金銭トラブルをきっかけに、話はたちまち祝賀ムードからゴシップ扱いとなり、日本中を騒がせていることについて触れたものですが、"tizzy"の定義を見てみましょう。


a highly excited and distracted state of mind
(Merriam-Webster Dictionary)

a state of frenzied excitement, esp. over some trivial matter
(Collins Dictionary)


ランダムハウス英和では、俗語表現とあり、興奮状態という訳が見えます。語源ははっきりしないようです。

個人的には、Collinsの定義にあるように、どうでもいいような話題に大騒ぎしている、という意味合いがここではぴったりのように思います。

内親王の結婚を巡る問題はもはや芸能人のゴシップネタと同レベルで報じられていますが、ネット上は避難囂々、匿名ゆえの読むに堪えない誹謗中傷も見受けられます。

明日、正式に結婚を発表と報じられていますが、果たして・・・。



2021年9月29日水曜日

informational picket

昨日も取り上げましたが、ワクチン接種義務化の是非はアメリカ国内で沸騰している話題のひとつです。

アメリカが先行しているだけに、日本でもいずれこのような議論になるのか・・・、と考えると少し不安にもなります。

今日取り上げる記事は企業におけるワクチン接種義務化を巡っての問題ですが、航空会社ではパイロットを始めとする従業員を対象として、ワクチン接種を義務化する動きがあります。

大手のユナイテッド航空がその一例として取り上げられているものです。


United Airlines announced Tuesday that only 593 of its workers face dismissal for not complying with the requirement to get a Covid-19 vaccine. That is less than 1% of its 67,000 US workers who are covered by the rule.

(中略)

The major unions at United have not fought the airline's vaccine mandate. But Tuesday the pilots unions representing pilots at American and Southwest voiced objections to federal rules they fear could require vaccine for their members.

(中略)

So far the other major US airlines — American Airlines (AAL), Delta (DAL) and Southwest (LUV) — do not have a mandate, although Delta has told employees they'll have to pay more for health insurance if they are not vaccinated.

Both the American and Southwest pilots unions have been voicing displeasure with work conditions at the airlines in recent months for issues that have nothing to do with vaccines. Both unions have announced plans to hold informational pickets of the airlines later this year, though in neither case would they engage in a work stoppage.
(Chris Isidore. Almost all United employees complied with the vaccine mandate. CNN. September 29, 2021.)


ユナイテッド航空において、ワクチン接種義務を不服として解雇になった従業員は約600名で、全従業員に占める割合は1%、その他については、健康上の理由や宗教上の理由による例外を除いて、大半が義務化を受け入れているとのことです。

アメリカでは、バイデン政権の政策として、100人以上の従業員を擁する企業は感染拡大防止のためにワクチン接種、もしくは週毎の検査を義務付けるということになっています。

ユナイテッド航空は、より厳しい方の措置、つまりワクチン義務化に踏み切ったという訳です。

ところでこのような事態において、労働組合が黙っている訳がありません。引用部分の後段では、


unions have announced plans to hold informational pickets of the airlines later this year


とありますが、パイロットが置かれている労働環境を巡って、"informational pickets"が予定されているとのことです。

この"informational pickets"とは何を指すのでしょうか。

まずは「ピケ」という言葉をご存知でしょうか?

労働者がストライキに際して「ピケを張る」などと言います。

この「ピケ」というのはフランス語piquetから来ていますが、原義は突き刺すという意味で、地面に刺す杭のことです。英語で"picket"と綴ります。

そもそもが軍事の用語で、敵の襲来を察知するために前線に立たせる前哨隊のことを指していました。

ストライキのコンテクストでは、職場の入口でストライキの大義名分を掲げる組合員のことを指すのに用いられるようになったようです。

この「ピケ」の要員はストライキを実行するために、他の労働者が職場に入ることを阻止することも目的とします。経験した訳でもありませんが、労使交渉に当たっては実力行使的な側面も出てくるということです。

そのような"picket"に"informational"という修飾語がついているものですが、Merriam-Webster Dictionaryによると、


picketing by a labor union for the purpose of informing the public about a matter of concern to the union


と定義されており、要は労働組合側が問題視していることを当事者以外にも分かるように掲示することを目的とするものである、ということになります。

引用部分の続く箇所で、実際に労働停止(ストライキ)するものではない、とあることからも分かるように、「実力行使」というよりももう少し穏やかな内容のものである、ということです。



2021年9月28日火曜日

renegade

新型コロナに関してはワクチン接種が感染予防、拡大防止に有効であるとされていますが、欧米などではレストランや施設の利用にあたってワクチン接種済み証明を求める動きが広がりつつあるところ、これに反発する人たちも一定数出てきています。

NYCでは、フードコートでの食事にはワクチン接種証明が求められるそうですが、これに反発する人々がデモを行いました。


A group opposed to New York City’s vaccine requirement for restaurants and other indoor activities stormed a Staten Island food court over the weekend — refusing to show proof-of-inoculation before sitting down to eat.

Video posted on YouTube and Twitter by freelance reporter Oliya Scootercaster shows the group of about 20 people march through the Staten Island Mall into its food court Saturday and sit down to eat, chanting slogans such as “USA!” and “F–k Joe Biden!”

(中略)

The video shows the renegade group proceed into the Staten Island Mall’s food-court area after blowing right past security and signs notifying them to show proof of COVID-19 vaccination.
(David Meyer. Group opposing indoor vaccine mandate storms food court on Staten Island. New York Post. September 26, 2021.)


デモに参加した20名ほどの集団は、"USA!"などと叫びながらショッピングモール内のフードコートに乱入し、制限を無視してサービスを利用する等の行動を取ったということです。マスクを着用しているようには見られません。

ワクチンを接種しない自由はあるかと思いますが、やや過激に過ぎるデモとも思われました。

"the renegade group"などと表現されていますが、"renegade"を辞書で引くと、背信者、(宗旨を変えた)転向者、などと載っています。

実のところ、この"renegade"という単語はラテン語のnegare(否定する)から来ており、特定の宗旨や大義などに対して否定的態度を取る、というのが原義です。

その意味から、反発する人、反抗する人、という意味、またそういった人たちは大抵手に負えない迷惑な人たちなので、反乱者、困った人達、という意味合いで使われるようになったようです。

スペルに少し注目してみましょう。

"renegade"は上述したようにラテン語に起源がありますが、スペイン語を経由して英語に入ってきたそうです。

スペイン語のrenegadoというスペルが、"renegade"としてその名残を残しています。

ややこしいことに、同じく背信者という意味で"renegate"というスペルの単語もありますが、こちらは使われなくなり、"renegade"が残りました。

~adoというスペイン語に特有のスペルは、aficionadobravadoなどの単語にも見られますね。(ちなみにavocadoも。)



2021年9月27日月曜日

put the pedal to the metal

記事の引用からお読み下さい。


With more New Yorkers back behind the wheel, carjackers are putting the pedal to the metal.

