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2021年5月31日月曜日

ambassador-at-large

英語の表現で、"at large"と言えば、犯罪者などが逃亡している状態を表す用法がよく知られているところです。


The murderer is still at large.
(殺人犯は未だに逃亡中である。)


ところで、"at large"にはこれとはまた別の意味もあるということをご存知でしたでしょうか。

"ambassador-at-large"はそのひとつで、特使、無任所大使などと訳されます。


Worried about the plight of women in Afghanistan once U.S. troops leave, lawmakers are urging the Biden administration to ensure the U.S. will help keep women and girls in Afghanistan safe once the last U.S. forces have departed.  

Should the Taliban seize control of more of the country,  women could see their rights restricted or worse. There has already been a 37% increase in women killed or injured in the first quarter of 2021 compared to 2020, according to United Nations data. 

Democratic Senators Mazie Hirono and Jeanne Shaheen and  Republican Senator Susan Collins sent a letter to the White House last week asking for an ambassador-at-large for global women's issues to be designated to coordinate the protection of women's rights in Afghanistan. 
(Lawmakers urge Biden to appoint an ambassador to protect Afghan women as U.S. forces exit. CBS News. May 28, 2021.)


特使という言葉は聞くことがありますが、「無任所」大使というのは耳慣れない表現です。

特定の任務が無い、というのがその意味らしいですが、任務がないものを任命するというのは意味不明ではないでしょうか。

"at large"には、一般の、とか、あまねく、全体の、といった意味合いがあり、Merriam-Websterによると、


relating to or being a political representative who is elected to serve an entire area rather than one of its subdivisions


と定義されています。

"ambassador"(大使)というものは国を代表して外交を担う立場の官職を指し、特定の国に対して任命されますが、"ambassador-at-large"の意味するところは、特定の国や地域という指定が無い、ということのようです。

色々調べましたが、分かりにくい表現であります。



2021年5月28日金曜日

ちっちゃな天才 ― pint-sized

アメリカ・カリフォルニア州在住の2歳の女の子は最年少のメンサ会員として知られるそうです。

メンサというのは高いIQを持った人のみが会員になれる団体で、IQで上位2%であることが資格だそうです。

2歳の女の子のIQ値は何と146(!)ということで、米国人平均の100をずば抜けて上回っています。

いわゆる、天才少女(whiz kid)という訳です。


The youngest American member of the high IQ society Mensa is a 2-year-old whiz kid with a genius-level score of 146, according to a report.

Kashe Quest, of Los Angeles, Calif, began learning to read at 1.5 years old, speaks Spanish and can identify all 50 states on a map, her mom, Sukhjit Athwal, told KTTV in a segment that aired Tuesday.

(中略)

The pint-sized prodigy can also count to 100, knows sign language and can identify elements on the periodic table by their symbols, she said.
(Natalie O'Neill. America’s youngest Mensa member is a 2-year-old with a 146 IQ. New York Post. May 26, 2021.)


ところで、引用した記事の後段に出てくる、"pint-sized"という形容がピンと来なかったので取り上げました。(IQが低いワタシ!?)

"pint"と聞くと、ビールをまず思い出すのですが、パイントは体積の単位です。

従って、"pint-sized"は1パイントのサイズということになるのですが、ここでは、


小さい、小型の


という意味になるのでした。

特に、人、子供に対して、小さい、ちび、というような形容で使われるものです。

ちなみに、"half-pint"というまた別の単語がありますが、こちらも「ちび」、背が低い、とか、平均(並み)以下、というような意味で使われます。

なぜ、1パイントは小さいのか、また平均以下なのか、そもそもパイントを日常的に経験しない我々日本人には分かりにくいものがあります。

辞書を引けば、1パイントは8分の1ガロン、と載っていますが、そもそもこの「ガロン」(gallon)という単位にもなじみがなく、ポンド・ヤードの英米とメートル法の感覚差に付き纏われることになります。

1パイント、8分の1ガロンは大体460ミリリットルくらいになるのですが、ビールならそのくらいの量で十分なワタクシには、"pint"が並以下となる感覚はよく理解できません。(ちなみに、ガロンという単位自体アメリカとイギリスで定義が異なるため、上記は米国標準ガロンでの話で、英国標準ガロンんだと約560ミリリットルとなります。)

そもそも巨体の英米人と小柄な日本人は食べる量も飲む量も相対的に違ってくるわけで、向こうの物差しで平均以下とされてしまうのは仕方のないことかもしれません。



2021年5月27日木曜日

microchip

新型コロナウィルスのワクチンにはこっそりとマイクロチップが仕込まれているらしい・・・。

そんな陰謀論が米国で渦巻いていたとは知りませんでした。

勿論マイクロチップが仕込まれているなどという事実はないのですが、ワクチン接種と同時に微細なチップが人体に投与され、接種を受けた人の健康情報などが密かに収集されている、というようなまことしやかなうわさが以前からあったようです。

根も葉もない陰謀論が再燃したのは、米・コロンビア大で注射針にも通るほどのマイクロチップの開発に成功したというニュースが報じられたことにあるようです。


For a year the internet has been consumed with baseless conspiracy theories that the COVID-19 vaccine would be used to secretly microchip the American people.

Now there's a twist. Columbia University announced May 12 that researchers had developed a tiny microchip capable of measuring vital signs — and small enough to be injected.