The number of carjackings as of Sept. 19 are up 81 percent, with 324 reported so far this year, compared to 179 in the same 2020 timeframe. The number is a whopping 277 percent spike from 2019, when NYPD data showed just 86 such incidents.
(Dean Balsamini. Carjacking cases skyrocket in NYC. New York Post. September 25, 2021.)


米・ニューヨークで自動車の強奪(carjacking)が相次いでおり、事件数が急増しているそうです。怖いですね。

今日取り上げる表現ですが、


put the pedal to the metal


という表現です。

なんだかよく分からない表現ですね。

アメリカ英語の俗語表現らしいのですが、


(車の)アクセルを目一杯にふかす、(車を)全速力でぶっとばす
(ランダムハウス英和辞書)


と載っていました。

"pedal"はアクセルペダルのことであるのは間違いないと思われます。では"metal"とは?

私は、put "the metal" to "the pedal"ではないかと思いました。つまり、金属(製の重い物を)アクセルペダルに載せる、それがアクセルを踏み込むことになる、と思ったのです。その発想は、以前取り上げた"lead-footed"が頭にあったからです。

ところが、語順と解釈はどうしても「ペダルをメタルに置く」ということのようなのです。

このフレーズの由来についてネット検索してみると、どうやら"the metal"とは自動車の床部分(floor)のことを指すらしいということが分かりました。

つまり、アクセルペダルを床につくほど踏み込む、ということです。

このフレーズはアクセルを踏み込んで全速力で移動することを意味していますが、その後自動車に限らず、物事に対して全力で当たる、迅速に取り組む、ことを広く指すのに用いられるようになりました。

"Carjacking"に全力で、あるいは迅速に取り組む(!?)というのはおかしな表現ですが、自動車の強奪が急増しているのは明らかであり、組織的なものか否かは分からないところですが、事件数が加増している状況を、自動車に因むこの表現を使って言い表したものでしょう。

Merriam-Webster Dictionary Onlineでは、この表現の由来が1970年代のカントリーミュージックの歌詞だとしています。



2021年9月24日金曜日

hold a candle

駅前を見渡せば数多のファーストフードチェーンが展開しています。

好き嫌いは人それぞれでしょうが、最も不人気なファーストフードチェーンはどこか?

世界各国の不人気投票(!?)みたいな調査を実施した結果があるそうで、つられて記事にアクセスしました。

SNSの投稿内容を分析した結果をまとめたものだそうです。


The team at RAVE Reviews, a product review platform, decided to use Tweets about the most popular fast-food chains around the world to find out how they stack up against each other in terms of their online reputation. They used language analysis tool SentiStrength to examine over a million tweets and composed a list of the most hated fast-food chains in the world, based on negative sentiments consumers have expressed about them.

(中略)

According to their analysis, McDonald's, Subway, Starbucks, and Wendy's were all found to be the most hated fast-food chain in several countries. But none of them hold a candle to KFC, which was the most hated brand in as many as 14 countries, and took the cake as the #1 most hated fast-food brand in the world.
(Mura Dominko. This Is the Most Hated Fast-Food Chain In the World, New Data Shows. Yahoo! News. September 24, 2021.)


その結果ですが、不人気の1番に躍り出たのはKFCだそうです。マクドナルドやサブウェイを抑えて!?

ファーストフードチェーンをほとんど利用しませんので、へぇ~というくらいの感想しかありませんが、本題に入ります。


none of them hold a candle to KFC, which was the most hated brand


というくだりに注目しましょう。

ここで、"them"は先行するファーストフードチェーン(マクドナルドやサブウェイ、等々)を指すのですが、"hold a candle"というフレーズが今日取り上げる表現となります。

このフレーズを知らなかったのですが、"hold a candle to (a person)"という成句として辞書にも載っているようです。

文字通りには、(人のために)明かりを取る、ということですが、これはその人のための助けとなるように立ち回る、ということです。

このフレーズが否定文のコンテクストで用いられることで、(人の)助けにならない、即ち、役に立たない、ということで、最終的には、比較にもならない、という意味で用いられるフレーズとなります。

なぜそのような意味に発展するのか、については、Phrase Finderのサイトによる解説が分かりやすいです。


Apprentices used to be expected to hold the candle so that more experienced workmen were able to see what they were doing. Someone unable even to do that would be of low status indeed.
(phrases.co.ukのサイトより引用)


明かりを取って手助けするというのは、サポート的な立場の人間がすることで、自分よりも上の立場にある人、優れた相手に対して助力するという前提です。

その「明り取り」すら満足にできない、ということは、立場的には相当程度劣っている、ということになる訳です。

足元にも及ばない、全く相手にならない、比較にもならない、という訳語が充てられることが多いようです。

KFCには不名誉なことですが、不人気という点ではマクドナルドもサブウェイも及ばない、というのが引用箇所の意味するところでした。



2021年9月23日木曜日

snub

記事の引用からどうぞ。


President Joe Biden for the first time admitted the diplomatic fallout with France over a recent defense deal could have been better handled, the White House said Wednesday in a joint statement with French President Emmanuel Macron's office.

Biden and Macron spoke on the phone Wednesday, in a bid to smooth over the diplomatic fallout from a defense partnership the U.S. struck with Australia and the United Kingdom.
(Biden agrees with France's Macron that sub snub could have been handled better. ABC News. September 23, 2021.)


邦紙の国際面でも記事になっているのである程度背景を理解していましたが、米英豪が新しく構築しようとしている安全保障の枠組み(AUKUS)を巡って、米国とフランスの間に不和が生じ、緊張関係に陥っていました。

問題は、豪がフランスから調達する予定であった潜水艦の取引を破棄し、米英からの原潜購入に乗り換えたことに端を発するようです。国家レベルの重要取引を反故にされたフランスは猛反発、米、豪それぞれに駐在する大使を帰国させるという、対抗措置に出ていました。

上に引用した記事は、米仏間で緊張緩和に向けた話し合いが持たれ、両国首脳が合意、声明を発表したという内容のものです。

記事のタイトルで、


sub snub


と出てくるのですが、2つの単語のスペルが似通っている上に、記事の見出しということもあって、短い単語が使われているので、ある程度背景知識が無いとちんぷんかんぷん、ではないでしょうか。

"sub"は今回の問題の発端となった"submarine"(潜水艦)を指しています。

一方、"snub"は、あまりお目にかからない単語ですが、辞書を引いてみると、無視、侮蔑、軽視、拒絶、ひじ鉄砲、等、いくつかの意味があり、ここでの解釈が問われるところです。

"sub snub"は"sub"を巡る"snub"、あるいは"sub"を原因とする"snub"と解釈するのが妥当でしょう。

米仏両首脳が、この"sub snub"について、"could have been handled better"、つまり、うまく対処できるはずだった(のに出来なかった)、と認め、反省しているということですが、米側からすると、フランスを「無視」(snub)して豪と一方的にディールを進めたことであり、仏側からすると、豪との潜水艦供給の契約を寝耳に水で反故にされてしまったという、「ひじ鉄砲」のような仕打ち、と言えるでしょう。

フランスが駐米、駐豪大使を帰還させるという「拒絶」(snub)の対応を取った、ということも含まれるのかもしれません。



2021年9月22日水曜日

memory lane

"memory lane"という表現をご存知でしょうか?