(中略)

In a May 12 press release, Columbia announced researchers had developed a medical microchip. At 0.1 cubic millimeters, the researchers report the device is the smallest single-chip system of its kind and can be injected with a hypodermic needle.

But just because the chip can fit inside a needle does not mean it is being used to secretly microchip people.
(Devon Link. Fact check: Medical microchip developed by Columbia University has nothing to do with vaccines. USA Today. May 26, 2021.)


さて、今日の単語"microchip"ですが、記事では名詞と動詞の2種類で使い分けられています。

名詞は言うまでもなく、物理的なマイクロチップそのものを指しています。

動詞の方は、対象を特定する目的などでマイクロチップを埋め込んだりする、という意味合いで、近年ではペットとその飼い主を結びつけるための技術がよく知られているところです。


to put a microchip with information on it under the skin of an animal so that it can be identified (= recognized), and, for example, returned to its owner
(Cambridge Dictionary online)


このような動詞の意味は、近年の技術革新を反映したものであり、手元の辞書ではこのような動詞の意味は見当たりませんね。

そもそも"microchip"とは、コンピュータに使われる、半導体の集積回路(integrated circuit)のことを指す名称で、略して"chip"と呼ばれていたのです。

つまり、元々小さい(micro-)のですが、「マイクロ」のレベルは現代ではさらに進んでいるようです。



2021年5月26日水曜日

breakthrough infection

物事に「絶対」はありません。新型コロナウィルスワクチンも100%効果があるとは誰も保証はできません。

ワクチン接種が進み、国民の約半数がワクチン接種を終えたとされる米国においては、ワクチン接種者はマスク着用は不要という判断も出されているようですが、ワクチンを接種してもウィルスに感染してしまう事例は出ています。

そのような感染事例のことを、


breakthrough infection


と表現するそうです。


Julie Cohn was fully vaccinated when she went to cheer at her 12-year-old son’s basketball game in March. Midway through the match, he asked to remove his mask because he was getting so hot. She thought little of it.

Three days later, he had a sore throat. He tested positive for the coronavirus, as did his younger brother a few days later. Ms. Cohn cared for them, thinking she was protected, but she woke up with what seemed like a head cold on March 28. The next day, she, too, tested positive.

No vaccine provides perfect protection, and so-called breakthrough infections after coronavirus vaccination are rare and unlikely to lead to serious illness. Federal health officials have told fully vaccinated people they no longer need to wear masks or maintain social distance because they are protected, nor do they need to be tested or quarantine after an exposure, unless they develop symptoms.
(Roni Caryn Rabin. C.D.C. Will Not Investigate Mild Infections in Vaccinated Americans. The New York Times. May 21, 2021.)


"breakthrough"は日本語でも「ブレークスルー」と表記されるように、カタカナになって浸透している感がありますが、そこにはポジティヴな響きがあって、これまでには成し得なかったことが、新しい技術や発明によってできるようになったという意味合いで使われるというのが大方の印象ではないでしょうか。

"breakthrough infection"の場合の"breakthrough"は、逆にネガティヴな意味合いであり、ワクチンによる免疫抗体の産生にも関わらず、それを「突破して」感染に至ってしまう、ということです。

記事中では、"breakthrough cases"という表現も使われています。

この"breakthrough infections"、あるいは"breakthrough cases"という言葉は新型コロナウィルス感染症に限らず、インフルエンザや疱瘡などの従来の感染症に関しても使われてきたのですが、こと新型コロナウィルス感染症に関連してワクチン接種が進んでいる最近になって目立つようになってきました。

ちなみに、たまたま目についたのですが、グーグル翻訳では「画期的な感染症」という日本語訳が出てきており、これはNGですね。

折しも上に引用したニューヨークタイムズ紙の記事を読んでいたところ、つけていたラジオからは、米国でワクチンを接種したにも関わらず新型コロナウィルスに感染してしまう事例が0.01%というCDCの統計があるというニュースが流れていました。

今後日本でもワクチン接種が進むでしょうが、気になる数値ではあります。



2021年5月25日火曜日

ビットコイン、乱高下 ― whipsaw

小生は投資に関しては全くの素人、未経験者ですが、ビットコインなどと言われるとさらに縁の無い世界です。

しかしながらニュース記事を見ていますと、いやでもビットコインやら、仮想通貨に関する話題も目にします。

大抵はあまり関心がありませんので読み飛ばしますが、今日は珍しく取り上げることになりました。


Bitcoin is rebounding Monday after its value was cut in half over the weekend as China signaled a tougher stance against the cryptocurrency.

According to prices tracked by Coindesk, Bitcoin is up about 15% as of Monday afternoon, trading around $37,000 per coin. On Sunday, the world's largest cryptocurrency plunged to as low as $31,000. 

Still, large corporate holders of Bitcoin, appear to be in for the long haul. 
(Lucas Manfredi. Bitcoin's biggest corporate investors whipsawed amid volatility. FOX Business. May 24, 2021.)