文字通りには、"memory"(記憶の)、"lane"(小道)、ということになるかと思います。

フレーズは大抵決まっていて、


a trip down memory lane
a travel〜
a walk down〜


といった形で現れることが多く、「記憶の小道を辿る旅」、つまり昔に思いを馳せる、とか思い出話に花を咲かせる、という意味になります。


"Tokyo Revengers" 223 is sure sentimental but it left fans hanging, especially those hoping it would finally offer an answer to Draken's heartbreaking situation.

Titled "Good Old Days," the latest chapter of the hit manga "Tokyo Revengers" took readers on a surprising trip down memory lane.
(Nica Osorio. 'Tokyo Revengers' 224 Raw Scans, Release Date, Highlights And More. International Business Times. September 21, 2021.)


"lane"というと、道路の車線(レーン)をまず思い浮かべます。一定幅を確保した、整然とした道というイメージですが、本来の意味は小道(狭い道)なんですね。

「記憶の小道」という言い回し、また思い出に浸るという行為をその小道を旅することになぞらえるこの表現は非常に文学的だと思います。

こんな風に思うのは歳のせいかも知れませんが、過去の思い出というのは脳に刻まれる小さな小道なのかもと思います。



2021年9月21日火曜日

knock-on effect

パンデミックの影響で多くの企業や職場でリモートワーク(在宅勤務)が導入されていることは周知の事実ですが、リモートワークの効率性については議論が喧しいところです。

リモートワークを巡っては、グーグルなどの大手がオフィスへの回帰を呼び掛けたところ、当の従業員からはオフィスに戻りたくないという声が上がるなど、経営側と被使用者側の対立を生みかねない問題となっています。

そのためか、メディアの記事で見かける論調は、リモートワークがもたらすフレキシビリティの増大をを称賛するものがある一方で、リモートワークの非効率性、負の側面を指摘するものとに大別されるように思われます。

マイクロソフト社が同社の6万人の従業員を対象として行った、リモートワークの効率性に関する研究の結果を取り上げている記事を読んでみました。


Whatever managers previous fears about remote work, the pandemic has proved that most knowledge workers can get their daily tasks done just as well from their living rooms as from the office. Study after study confirms most people's personal experience that, at least for those without child care, health, or other challenges, productivity has actually inched up with the advent of widespread remote work. 

Which means working from anywhere is a great thing, and companies don't need to worry about its impacts on performance, right?
(Jessica Stillman. New Microsoft Study of 60,000 Employees: Remote Work Threatens Long-Term Innovation. Inc.com. September 20, 2021.)


タイトルから想像がつくように、内容的にはリモートワークの負の側面を取り上げているものだと思います。リモートワークがフレキシビリティをもたらし、総労働時間としては増加しているものの、果たして?と記事は続きます。


The study, which was just published in Nature Human Behavior, analyzed data on the communications of approximately 61,000 Microsoft employees in the U.S. gathered between December 2019 and June 2020. Crunching the numbers revealed that while hours worked went up slightly when employees shifted to working from home, communication, particularly real-time conversations, fell significantly. 

Switching from a corridor chat to an exchange of emails isn't a one-to-one substitution, and the researchers worry about the knock-on effects of changes to the way office workers collaborate. 
(ibid.)


ここで出てくるのが、


the knock-on effects of changes to the way office workers collaborate


というくだりなんですが、記事を読んでいただくと分かりますが、オフィスでは極めて自然に、また普通に行われていた何気無い会話や交流がリモートワークでは失われ、コラボレーション(協働作業)や創造的な営みの機会が減少する、ということが言いたいようです。(ちなみに、この種の議論に反駁するオピニオンとしては、最近読んだ
3 Myths About Working From Home That Just Aren't True“という記事が興味深いものでした。)

ところで、引っ掛かったのは"knock-on effect"という表現です。

ここで、"knock-on"とは何を言わんとしているのでしょうか。

辞書を引いてみると、「ノックオン」はラグビーの用語でもあるらしいですが、ラグビーを詳しく知らない小生には今ひとつピンと来ませんが、物理学の用語としては、


原子核に高エネルギー粒子が衝突することによって、原子核を構成する一部の核子が核外へたたき出されること
(ランダムハウス英和辞書)


とあり、"knock-on effect"には「連鎖反応」(同辞書)という日本語が充てられていました。

まだ少しピンと来ないものがありましたが、"the effects"(即ち、"knock-on effect")が主語となって、記事は以下のように続きます。


"Without intervention, the effects we discovered have the potential to impact workers' ability to acquire and share new information across groups, and as a result, affect productivity and innovation," they write. "Based on previous research, we believe that the shift to less 'rich' communication media may have made it more difficult for workers to convey and process complex information."
(ibid.)


このくだりは、リモートワークによる働き方の変化が、それが積み重なることで、最終的に生産性やイノベーションに大きな影響をもたらす、ということを言っています。

つまり、オフィスでは同僚と同じ空間で即時の情報交換や意見交換を行っていたものが、リモートワークでは電子メール(やチャット)に頼る形となり、それが積み重なると最終的にはコミュニケーションの仕方が根本的に変わってしまう、ということだと思われます。

Oxford Dictionary of Englishでは、


a secondary, indirect, or cumulative effect


と定義されていますが、"cumulative effect"(累積的な効果、影響)というのは「連鎖反応」よりもしっくりときました。

この"knock-on effect"という表現は結構頻繁に用いられるらしく、検索では多くの記事でヒットしました。

最近の記事から1つ引用します。


A high-profile error can end up having knock-on effects for the way voters perceive a president’s administration’s generally.
(Aaron Rupar. Why Biden’s approval numbers have sagged, explained by an expert. Vox. September 20, 2021.)


こちらの記事では「累積」よりも「連鎖」の方がイメージがつきやすいように思われます。

ちなみに、研究社の新英和大辞典(第五版)では、動詞のエントリにおいて、knock onについて、


(比喩)(ある事物の動きがはずみとなって)<他の事物を>押し進める、駆り立てる、促進する


とありました。「連鎖」の意味に近いようですが、“knock-on effect”の訳語には多少のブレがあるようにも思われます。



2021年9月20日月曜日

head and shoulders

オランダ人の男性というと、「大男」のイメージがあります。

実際、オランダ人の身長は世界で最も高いという統計があるそうですが、近年、その身長が低くなる傾向が見られるとCNNが報じています。


The Netherlands has long been the world's tallest nation -- but its people are getting shorter, according to Dutch researchers.