取り上げられているのは、ビットコインの相場が乱高下したという話のようなのですが、先週末の土曜日に1ビットコインあたり3万1千ドルまで下落したところが、週明けに3万7千ドルに高騰したということです。

注目したいのは、記事のタイトルで使われている、


whipsaw


という動詞です。

この単語を見たことがありませんでした。

辞書を引くと、スペルの"saw"(のこぎり)という部分から想像がつくように、細身ののこぎりのことで、両端のハンドルを2人が持ってひくことで太い木材などを切り落とすのに使われるそうです。

ところで、この「2人が持ってひく」というところがどうやらポイントのようなのですが、1人は木材に対して上目の位置から、もう1人は対照的に斜め下の位置から、というポジションを取ってのこぎりを引きます。

この視覚的な位置関係は、(その角度が急であればあるほど)株価などが急激な高騰、もしくは下落をする様がグラフで表されているのを想起させるようです。

Investopediaのサイトによりますと、下記のような説明があります。


The origin of the term whipsaw is derived from the push and pull action of lumberjacks when cutting wood with a saw of the same name. A trader is considered to be "whipsawed" when the price of a security they have just invested in abruptly moves in the opposite and unexpected direction.


ところで、"whipsaw"はこのような乱高下の意味の他、二重の損害を被る、という意味でも用いられるようです。

特に、株取引の世界においては、高値で購入したものを底値で売らなければならないような局面に立たされるような場合を言うそうです。

Merriam-Webster onlineによれば、このような「二重損」、つまりダブルパンチというような意味合いについても、"whipsaw"が2人によって両側から切り込むのに用いられることから発展した意味であると解説しています。


A whipsaw is a type of handsaw worked by two people, one of whom stands on or above the log being sawed and the other below it, usually in a pit. The tool dates back to the 15th century, but it was not until the 1870s that anyone thought to use the saw's name figuratively to describe situations in which someone or something is doubly "cut," or hurt. Today, the word is commonly used when discussing financial crises or losses. For example, just recently a chief executive explained in a press statement that his company was "whipsawed in the fourth quarter as key industries were hit by a rapidly deteriorating economy and plunging commodity prices." (The New York Times, January 27, 2009)


最初に引用した記事における"whipsaw"の意味合いとしては上記のいずれの意味にも取れそうです。



2021年5月24日月曜日

dissident

リトアニアの首都に向かっていた民間飛行機が軍用機によってベラルーシのミンスクの空港に強制着陸させられた一件が国際ニュースのヘッドラインになっています。

飛行機にはベラルーシの体制に批判的なジャーナリストの男性が乗っており、ベラルーシ大統領による逮捕劇だったようです。


A leading Belarusian opposition activist has been arrested in Belarus after President Alexander Lukashenko ordered a fighter jet to escort his Ryanair plane to Minsk, according to Pull Pervogo, Belarusian state broadcaster.

Raman Pratasevich, in exile and a vocal critic of Lukashenko's regime, was detained at Minsk airport, the Belarusian Ministry of Internal Affairs said Sunday.

The original flight route was from Athens, Greece, to Vilnius, the Lithuanian capital, a path that crosses through Belarus.
(Belarus activist arrested after fighter jet intercepts his Ryanair flight. CNN. May 24, 2021.)


ベラルーシでの圧政を公に批判してきた男性はミンスクの空港で逮捕され、これに対しEU諸国などが批難の声明を発表している模様です。


The real target was Pratasevich, the 26-year-old critic of Belarus President Alexander Lukashenko who had covered protests last year against the strongman’s brutal suppression. He was living in Vilnius since November, when he was listed as a wanted terrorist in Belarus, and Lithuania allowed him to stay in the country.
(Milda Seputyte. How Belarus Snatched a Dissident Off a Ryanair Plane From Greece. Bloomberg. May 24, 2021.)


男性ジャーナリストは同国でテロリストと指定されており、逮捕されれば死刑も免れないようです。

テロリストと呼ぶのは体制側で、記事のタイトルでは、"dissident"という表現が使われています。

"dissident"というのは、意見を異にする人、反対者、という意味です。このような記事のコンテクストでは「反体制派」という表現が当てはまるでしょう。

ラテン語dissidereに遡るのですが、これは接頭辞dis-(離れて)と座るという意味の動詞(sedere)が結合したもので、離れて座る、距離を置く、という意味です。

Online Etymology Dictionaryによると、元々はキリスト教における国教会(established church)に対して異を唱える立場を指したものでしたが、政治のコンテクストでも使われるようになったのは1946年頃からということです。



2021年5月21日金曜日

sucker

先日、バイデン大統領がミシガン州にあるフォード社を訪問し、同社のテストドライビングコースでピックアップトラックを自ら運転、試乗したことが記事で取り上げられていました。

斜陽と言われる米の自動車産業を盛り立てる意味もあるのでしょうが、フォード車がこのほど新車発表を予定しているピックアップトラック、F-150は電気自動車ということでも話題になっています。


It's not every day an American president gets to speed down a driving course in an electric pick-up truck trailed by Secret Service. But on Tuesday, President Joe Biden did just that.

Biden made an unscheduled visit to a Ford driving course at which safety tests are normally conducted, and had the opportunity to test drive the new Ford F-150 Lightning -- the electric vehicle Ford is manufacturing at a plant in Dearborn, Michigan.

"This sucker's quick," said Biden, donning aviator sunglasses, from the driver's seat after pulling the truck up to reporters and photographers.
(Biden takes new electric F-150 for a test drive: 'This sucker's quick'. CNN. May 18, 2021.)


大統領は新車の加速性能にいたく感心したようで、報道陣に感想を問われて、


"This sucker's quick"


とコメントしました。

ここでの"sucker"という表現ですが、私は騙されやすい人、カモ、というネガティヴな意味は知っていたのですが、


An unspecified thing. Used as a generalized term of reference, often as an intensive
(American Heritage Dictionary)


という意味合いは知らなかったのでした。(“sucker-punch”を参照。)

ランダムハウス英和によると、俗語表現であり、普通に人や物を指して、こいつ、とか、これ、という時に使われるということです。

つまり、F-150を試乗して、「コイツは速い奴だ」と、ある意味親しみを込めて言ったということ感じかなと思います。



2021年5月20日木曜日

rollback

昔、情報システム関連の業務に従事していたことがありまして、"rollback"と聞くとデータベースの「ロールバック」(障害発生前のデータに戻す作業)を想起してしまいます。

下記の記事で用いられている"rollback"はこれとは異なる意味で、価格を下げることを意味しているのですが、そのような意味があるとは知りませんでした。


Inflation is driving up prices of items from soda to diapers, but Walmart said it is putting more of its merchandise on sale.

Walmart U.S. CEO John Furner said on an earnings call Tuesday that the retailer had about 30% more discounts in stores in the first quarter than the same period a year ago. He said it plans to continue to dangle deals and widen price gaps to stand out from competitors.

(中略)

The retail giant has cultivated a reputation for its slogan and focus on “Everyday Low Prices.” In its store aisle, it promotes sales — called rollbacks — on signs with big numbers intended to catch the eye of shoppers and tout how much they could save.
(Melissa Repko. Walmart is doubling down on ‘rollbacks’ as inflation pushes prices higher. NBC News. May 18, 2021.)


米市場はインフレ傾向にあるらしいですが、ウォルマートは日用品などの価格をディスカウントして("rollback"して)、競合と差別化を図る戦略のようです。

改めて"rollback"の定義を確認してみました。


A reduction, especially in prices or wages, to a previous lower level by governmental action or direction
(American Heritage Dictionary)


政府が介入して行うというのが、上記に限らずどの辞書にも見られる説明なのですが、単純に減少や削減することを意味するのにも使われるようです。



2021年5月19日水曜日

a feather in one's cap

中国の探査機が火星着陸に成功しました。

火星探査機Tianwen-1(「天問1号」と書くらしいです)が先週末に火星のユートピア平原に着陸、探査車Zhurong(「祝融」と書き、中国語で火の神様の意味だそうです)を送り出しました。

火星着陸では、米国、旧ソ連に続き、世界で3番目、探査車を火星表面に展開するのは米国に続き、世界で2番目となる快挙と言われています。


China's Zhurong rover touched down on the surface of Mars over the weekend, marking a new milestone for the country's space program. But we may face a bit of a wait before we see the rover's first views of Mars. 

The China National Space Administration issued a statement in English on Monday confirming the landing, which is part of the Tianwen-1 mission, China's first attempt to reach the surface of another planet. CNSA Deputy Director Wu Yanhua told the state-run China Daily Zhurong will perform diagnostics and move off its landing platform in the next few days, and that its first photos are expected around the end of May.
(Amanda Kooser. First images from China's Mars rover might take awhile to reach Earth. CNET. May 17, 2021.)


中国は宇宙大国を目指しているそうですが、昨年末にも月の裏側に探査機着陸を成功させるなど、その活動が際立っています。

記事では以下のように続きます。


The landing is one more feather in China's space cap, which in recent years has included landing the Chang'e 4 mission on the far side of the moon, returning moon rocks to Earth via the Chang'e 5 mission and launching the core module of a new space station in April. 
(ibid.)


今日取り上げる表現、


The landing is one more feather in China's space cap,


という部分の、“a feather in one's cap”とは立派な業績、名誉、といった意味の慣用句です。

字義通りには、帽子につけた羽、という意味なのですが、帽子に羽を付けることができるのは栄誉に与ることができた人という背景があるようで、昔、戦争で敵を倒すごとに羽をひとつ帽子に付けて功績をアピールしたとか言われています。



2021年5月18日火曜日

bleacher

ユダヤ教の礼拝堂で大勢の人が将棋倒しになり、150名がけが、2名が死亡するというアクシデントがありました。


JERUSALEM — Israeli medics said at least two people were killed and more than 150 injured after a bleacher collapsed at an uncompleted West Bank synagogue on Sunday, the eve of a major Jewish holiday.

The bleacher was packed with ultra-Orthodox worshippers and collapsed during prayers at the beginning of Shavuot. A spokesman for Magen David Adom told Channel 13 that paramedics had treated over 157 people for injuries and pronounced two dead, a man in his 50s and a 12-year-old boy.
(Bleacher collapse at West Bank synagogue kills at least 2, injures 150. Associated Press. May 16, 2021.)


アクシデントが発生したのはちょうどユダヤ教の祝日だったそうで、大勢の礼拝者らが集まっていたようです。

各紙が報じていますが、いずれの記事のタイトルにも使われている、"bleacher"という単語が、(階段状の段差になっている)観覧者席、観客席、を意味する単語だとは不勉強にして知りませんでした。

野球やサッカーの試合が行われる競技場のような、傾斜のあるスタンドの観客席というイメージに近いです。

ところで、"bleacher"からは動詞の"bleach"(漂白する)を直ぐに想起しますが、関係があるのでしょうか。

答えは、イエス、です。

これも知りませんでしたが、"bleacher"が傾斜した観客席を意味するようになったのは、アメリカ英語で1889年が最初だそうです。

American Heritage Dictionaryでは、


from comparing a person's exposure to the sun when sitting on them with the exposure of linens bleaching on a clothesline