Although height has increased over the last 100 years, the study showed Dutch men born in 2001 were 1 centimeter (.39 inches) shorter than their 1980 counterparts. For women, the difference was more pronounced with a difference of 1.4 centimeters (.55 inches).

(中略)

However, the Dutch have stood head and shoulders above the rest of the world for their height increases over the past 70 years, with the streets of the Netherlands showing a very different picture in 2020 compared to the early 1950s, according to researchers.
(Jeevan Ravindran. The world's tallest nation is getting shorter. CNN. September 19, 2021.)


今日取り上げる表現、


head and shoulders (above)


は、ずば抜けて、人並外れて、という意味で、副詞的に挿入されるフレーズです。

頭一つ分、またさらに肩の部分まで相手よりも背が高い、ということです。記事の話題は身長の話ですので、表現としてもぴったりですが、比喩的には能力や技量で相手に大きく優っていることを表現するのに用いられます。


Richards, according to Irman Khan, was head and shoulders above any other player at his peak.
(Collins Cobuild Dictionary of Idioms)


なぜオランダ人の身長が近年低い傾向を示しているのかについては、移民の影響や食事の変化によるものという考察があるそうです。

しかしながら、オランダ人が世界で他国民に比べてずば抜けて背が高いということは変わらないそうです。



2021年9月17日金曜日

zoonotic

当ブログを始めてから12年と数か月になります。

各投稿に分類タグをつけていますが(モバイル表示では見えないようですが)、単語のスペルの最初の文字で分類をしています。

最も多いのがアルファベットの"s"で始まる単語で、現時点で374語となっています。次いで、アルファベット"b""c"がそれぞれ243語、"p"が211語、と続きます。

想像がつくかと思いますが、"x"、"y"、"z"、"j"、"k"で始まる単語は少ないです。一番少ないのが"x"で始まる単語で3語、その次に少ないのが"z"で始まる単語の10語となっています。

とういことで、今日は久しぶりにアルファベットの"z"で始まる単語を取り上げました。

その単語というのは、"zoonotic"です。


The capture of wild animals for domestic consumption not only poses a threat to protected migratory species but also significantly increases the risk of zoonotic diseases like COVID-19, according to a United Nations report released Wednesday.

(中略)

The report, published by CMS and the U.N. Environment Program, also found strong evidence linking “wild meat taking and consumption” to zoonotic diseases like the coronavirus that are transmitted from animals to humans. 

(中略)

The U.S. intelligence community this year said the origins of COVID-19 remain unclear, though several agencies had a low degree of confidence that the disease stemmed from zoonotic transmission.
(Sharon Udasin. Wild meat consumption leads to increased risk of zoonotic diseases: UN report. The Hill. September 15, 2021.)


"zoonotic disease"、"zoonotic transmission"といった形で使われていますが、これは獣から人に感染する病気のことを指しています。

元は名詞である、"zoonosis"から来ており、これは人獣伝染病、動物原性感染症などと訳されます。

新型コロナウィルス感染症の起源についてはコウモリだったと言われていますが、まさに"zoonotic disease"と言われるゆえんです。

zoo-はご存知の通り動物を意味しますが、-osisという接尾辞はギリシャ語で病気を意味するnososから来ています。

"sclerosis"(硬化症)や"pollinosis"(花粉症)など、病名の多くにこの接尾辞が使われていますね。



2021年9月16日木曜日

lipstick on pig

米議会ではアフガン問題について質疑が行われているようです。

バイデン政権のブリンケン国務長官が、野党共和党からの厳しい質問攻めにあっているという記事から引用しました。


WASHINGTON —  For the second day, Secretary of State Antony J. Blinken on Tuesday confronted a barrage of questions from U.S. lawmakers about last month’s U.S. withdrawal from Afghanistan and the attempts to rescue people and deal with a future Taliban government.

Blinken, testifying before the Senate Foreign Relations Committee, repeatedly defended the evacuation operation by the State Department and U.S. military that airlifted more than 124,000 people, including almost all 6,000 U.S. citizens believed to be in Afghanistan at the time, as well as vulnerable Afghans.
(Tracy Wilkinson. Blinken faces barrage of queries, criticism from senators over Afghanistan withdrawal. Los Angeles Times. September 14, 2021.)


バイデン政権としてはアメリカの国益にならないアフガン駐留をやめたことの意義を強調しますが、軍撤退にあたってのオペレーション上の不手際や、自爆テロの発生、タリバン政権とどう対峙していくのか、など、野党にとっては突っ込みどころ満載のようです。


Republicans especially have been hammering the administration for what was a chaotic withdrawal that ultimately stranded thousands of people attempting to escape and saw a suicide bombing purportedly by Islamic State militants that killed 13 U.S. service men and women and nearly 200 Afghans.

There is not enough lipstick in the world to put on this pig,” said Sen. James Risch of Idaho, the ranking Republican on the committee.
(ibid.)


引用の最後の部分で、共和党議員の発言が引用されているのですが、ちょっと変わった言い回しです。


There is not enough lipstick in the world to put on this pig,”


この豚(pig)につけさせるのに十分な口紅(lipstick)が無い、というのが直訳になりますが、どういう意味でしょうか?

どうやらキーワードは"pig"と"lipstick"のようなので、まずは辞書を当たってみますが、そのような慣用句なり、成句なりは見当たりません。

ネットを検索してみますと、"lipstick on the pig"は、文字通り豚に口紅(を塗る)、ということで、見栄えをよくするために表面を繕う、というような意味で用いられるということが分かってきました。

つまり、"the pig"は駄目なもの、醜いもの、のメタファーであり、"lipstick"はそうしたものを表面的に繕おうとする、小手先の、姑息な手段、ということです。

記事のコンテクストに当て嵌めて考えてみますと、発言者の意図としては、アフガン撤退におけるバイデン政権の醜態(即ち、"the pig")はどのような言辞を弄しようとも美化出来るものではない("lipstick")、ということだと思われます。

ちなみにこの表現が注目を集め、成句的に定着するようになったのは、2008年の大統領選に際してオバマ前大統領(当時は上院議員)が使ったことがきっかけと言われています。


You know, you can put lipstick on a pig. It's till a pig.
(Election 2008: Putting Lipstick on a Pig. NPR. September 10, 2008.)


また、Time誌によれば、この表現はポンコツ車を外装だけ見栄え良くして高く売ることを言った、自動車業界の隠語だという説明があります。


It's a phrase common in the car sales industry, used to describe taking a hunk of junk, brushing on a fresh coat of paint and selling it for full price.
(A Brief History Of: 'Putting Lipstick on a Pig'. The Time. September 11, 2008.)