と解説されており、つまりは観客席(スタンド)は陽に晒されることからそう呼ばれるようになったとあります。観客である人間は陽に晒される洗濯物と同列というわけですが、意外な発想ではないでしょうか。

なお、通例では"bleachers"と複数形で使われることが多いようです。



2021年5月17日月曜日

gossip fodder

先日、元マイクロソフト社のCEOであるビル・ゲイツ氏とメリンダ夫人の電撃(!?)離婚がニュースで報じられました。

離婚の理由についてはあまりはっきりしたことが報じられていなかったように思っていたところですが、その後次第に明らかにされつつあるようです。

New York Times紙が報じたところによれば、どうやらビル・ゲイツ氏の女性関係が原因のようです。

やはり、そっちの話か(!?)などと下衆な興味をかきたてられてしまうのですが、離婚の引き金になったのは、ゲイツ氏が、未成年者の買春などで逮捕され獄中死したEpstein氏と行動を共にしていた時期があったことが報じられたことが大きかったと言われています。

今回のNew York Times紙の報道を引用する形で、各紙はMS社時代のゲイツ氏が職場の女性を手当たり次第に誘惑していたと報じています。


Bill Gates “pursued” several women in his office long after he wed now-estranged wife Melinda in 1994 — but it was the exposure of his ties to pedophile Jeffrey Epstein that really shook their marriage, according to a report on Sunday.

The New York Times detailed two instances where the billionaire tech mogul clumsily asked out women who worked for him at Microsoft and the Bill and Melinda Gates Foundation.

The two incidents and other more recent ones at times created an uncomfortable workplace environment, with Gates’ personal life becoming gossip fodder among employees, six current and former staffers told the newspaper.
(Tamar Lapin. Bill Gates reportedly asked out several women in his office while married. New York Post. May 16, 2021.)


ゲイツ氏の広報を担当する女性は報道内容について、信憑性に欠けると否定しているようですが、ゲイツ氏が職場の女性を食事に誘うなどしていることは当時から社内で有名だったそうです。

既に"gossip fodder"となっていた、とのことですが、この"fodder"というのは牛や馬など、家畜の飼料というのが本来の意味です。

転じて、価値が低いが需要が高いために大量消費されるべくかき集められるもの、というネガティヴな意味で使われるようになりました。

Merriam-Websterの定義を引用すると、


inferior or readily available material used to supply a heavy demand


と説明されていますが、用例として、


fodder for tabloids


とは、まさしく先に引用したNew York Post紙に報じられる格好の話題になっているということでしょう。

日本語で「好餌」という言葉があり、マスコミの好餌になる、などと言いますが、"gossip fodder"という表現はそれに近いかもしれません。



2021年5月14日金曜日

こき下ろす ― pan

世の中には色々な自動販売機があるものです。

飲料はもちろん、軽食の類が買える自販機は今や当たり前ですが、ピザの自動販売機というのは聞いたことがありません。


Rome’s new “Mr. Pizza Go” can cook four types of pizza in three minutes, but the early reviews are that the pies taste just like you’d expect from a vending machine.

“It’s OK but it’s not pizza,” university student Fabrizia Pugliese told Reuters after digging in.

Fabrizia Pugliese, a Naples native and university student in Rome, gave the machine-made pizza a try and gave it a thumbs down, saying it tasted more like a “piadina,” an ultra-thin soft unleavened bread wrap popular in northern Italy.
(Mark Lungariello. Rome’s new pizza vending machine panned by critics. New York Post. May 6, 2021.)


本場イタリアのローマにお目見えしたというピザの自動販売機は、生地をこねる工程からスタートし、約3分で出来立てのピザを提供するらしいのですが、レストランで食べるピザには足元にも及ばない、とこき下ろされています。

記事のタイトルでは、


new pizza vending machine panned by critics


と表現されていますが、この"pan"という動詞はこき下ろす、酷評するという意味の口語表現です。

"pan"の名詞の意味に、平たい鍋、つまりフライパン、があります。

"on the pan"という成句も同じく、酷評されて、こき下ろされて、という意味合いなのですが、英語では相手を批難したり、叱責することを、焼いたり、炙ったりすることになぞらえる傾向があるようで(例えば、"grill"、"roast"、など)、動詞の"pan"の場合も同様のようです。



2021年5月13日木曜日

long-hauler

新型コロナウィルス関連のニュース記事で、"long-hauler"という表現が使われているのを見かけました。

以下のようなものですが、今日見たFox Newsの記事のタイトルです。

Coronavirus long haulers often face fatigue, neurologic symptoms months later: study


ご存知と思いますが、"haul"は手繰るとか、引っ張る、物を輸送する、という意味の動詞で、"long-haul"には長距離の(輸送)とか、長時間に渡る(航行)いうような意味があり、よく使われるのは、


long-haul truck(長距離トラック)
long-haul flight(長時間のフライト)


などといった表現です。

このような"long-haul"がパンデミックのコンテクストで使われているのは意外でした。

記事を引用します。


Some young, otherwise healthy patients who experienced mild coronavirus reported experiencing fatigue, respiratory issues and neurologic symptoms months after recovering from the illness, according to a new study.

While imaging studies appeared normal, patients reported "debilitating symptoms," building on the complexities of post-COVID-19 syndrome .

Results were published in Mayo Clinic Proceedings on Tuesday, stemming from the first 100 patients treated from June to late December at the hospital’s COVID-19 Activity Rehabilitation program in Rochester, Minn.