日本語で、「馬鹿につける薬が無い」という表現がありますが、近いものがあるかもしれません。

2021年9月15日水曜日

hobnob

何かと話題になることが多い、オカシオ=コルテス議員ですが、先日とは別件でまたもヘッドラインを賑わしています。

NYCのメトロポリタン美術館で行われたファッションショーに参加した同議員の装いが議論を呼んだものです。白地に大きく赤い文字で"Tax the Rich"(富裕層に課税せよ)という政治スローガンが大きくプリントされたドレスを着用していました。

我こそは富裕層というセレブがこぞって参加するようなショーに自ら出席しておきながら、そのような政治スローガンは正当なのか?という批判が出ている模様です。(参加費は3万ドル、議員の特注ドレスもウン万ドル、だとか。)


Rep. Alexandria Ocasio-Cortez, D-N.Y., had more to say Tuesday defending herself against backlash sparked by her controversial Met Gala gown emblazoned with the words "Tax the Rich," after saying Monday night she intended to carry the message into a wealthy space and borrowed the dress because "while the Met is known for its spectacle, we should have a conversation about it."

(中略)

Republicans on social media questioned why Ocasio-Cortez would attend an event for society’s elite if she wants to tax the rich.

Sen. Rick Scott, R-Fla., said in a tweet Tuesday that Ocasio-Cortez "wants to tax the rich but took time out of her busy schedule to hob knob with NY and Hollywood elites who paid $30k to attend the #MetGala (and deduct it from their taxes)."
(Danielle DuClos. Rep. Alexandria Ocasio-Cortez responds to backlash over 'Tax the Rich' Met Gala gown. ABC News. September 15, 2021.)


オカシオ=コルテス議員に噛みついた共和党議員のツイートが引用されているのですが、"hob knob"という表現が引っ掛かりましたので調べたのですが、辞書に見当たりません。

色々と調べてみるとこれは、"hobnob"というのが本来のスペルで、"hob knob"はその異綴り(?)のようでした。

別記事では、ツイッターの引用ではありませんが、"hobnob"となっています。


Ironically, that meeting is subsidized by taxpayers. If a rich person wanted to pay about $35,000 for an ultra-exclusive opportunity to hobnob with stars and be photographed doing so . . . well, she’d be out $35,000.
(Megan McArdle. Opinion: Where AOC’s ‘tax the rich’ dress clashes with progressive politics. The Washington Post. September 14, 2021.)


この"hobnob"の意味を不勉強にして知りませんでしたが、


親しく付き合う、酒を酌み交わす、懇談する


という意味だそうです。

語源が興味深いのですが、"hob"というのは動詞haveの中英語habbenから来ており("nob" についてはnabben、否定の接辞ne-とhabbenの結合したもの)、"hob nob"は"have (or) have not"という意味があったようです。(ヘミングウェイの小説「持つと持たぬと」(To Have and Have Not)を思い出します。)

意味合いはgive or take、さらにalternately(交代で、かわるがわる)と発展したようで、乾杯で酒を酌み交わす際に、お互いの健康を祈ってかわるがわる杯を取って飲むことを"drink hobnob"と表現しました。

現在の意味合いはこの名残なのだそうです。



2021年9月14日火曜日

sitting duck

新型コロナパンデミックは未だ収束が見通せません。

昨日の投稿で取り上げた記事ですが、パンデミックもあと半年くらいで収束するのでは、と思いたいところが、そういう期待に冷や水を浴びせる内容です。


What seems clear is that the pandemic will not be over in six months. Experts generally agree that the current outbreak will be tamed once most people — perhaps 90% to 95% of the global population — have a degree of immunity thanks to immunization or previous infection.

The key element should be vaccination, they say.

“Without vaccination, one is like a sitting duck, because the virus will spread widely and find most everybody this autumn and winter,” said Simonsen.
(Michelle Cortez. What will the next six months of the pandemic bring? Bloomberg. September 13, 2021.)


引用したのは記事全文の最後の方の部分なのですが、結局のところ、全員が感染するか、もしくはワクチン接種を終えることで免疫を獲得できなければ収束は覚束ない、と説きます。

ということで、やはりワクチン接種がキーということになるのですが、


Without vaccination, one is like a sitting duck


という箇所があります。

ここで使われている"sitting duck"というのは、無防備で狙われやすい標的、「かも」、という意味で辞書に載っています。

"duck"について、以前(かなり前に)取り上げたことがあります。

カモ、アヒルのことですが、じっとして留まっている(sitting)カモは猟師の格好のターゲットです。

ワクチン未接種はウィルスが感染を拡大させる手段としての格好の標的になる、ということでしょう。(かく言う小生もまだワクチン接種できていないのですが・・・。)



2021年9月13日月曜日

flirt

"flirt"という動詞、もしくは"flirtation"という名詞がありますが、


いちゃつく、もてあそぶ;面白半分に手を出す


という意味合いで用いられるのはご存知かと思います。小説などを読んでいると使われているのを時折見かけます。

ところで、"flirt"には上記以外の意味合いもあるようです。以下の引用がそうなのですが、上記の意味合いでは通りませんね。


Despite brutal initial waves and relatively high vaccination rates, countries including the U.S., U.K., Russia and Israel are flirting with record numbers of cases.
(Michelle Cortez. What will the next six months of the pandemic bring? Bloomberg. September 13, 2021.)


手元の英和辞書を引いてみたのですが、何故か上記のコンテクストにあてはまる"flirt"の意味が載っていないようでした。(研究社新英和大辞典、ランダムハウス英和辞書)

唯一(かは分かりませんが)、Merriam-Webster Dictionary(オンライン)では、


to come close to reaching or experiencing something —used with with


という意味が載っており、これが相当すると思われます。

そもそも、"flirt"はフランス語で花を意味するfleurという単語に関連するらしく、古フランス語のfleureterという語の原義は、花から花へと花粉と蜜を求めて飛び移る蜂の行動を言ったものだとか(研究社新英和大辞典)。いちゃつく、戯れる、という意味合いへのつながりが分かるように思います。

今回取り上げるもうひとつの意味合いは、いちゃつく、戯れる、の要素はありませんが、“come close to 〜”という部分が、戯れや玩弄の行為の中に見られる、軽く、一時的に触れる、掠める、といった意味合いを共有しているということは言えそうです。

コーパスでこのような“flirt (with)”の用法を検索してみましたが、“flirting with a cute girl”といった類の用法はたくさんヒットするのですが(笑)、戯れでない、またいちゃついていない“flirt”の用法はあまり多くを見つけることができませんでした。

以下は、1例です。


In this period, the big-cap Nasdaq stocks have been the favorite, and that was the truth today: Intel surging 1 percent, flirting with a new all-time high today.
(CNN, 2000)



2021年9月10日金曜日

Our patience is wearing thin!