(中略)

An analysis of 100 non-hospitalized "long haulers" found that most patients reported more than four neurologic symptoms, with "brain fog" being the most predominant. Nearly half of the group reported depression/anxiety prior to coronavirus diagnosis. 
(Kayla Rivas. Coronavirus long haulers often face fatigue, neurologic symptoms months later: study. Fox News. May 12, 2021.)


記事中、"long-haulers"が、新型コロナウィルスに感染した人のことを指しているということは分かります。

引用した記事に限らず、報道によれば、新型コロナの症状から回復した後も長く尾を引く症状に悩まされる人が少なくないと聞きます。

"long-hauler"とはそのような後遺症状の影響を受けている人を指すのであろうと思われましたが、手元の辞書にはそのような意味では載っていないのです。

Merriam-Webster onlineによれば、"long-hauler"のこのような意味合いはCOVID-19をきっかけに新しく生まれたものだそうです。

どうりで手持ちの辞書には載っていないわけですが、Merriam-Webster onlineでは最新の意味として下記のように定義が追加されています。


medical : a person who experiences one or more long-term effects following initial improvement or recovery from a serious illness (such as COVID-19)


新型コロナパンデミックをきっかけにこれ以外にも新しい表現が生まれ、2021年1月に新たに追加されたそうです。(Merriam-Webster online



2021年5月12日水曜日

新型コロナウィルスの起源 ― gain of function research

新型コロナウィルスは2019年末に中国の武漢で発生したと言われています。

武漢のウィルス研究所から流出したとか、コウモリを宿主とするウィルスから変異したとか言われていますが、WHOが調査に入ったものの原因は特定できておらず、感染拡大が起きた武漢の海鮮市場も取り壊されてもはや分からず仕舞いです。

この新型コロナウィルスの起源については、最近の米議会で改めて議論になったようで、共和党の議員がCOVID-19対策指揮のトップに立つFauci氏に詰め寄ったという記事を読みました。


Sen. Rand Paul, R-Ky., and Dr. Anthony Fauci sparred once again at a Senate hearing Tuesday, this time over the funding of the controversial Wuhan Institute of Virology -- the Chinese lab that is believed to have played a role in the initial outbreak of COVID-19.

Fauci and Paul have come to verbal blows before over both COVID-19 and related restrictions such as lockdowns and mask-wearing. On Tuesday, Paul zeroed in on gain of function research -- which works on making pathogens deadlier or more easily transmissible. He alleged that a U.S. virologist had been working with the Chinese institute on such research and said it was funded by the National Institute of Health (NIH).
(Adam Shaw. Rand Paul, Fauci again spar over COVID origins, controversial Wuhan lab. Fox News. May 11, 2021.)


共和党議員のRand Paul氏はこれまでにも度々、Fauci氏と衝突してきましたが、今回は新型コロナウィルスの起源について、武漢の研究所を米国NIHが資金面でサポートしてきたと指摘し、批判したようです。

Fauci氏は資金提供の事実は無いと否定しています。

ところで、記事中、"gain of function (research)"という言葉が度々出てくるのですが、意味がよく分からずにいました。

引用した部分から、"research"(研究)の一種だということだと思いますが、"gain of function"という研究手法に問題があった、というように読めます。

別記事では以下のようなくだりがあり、この"gain of function"というものが具体的にどういうものか多少見えてきました。


Gain of function research is a controversial form of study that involves boosting the infectivity and lethality of a pathogen. Fauci has advocated for the research in the past, but he denied that the NIH was funding it in China.
(Nathaniel Weixel. Rand Paul clashes with Fauci over coronavirus origins. The Hill. May 11, 2021.)


科学に疎い小生ですが、"gain of function (research)"というのは、病原体の感染力や致死性を変化させることを目的とした研究である(故に、問題があるとされる手法)と読めます。

日本語では、「機能獲得(型の研究)」という訳があてられているようです。

実のところ、最初は"gain"の解釈で戸惑ったのですが、これを


gain-of-function research


というようにハイフンでつないでいる表現も見られ、そうであればもう少し分かりやすかったとも思います。

新型コロナウィルスの起源については、真実のほどは分かりませんが、そのような公衆衛生に危うい研究がパンデミックの引き金になったのだとしたら、とんでもないことをしでかしてくれたもんだと思いますね。



2021年5月11日火曜日

motherly instinct

ここのところ頻発している米国内での銃乱射、もしくは発砲事件ですが、ニューヨークのタイムズスクエアで週末に発生した乱射事件で、流れ弾で負傷した女児を抱き抱えて走る警官に賛辞が送られています。

自身が6か月になる子の母親であるという女性警官が、負傷した4歳女児を抱き抱えながら救急車に向かって突っ走る映像を見ました。


NEW YORK – A quick-thinking police officer is being praised as a hero for racing through a chaotic scene at Times Square to rush an injured 4-year-old to safety after a shooting at the iconic New York City landmark.

Officer Alyssa Vogel swooped in to grab the girl, who had been shot in a spray of stray bullets hit three bystanders in Times Square on Saturday evening, apply a tourniquet to her leg and bring her to a nearby ambulance.

Vogel, a mother of a 6-month-old herself, said in an interview with the New York Post that the 4-year-old is "the strongest little girl I’ve ever seen.”