今日のトップニュース、米国ではバイデン大統領が100人以上の従業員を有する企業にワクチン接種を義務化する方針であることが報じられています。

当然というべきか、反発の声が上がっています。


President Joe Biden on Thursday imposed stringent new vaccine rules on federal workers, large employers and health care staff in a sweeping attempt to contain the latest surge of Covid-19.

The new requirements could apply to as many as 100 million Americans -- close to two-thirds of the American workforce -- and amount to Biden's strongest push yet to require vaccines for much of the country.

"We've been patient, but our patience is wearing thin, and your refusal has cost all of us," Biden said, his tone hardening toward Americans who still refuse to receive a vaccine despite ample evidence of their safety and full approval of one -- the Pfizer-BioNTech Covid-19 vaccine -- from the US Food and Drug Administration.

He said vaccinated America was growing "frustrated" with the 80 million people who have not received shots and are fueling the spread of the virus. And he acknowledged the new steps would not provide a quick fix.
(Biden announces new vaccine mandates that could cover 100 million Americans. CNN. September 10, 2021.)


私がびっくりしたのは、大統領の発言、


but our patience is wearing thin, and your refusal has cost all of us


という箇所です。

"our patience is wearing thin"は、我慢がもう限界だ、という意味です。

続く、"your refusal"というのは、ワクチン接種に懐疑的な米国民を指しています。対して、"our (patience)"とは、ワクチン接種済みの人たちを指すものと思われます。

ワクチンを接種していない人がいるからパンデミックが収まらない、と言っているのとほぼ同じと考えてよいでしょう。分からないでもありませんが、大統領がそれを言ってしまうと、国民を分断することになるのではないかと思いました。

共和党議員からの非難がSNS上で渦巻いています。

日本でも、ワクチン接種を条件に様々な制限(イベント、県境をまたぐ移動、会食、等)を緩和するという議論が本格化してきました。

ワクチン接種していない人は肩身が狭くなること必至!?でしょうか。

パンデミック発生から1年半以上、"our patience is wearing thin"とは誰もが叫びたい心境でしょう。



2021年9月9日木曜日

menstruating person

テキサス州で女性の中絶を禁止する法律が施行され、大きな議論を呼んでいます。

女性による中絶の権利を認めるべきという批判が渦巻いていますが、民主党のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス議員がCNNのインタビューの中で、中絶禁止法を批判する意見を表明するにあたって、女性(women)に言及するのに加えて、"menstruating person"という言葉を使いました。この"menstruating person"という言葉遣いがツイッターで槍玉に上がっています。

何が起きているのでしょうか?


Rep. Alexandria Ocasio-Cortez, D-N.Y., was roundly mocked on Twitter for using the term "menstruating person" instead of women in a recent interview.

On Tuesday, Ocasio-Cortez appeared on CNN’s "Anderson Cooper 360" to discuss Texas Gov. Greg Abbott’s statements on the Texas Heartbeat Act which prohibits abortions after six weeks. She claimed that the law was actually not "about supporting life" and instead was about controlling "women’s bodies" as well as "any menstruating person."

"None of this is about supporting life. What this is about is controlling women’s bodies, & controlling people who are not cisgender men. This is about making sure that someone like me as a woman or any menstruating person in this country cannot make decisions over their own body," she said.
(Lindsay Kornick. Alexandria Ocasio-Cortez mocked for using term 'menstruating person' to describe women in interview. Fox News. September 8, 2021.)


テキサス州の中絶禁止法は、妊娠6週以降の中絶手術を禁止するという内容ですが、オカシオ=コルテス議員は、月経が2週間くらい遅れるということはよくあることで、6週以降は中絶できないというのは女性と"menstruating person"の権利を侵害するものである、との趣旨の発言をしたものです。

"menstruating person"とは、「月経のある人」という意味になりますが、女性(women)に加えて、敢えて「月経のある人」について言及したのには、リベラルとしての同氏が昨今のLGBTQに代表される性的少数派に配慮してのものと思われます。

しかしながら、保守派層からはそのような言葉遣いを嘲るコメントがSNS上に展開されているというものです。

オカシオ=コルテス議員は、月経は女性のみならず、トランスジェンダーにもある、とコメントし、自身の"menstruating person"という言葉遣いを擁護しています。


Following the interview, Ocasio-Cortez doubled-down on her use of the term "menstruating people."

"Not just women! Trans men & non-binary people can also menstruate. Some women also *don’t* menstruate for many reasons, including surviving cancer that required a hysterectomy. GOP mad at this are protecting the patriarchal idea that women are most valuable as uterus holders," she tweeted. "Trans, two-spirit, and non-binary people have always existed and will always exist. People can stay mad about that if they want, or they can grow up."
(ibid.)


この問題は、人間の性を生物学的な観点から男女という二分法しか認めないとする立場と、男女以外にも多様な性的指向、性自認があり、そうした性的マイノリティに配慮した言葉遣いをすべきであるとする立場の衝突であると解釈することができます。

つまり、オカシオ=コルテス議員は後者の立場であり、“women”に加えて(あるいは“women”を言い換えて)“person(s)”としたのですが、前者の立場からすると如何にも“woke”な言い回しが滑稽に思えるということのようです。


2021年9月8日水曜日

lift the lid

サンドイッチのSubwayは日本でもフランチャイズ展開していますが、その売りは、パンの種類から野菜やチーズなどのトッピングに至るまで、客の細かい好みに応じてカスタマイズされた商品を提供するところにあります。

そして、全ての食材には新鮮なものを使っているということなのですが、ファーストフードチェーンというからには新鮮とはうたっているけれども、実際のところどうなのか?と思うのは誰しもでしょう。

記事のタイトルにつられて読んでみました。


The trend for a behind-the-scenes peek at how fast food restaurants make our favorite meals shows no sign of stopping, as workers armed with cameras spill store secrets.

While we still haven't figured out KFC's infamous 11 herbs and spices blend, one woman, claiming to be a Subway worker, has lifted the lid on how the chain preps its veggies.
(Rebecca Flood. People Shocked to Discover How Subway Preps Its Vegetables for Sandwiches. Newsweek. September 7, 2021.)