(中略)

Speaking with "Good Morning America," Vogel said her "motherly instincts" kicked in.
(Ryan W. Miller. 'Motherly instincts' kicked in, says hero police officer who saved 4-year-old in Times Square shooting. USA Today. May 10, 2021.)


女性警官のコメントによれば、"motherly instinct"(母性本能)が咄嗟にその行動に駆り立てた、ということです。

形容詞の"motherly"は、母親らしい、母性の、という意味です。

ところで以前にも取り上げましたが、接尾辞の-lyは形容詞の語尾について副詞を作るものと、名詞の語尾について形容詞を作るものと、2種類あり、"motherly"については後者となります。



2021年5月10日月曜日

Angeleno

Angelenosは予約無しでCOVID-19のワクチン接種ができるそうです。

ところで、Angeleno(s)とは?

Los Angeles、つまりロス、ロサンゼルスに住む人のことです。


Appointments are no longer needed for Angelenos to get COVID-19 vaccinations at any site run by the city, Mayor Eric Garcetti announced Sunday.

“We stand at a critical juncture in our fight to end this pandemic, and our City will keep doing everything possible to knock down barriers to vaccine access and deliver doses directly to all Angelenos,” Garcetti said in a statement.

The move is intended to give people who don’t have the time or technological resources to navigate online booking platforms a chance to get the shot. Vaccinations are free.
Alex Wigglesworth. Beginning Monday, L.A. will offer appointment-free COVID-19 vaccinations. Los Angeles Times. May 9, 2021.)


新型コロナワクチンについては、日本では高齢者接種すら1パーセントにも満たない接種率です。

一方、米国では接種が格段に進んでおり、日本では電話やインターネット予約が全くつながらないというニュースを見るにつけ、どうしてこんなことになっているのかと思うこの頃であります。

ところで、Angelenoについては、Los Angelenoと表現されることもあり、こちらだとロスを指していると分かりやすいのですが、Angelenoだけだと知らない場合には一見分かりません。

Los Angelesという地名については、そもそもは天使たち(angels)の街という意味です(正確には天使たちの聖母の街)。カタカナでは「ロス」の方が前面に出てきている感がありますが、この"los"はスペイン語の定冠詞に過ぎません。

土地の人を表す意外な単語については、以前取り上げた、トーキョーアイトSyndneysiderMichiganderもご覧ください。



2021年5月7日金曜日

九つ子誕生 ― nonuplet

以前、六つ子誕生の記事を取り上げたことがあります。

その中で、双子から九つ子まで、それぞれ英語で何と表現するかを書いたのですが、まさか本当に九つ子誕生のニュースを見るとは思いませんでした。


A Malian woman has given birth to nine babies in what could become a world record. Halima Cissé had been expecting to have seven newborns: Ultrasound sessions had failed to spot two of her babies.

"The newborns (five girls and four boys) and the mother are all doing well," Mali's health minister, Dr. Fanta Siby, said in an announcement about the births.
(Bill Chappell. Nonuplets: Woman From Mali Gives Birth To 9 Babies. NPR. May 6, 2021.)


記事のタイトルにありますように、


nonuplets


が九つ子を表す英語です。

ところで、前の記事では九つ子を"nontuplet(s)"と書いていました。

ランダムハウス英和辞書に載っているものですが、"nonuplet"の方はエントリがありません。

"nonuple"という似た単語があり、やはりラテン語で数字の9を表すnonusに由来しているのですが、"nontuplet"という単語とは別物ということのようです。

一方、Merriam-Websterでは"nontuplet"のエントリはなく、"nonuplet"が載っていますからややこしい。

"nonuplet"か、はたまた"nontuplet"か?

同じニュース記事ですが、The IndependentやCBS Newsなどでは"nontuplet"を採用しているものも見られます。(いずれもAssociated Pressのソースによるものです。)

Morocco Mali Nontuplet Births
(The Independent, via Associated Press)


ちなみにコーパス(COCA)を頼ってみましたところ、"nontuplet(s)"はヒットなし、"nonuplet(s)"は4件ヒットということで、いずれにしても非常にまれな単語ということが分かります。



2021年5月6日木曜日

bust

昨日、5月5日はこどもの日の祝日でした。

邦紙朝刊は日本における出生率が最低記録を更新したと報じていました。ここ数十年で低下傾向に歯止めがかからないようです。

また、パンデミック下で出産を控える傾向も影響しているという指摘でした。

同様の傾向は米国でも見られるようです。


Remember that pandemic baby boom some thought we'd see about nine months after coronavirus lockdowns swept across the US?

Well, as experts predicted, so far it seems to be shaping up to be more of a baby bust.

New data released by the US Centers for Disease Control and Prevention's National Center for Health Statistics on Wednesday doesn't paint the full picture, but it gives us a glimpse of what's going on. The birth rate in the United States fell in the last quarter of 2020, decreasing significantly -- more than 6% -- from the same time period the previous year.
(Catherine E. Shoichet. We're starting to see how the pandemic affected births in the US. CNN. May 6, 2021.)