記事のタイトルで、


shocked to discover


とありますが、そこから受ける印象は、「実態は(ひどいものだった)~」、故にショッキング〜、という想像をしてしまいます。

私もそのような内容を半ば想定して読み始めましたところ、アメリカの店舗に勤務すると思しき従業員がネットに投稿した動画が話題になっているとの事。

そして、その従業員による投稿の内容が、


has lifted the lid on how the chain preps its veggies


ということですから、まさしく内部告発的な内容ではないかと思った次第です。

結論から言いますと、Subwayで提供される野菜は、ピクルスを始め、レタスやホウレンソウなど一部は事前にカットされたものが各店舗に配送されていますが、それ以外は店舗で新鮮な食材をカットして提供しているというものです。(記事はこちら。)

さて、今日取り上げます慣用句の"lift the lid"というのは辞書を引くと、


(醜聞・不法行為(をした人)などを)暴露する
(ランダムハウス英和辞書)


とあり、悪い実態を明るみにする、という意味合いです。

"lift"という動詞以外にも、"take the lid (off)"などとも表現されますが、元々は蓋(lid)をして隠していたものを、その蓋を取り去って明らかにする、ということからも、本当はひた隠しにしておきたいことを暴露するという意味合いになるものです。

記事の内容は、そのタイトルや"lift the lid"の意味合いからはむしろ相反するもので、(こと野菜に関しては)新鮮な食材をオーダーを受けてからカットしており、顧客は意外にもそうだとは知らなかった、というものです。

こういう記事は、アクセス数を獲得するために、敢えて読者の興味を駆り立てるようなタイトルをつける、いわゆる「釣り」ではないかとも思うのですが、本文中で"lift the lid"という表現を使っていることについてもそうなのか、あるいは単に知らないのか、ニューズウィーク誌ともあろう媒体として果たしてどうなのか、興味あるところです。

Subwayに関しては、これまでにバンズの長さを巡る問題や、材料に使われているツナが本物かどうかといった疑惑など、醜聞に近いものが多かったので、今回もその類の話かと思ってしまいました。

私自身、Subwayのサンドイッチは嫌いではありません。



2021年9月7日火曜日

big-ticket

アイルランドの格安航空会社Ryan Airが、アメリカのボーイング社が製造する737型機MAXの購入を検討していたところ、価格面で折り合いがつかず、交渉が決裂したと報じられています。

話題の機体は2度の墜落事故を含め、他にも様々なトラブル続きだったようですが、ボーイング社にとってこれまた頭の痛い状況になった模様です。


Boeing faces a standoff with one of its biggest customers after Ireland's Ryanair said it had ended talks over a purchase of 737 MAX 10 jets worth tens of billions of dollars due to differences over price.

The rare decision to go public over big-ticket airplane negotiations comes after months of wrangling that had already delayed a deal for the largest version of the 737 MAX when Ryanair re-ordered a smaller model in December.

A large new Ryanair order would provide a boost to the U.S. planemaker as it rebuilds confidence in the MAX, grounded for 20 months until November after two fatal crashes. It would also speed a tentative industry recovery from the COVID-19 pandemic.
(Ryanair ends jet order talks with Boeing amid price dispute. Reuters. September 7, 2021.)


話題の新型機体は330億ドルもするそうで、値引き交渉後も100億ドルはくだらないだろうと言われているそうです。

そんな大型取引について、記事では、


big-ticket airplane negotiations


と表現されていますが、この"big-ticket"というのは、高価な、値の張る、という意味で用いられるアメリカ英語の表現です。

ところで、チケット(ticket)とういのは、入場券、乗車券など、紙片を指すものです。小生の経験で高額なチケットは、せいぜいが1万円くらいのコンサートチケットとか、長距離列車の往復乗車券が数万円といったレベルです(笑)

ところで、この単語がエチケット(etiquette)と語源を同じくする、と言うと意外に思われるでしょうか。

"etiquette"はフランス語から来ている英単語で、そのままのスペルで輸入されていますが、その"etiquette"というのはそもそも「札」、「ラベル」という意味だそうです。

つまり、"etiquette"も元々は現代の「チケット」のように小さな紙片のことを指す名詞だったということです。

その小さな紙片には礼儀作法に関する指示がかかれていたそうで、我々が今日使う「エチケット」の意味は、そのような背景から生まれたものなのです。

チケットとは言っても現代ではチケットレス(ticketless)社会になってしまいましたが。

以前取り上げた“ticket”の変わった意味についてはこちらをご覧下さい。



2021年9月6日月曜日

truther

今年の9月11日は米同時多発テロの発生から20年を迎えます。

同時多発テロの実行犯がアルカイダであったということは事実として受け止められていますが、中には米国政府自らがお膳立てしたものだと考えている人もいます。

いわゆる陰謀論(conspiracy theory)の類です。


For Heather Bauer, 9/11 anniversaries are about something other than the fallen Twin Towers, smoking wreckage at the Pentagon, and a crashed airliner in a Pennsylvania field.

Instead of the accepted version of events -- that Al-Qaeda conducted the attacks -- she believes the US government was primarily responsible. That is among falsehoods being promoted at various events to mark the 20th anniversary of September 11.

"I question absolutely everything now, and I wonder how much or what we have been told of history is even really true," Bauer told AFP. That includes Covid-19, which she does not believe exists.

(中略)

She believed the official narrative for years, but after falling into QAnon conspiracy theories, she looked again at the 9/11 story. She now thinks the attacks were orchestrated to justify the war in Iraq that followed in 2003.

She is a devoted adherent of the 9/11 truther movement. Its members tirelessly discuss online what they see as evidence that the Twin Towers fell because of controlled demolition techniques, not because commercial planes flew into them.
(Louis Baudoin-Laarman. Twenty years on, pandemic gives 9/11 conspiracists fresh impetus. Yahoo! News (AFP). September 6, 2021.)


引用した記事で、"the 9/11 truther movement"という箇所がありますが、"truther"とは見慣れない単語です。

手元の辞書には載っていないのですが、恐らく真実を意味する名詞"truth"に接尾辞-erがついたものであろうと想像がつきます。

Merriam-Webster Dictionaryでは、下記のように定義されています。


one who believes that the truth about an important subject or event is being concealed from the public by a powerful conspiracy


初出は2005年となっています。同時多発テロ発生をきっかけにしているかは分かりませんが(ウェブサイトによっては、"truther"という単語の起源を9/11テロに関する陰謀論と直接結びつけているものもあります)、テロ以外でも、アポロ17号の月面着陸はやらせだったとか、携帯電話を使うと癌になりやすいとか、新型コロナワクチンにはマイクロチップが仕込まれているとか、様々な陰謀論が取り沙汰される中で生まれた単語だと思われます。

ところで、先に「名詞"truth"に接尾辞-erがついたもの」と書きましたが、通例、接尾辞-erというのは動詞につくことで、動作主を意味するような機能を持つものと理解しています。

念の為、"truth"に動詞の意味があるのかチェックしましたが、名詞の意味しかありませんので、やや不可解でした。真実(truth)を追求し、また明らかにしようとする人たちを指して"truther"と言うようになったのかも知れません。

尤も、陰謀論の多くは真実ではなく、論拠に乏しいものが多いというのが現実ですが。



2021年9月3日金曜日

biological makeup

女性の中絶の権利に関しては、米国内で長い間社会問題になっていますが、テキサス州で中絶を禁止する司法判断が下されたことで新たに議論が沸騰しています。

テキサス州での司法判断に対してバイデン大統領は批判するする声明を発表しましたが、そのバイデン大統領の見解を巡って応酬があったようです。


White House press secretary Jen Psaki snapped at a reporter Thursday after he asked how President Biden can consider himself a Catholic while also supporting abortion.

Owen Jensen, a reporter with EWTN, a Catholic news network, asked Psaki during her daily press briefing why the president supports abortion "when his own Catholic faith teaches abortion is morally wrong."

"He believes that it is a woman’s right, it’s a woman’s body and it’s her choice," Psaki answered.
(Jessica Chasmar. Psaki snaps at male reporter over question about abortion, Biden's faith: 'You've never faced those choices.' Fox News. September 2, 2021.)


記者会見でカトリック教会系の報道記者(男性)から、バイデン氏はカトリック信者なのに何故中絶を認めるのかという質問があったものです。

対応したのは、ホワイトハウスのサキ報道官。中絶は女性の権利である、とバイデン氏を擁護しますが、記者がなおも迫ります。


Jensen pressed, "Who does he believe then should look out for the unborn child?"

Psaki reiterated that the president believes abortion is a woman’s right and then reminded Jensen of his biological makeup.

"He believes it is up to a woman to make those decisions and up to a woman to make those with her doctor," she said. "I know you’ve never faced those choices, nor you have never been pregnant, but for women out there who have faced those choices this is an incredibly difficult thing and the president believes their rights should be respected."

Jensen tried to ask another question but Psaki dismissed him, saying, "I think we have to move on. You’ve had plenty of time today."
(ibid.)


食い下がる記者に対して、サキ報道官は同じ回答に終始しますが、しつこい質問にキレてしまったのか、


then reminded Jensen of his biological makeup


とあります。

この"biological makeup"という表現が、如何にも持って回ったようなものなので興味を引かれました。

直訳すれば、生物学上の組成(構成)、ということになります。

記者に(自身の)生物学的組成を思い出させた、ということですが、一読した際、何を言わんとしているのか分からなかったのですが、続く発言、


I know you’ve never faced those choices, nor you have never been pregnant, but for women out there who have faced those choices this is an incredibly difficult thing...


を読めば、サキ報道官が男性である記者に対して、男のあなたには分からないだろうけど、という意味合いを込めたことを指していることが分かります。

つまり、「生物学上の組成(構成)」というのは、単純に言えば、性別のことを指している訳です。

妊娠というものがどういうものかも知らない、中絶するかしないかの判断に迫られたこともない人間には分からないでしょう、ということです。

ところで、この"biological makeup"という表現ですが、先に「如何にも持って回ったような」と書きましたが、そうでもないらしく、普通に使われているようでもあります。


The arguments against extending the vote to women fell into the following categories: Biological/psychological: No anti-suffragist argument was used more frequently than the one that found a disqualifying flaw in woman's biological makeup. "The masculine represents judgment... while the feminine represents emotion... the predominance of sentiment in women renders her essentially an idealist. She jumps at conclusions, " declared O. B. Frothingham in his 1890 essay "The Real Case of the 'Remonstrants Against Women's Suffrage.'"
(Washington Post, 1994)


LGTBTQの時代には憚られるような表現かもしれませんが・・・。



2021年9月2日木曜日

gut-and-amend

米カリフォルニア州の州議会の用語に、"gut-and-amend"というものがあるそうです。

"gut"というのは腸(はらわた)のことですが、動詞としては、骨抜きにする、という意味があります。

骨抜きにした上で(gut)、修正する(amend)、というのが字義通りの意味になります。

新しい法案を通すために、成立している既存の法の条文をそっくり新しいものに置き換え、法案の審議自体を迅速化するのがその目的ですが、見方によっては問題のある手法とも言えます。


California Democrats are looking to force through statewide coronavirus vaccine rules in a bill that was initially supposed to be about tolls on a bridge in the Bay Area, using a controversial "gut-and-amend" tactic that repurposes an existing bill.

The legislative screen allows state lawmakers to fast-track their agenda without going through committees and other early hurdles, according to state Assemblyman Kevin Kiley, a Republican and candidate to replace Gov. Gavin Newsom in next month’s recall election.

"What it does is it takes a bill that’s already been through the whole [legislative] process and strips out its contents entirely – then puts in something entirely different," he told Fox News Friday. "So it skips over, short-circuits, the entire legislative process and can just be passed without much scrutiny at all."
(California legislative switcheroo could 'gut-and-amend' bridge bill into coronavirus vaccine mandate. Fox News. August 28, 2021.)


問題になったのは、同州のベイエリアにある橋の管理に関する州法の修正案で、通行料金に関する条文の一部分を修正し、新型コロナのワクチン接種を拒む従業員を解雇できるという内容に置き換えるというものだそうです。

その後、問題の法案がリークされたことで関係者などから猛反発が起き、結局のところ取り下げられることになったとようです。


"This chilling legislation would have created a 'show me your papers' society without any precedent in American history," Assemblyman Kevin Kiley, a Republican and candidate to replace Gov. Gavin Newsom in the upcoming recall election, told Fox News Wednesday. 

In a separate tweet, Kiley said the bill "is dead for the year," while warning that it could resurface in the next session if Newsom overcomes the recall effort.
(California ‘gut-and-amend’ bill on vaccine mandate fails. Fox News. September 1, 2021.)


新型コロナワクチンの接種義務化を巡っては、共和党対民主党の構図にもなっており、特に加州では、州知事のリコール選挙とも絡んでいるようです。



2021年9月1日水曜日

peed off

外出時はマスクを持って出かけるのが必須となった今日ですが、マスク着用を巡ってはトラブルが絶えません。

特にレストランや店舗が客にマスク着用を求める場合に、客側が逆ギレするケースはニュースになることも多く、枚挙に暇がありません。

引用する記事もご多聞に漏れず、というところなのですが・・・。


An unmasked Canadian man was so peed-off about a Dairy Queen‘s face covering mandate that he relieved himself on the counter of the fast food restaurant, footage posted on Facebook showed.

The Saturday night incident happened in Vancouver Island’s Port Alberni, according to CTV News.

The peevish customer argued with staff about British Columbia’s mask policy before unzipping his pants and defiling the DQ service counter as the staff shrieked in horror, footage showed.
(Jesse O’Neill. Man urinates on Dairy Queen counter over mask policy. New York Post. August 31, 2021.)


マスク着用を求める側に対して逆ギレするだけでもどうかと思うのですが、キレた挙句、腹いせに小便をするとは聞いたことがありません。

冒頭の、


An unmasked Canadian man was so peed-off about a Dairy Queen‘s face covering mandate


で使われている、"peed-off"というフレーズは、怒った、イライラした、という意味なのですが、"pee"はそもそも小便の意味です。

というわけで、"peed off"という表現にはしゃれが利いています。

後半でてくる、"peevish"もある意味しゃれを意識したものかもしれません。

小便については"piss"という単語もありますが、"pee"は幼児語とされます。よって、ランダムハウス英和によれば、"peed off"は"pissed off"の婉曲語法なのだとか。