出生率(birth rate)の低下について、


a baby bust


と表現している箇所があります。

一時期はベビーブーム(baby boom)になるかとさえ予測されたものですが、その逆、つまり"boom"の逆の"bust"という訳です。

日本語のカタカナとして「ブーム」に馴染みはあっても、"bust"は何故かカタカナになっていないのですが、"bust"には打撃とか失敗、破産、不況、経済的衰退、といった意味があり、"boom"の対極概念として用いられます。(以前取り上げた"boom and bust"もご覧ください。)

"xxx bust"のパターンをいくつか拾ってみました。

Michael Johnson used to work as a field engineer in the telecommunications industry, but that job was wiped out in the dot-com bust.
(USA Today, 2014)


From 2006 to 2012 -- years that encompass the housing bust, recession and recovery -- that pattern reversed itself, with most low-cost cities growing 2.5 percentage points more than high-cost cities.
(New York Times, 2014)


"boom"と"bust"はひとつの「波」であり、それが交互にやってくることは避けられないものでありますが、"a baby bust"における"bust"は単なる一時的な低下を意味しているようにも思われます。

日本の出生率低下も盛り返してくれれば良いのですが。



2021年5月5日水曜日

chyron

CNNとかFox Newsなどのニュース映像を見ると、大抵の場合、画面の下の方にニュースの内容の要約や発言をテキストにしたものが表示されています。

テレビや動画におけるニュース映像の、ほとんど標準化されたスタイルだと思われますが、そのような画面下部のテキストのことを、


(television) chyron


と呼ぶそうです。(発音はカタカナで、「カイロン」、のようになります。)

これは知りませんでした。


Newsmax host Grant Stinchfield on Friday criticized President Joe Biden for stopping to pick a dandelion for first lady Jill Biden while they walked to the Marine One helicopter on the White House Ellipse, saying that if the flower is blown "then everybody starts sneezing."

As Stinchfield remarked on the president's gesture for his wife of 44 years, the television chyron read: "Biden bizarrely gives Jill a dandelion."
John L. Dormanmay. Newsmax host criticizes Biden for picking a dandelion for the first lady. Business Insider. May 1, 2021.)


同じものを指すのに、日本語カタカナではテロップがよく知られているところですが、これは"television opaque projector"という英語の略称ではあるものの、英単語として使えるかというと、そこは微妙なようです。

テロップ(telop)という代わりに、subtitleとかtickerと表現するということは知っていたのですが、"chyron"というのを見るのは初めてでした。

手持ちの英和辞書には載っていないのですが、Merriam-WebsterやAmerican Heritage Dictionaryにはちゃんと載っています。

"chyron"はこのような技術を開発、汎用化したアメリカの会社Chyron Corporationに因むもので、いわば商標名が一般名詞化したものです。



2021年5月4日火曜日

dognap

レディー・ガガさんの飼っている犬が連れ去られ、その後無事見つかったというニュースを見たのはしばらく前のことだったように記憶します。

それからしばらく経っていますが、事件に関わった容疑者らが逮捕され、取り調べを受けているという記事を見ました。


Five people were arrested Thursday in connection to the Feb. 24 dog napping of Lady Gaga's dogs and the shooting of their walker, the Los Angeles Police Department (LAPD) confirmed Thursday.
(Sarah Polus. Suspects in Lady Gaga dognapping charged with attempted murder, robbery. The Hill. April 29, 2021.)


記事タイトル、本文で、"dognapping"(一部、dog napping)という表現が使われています。

犬の連れ去り、誘拐ということで、“dognap”が、"kidnap"から来ていることは明白です。

私は最初、“kidnap”に掛けたしゃれの類いかと思ったのですが、Merriam-Webster onlineでは、"dognap"という単語がちゃんとエントリとして載っており、しかも初出は1898年ということなので、少々驚きました。

ちなみにですが、誘拐を意味する"kidnap"は"kidnapper"という表現の逆成(先に、"kidnapper"という単語が存在し、そこから"kidnap"という動詞が派生した)ということをご存知でしょうか。

"kidnapper"における-napperとは泥棒(thief)のことを意味するのですが、ひったくる、盗むという意味のnapは、現代に残るものとしては"nab"で、"nap"として残るものはこの"kidnap"(及び、dognap)のみだそうです。



2021年5月3日月曜日

pyre

インド国内における新型コロナウィルス感染症拡大が深刻な事態となっています。

一度は感染を抑え込んだかに見えた同国の対策でしたが、その後宗教活動などで人々が密集することを容認したことなどが仇となって、感染拡大の第2波が同国を襲っています。

1日の感染者数が38万人、死者は3,600人以上と、世界的にもワーストの記録となっています。

酸素吸入を待つ患者が病院外にあふれ、死者の火葬が追い付かずという状況は地獄にもたとえられている有り様です。

CNNの記事から引用します。


New Delhi (CNN) - Flames crackle over the wails and prayers of grieving families as they mourn loved ones laid on funeral pyres that burn through the night in New Delhi.

As India's second wave of coronavirus sweeps through the country, bodies are piling up faster than workers can cremate them or build new pyres.
(As India's crematoriums overflow with Covid victims, pyres burn through the night. CNN. May 1, 2021.)


"pyre"という見慣れない単語ですが、不謹慎ながら、こんな記事でもなければお目にかかることはそうそうないと思われます。

火葬のために木の薪を山のように積み上げたものを指します。

CNNの記事には火葬場の空撮写真が添えられていますが、広い敷地にいくつもの"pyre"が組み上げられ、炎と煙が上がっている様子を撮影しています。

このような火葬方法は現代においては南アジア特有のもののようですが、ヨーロッパにおいては古代において実施されたであろうことが遺跡から分かるそうです。

語源はギリシャ語で火を意味するpyrから来ています。英単語では、pyro-という接頭辞は火に関連していますが、pyrotechnic(花火)などの単語に見られます。